初招集10名超のU-16日本代表候補が大阪合宿最終日に阪南大高、C大阪U-18と練習試合。経験を変化のきっかけに
U-16日本代表候補が今月10日から13日まで大阪府内でトレーニングキャンプを行った。最終日の13日には、阪南大高(大阪)、セレッソ大阪U-18とそれぞれ練習試合(各45分ハーフ)を実施。阪南大高戦は1-5で敗れ、C大阪U-18戦は2-2で引き分けた。
今回のU-16日本代表候補は、10月のU-17アジアカップ予選メンバーを除く選手たちで、10人を超える初招集組などによって構成。所属チームで来年は中心選手になっていきそうタレントだが、廣山望監督は「その前に、この3か月、4か月で、ガラッと意識を変えてやった方が絶対良さそうなグループ」とこの早い段階での意識変化を期待する。
それによって成長曲線を変え、来年開催されるU17アジアカップやU-17ワールドカップのメンバー入りや、その後の代表チームで活躍して欲しいという思いもある。U17アジアカップ予選はカタールを5-0で下すなど3連勝で突破し、メンバーは貴重な経験もしているが、その全選手が1年後に国際舞台に立っている保証はない。指揮官も「ワールドカップになったら大体3人、4人はU-17から入ってきたやつがいる」とミーティングで選手たちに説明。この日、各選手は高校3年生(U-18)中心の相手に自分たちの強みや代表チームで求められた基準を表現しようとした。
阪南大高戦はGK仲七璃(帝京長岡高)、右SB薄井翼(浦和ユース)、CB田中義峯(浦和ユース)、ゲーム主将のCB大石蓮斗(札幌大谷高)、左SB渡部友翔(大津高)、中盤はダブルボランチを杉山琥二郎(清水ユース)と樺山文代志(興國高)が組み、右SHが姫野誠(千葉U-18)、左SHが野村颯馬(鹿児島城西高)、そして、前田陽輝(福岡U-18)、吉崎太珠(日章学園高)の2トップでスタート。前半30分に唯一中学3年生のFW高橋成海(広島ユース)を投入し、その後も15分ごとにメンバー1人とポジションを代えて後半15分からはGK後藤陽翔(甲府U-18)がゴールを守った。
対する阪南大高は、9日に選手権大阪府予選で優勝したばかり。MF福本一太主将(3年)やCB弥榮琉(3年)、成長株のMF硲冬真(3年)ら主力組とサブ組を組み合わせ、また前後半で大きく入れ替えたメンバー構成で90分間を戦った。
U-16代表候補は渡部のクロスなどでゴールを目指すと前半10分、ゴール前でDFの前に身体を入れた吉崎が連続でシュートへ持ち込む。だが、阪南大高DFがいずれもブロック。13分にも薄井のサイドチェンジから野村が中へ切れ込んで右足を振り抜くも、阪南大高DFが再びブロックする。
相手のゴール前での守備意識の高さに先制機を阻まれると、逆に15分、U-16代表候補はビルドアップで連係ミス。阪南大高はインターセプトしたMF伊藤成康(2年)がそのまま右足シュートをゴール右隅へ突き刺した。
阪南大高はさらに17分、左へ展開し、伊藤がカットインから右足シュート。前方のFW弓場潤哉(3年)に当たってコースが変わり、ボールはそのままゴールラインを越えた。
2点を追う展開となったU-16代表候補だが、この後、主導権を握る。GK仲やCB大石からボールを動かし、長短の縦パスを差し込む田中の縦パスで前田が抜け出してフィニッシュへ持ち込んだ。また、この日、一際エネルギーのある動きを見せていた薄井や姫野が際の攻防でボールを失わず前進。杉山のスルーパスなど連動した攻撃でポケットを突くシーンもあった。
そして34分、ボール奪取力に秀でた樺山が左サイドでボールを奪うと、交代出場したばかりの高橋成が杉山とのワンツーから右足シュートを決め、1点差とした。その後もサイズ、スピード、テクニックも兼ね備えた大器・高橋成が攻撃の起点に。後半も11分に姫野の右FKを薄井が合わせるなど同点のチャンスを作り出す。
だが、ボールを奪い切れずにサイドを変えられるなど阪南大高に押し返されると、16分に再びビルドアップでミス。阪南大高MF伊藤にインターセプトされ、右足で決められてしまう。阪南大高はさらに18分にも敵陣で伊藤がインターセプト。パスを受けた硲が右足で決め、4-1とした。
狙いとする戦いにチャレンジしたU-16代表候補だったが、ミスをゴールに結びつけられてしまった。圧倒的なスプリント力で幾度も右サイドを駆け上がる薄井を中心に反撃。クロスへ持ち込む回数を増やすなど内容では良く渡り合っていたものの、38分にも中央から硲に抜け出されて1-5で敗れた。
阪南大高戦直後に実施されたC大阪U-18戦は、GK後藤を除いて全選手を入れ替え。先発はGKが後藤でDFは右から萩原慶(桐光学園高)、メンディー・サイモン友(流通経済大柏高)、藤川虎三(福岡U-18)、高橋温郎(浦和ユース)の4バック。ゲーム主将の大貫琉偉(鹿島ユース)と中村龍(湘南U-18)がダブルボランチを組み、右SH岩崎亮佑(横浜FCユース)、左SH原湊士(広島ユース)、前線に花城瑛汰(神村学園高)と安西来起(岡山U-18)が並んだ。30分にMF松野泰知(FC東京U-18)とGK新堀恵太(FC東京U-18)を投入。その後、15分ごとにフィールドプレーヤー1人を入れ替え、松野がCB、メンディーが右SBというように複数のポジションを務めた選手もいた。
C大阪U-18は左SB西川宙希(3年)やMF藤井龍也(3年)ら年代別日本代表候補経験者も先発。U-16代表候補はGK後藤のファインセーブや存在感のあった藤川のカバーリング、メンディーの抜群の高さを活かした守りなど無失点で試合を進めた。だが、前半26分、MF伏見晄永(2年)の折り返しをFW塩尻哲平(1年)に押し込まれ、先制点を奪われてしまう。
互いにボールを持つと、ポゼッションからサイドを活用。U-16日本代表候補は花城のスルーパスや藤川の縦パスから安西がDF裏を突き、また高橋温が左サイドからゴールへ迫るシーンやCKの流れから中村が右足を振るシーンがあった。だが、相手DFの好守に阻まれたほか、バランスを意識しすぎた面もあったかボールを運ぶ部分で苦戦。得点することができない。
それでも、交代出場のGK新堀やDF陣が身体を張って相手の決定機を阻止し、後半5分に打たれたC大阪U-18MFエレハク有夢路(3年)の左足シュートもポストに救われた。U-16代表候補は後半10分、右SH原がドリブルでDFを剥がして前進。決定的なラストパスが安西に通る。決め切ることはできなかったが、この後もサイドからの攻撃で同点のチャンスを創出。C大阪U-18にゴールへ迫られる回数は後半、さらに増加したが、中盤でともに戦う姿勢を見せる大貫と中村、相手の決定機でタックルを決めた高橋温を中心にC大阪U-18に食い下がった。
そして、37分、左サイドの原から安西へパスが通ると、安西が鋭いターンでマークを外して左足で同点ゴール。勢いに乗ったU-16代表候補はカウンターからチャンスを連発する。そして、萩原の右足シュートがゴールを脅かし、大貫の左足シュートが右ポストを叩く。
だが43分、ショートパスを繋がれると、MF中瀬望亜(1年)に左足シュートをねじ込まれて1-2。それでも、U-16代表候補は諦めない。45分、CB松野が相手CB裏へ絶妙な縦パス。これに反応した岩崎がDFと競りながら左足を振り抜く。渾身の一撃がゴールに突き刺さり、2-2。U-16代表候補がラストチャンスを活かし、引き分けに持ち込んだ。
2試合ともに良い流れの時間帯があったことは確か。その一方、ミスなど流れの悪い時間帯のあった阪南大高戦、相手に主導権を握られる時間帯が増えてしまっていたC大阪U-18戦について、廣山監督は「いいきっかけにして、その状態でできなかった時間をどれだけ悔しがって無駄にしないようにするかとか、大事だと思います」と語る。
選手たちは「決めていれば勝てたので悔しい」「(自分の特長を出す)回数を増やしていきたい」と出た課題を改善する考えを口にしていた。廣山監督が「嬉しいのはやっぱ意識を含めて変化してきてくれてるから」というように、過去の代表活動を経験し、基準を変えて戻ってきていた選手も複数。U-16代表候補の選手たちは今回のキャンプをきっかけにまた変わり、所属チームで飛躍を遂げて代表チームに戻って来る。
(取材・文 吉田太郎)
今回のU-16日本代表候補は、10月のU-17アジアカップ予選メンバーを除く選手たちで、10人を超える初招集組などによって構成。所属チームで来年は中心選手になっていきそうタレントだが、廣山望監督は「その前に、この3か月、4か月で、ガラッと意識を変えてやった方が絶対良さそうなグループ」とこの早い段階での意識変化を期待する。
それによって成長曲線を変え、来年開催されるU17アジアカップやU-17ワールドカップのメンバー入りや、その後の代表チームで活躍して欲しいという思いもある。U17アジアカップ予選はカタールを5-0で下すなど3連勝で突破し、メンバーは貴重な経験もしているが、その全選手が1年後に国際舞台に立っている保証はない。指揮官も「ワールドカップになったら大体3人、4人はU-17から入ってきたやつがいる」とミーティングで選手たちに説明。この日、各選手は高校3年生(U-18)中心の相手に自分たちの強みや代表チームで求められた基準を表現しようとした。
阪南大高戦はGK仲七璃(帝京長岡高)、右SB薄井翼(浦和ユース)、CB田中義峯(浦和ユース)、ゲーム主将のCB大石蓮斗(札幌大谷高)、左SB渡部友翔(大津高)、中盤はダブルボランチを杉山琥二郎(清水ユース)と樺山文代志(興國高)が組み、右SHが姫野誠(千葉U-18)、左SHが野村颯馬(鹿児島城西高)、そして、前田陽輝(福岡U-18)、吉崎太珠(日章学園高)の2トップでスタート。前半30分に唯一中学3年生のFW高橋成海(広島ユース)を投入し、その後も15分ごとにメンバー1人とポジションを代えて後半15分からはGK後藤陽翔(甲府U-18)がゴールを守った。
阪南大高戦の先発メンバー
対する阪南大高は、9日に選手権大阪府予選で優勝したばかり。MF福本一太主将(3年)やCB弥榮琉(3年)、成長株のMF硲冬真(3年)ら主力組とサブ組を組み合わせ、また前後半で大きく入れ替えたメンバー構成で90分間を戦った。
U-16代表候補は渡部のクロスなどでゴールを目指すと前半10分、ゴール前でDFの前に身体を入れた吉崎が連続でシュートへ持ち込む。だが、阪南大高DFがいずれもブロック。13分にも薄井のサイドチェンジから野村が中へ切れ込んで右足を振り抜くも、阪南大高DFが再びブロックする。
相手のゴール前での守備意識の高さに先制機を阻まれると、逆に15分、U-16代表候補はビルドアップで連係ミス。阪南大高はインターセプトしたMF伊藤成康(2年)がそのまま右足シュートをゴール右隅へ突き刺した。
前半15分、阪南大高MF伊藤成康が先制ゴール
阪南大高はさらに17分、左へ展開し、伊藤がカットインから右足シュート。前方のFW弓場潤哉(3年)に当たってコースが変わり、ボールはそのままゴールラインを越えた。
2点を追う展開となったU-16代表候補だが、この後、主導権を握る。GK仲やCB大石からボールを動かし、長短の縦パスを差し込む田中の縦パスで前田が抜け出してフィニッシュへ持ち込んだ。また、この日、一際エネルギーのある動きを見せていた薄井や姫野が際の攻防でボールを失わず前進。杉山のスルーパスなど連動した攻撃でポケットを突くシーンもあった。
MF杉山琥二郎(清水ユース)は追撃ゴールをアシスト
そして34分、ボール奪取力に秀でた樺山が左サイドでボールを奪うと、交代出場したばかりの高橋成が杉山とのワンツーから右足シュートを決め、1点差とした。その後もサイズ、スピード、テクニックも兼ね備えた大器・高橋成が攻撃の起点に。後半も11分に姫野の右FKを薄井が合わせるなど同点のチャンスを作り出す。
前半34分、中学生FW高橋成海(広島ユース)が右足シュートを決めて1点差
だが、ボールを奪い切れずにサイドを変えられるなど阪南大高に押し返されると、16分に再びビルドアップでミス。阪南大高MF伊藤にインターセプトされ、右足で決められてしまう。阪南大高はさらに18分にも敵陣で伊藤がインターセプト。パスを受けた硲が右足で決め、4-1とした。
MF樺山文代志(興國高)が身体を張った守備
阪南大高はFW硲冬真が2得点をマークするなど後半にも3点を加点
狙いとする戦いにチャレンジしたU-16代表候補だったが、ミスをゴールに結びつけられてしまった。圧倒的なスプリント力で幾度も右サイドを駆け上がる薄井を中心に反撃。クロスへ持ち込む回数を増やすなど内容では良く渡り合っていたものの、38分にも中央から硲に抜け出されて1-5で敗れた。
阪南大高戦直後に実施されたC大阪U-18戦は、GK後藤を除いて全選手を入れ替え。先発はGKが後藤でDFは右から萩原慶(桐光学園高)、メンディー・サイモン友(流通経済大柏高)、藤川虎三(福岡U-18)、高橋温郎(浦和ユース)の4バック。ゲーム主将の大貫琉偉(鹿島ユース)と中村龍(湘南U-18)がダブルボランチを組み、右SH岩崎亮佑(横浜FCユース)、左SH原湊士(広島ユース)、前線に花城瑛汰(神村学園高)と安西来起(岡山U-18)が並んだ。30分にMF松野泰知(FC東京U-18)とGK新堀恵太(FC東京U-18)を投入。その後、15分ごとにフィールドプレーヤー1人を入れ替え、松野がCB、メンディーが右SBというように複数のポジションを務めた選手もいた。
C大阪U-18は左SB西川宙希(3年)やMF藤井龍也(3年)ら年代別日本代表候補経験者も先発。U-16代表候補はGK後藤のファインセーブや存在感のあった藤川のカバーリング、メンディーの抜群の高さを活かした守りなど無失点で試合を進めた。だが、前半26分、MF伏見晄永(2年)の折り返しをFW塩尻哲平(1年)に押し込まれ、先制点を奪われてしまう。
C大阪U-18戦、CBメンディー・サイモン友(流通経済大柏高)が抜群の高さを発揮
C大阪U-18は前半26分、FW塩尻哲平のゴールで先制
互いにボールを持つと、ポゼッションからサイドを活用。U-16日本代表候補は花城のスルーパスや藤川の縦パスから安西がDF裏を突き、また高橋温が左サイドからゴールへ迫るシーンやCKの流れから中村が右足を振るシーンがあった。だが、相手DFの好守に阻まれたほか、バランスを意識しすぎた面もあったかボールを運ぶ部分で苦戦。得点することができない。
それでも、交代出場のGK新堀やDF陣が身体を張って相手の決定機を阻止し、後半5分に打たれたC大阪U-18MFエレハク有夢路(3年)の左足シュートもポストに救われた。U-16代表候補は後半10分、右SH原がドリブルでDFを剥がして前進。決定的なラストパスが安西に通る。決め切ることはできなかったが、この後もサイドからの攻撃で同点のチャンスを創出。C大阪U-18にゴールへ迫られる回数は後半、さらに増加したが、中盤でともに戦う姿勢を見せる大貫と中村、相手の決定機でタックルを決めた高橋温を中心にC大阪U-18に食い下がった。
CB藤川虎三(福岡U-18)は最終ラインの中央で存在感のある動き
そして、37分、左サイドの原から安西へパスが通ると、安西が鋭いターンでマークを外して左足で同点ゴール。勢いに乗ったU-16代表候補はカウンターからチャンスを連発する。そして、萩原の右足シュートがゴールを脅かし、大貫の左足シュートが右ポストを叩く。
だが43分、ショートパスを繋がれると、MF中瀬望亜(1年)に左足シュートをねじ込まれて1-2。それでも、U-16代表候補は諦めない。45分、CB松野が相手CB裏へ絶妙な縦パス。これに反応した岩崎がDFと競りながら左足を振り抜く。渾身の一撃がゴールに突き刺さり、2-2。U-16代表候補がラストチャンスを活かし、引き分けに持ち込んだ。
後半43分、C大阪U-18MF中瀬望亜が勝ち越しゴール
後半45分、U-16日本代表候補MF岩崎亮佑(横浜FCユース)が左足で劇的な同点ゴールを決めた
2試合ともに良い流れの時間帯があったことは確か。その一方、ミスなど流れの悪い時間帯のあった阪南大高戦、相手に主導権を握られる時間帯が増えてしまっていたC大阪U-18戦について、廣山監督は「いいきっかけにして、その状態でできなかった時間をどれだけ悔しがって無駄にしないようにするかとか、大事だと思います」と語る。
選手たちは「決めていれば勝てたので悔しい」「(自分の特長を出す)回数を増やしていきたい」と出た課題を改善する考えを口にしていた。廣山監督が「嬉しいのはやっぱ意識を含めて変化してきてくれてるから」というように、過去の代表活動を経験し、基準を変えて戻ってきていた選手も複数。U-16代表候補の選手たちは今回のキャンプをきっかけにまた変わり、所属チームで飛躍を遂げて代表チームに戻って来る。
(取材・文 吉田太郎)