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[選手権]決まり事は少なく、選手たちが戦い方やセットプレーを自由に考えて表現。専修大松戸が激戦区・千葉で初の決勝進出!

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専修大松戸高が激戦区・千葉で初の決勝進出

[11.9 選手権千葉県予選準決勝 専修大松戸高 3-1 中央学院高 柏の葉]

 専大松戸が激戦区・千葉で初の決勝進出! 9日、第104回全国高校サッカー選手権千葉県予選準決勝が行われ、専修大松戸高が3-1で中央学院高に勝利。専大松戸は11月16日の決勝で流通経済大柏高と戦う。

 1967年創部で近年、県大会で上位に食い込んでいる専大松戸は今年のインターハイ予選準々決勝で名門・市立船橋高を撃破し、4強入り。この選手権予選でも4年ぶりの準決勝進出を果たした。初の決勝進出を懸けた一戦の先発はGK山下雄悟(2年)、DF柿沼利空(2年)、廣瀬響(3年)、角谷空楽(3年)、大江真人(2年)、MF大原拓海(3年)、鬼頭航大主将(3年)、吉岡敬悟(3年)、FW岡田琉音(2年)、川岸悠太(3年)、佐藤凌哉(3年)の11人で構成された。

 一方、“千葉の技巧派集団”中央学院は今大会3回戦でインターハイ予選準優勝校の日体大柏高を3-1で撃破。3年ぶりの準決勝はGK原田碧(3年)、DF谷口一心(3年)、間野翔太(3年)、中田大翔(3年)、谷川深平(3年)、井戸健介(3年)、MF小澤日和太(3年)、森川莉玖主将(3年)、森脇快(1年)、FW青山咲太(3年)、上野瑞己(2年)の11人でスタートした。

雨中で開催された準決勝

 立ち上がりにスコアが動いた。3分、中央学院は左SB柿沼がカットインから中の井戸へパス。井戸は縦に入れたボールのこぼれを自ら拾うと、右足シュートをゴール中央に沈めた。だが、専大松戸は直後の5分、岡田の左CKのシーンでゴールエリアに密集を作成。そして、CKのこぼれを佐藤が右足で押し込み、同点に追いつく。

 両校は今年4度目の対戦。専大松戸は関東大会予選準々決勝で勝利したが、千葉県1部リーグは2連敗していた。その専大松戸はボールを保持しながら創造性を表現する印象のチームだが、この日は個々のキープ力の高い中央学院にボールをある程度保持されることを想定。選手たちは“相手にボールを持たせながら主導権を握る”戦い方を選択し、その上で縦に速い攻撃やサイドからのクロス、セットプレーでゴールを目指した。

 森川は「自分たちで何回も試行錯誤しながら、ゲーム展開を考えながらやった中でのサッカーができたんじゃないかなって思います。中央学院さんのサッカーを受けた上で、自分たちが長いボールであったりとか、しっかり中央学院さんの嫌がるようなサッカーをするっていうところが今日は良かったかなと思います」と頷く。

中央学院のCB中田大翔(左)とこの試合2得点の専大松戸FW佐藤凌哉が競り合う

 中央学院は相手の速攻をCB中田らが阻止し、後方からボールを繋いでいく。そして、右SH小澤が高速ドリブル、FW上野とのワンツーでゴールに迫ったほか、10番の左SH青山がドリブルで幾度も前進。磨いてきたテクニックやアイディアで会場を沸かせるシーンがあった一方、全体的に距離感が悪く、ロングボールの狙いも噛み合わない。

 逆に専大松戸は奪ったボールを素早く前線に入れ、川岸や鬼頭、佐藤の推進力などを活用。右クロスの折り返しから大原が決定機を迎えるシーンやCB廣瀬がインターセプトから攻め上がるシーンもあった。そして、吉岡、岡田のプレースキックや右SB柿沼のロングスローを交えた攻撃で2点目を狙う。

専大松戸はMF鬼頭航大主将らアタッカー陣の個性を活かした攻撃

専大松戸はMF大原拓海らの高さを活かしたセットプレーが強みに

 また、守備では中盤の底に構える大原や廣瀬と高谷の両CBを中心に強度高く守り、隙を見せない。専大松戸は自由度が高く、規則の少ないチーム。その中でボールを持った相手への対応は一つ徹底した部分だった。

 野村太祐監督は「(相手は)やっぱりボール持って突破してくるチームなので、抜かれたら追いかけていって、ゴール方向に戻っていって、みんなで係わりながら守備をやっていくっていうところは徹底したところですね」と説明。中央学院の足裏を活用したドリブル、コンビネーションに最後までついて行くことで、シュートを打たせなかった。

中央学院は先制点を決めたDF井戸健介らがドリブルするが、専大松戸はその対応を徹底する

 前半、シュート2本に終わった中央学院は後半開始から谷川に代えて切り札のMF安孫子司(3年)を投入。演田寛之監督は「ウチらしくやるには、もうちょっと後ろからちゃんと繋いで前進して行ったらっていうところで後半に入った。(安孫子投入で)後半の最初15分ぐらいで行って、仕留めに行きたかった」と早めに勝負に出た理由を明かす。

 6分、中央学院は井戸が中央からドリブル突破。そして、ペナルティアークでサポートした我孫子が右足を振り抜く。決定機だったが、専大松戸GK山下がファインセーブ。中央学院はさらに小澤、青山がシュートへ持ち込む。安孫子投入からリズム良くボールが動き、攻め切る回数も増えたが、ゴールをこじ開けることができない。

中央学院の10番FW青山咲太は左サイドからの仕掛け、シュートに持ち込んだ

 それに対して専大松戸は13分、GK山下を起点としたカウンター攻撃から佐藤が左サイドでFKを獲得。そして、このFKで得た右CKを得点に結びつける。15分、CKキッカーの岡田がグラウンダーでマイナスのボールを入れると、左SB大江がスルー。その後方の佐藤がスルーパスを通し、岡田がゴールライン際を抜け出す。ラストパスはGKに阻まれたが、廣瀬、柿沼が連続シュート。最後は岡田がこぼれ球を左足でねじ込み、2-1とした。

 このセットプレーはニューカッスル(イングランド)のセットプレーを参考に選手たちが準備していたもの。野村監督は「あまりああいうのは練習していなかったけど、選手がやっぱり考えて、アイディア出してくれたんで、凄く良かったんじゃないかなと」と選手たちを讃える。

後半15分、専大松戸はデザインされた右CKからFW岡田琉音が左足で勝ち越しゴール

ニューカッスルを参考に取り入れたセットプレーをゴールに結びつけた

 その野村監督は「サッカーっていうのはやっぱりゴール目指すっていうのがあるじゃないですか。ゴール目指さなかったらサッカーじゃない。だから、そういうのが一番で、あとみんなでゴールを割られないように守るとか、身体を張るとか、そういうのが前提であった上で、(専大松戸は)あとは基本的に自由というか。細かくきっちりタスクを与えて、仕事を与えて、やるべきことを与えてっていうチームもあると思うんですけど、ウチは1から10までそうじゃないんで、そこは“専松らしさ”かなという風に思います」。細かなタスクが少なく、"余白”を多く持つ選手たちが、自分たちで戦い方やセットプレーを考えて表現。その“専松らしさ”が激戦区・千葉準決勝で相手との差を生み出した。

 中央学院も反撃。19分には青山がパス交換から右足を振り抜き、22分には小澤がドリブルでPAへ切れ込む。中央学院は23分に上野とMF岡田真宙(2年)を交代し、専大松戸も大原とMF原維吹(2年)を入れ替えた。27分、中央学院は我孫子のスルーパスで森脇が右中間を抜け出し、右足シュート。中央学院は間野と28分のMF菅原響(3年)交代後もほぼ2バックで森川らがボールを繋ぎ、攻め続ける。

中央学院は高速ドリブラーのMF小澤日和太がPAへ切れ込む

中央学院はMF森川莉玖主将が攻撃を組み立てながら相手ゴールに迫る

 だが、シュートを専大松戸CB廣瀬に1度2度とブロックされたほか、失ったボールを自陣ハイサイドまで持ち込まれるなど押し返されてしまう。試合終盤、専大松戸は岡田をMF岩橋侑志(2年)と交代し、中央学院も森脇とMF秀平翼(3年)を入れ替える。

専大松戸はCB廣瀬響らDF陣が相手の攻撃を食い止めた

 そして40+1分、専大松戸は大江が自陣のセカンドボールをダイレクトで縦へ。これをコントロールした佐藤が相手DFのチェックを振り切って前進し、右足を振り抜く。ボールはDFに当たってわずかにコースが変わり、右隅のネットへ。勝敗の行方を決定づけるゴールとなった。3-1で試合終了。専大松戸が初の決勝進出を決め、鬼頭は「ほんとにずっと目指してきたところなんで、もう素直に嬉しいです」と喜んだ。

後半40+1分、専大松戸FW佐藤凌哉が速攻から決めきり、3-1

 専大松戸は「サッカーを楽しむこと」を最も大事にしている。選手が自ら状況を考え、自ら判断し、自らプレーを選択。決まり事が少ないことについて、鬼頭は入学当初、不安があったことを明かす。

「確かに自分も高校入った時は逆に決められてなくて、ほんとに自分のやってることが合っているのかとか不安になるところがあったんですけど、(選手それぞれが考え、)自分たち11人の個性っていうか、色を出した方が、楽しいサッカーっていうのをやっぱり自分たちは目指してるんで、そういうところに近づきながら自分たちのサッカーを結果としてできてるんじゃないかなって思います」。

 そのチームが決勝進出。野村監督は「(選手たちが)この大会通じて、成長してくれたところが大きいんじゃないですかね」と語り、決勝については「もちろん勝つために最善を尽くしますけど、1人1人がこうやって成長していっていることが嬉しいし、また次も選手は良いプレー出してくれると思うんで、そこをちょっと楽しみにしています」。“専松らしく”、名門・流経大柏との決勝に挑む。

 勝てば、初の全国大会出場。鬼頭は「ほんとに全国っていうのも1個大きな夢としては持っているんですけど、やっぱりその奥のところを見過ぎると、1個手前の流経戦っていう1個大事なところを見落としがちになっちゃうと思うんで。1個その奥のところを見るんじゃなくて、今週の1日ずつを大事に意識して練習とかに取り組んでいこうかなと思っています。(個人としては)部員全員含めたら約150人いるんですけど、その150人の色がしっかり全面に出せるように、ピッチの中で全面に出せるように、キャプテンとしてそういう雰囲気作りをしていきたいです」。流経大柏はインターハイ3位の強敵だが、まずは決勝で自分たちの色を出し切ることに集中する。

専大松戸が初の決勝進出を決めた

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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