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ハードワークと団結力はみんなで築き上げてきた一体感の証。「元チームメイト同士の指揮官対決」は山形ユースが大分U-18に競り勝って初戦白星!

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モンテディオ山形ユースは粘り強く戦って勝ち点3を奪取!

[7.22 クラブユース選手権(U-18)GL第1節 大分U-18 1-2 山形ユース ヤンマーフィールド長居]

 シュートは自分たちの2倍近く打たれたものの、みんなで声を掛け合って、集中力を研ぎ澄ませていく。タフに、粘り強く、溌溂と。ピンチには最後の最後まで食らい付き、身体を投げ出し、守るべきゴールを守り続ける。一度取ったファイティングポーズは、絶対に下ろさない。

「今回は1位だけしかグループを通過できないので、1つでも負けてしまうと上に上がっていけないということで、凄く選手たちがモチベーション高くハードワークしてくれて、頑張ってくれて、結果も付いてきましたし、良いゲームになったかなと思います」(モンテディオ山形ユース・秋葉勝監督)

 貫いたハードワークで歓喜の初戦白星奪取!第48回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会が22日に開幕。ヤンマーフィールド長居で行なわれたグループHの大分トリニータU-18(九州2)とモンテディオ山形ユース(東北1)が対峙した一戦は、2-1で山形ユースが競り勝って、貴重な勝ち点3を手繰り寄せている。


 立ち上がりからペースを掴んだのは、「自分たちがしっかりボールを握れる時間帯は長いのかなという想定はありました」と山崎雅人監督も話した大分U-18。DF吉原虎太郎(2年)とDF矢野想翔(3年)のセンターバックコンビを中心に丁寧なビルドアップを繰り返しながら、MF小野誠竜(3年)とMF近藤陽稀(3年)にボールが入ると一気にテンポアップ。前半5分に近藤が直接FKを枠の上に飛ばすと、17分にも左から小野が上げたクロスに、近藤が合わせたヘディングはゴール左へ外れたものの、惜しいシーンを創出する。

 なかなか攻撃の時間を作れない山形ユースだったが、「ボールを回されることはよくあることで、守備から良い流れを持ってくることも意識しているので、そこまで苦しくはなかったかなと思います」とはFW井上椋太郎(3年)。右からMF鑓水澪星(3年)、DF三浦隼太(3年)、DF佐藤勘太(3年)、キャプテンのMF半澤光琉(3年)の4バックは素早いスライドで相手のアタックに対応しつつ、右のMF阿部遥人(3年)、左のMF永井英次(3年)の推進力に活路を求めると、34分には決定機。MF菅原大幹(3年)のラストパスから、永井が枠へ収めたシュートは大分U-18のGK平野稜太(2年)がファインセーブで凌ぎ、詰めた菅原のシュートも平野が再び弾き出したものの、ようやく引き寄せたビッグチャンス。

 すると、直後に生まれた先制点。35+1分。相手陣内で井上が果敢なプレスバックからボールを奪い、MF今野勇夢(3年)が左へ振り分け、永井は丁寧に中へ。菅原のラストパスを井上が確実にゴールネットへ流し込む。「我慢の時間帯はあると思っていたので、やることを変えずに我慢し続けたら、自分にチャンスが巡ってくると信じていた」というストライカーの一撃。山形ユースが1点をリードして、最初の35分間は終了した。


「ああやって中央を固められた時に、最後のクオリティのところで、どこにポイントを作っていくかは課題としてありましたね」と山崎監督も口にした大分U-18は、個の力で同点に追い付く。後半2分。右サイドでMF高橋七皆(2年)が粘って残し、交代出場のMF山内湊人(2年)のスルーパスから、抜け出した小野は右足一閃。ボールは豪快にゴールネットへ突き刺さる。前半から存在感が際立っていた7番が一仕事。1-1。スコアは振り出しに引き戻された。



 10分の主役は「自分としてはフォワードで点を決めてヒーローになりたいなと思っていたので、『ああ、今日はセンターバックか』とは少しだけ思いました」と笑ったFW登録のセンターバック。山形ユースは右サイドから菅原がFKを蹴り込むと、後半開始から最終ラインに投入されたFW水戸部東次(2年)がダイビングヘッドで当てたボールは、ゴールへと弾み込む。「今週のトレーニングはフォワードをやっていたんですけどね」と秋葉監督も明かした“二刀流”センターバックの勝ち越し弾。再び山形ユースが突き放す。

 またもや追い掛ける展開となった大分U-18も、ギアを一段階踏み込む。14分には右サイドを駆け上がったDF平川日向(3年)のクロスに、小野が合わせたボレーはヒットせず。19分にも山内がラインの裏へ絶妙のパスを落とし、走った小野のシュートは山形ユースのGK佐藤陸斗(1年)がファインセーブで回避。23分にもゴールまで約25mの位置から近藤が直接狙ったFKはクロスバーにヒット。あと一歩までは迫りながら、次の1点が遠い。

「後半は特に守る時間帯が多かったですけど、最終ラインもボランチもみんなで声を掛け合って、集中力を高められたので、それほど怖さはなかったです」(半澤)。山形ユースは熱く、冷静だった。MF古川雅矩(3年)と今野のドイスボランチはアラートにセカンドボールを回収し続け、最終ラインも高いラインをキープ。28分にはカウンターから永井、今野と繋ぎ、井上のシュートは平野の攻守に阻まれるも、攻撃の刃も突き付けつつ、交代カードを切りながらゲームクローズに取り掛かっていく。

 3分のアディショナルタイムも消し去ると、タイムアップのホイッスルが耳に届く。「もう気持ち良かったですね。それが一番の感情でした。いろいろなプレッシャーもある中で、応援に来てくれた方も含めて、多くの方が支えてくれたので、本当に嬉しい勝利でした」(半澤)。ファイナルスコアは2-1。全員が各々の役割を100パーセントで遂行した山形ユースが、大事な初戦で力強く白星をもぎ取った。



 この日の一戦は『元チームメイト同士の指揮官対決』でもあった。山形ユースの秋葉監督は自身もアカデミー出身であり、13シーズンに渡ってトップチームでプレーしたレジェンド的存在。一方の大分U-18を率いる山崎監督は、2011年からの4年半を山形で過ごし、2014年のJ1昇格プレーオフ決勝ではチームを昇格に導くゴールを挙げるなど、印象的な活躍を続けたアタッカーだった。

「普段からもちょくちょくは連絡を取らせてもらうので、抽選会で同じグループになった時に連絡は取らせてもらいましたけど、お互いに勝ちたい気持ちが強かったと思うので、それ以降はちょっと控えさせてもらいました(笑)」と笑いながら明かした秋葉監督は、「向こうから聞こえてくるのは懐かしい声でしたし、一緒にやっていた人が相手側にいるというのは、ちょっと不思議な感覚でした」と言葉を続ける。

 山崎監督にとっても“古巣”との戦いは、やはり特別なものだったようだ。「秋葉監督とは抽選会の前の日にも連絡していたんですけど、たまたま同じグループになって、ピッチで戦えたことは自分にとっても嬉しかったですし、凄く勉強になりましたね。こういう形でゆかりのあるチームとやらせてもらえたので、勝ちたかったですけど、リーグ戦なので、また次のゲームに向けて準備したいと思います」。こういう“再会”が実現するのも、この大会の面白いところであることは間違いない。

 今大会のグループステージはキックオフが17時と19時に設定されており、選手たちはあまり経験のないナイトゲームを戦うことになるが、山形ユースのキャプテンを務める半澤は「寝る時間だったり、午前と午後の過ごし方はいつもと違う分、試合以前の段階で、『勝つために時間をどう使っていくか』ということを、まずしっかりやりたいなと。そうすれば自ずと結果も出てくると思うので、まずはそこに気を遣っています」と言及。オフ・ザ・ピッチも含めた意識の高さも求められるのが、『全国の舞台で戦う』ということなのだろう。

「今年のチームは本当に学年問わず凄く仲が良くて、最初はそれで仲の良さゆえに、厳しいことが言えなかったり、要求し合えなかったりという面があったんですけど、プリンスやクラブユースの試合を重ねていくにつれて、仲の良さもありつつ、言い合える関係になってきたので、チームとして団結力も増して、成長しているのかなと思います」(半澤)

 ハードワークと団結力は、チームみんなで築き上げてきた一体感の証。全員で攻めて、全員で守って、全員で勝利を喜び合う。大阪・夏の陣に挑む山形ユースの冒険は、まだまだここからが本番だ。



(取材・文 土屋雅史)

●第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)特集

土屋雅史
Text by 土屋雅史

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