仲間の思いも背負って水戸を初昇格に導いたDF大森渚生、小中高在籍した東京V戦でJ1デビュー「同じように野心を持って這い上がっていくだけ」
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[2.8 J1百年構想EAST第1節 東京V 3-1 水戸 味スタ]
昨季のJ2リーグベストイレブンを経て迎えた記念すべきJ1デビュー戦は、手探りの90分間だった。水戸ホーリーホックDF大森渚生は8日、J1百年構想リーグ開幕節の東京ヴェルディ戦に左SBでフル出場。かつて身を包んだ緑のユニフォームを相手に持ち味を発揮するには至らなかったが、大きな第一歩を踏みしめた。
大卒1年目の2022年から栃木SCと水戸で毎年J2リーグ戦30試合以上の出場を続け、プロ5年目でようやく辿り着いたJ1の舞台。記念すべき初陣でもJ1の相手に臆することなく、昨季J2リーグ制覇の自信を持って試合に入ったつもりだった。しかし、立ち上がりからチーム全体のバランスが後ろに重く、思い通りに前進できない時間が続いた。
「自分も含めてですけど、もっとできるのになと。ポジショニングもちょっとずつズレを感じていたし、(CBの)板倉(健太)との距離がすごく気になって前に出られなかったし、ボランチがもう少し(4バック間に)入ってくれないかなとか、ちょっとずつ違和感を全体が感じていた。何が足りないかは見直さないといけないけど、感覚としてはもっとやればできるという感覚を持ちながらやっていましたね」(大森)
その迷いは結果にもつながり、序盤からちぐはぐな形で2失点。ビルドアップの修正を加えるには大きなリスクがのしかかる展開に追い込まれた。前半途中には一度、大森が思い切って左サイドに開くことで、サイドハーフのMF山本隼大を中に押し出し、トップ下のMF鳥海芳樹との連係が効いて前進できる場面もあったが、その攻撃にも再現性をもたらすことはできなかった。
「あのローテーションは一つ狙いの形ではあったけど、前半は板倉、井上(聖也)との関係性のなか、(4バックの)距離感が気になってしまってローテーションで押し出せない場面がありました。もう少しボランチが(間に)入ってくれれば距離ができて、前に出られるのかなとか思いながら、自分の工夫ももう少し必要でしたし、そういう部分は感じながらでした」
後半は選手交代が機能し、大量リードの相手もテンポを落としたことにより、安定した配置のまま押し込む場面も作ることができた。しかし、得点はカウンターから奪った1点のみにとどまり、結果は1-3の敗戦。樹森大介新監督が「完全にはチームはできあがっていない」と語ったとおり、いまだJ1レベルでは未完成なことを突きつけられる開幕戦となった。
まずはは適切な配置でボールを握るだけでなく、ボールを前進させていくための策を練らなければならない。大森は「チームでいろんな形の提示がありながら、最終的に相手を見ながら選ぶのは中の選手たち。変に3枚で回しましょうとか、ボランチを入れましょうとか決めるのではなく、シチュエーションごとに何がベストかというのはいろんなチームの形はあれど判断しないといけないのはボールを持っている選手や周りの選手。いろんな引き出しがある中で、どう共通理解を持ってやるかはもっと突き詰めていける部分なのかなと思います」と先を見据えていた。
チームとしてはそんな不完全燃焼の一戦だったが、大森にとっては大きな節目となった。日本大卒業後、昨季まで栃木と水戸でJ2リーグ通算142試合に出場してきたが、J1挑戦はこれが初めて。それも小学生の頃から高校時代までアカデミーに在籍していた東京Vとの対戦で、少年時代に憧れた味の素スタジアムでそのデビュー戦を迎えるという縁に恵まれた。
「味スタはやっぱりJ2でやった時とはまた全然違った景色で、人の数も多かったですし、ヴェルディがJ1に上がった時は複雑な気持ちを持っていましたけど、自分がそこに追いついて今日を迎えられたのは非常に感慨深い思いがありました」
その言葉には「そういうの(感慨)は勝ってこそなので、また次への宿題にしたい」という決意も続いたが、後輩のMF森田晃樹やMF松橋優安とのマッチアップも経て「負けていられないのでまた次が楽しみ」という新たなモチベーションを感じられたようだ。
これまで4年間を過ごしたJ2とは対戦相手のレベルも大きく変わり、より一人の選手としての真価が問われるJ1の舞台。かつては左利きの技巧派MFとしてならした26歳はこの半年間を通じ、これまでのキャリアで積み上げてきたものを表現しつつ、さらに周囲からもさまざまなものを吸収していく構えだ。
「チャンスクリエイトの部分では今日はなかなか出せなかったけど、もっとキックの部分で違いを作るとか、一つ剥がすとか、ある意味そこはヴェルディで培ったものを出していきたいです。そしてタフさなど今まで足りなかったものも身につけてきていて、そこはこれからももっとついてくるとも思ってくるので、引き出しを増やすこともそうだし、得意不得意とかじゃなく、全部自分の身になるものを吸収していこうと思っています」
自らをJ1に導いた水戸ホーリーホックというクラブにとってもJ1リーグは悲願の初参戦。クラブの歴史を変える挑戦を、中心となって牽引していこうという思いも強い。その使命感の背景には、かつて水戸のアカデミーを背負いながらトップチームでチャンスを得られなかった選手たちへの思いがある。
大森は日本大3年時、コロナ禍に行われた『#atarimaeni CUP』で18年ぶり全国大会出場を果たし、ベスト8入りの立役者となったが、チームとしての活動もままならない過酷な1年間の主将を務めていたのが水戸ユース出身の金井亮太(当時4年)だった。また同期にもFW岡安優、DF村山璃空といった水戸ユース出身選手がおり、昨季の水戸加入後はより一層の熱を込めて大森の活躍を見守ってくれているのだという。
「タイミングごとに連絡をくれたり、昇格した時もすごく喜んでいました。いろんな縁があって自分がいま水戸にいるので、そういう人たちの喜ぶ顔が見られたのは去年すごく嬉しかったですし、ここからもう一つ活躍するのが自分の役割。それこそ彼らはプロではやっていない選手たちなので、自分が先頭に立って良い姿を見せたいですし、自分がプロでここに立っている意味についてはすごく考えているつもりです」
そうした模範的な姿を見せ続けるためにも、J1の舞台に辿り着いたことに満足するのではなく、右肩上がりのキャリアをさらに続けていくつもりだ。
「去年も自分たちが強いと思いながら1年間を過ごしたわけじゃないですし、1試合1試合自分たちの価値を上げ続けるんだということは自分がうまくいっていない時もうまくいっている時も変わらずにやってきました。去年はそれが実ってくれたのかなと思いますし、それはこれからも同じ。自分は野心を持ってここまで這い上がってきたつもりなので、J2で活躍できたからと言って何か偉くなったわけでもないですし、やっと自分の目指すスタートラインに立てたとは思いますけど、今日も負けてしまいましたし、ここからJ1で活躍するというもう一段階上の基準に持っていくために、今までやってきた道のりと同じように野心を持って這い上がっていくだけだと思います」
(取材・文 竹内達也)
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昨季のJ2リーグベストイレブンを経て迎えた記念すべきJ1デビュー戦は、手探りの90分間だった。水戸ホーリーホックDF大森渚生は8日、J1百年構想リーグ開幕節の東京ヴェルディ戦に左SBでフル出場。かつて身を包んだ緑のユニフォームを相手に持ち味を発揮するには至らなかったが、大きな第一歩を踏みしめた。
大卒1年目の2022年から栃木SCと水戸で毎年J2リーグ戦30試合以上の出場を続け、プロ5年目でようやく辿り着いたJ1の舞台。記念すべき初陣でもJ1の相手に臆することなく、昨季J2リーグ制覇の自信を持って試合に入ったつもりだった。しかし、立ち上がりからチーム全体のバランスが後ろに重く、思い通りに前進できない時間が続いた。
「自分も含めてですけど、もっとできるのになと。ポジショニングもちょっとずつズレを感じていたし、(CBの)板倉(健太)との距離がすごく気になって前に出られなかったし、ボランチがもう少し(4バック間に)入ってくれないかなとか、ちょっとずつ違和感を全体が感じていた。何が足りないかは見直さないといけないけど、感覚としてはもっとやればできるという感覚を持ちながらやっていましたね」(大森)
その迷いは結果にもつながり、序盤からちぐはぐな形で2失点。ビルドアップの修正を加えるには大きなリスクがのしかかる展開に追い込まれた。前半途中には一度、大森が思い切って左サイドに開くことで、サイドハーフのMF山本隼大を中に押し出し、トップ下のMF鳥海芳樹との連係が効いて前進できる場面もあったが、その攻撃にも再現性をもたらすことはできなかった。
「あのローテーションは一つ狙いの形ではあったけど、前半は板倉、井上(聖也)との関係性のなか、(4バックの)距離感が気になってしまってローテーションで押し出せない場面がありました。もう少しボランチが(間に)入ってくれれば距離ができて、前に出られるのかなとか思いながら、自分の工夫ももう少し必要でしたし、そういう部分は感じながらでした」
後半は選手交代が機能し、大量リードの相手もテンポを落としたことにより、安定した配置のまま押し込む場面も作ることができた。しかし、得点はカウンターから奪った1点のみにとどまり、結果は1-3の敗戦。樹森大介新監督が「完全にはチームはできあがっていない」と語ったとおり、いまだJ1レベルでは未完成なことを突きつけられる開幕戦となった。
まずはは適切な配置でボールを握るだけでなく、ボールを前進させていくための策を練らなければならない。大森は「チームでいろんな形の提示がありながら、最終的に相手を見ながら選ぶのは中の選手たち。変に3枚で回しましょうとか、ボランチを入れましょうとか決めるのではなく、シチュエーションごとに何がベストかというのはいろんなチームの形はあれど判断しないといけないのはボールを持っている選手や周りの選手。いろんな引き出しがある中で、どう共通理解を持ってやるかはもっと突き詰めていける部分なのかなと思います」と先を見据えていた。
チームとしてはそんな不完全燃焼の一戦だったが、大森にとっては大きな節目となった。日本大卒業後、昨季まで栃木と水戸でJ2リーグ通算142試合に出場してきたが、J1挑戦はこれが初めて。それも小学生の頃から高校時代までアカデミーに在籍していた東京Vとの対戦で、少年時代に憧れた味の素スタジアムでそのデビュー戦を迎えるという縁に恵まれた。
「味スタはやっぱりJ2でやった時とはまた全然違った景色で、人の数も多かったですし、ヴェルディがJ1に上がった時は複雑な気持ちを持っていましたけど、自分がそこに追いついて今日を迎えられたのは非常に感慨深い思いがありました」
その言葉には「そういうの(感慨)は勝ってこそなので、また次への宿題にしたい」という決意も続いたが、後輩のMF森田晃樹やMF松橋優安とのマッチアップも経て「負けていられないのでまた次が楽しみ」という新たなモチベーションを感じられたようだ。
これまで4年間を過ごしたJ2とは対戦相手のレベルも大きく変わり、より一人の選手としての真価が問われるJ1の舞台。かつては左利きの技巧派MFとしてならした26歳はこの半年間を通じ、これまでのキャリアで積み上げてきたものを表現しつつ、さらに周囲からもさまざまなものを吸収していく構えだ。
「チャンスクリエイトの部分では今日はなかなか出せなかったけど、もっとキックの部分で違いを作るとか、一つ剥がすとか、ある意味そこはヴェルディで培ったものを出していきたいです。そしてタフさなど今まで足りなかったものも身につけてきていて、そこはこれからももっとついてくるとも思ってくるので、引き出しを増やすこともそうだし、得意不得意とかじゃなく、全部自分の身になるものを吸収していこうと思っています」
自らをJ1に導いた水戸ホーリーホックというクラブにとってもJ1リーグは悲願の初参戦。クラブの歴史を変える挑戦を、中心となって牽引していこうという思いも強い。その使命感の背景には、かつて水戸のアカデミーを背負いながらトップチームでチャンスを得られなかった選手たちへの思いがある。
大森は日本大3年時、コロナ禍に行われた『#atarimaeni CUP』で18年ぶり全国大会出場を果たし、ベスト8入りの立役者となったが、チームとしての活動もままならない過酷な1年間の主将を務めていたのが水戸ユース出身の金井亮太(当時4年)だった。また同期にもFW岡安優、DF村山璃空といった水戸ユース出身選手がおり、昨季の水戸加入後はより一層の熱を込めて大森の活躍を見守ってくれているのだという。
「タイミングごとに連絡をくれたり、昇格した時もすごく喜んでいました。いろんな縁があって自分がいま水戸にいるので、そういう人たちの喜ぶ顔が見られたのは去年すごく嬉しかったですし、ここからもう一つ活躍するのが自分の役割。それこそ彼らはプロではやっていない選手たちなので、自分が先頭に立って良い姿を見せたいですし、自分がプロでここに立っている意味についてはすごく考えているつもりです」
そうした模範的な姿を見せ続けるためにも、J1の舞台に辿り着いたことに満足するのではなく、右肩上がりのキャリアをさらに続けていくつもりだ。
「去年も自分たちが強いと思いながら1年間を過ごしたわけじゃないですし、1試合1試合自分たちの価値を上げ続けるんだということは自分がうまくいっていない時もうまくいっている時も変わらずにやってきました。去年はそれが実ってくれたのかなと思いますし、それはこれからも同じ。自分は野心を持ってここまで這い上がってきたつもりなので、J2で活躍できたからと言って何か偉くなったわけでもないですし、やっと自分の目指すスタートラインに立てたとは思いますけど、今日も負けてしまいましたし、ここからJ1で活躍するというもう一段階上の基準に持っていくために、今までやってきた道のりと同じように野心を持って這い上がっていくだけだと思います」
(取材・文 竹内達也)
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