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後半アディショナルタイムの勝ち越し弾で執念の逆転GS突破!大宮U18は磐田U-18との超激闘を制してベスト8進出!

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大宮アルディージャU18は激闘を制して準々決勝進出!

[7.26 クラブユース選手権(U-18)GL第3節 大宮U18 2-1 磐田U-18 ロード宮城総合運動場 陸上競技場]

 今大会に入って3試合目にして、初めて時計の針が70分を越える。追加されたアディショナルタイムは6分。このままでは先に進めない。すべての力を結集させて、次の1点を奪いに行く。左サイドからクロスが入ると、ニアサイドに飛び込んだオレンジの9番が頭で合わせたボールは、ゴールへと向かっていく……

「こんな勝ち方、ないです……。凄いですね。シビれました。でも、ここからはこのグループステージで戦ったチームのためにも、自分たちが準々決勝でしっかりと戦っていかなくちゃいけない責任があるなと思います」(大宮アルディージャU18・丹野友輔監督)

 土壇場での決勝弾で執念のグループステージ突破!第48回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会は26日に延期されていたグループステージ3日目が行われ、ロード宮城総合運動場 陸上競技場でグループAの大宮アルディージャU18(関東1)とジュビロ磐田U-18(東海3)が対峙した一戦は、後半45+3分にFW磯崎麻玖(3年)が挙げたゴールで大宮U18が勝利。勝ち点で磐田U-18を上回り、準々決勝へと駒を進める結果となった。


 度重なる天候不順にたたられた群馬ラウンドの中でも、グループAはとりわけその影響を色濃く受けていた。1日目(22日)の大宮U18対ファジアーノ岡山U-18(中国2)は、前半35分で試合中止が決まり、大会規定で0-0の引き分け扱いに。磐田U-18対アルビレックス新潟U-18(北信越2)は前半終了時点で試合成立となり、1-0で磐田U-18が勝ち点3を手にする。

 2日目(23日)の大宮U18対新潟U-18と磐田U-18対岡山U-18は、ともに前半途中で試合が中断。再開が不可能となったため、やはり0-0の引き分け扱いとなる。この結果、グループの順位は1位・磐田U-18(勝点4、得失点差+1)、2位・大宮U18(勝点2、得失点差0)、2位・岡山U-18(勝点2、得失点差0)、4位・新潟U-18(勝点1、得失点差-1)となり、新潟U-18は無念の敗退。3日目は当初25日の開催予定だったが、またも悪天候のために翌26日へ延期される。

 この日の宮城総合での試合も18時開始が予定されていたものの、強い風雨と雷の影響で19時半のキックオフに。「昨日の時点で終わっている可能性もありましたし、大会を運営されている方のご尽力によって、自分たちも試合ができたことには本当に感謝しています」(丹野監督)。選手たちは溜めに溜めたパワーを発散すべく、モチベーションを携え直して、本来より1時間半遅れでピッチへと向かった。


 ゲームは立ち上がりから磐田U-18が攻勢に打って出る。ピッチコンディションもあり、ドイスボランチのMF森力介(3年)とMF川合徳孟(3年)のシンプルな配球からチャンスを創出。前半7分には川合の左CKから、こぼれを狙ったFW山本将太(3年)のシュートはわずかにクロスバーの上へ。27分にも森、川合と繋いで、FW河合優希(3年)のシュートは大宮U18のGK清水飛来(3年)が丁寧にキャッチ。さらに31分にはGK飯田恵然(3年)のキックにMF石塚蓮歩(2年)が競り勝ち、抜け出した河合のシュートも清水のファインセーブに阻まれるも、得点への意欲を膨らませていく。

 ところが、大宮U18は前半のファーストシュートで成果を引き寄せる。35+2分。MF神田泰斗(1年)が蹴り込んだ右CKの流れから、左サイドでMF菊浪涼生(3年)は完璧なスルーパス。走ったDF茂木祐弥(3年)のグラウンダークロスに、飛び込んできたMF斎藤滉生(2年)のシュートが鮮やかにゴールネットを揺らす。文字通り“1本中の1本”を生かした高い集中力。大宮U18が1点のアドバンテージを握って、最初の35分間は終了した。

MF斎藤滉生(20番)のゴールで大宮U18が先制!


 後半に入ると、輝いたのはサックスブルーの背番号9。後半6分。飯田のキックを起点に石塚が粘って残すと、こぼれを拾った山本はエリア外から躊躇なく左足一閃。右スミに飛んだ軌道は、そのままゴールネットを貫く。1-1。この時点で、もう一方の会場は0-0だったため、このまま行けば磐田U-18のグループステージ突破が決まる。

FW山本将太のファインゴールで磐田U-18が同点に追い付く!


 どうしても1点が欲しい大宮U18の丹野友輔監督は決断する。「もう点を獲りに行くと考えた時に、『外に人がいるより、中にいた方がいいな』と思って、3-4-3でやっていたのを3-5-2に変えました」。前線に磯崎とFW野口蒼流(2年)を並べ、中盤の形も変更。高さのある2トップを生かしつつ、エリア付近までは迫るものの、最後の一手は許してもらえない。

 むしろ後半も手数は磐田U-18が多く繰り出す。15分に右サイドを抜け出した山本のシュートは、懸命に戻った斎藤が身体でブロック。29分にもDF後藤翔吾(3年)の左クロスから、収めたFW持永藍雅(2年)のシュートは清水がキャッチしたものの、2点目の香りは間違いなく磐田U-18が漂わせていた。

 アディショナルタイムは6分。追い込まれた大宮U18のエースは、「なぜかわからないですけど焦りはなくて、『ワンチャンス来るな』ってずっと思っていました」とそのタイミングを虎視眈々と狙っていた。35+3分。キャプテンのDF大西海瑠(3年)との連携で左サイドを崩したDF藤原朝日(2年)がクロスを上げると、自身にやってくるであろう“ワンチャンス”を信じていた磯崎のヘディングがゴールネットへ突き刺さる。2-1。再び大宮U18が一歩前へ出る。

 タイムアップの瞬間。弾かれたかのように、ベンチからオレンジ色の選手たちがピッチへ飛び出してくる。もう1つの会場で行われていた新潟U-18対岡山U-18は、1-1で終了。勝点を5まで伸ばした大宮U18のグループステージ突破が、ここに決定した。



 激闘の試合後。大宮U18を率いる丹野監督は「この大会に来てからチームの雰囲気が良いんです。この状況で普通はたぶんかなりネガティブになると思うんですけど、選手は宿舎でも元気だったので、『これは行ける時の雰囲気があるな』とは感じていたんですけど、本当にそうなったなという感じですね」と話しながら、こう言葉を続ける。

「やっぱりこの中断とか中止とかが重なるにつれて、選手は凄くストレスを抱えている感じがあったので、もうとりあえずネガティブなことは一切言わないようにして、本当にポジティブなことだけ声掛けすることを心掛けて、『僕らが上まで勝ち上がるために、この状況がポジティブに働いていると考えよう』と選手に訴え続けたので、そういう意味では『本当にポジティブに物事を考えると良い方向に進むんだ』という実感もできたと思います」。

 夏の群馬の夕刻は、雷雨に見舞われることが非常に多い。結果として22日から26日までの5日間の中で、17時と18時にキックオフが予定されていた試合のうち、その時間通りに開催されたのは24日のみ。それ以外の日の試合はいずれも中止か延期、またはキックオフ時間の後ろ倒しを余儀なくされていた。

 間違えて欲しくないのは、現場の運営スタッフは常にその時にできるベストの選択を模索し、真摯な対応を続けていたことだ。この日も難しい決断を迫られる中で、試合を行う可能性を探りながら、結果的に2つの会場で70分間の試合を成立させている。

「今日も急遽図南クラブの子どもたちが運営のサポートをしに来てくれていましたし、そういうボランティアでやられている方がいらっしゃったからこそ試合ができたので、そういう人たちへの感謝を選手にも伝えていきたいと思います。だから、一概に運営が全部ダメだったとは思って欲しくないですし、一生懸命やってくださった方たちがいることを、我々もちゃんと理解しないといけないのかなと。まずは選手の安全が第一で、安心して選手が思い切りプレーできる環境を与えてあげることが、一番我々大人がやらなくてはいけないことなので、この経験を来年以降に生かしていっていただけたらなと思います」(丹野監督)。

 デリケートな内容の質問にも真摯に答えてくれた丹野監督に感謝するとともに、会場の選定やキックオフ時間の精査、また想定外のことが起きた際の柔軟な対応も含めて、今回の群馬ラウンドで起きたことを、是非次回以降の大会運営に必ず生かしてもらえることを切に願う。

 グループAを勝ち抜けた大宮U18は、27日にベスト4進出を懸けて川崎フロンターレU-18(関東4)との準々決勝を戦う。今年の3年生はU-15時代もU-12時代も、自分たちの代では全国出場を逃した世代。それだけに今大会への思い入れはとにかく強いという。

「自分たちの代はなかなか全国大会に出られない中で、今回初めてそれを掴んだので、自分もこの大会に懸ける想いは強いですし、このメンバーでやるのも最後なので、次も勝って、ベスト4に行きたいと思いますし、僕たち以外の3チームも試合をできなくて苦しんでいた中で、自分たちはAグループの代表として、ジュビロさん、ファジアーノさん、アルビレックスさんに失礼のないように、自信を持って戦っていきたいなと思います」(大西)

 執念で手繰り寄せたグループステージ突破という成果は、間違いなくチームを一段階先のフェーズに進めてくれた。ここからが本当の勝負どころ。多くの人たちの想いを背負い、今まで以上に一体感が醸成されつつあるオレンジ軍団の進撃は、果たしてどこまで。



(取材・文 土屋雅史)

●第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)特集

土屋雅史
Text by 土屋雅史

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