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ピッチを掌握する司令塔が指し示す勝利への道筋。神戸U-18MF藤本陸玖がアカデミーラストマッチに懸ける日本一への決意

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ヴィッセル神戸U-18の司令塔、MF藤本陸玖(3年=ヴィッセル神戸U-15出身)

[12.7 プレミアリーグWEST第21節 神戸U-18 2-1 鳥栖U-18 いぶきの森球技場]

 もちろんみんなのことは信じていたけれど、最後の最後にここまでの結末が待っているなんて、さすがに想像していなかった。こんなことがあるんだなって、今まで努力してきたことが報われたんだなって、そう思ってみんなの顔を見た瞬間、さすがにもう我慢できなかった。

「なんか、もう信じられなくて、試合終了の笛も鳴って、普通にピッチにも入ってしまって(笑)、みんなと抱き合っていたら自然とこれまでの想いとか、先輩たちから引き継いだ想いも、全部がこみ上げてきて、涙が止まらなかったですね」。

 中盤のど真ん中で今シーズンのヴィッセル神戸U-18(兵庫)を支え続けてきた、サッカーを熟知するコントロールタワー。MF藤本陸玖(3年=ヴィッセル神戸U-15出身)が冷静に、情熱的に、ピッチを掌握する唯一無二の存在感が、プレミア制覇の一翼を担ったことに疑いの余地はない。


 高円宮杯プレミアリーグWEST第21節。2位のサガン鳥栖U-18(佐賀)とホームで対峙したビッグマッチ。この試合に勝てば優勝を手繰り寄せられる神戸U-18だったが、立ち上がりからやや硬さが目立ち、押し込まれる展開を強いられると、21分にはゴラッソを叩き込まれ、先制点を献上してしまう。

「1本凄いシュートを決められてしまいましたけど、ボールは持てていたと思います。でも、そこからゴール前のところでシュートまで行けなかったので、そこの思い切りが少し足りていなかった印象がありました」。

 そう話した藤本は、中盤のアンカー気味の位置に陣取り、インサイドハーフのMF井内亮太朗(1年)とMF濱崎健斗(3年)を自由に泳がせながら、自身も攻撃へと積極的に関与。一方で守備でも中央に穴を開けず、的確なポジショニングで相手の攻撃の芽を摘み取っていく。

 38分には左足で果敢にミドルを狙うと、45+3分には右足でFKを蹴り込み、濱崎の際どいボレーを演出。それこそセットプレー時には左右両足を巧みに使い分けており、キック精度と基本技術の高さも、この人の大きな武器として挙げられる。



 加えて今季はキャプテンのMF瀬口大翔(3年)が欠場した試合では、腕章を巻くことも。「自分は声でチームを引っ張っていくのはそこまで得意じゃないので、プレーで引っ張っていくことは考えていますし、今は下級生も多いので、自分がバランスを取りながら、チームの波をできるだけ小さくして、流れを良い方向に持っていけるように意識しています」。チームの中心としての自覚も、十分に携えながらシーズンを突き進んできた。

 48分には相手のカウンターにさらされかけたタイミングで、ボールホルダーに激しく寄せると、主審はイエローカードを提示。これで累積4枚目となり、次節は出場停止ということが決まったものの、もう考えるべきは目の前の試合のみ。すぐに気持ちを切り替えて、懸命にボールを追い掛け続ける。



 終盤に差し掛かりつつあった77分。ピッチサイドの交代ボードに浮かび上がったのは“6”の数字。U-15時代からのチームメイト、MF片山航汰(3年)に後を託し、残り時間はベンチから試合を見つめることになる。

 1分ずつ、1秒ずつ、時間が刻一刻となくなっていく中で、不思議と焦りのような感情は湧いてこなかったという。「『最後まで自分たちが諦めなければ、絶対に結果は付いてくる』ということは安部さん(安部雄大監督)からも言われていたので、そこまで焦りはなかったんですよね」。

 奇跡は、起きた。90+5分、濱崎。90+11分、またも濱崎。信じられないような後半アディショナルタイムの大逆転劇で、いぶきの森、沸騰。藤本も気づけばベンチに座っていたチームメイトたちと、ピッチに向かって全速力で駆け出していた。

「ホンマに劇的でしたね。もう嬉しさしかなかったですし、これまでにも今季はこの場所で、アディショナルタイムに何回も劇的な勝利は味わってきましたけど、今までで一番嬉しかったですね。だいぶピッチに飛び出しちゃいました(笑)」

 仲間と歓喜を分かち合っていると、自然と涙があふれてくる。みんなで記念写真に収まり、サポーターの前で神戸賛歌を歌っているうちに、少しずつ、少しずつ、実感がじわじわと押し寄せる。「3年連続で2位でしたし、自分たち以上に安部さんは悔しかったはずで、安部さんがいたからこそ、自分たちも今があると思うので、そこは感謝の気持ちで胴上げしました」。改めて噛み締めたタイトルの味は、やはり嬉しくて、幸せで、最高だった。




 1年時からコンスタントにプレミアのピッチに立ち続けてきた藤本は、今節まででリーグ通算54試合に出場。とりわけ今シーズンは結果にこだわってきた中で、チームのリーグ制覇に貢献した確かな手応えも掴んでいるようだ。

「1年も、2年も、試合に出られてはいましたけど、なかなかチームに貢献できていない想いが自分の中にあって、その悔しさというのは忘れていないですね。でも、今年は、数字の部分でも3ゴールを決めて、アシストも10ぐらいできたと思いますし、守備の部分でも大きく成長できたと思っています」。

 充実した1年間の集大成は、12月21日に埼玉スタジアム2002で開催されるプレミアリーグファイナル。リーグ最終戦は警告累積で出場停止が決まっているだけに、藤本は正真正銘のアカデミーラストマッチとなる決戦に向けて、力強くこう言い切った。

「埼玉スタジアムという大きな舞台でできる試合ですし、相手もクラブユースで負けたアントラーズで、日本一を決める舞台としては、本当にこれ以上ない舞台が用意されているので、すごく楽しみです」。

「小4からジュニアに入って9年、スクール時代も合わせれば10年以上を過ごしてきたヴィッセルアカデミーでの時間も、もうファイナルで最後なので、そういう悲しさもありますけど、それ以上に一番大きな舞台で最後の試合をできることが嬉しいですし、その感謝は結果でしか返せないと思うので、最後は絶対に優勝して、お世話になってきた方々に恩返ししたいと思います」。

 アカデミーで過ごしてきた10年を超える時間のラストマッチは、必ず笑顔で締めくくってみせる。神戸U-18の攻守をしなやかに繋ぐ、背番号6のプレーメイカー。藤本陸玖がその両足から繰り出すキックは、いつでも、どこでも、チームメイトが進むべき方向を明るく照らし、勝利への道筋をはっきりと指し示す。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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