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開幕スタメンから暗転、加藤玄「ピッチに立てばやれる自信がある」名古屋に勢いをもたらす選手になれないか

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[3.15 J1第6節 東京V2-1名古屋 味スタ]

 ピッチを見つめながら唇を噛んだ。「チームがこういう状況で、自分が必要とされない難しさ、いろんな感情があるけど、これも含めてフットボーラー。でも自信を失ったわけじゃないから、絶対に俺が必要だって自分に発破をかけ続けてやっていくしかないのかなと思います」。MF加藤玄は3試合連続出場機会なしで戦いを終えた。

 大学サッカーを1年早く切り上げての挑戦になっている。加藤の名古屋グランパス入団が発表になったのは、昨年12月中旬のこと。同月下旬に開催された大学選手権(インカレ)を戦った後、翌年1月よりプロ生活をスタートさせるという急な発表だった。

 ただ予想以上に順調な船出となった。中学、高校と過ごした古巣に合流で、赤鯱軍団にもすぐに溶け込んだ。今季の副キャプテンにも任命されるほど、チーム内の信頼を深めていった。「キャンプから開幕戦まではポジティブに充実感を感じながらできていた。そこまでは全くネガティブではなかった」。当然のように、開幕スタメンも掴んだ。

 しかしその開幕戦が大きな分岐点となった。2月15日に敵地で行った川崎フロンターレ戦に先発した加藤だが、後半12分の一番手で交代。もっとも加藤が退いたあとに喫した4失点でチームは敗れることになるが、プレシーズンの充実を感じていただけに、「自分の力で違った結果にできていれば」と大きな反省が残った。そして加藤はこの試合を最後に、ベンチスタートに回ることになった。

「(開幕戦は)何回も見返しちゃうくらいにどうすればよかったんだって、すごくいろんな思いがある。でもスタメンで立つ権利を得たことについては自分を認めてあげないといけない。少なくともあそこに立ったことについては、そこまでの取り組みが評価されたこと。憤りとか、モヤモヤした気持ちがずっとあるけど、あそこに1回立ったんだという自分への評価は必要なのかなと思っています」

 2節目以降で加藤に与えられた時間は、第3節・FC東京戦の15分のみ。まずはいかにしてピッチに立つか、信頼を取り戻せるかを考える。「本当にピッチに立たないと話にならない。でも立てばやれる自信があるし、本当に任せてほしいし、俺だったら変えられると思っている。何とかしてピッチに立って、その権利を得たい」。長谷川健太監督が求めた「勢いを持った選手」に該当するという自信がある。

 そして快く送り出してくれた筑波大学への感謝の気持ちを大切にしなければいけないと深く感じている。同学年は加藤のほかに、DF安藤寿岐(鳥栖)、DF諏訪間幸成(横浜FM)の3人が4年生シーズンを前に蹴球部を離れることになった。「彼ら2人がこの決断をすることも分かっていての決断だったので、それに対する筑波への申し訳なさはある。だから簡単には表現できない」。自らの決断に責任を持たなければいけない。言葉を選びながら話す姿に、加藤の強い覚悟が伝わる。

 すべては結果で示すしかない。「筑波のことを思うと苦しいし、こうやって難しい時間だからこそ、筑波は今どうなんだろうなと考えてしまう。今の俺の状況をどう思っているのかすごく気になるし、いろいろ連絡も取っているので期待も感じるけど、その分、何してんだよと思っているやつもいると思う。そこはもう一回自分に突きつけたいし、そういったプレッシャーはエネルギーになるはずだから」。まずは開幕6戦未勝利のチームを救うことで、自らの存在価値をみせる。

(取材・文 児玉幸洋)

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Text by 児玉幸洋

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