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[選手権]那覇西、「王者の重圧」を乗り越えて2連覇達成!! 新鋭・鹿島朝日を延長で振り切るも、勝者に宿ったのは歓喜より安堵

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延長戦を制した那覇西高が19回目の全国へ!!

[11.8 選手権沖縄県予選決勝 鹿島朝日高 1-3 那覇西高 沖縄県総合運動公園陸上競技場]

 第104回全国高校サッカー選手権沖縄県大会は8日、沖縄県総合運動公園陸上競技場で決勝戦が行われ、那覇西高が延長戦の末、3-1でFC琉球高等学院・鹿島朝日高を下して2年連続19度目の優勝を飾った。

 試合後、主将・MF具志堅洸(3年)の口から漏れたのは「ほっとしてるのがやっぱ一番」という一言。歓喜より「安堵」が勝った―ー。それは、王者が追い込まれ、揺さぶられ、それでも勝ち切った激戦の証だった。

 立ち上がり、試合の主導権を握ったのは鹿島朝日だった。落ち着いたボール回しで「王者」に対しても物怖じしない姿勢を見せる。前半9分、左CKでDF大瀧幹(2年)がショートコーナーを選択。ボックス内でMF比嘉翔瑛(3年)がスルーすると、MF喜久山レオ(3年)のワンタッチパスを受けた大瀧が、進入した左ポケットの角度のない位置から右ネットへ鋭く突き刺した。

「決勝戦のために何かひとつ武器を持っておこう」――。キャプテンMF眞境名琉生(3年)と語ったように1週間かけて準備したトリックプレーが、この瞬間、実を結んだ。創部わずか4年目の挑戦者が、大会無失点の王者から先制点を奪った瞬間、会場はどよめいた。

「苦しかったな。どうなるかわからなかった」と那覇西・運天直樹監督は振り返る。「相手の対策がばっちりはまっていた」と認めざるを得なかった。本来の「運びながら揺さぶる」ポゼッションはなかなか機能せず、焦りから前に急ぎすぎる展開が続いた。

 しかし前半17分、救世主が現れる。左CKから具志堅がインスイングで放ったボールは、170cmのGK川端翔海(3年)の頭上を越え、ゴール右隅へ吸い込まれた。「キーパーの身長を考えて直接狙えると思っていた」(具志堅)。計算された彼の一撃で那覇西は落ち着きを取り戻し、1-1として折り返した。

 後半も拮抗は続いた。鹿島朝日は1年生・FW上原海琉を投入してスピードで勝負。対して、コンディション不良から復帰のFW池根翔太(3年)を投入して攻撃のテンポを上げた那覇西は終盤、ハーフコートゲームのように押し込み続ける。しかし、眞境名を中心とした鹿島朝日の粘り強い守備に阻まれ続けた。「決勝なんでみんな決めたい気持ちが出て、ちょっと攻め急いでた」と池根。80分が終了し、延長戦へ。「足がつりかけていた」選手もいた。

 膠着を破ったのは、やはり王者だった。延長後半3分、具志堅が狙っていた「キーパーとDFの間」へ絶妙なアーリークロス。飛び込んだ途中出場のFW上原文大郎(2年)が、「右足で当てることだけを意識した」ワンタッチシュートで勝ち越しに成功する。

 そして延長後半アディショナルタイム1分、試合開始から100分が経過したその時、那覇西の3年生ラインが連動した。DF宮里豪(3年)がルーズボールを拾い、MF比嘉洸太朗(3年)がラストパス。左サイドを全力で駆け上がった池根が右足で決め、勝負を決めた。

 勝利を手にしながらも、運天監督の表情は晴れない。「楽な展開はなかった。本物の自信がまだない」。焦り、緊張、相手の戦術――。ゆえにそのすべてを乗り越えての勝利だったからこそ、チーム全体を包んだのは安堵感だった。「諦めずにやれば追い込まれない」と具志堅は言葉を選びながらも、「ほっとした」と本音を漏らした。この試合は、「勝ててよかった」という重みのある一戦だった。

 敗れた鹿島朝日は、創部4年目で初の決勝進出。組織的な守備と練り上げられた戦術で王者を最後まで苦しめた。「気持ちの面で那覇西に負けて飲み込まれていった」とキャプテン眞境名は悔しさを滲ませたが、その挑戦は確実に沖縄サッカー界に新風を吹き込んだ。J3・FC琉球が設立したこの新しい高校は、「教育×サッカー」の融合を掲げて急成長中。清水エスパルスやFC岐阜などJリーグ5チームでプレーした岡根直哉監督は「挑戦者として堂々と戦えた。プレッシャーがあるほうが楽しい。ここからが本当のスタート」と前を向いた。

「全国を見据えているので、優勝は通過点にしたい」と運天監督は強調する。昨年の全国大会では龍谷富山とのPK戦で初戦敗退。再び得た挑戦権に、「沖縄代表として全国で勝つ」覚悟を固めている。試合後の選手たちは、喜びよりも静かな決意を湛えていた。安堵の裏にあるのは、まだ終わりではないという自覚。彼らが次に求めるのは勝ってほっとするのではなく、勝って誇れる戦いだ。

(取材・文 仲本兼進)

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