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小4から知るU-17W杯戦士の活躍も刺激に後半戦で台頭してきた背番号32の新鋭レフティ。昌平DF古川雄規が加速度的に伸ばしている成長曲線

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左足のキック精度に特徴を持つ昌平高DF古川雄規(2年=ジェフユナイテッド千葉U-15出身)

[11.30 プレミアリーグEAST第20節 昌平高 2-2 東京Vユース 昌平高G]

 この数か月で取り巻く環境が大きく変化したことは、ハッキリと自覚している。高いレベルを経験することによって、自身の成長も感じる一方で、チームを代表してピッチに立つことに対する責任も、同時に強く実感し始めているからこそ、いつでも全力を出し尽くす決意は今まで以上に強くなっている。

「勝ったら気持ちいいですし、負けても正直収穫のある試合も多くて、そういうプレミアの凄さは実感しています。でも、3年生で試合に出られていない人たちもいるので、全力でやらないといけないなというところは意識しています」。

 シーズン後半戦からの台頭で定位置を掴みつつある、昌平高(埼玉)の32番を背負うレフティ。DF古川雄規(2年=ジェフユナイテッド千葉U-15出身)は自分のさらなる進化を見据えつつ、チームの勝利に貢献できるプレーを模索し続けている。


 9月7日。夏の中断が明け、後半戦の初戦となったプレミアリーグEAST第12節。アウェイの市立船橋高戦に臨む昌平のスタメンには、リーグデビュー戦となる2年生の名前があった。

「前半戦はS1(埼玉県1部リーグ)で出させていただいていたんですけど、夏の名古屋遠征で3年生の(高橋)心晴くんがケガをして、センターバックで出た時に、そこでちょっと手応えがありました」という古川を、芦田徹監督は4バックの左センターバックとしてピッチへ送り出す。

 結果から言えば、デビュー戦はその価値を高めるのに十分な90分間だった。最終ラインの中央でコンビを組む、キャプテンのDF伊藤隆寛(3年)との連携も上々。正確なビルドアップはもちろん、時折繰り出すサイドチェンジやロングフィードも攻撃のアクセントに。試合自体も後半終盤にFW立野京弥(1年)が決勝ゴールを叩き出し、2-1で逆転勝ち。昌平はリーグ戦の連敗を4でストップすることに成功する。

「サッカー観がメチャメチャいいんですよ。攻撃では相手の矢印を折れますし、守備でもフィジカル能力が高いわけではないんですけど、狙いを持って反応できるところが良いですよね」と評する芦田監督は、以降のリーグ戦でも古川をスタメンで起用。最終ラインの重要なキャストとして、存在感を高めている。



 プレミアの残留争いに身を置いている昌平が、この日の試合で対峙したのは東京ヴェルディユース。プレミアEASTの中でも、異質なスタイルを前面に打ち出す攻撃的なチームだが、もちろん負けるわけにはいかない。前半12分にいきなり先制点を献上したものの、14分にMF工藤敦士(2年)が、19分に伊藤が続けてゴールを奪い、逆転に成功する。

 3バックの左センターバックに入った古川は、左ウイングバックに入ったDF森井智也(3年)との関係性を意識していたという。「(森井)智也くんは突破というより、ビルドアップから逆へサイドチェンジするのが得意なタイプで、オーバーラップも使ってくれたりするので、そこは意識しながらプレーしました」。タイミングを見て、森井との連携で果敢にオーバーラップするシーンも。そのあたりにも、もともと持っている攻撃性が滲む。

 ただ、チームは前半終了間際の45+2分に追い付かれると、後半は東京Vユースの攻撃にさらされる時間が続く。「後半からは疲れもあって、プレスもハマらなくなって、ゴール前まで行かれていたシーンもあったので、基礎の体力づくりから頑張っていきたいですし、もっと1対1の強度を練習から高くやっていきたいと思います」と課題も見出しながら、それでも2年生センターバックは必死に相手の強力アタッカー陣に食らい付く。

 最終盤の45+6分にはPKを与え、絶体絶命のピンチを迎えたものの、GK小野寺太郎(3年)がこれを執念で弾き出し、試合は2-2でドロー決着。リーグ戦では5戦続けてフル出場を果たし、概ね安定したプレーを続けた背番号32も、間違いなく勝点1獲得に貢献したと言っていいだろう。



 中学時代の古川はジェフユナイテッド千葉U-15に在籍していたが、ある縁があって埼玉の強豪校の門を叩くことになる。「もともとジェフにいて、今は昌平に来ているスカウトの宮島(慶太郎)さんが呼んでくれて、練習参加してみた時に、スタイルが凄く自分に合っていたので、それで選びました」。

「正直最初はLAVIDA出身の選手が怖かったんですけど(笑)、話していくうちに意気投合して、プレー中もみんな繋がっている感覚があるので、今は凄く楽しくやれています」。ハイレベルな環境でトレーニングを重ねる中で、さまざまなプレーが進化している手応えも着実に得てきている。

 U-17日本代表にも選出されている千葉U-18の姫野誠は、かつてのチームメイト。先日まで行われていたFIFA U-17ワールドカップでの活躍は、古川にとっても小さくない刺激になったようだ。

「マコは小4から一緒にやっていて、もともと上手いタイプの選手ではなかったんですけど、自主練も凄くやる中で伸びてきた選手ですし、スピードも凄くて、何より気合というか、自分が決めるというエゴイスト感を凄く出せる選手で、そこは尊敬していますし、頑張ってほしいなと思っています」。



 県予選優勝の瞬間もピッチで味わった古川にとって、選手権は入学時から目指していた晴れ舞台。指揮官も「良い経験ができていると思いますし、フルは欠くことのできない選手の1人だと思っています」と話しているだけに、このまま本大会までポジションを確保し、自分の実力を多くの人に披露したいところだ。

「個人としては、守備の強度が凄く高くなった気がして、最後の粘り強さとかは前節の青森山田戦でも見せられたので、そこは成長できていると思います。チームとしては、まずはプレミアに残留して、良い形で選手権の全国大会に向かいたいなと思いますし、選手権は1回負ければ終わりなので、その重圧もあるんですけど、自分たちがやってきたことを信じて、頑張りたいなと思います」。

 アグレッシブに、ボールを追い掛ける。真摯に、ゴールを守り続ける。昌平に突如として現れた、左利きの新鋭センターバック。古川雄規がこの数か月で加速度的に伸ばしている成長曲線を考えれば、この人が冬の全国で大ブレイクしないとは、誰にも言い切れない。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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