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[デンチャレ]北野颯太と金本毅騎。2人の“同期”から受けた刺激とモチベーション。MF伊藤翼(京都産業大)が掲げるのは「圧倒的な存在」へのチャレンジ

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U-20全日本選抜の司令塔、MF伊藤翼(京都産業大2年=C大阪U-18)

[2.28 デンチャレグループA第3節 U-20全日本選抜 2-1 東海選抜 時之栖スポーツセンター 裾野C]

 以前とは自分自身の立ち位置も、周囲から向けられる視線も、大きく変化していることは理解している。それゆえに、課す。もっと頼られる存在へ。もっと勝敗を担う存在へ。チームも、ゲームも、1人でコントロールしてしまうぐらいの、圧倒的な存在感を身につけてやる。

「1年生のころからずっと試合に出させてもらって、2年生になった去年は自分が中心的存在になったんですけど、思うようにはいかなかったですし、自分が結果を残すことはできなかったので、今年は結果でチームを勝たせる選手にならないといけないと思います」。

 パスと笑顔で周囲を繋ぐ、桜育ちのコンダクター。MF伊藤翼(京都産業大2年=C大阪U-18)は課題と収穫を冷静に見つめながら、今回の選抜活動のラストゲームに向けて、意欲をみなぎらせている。


 モチベーションは十分だった。「1,2試合目にスタメンで出れなくて、自分の中でも凄く悔しい想いはあったので、『今日はやらないと』という気持ちで臨みました」。2年続けて選出されたデンソーカップチャレンジを戦うU-20全日本選抜。だが、初戦は最後まで出場機会は訪れず、2戦目も後半37分からの途中出場。この日の東海選抜戦でようやく巡ってきたスタメンのチャンス。燃えないはずがない。

 だが、試合が始まるとU-20全日本選抜は、アグレッシブに前へ出てきた東海選抜の勢いを受けて立つ格好に。「フィジカル的な部分が多い展開の中で、あまりボールを受けることができなくて、守備のところで奪ったりという局面のところが多かったので、ゲームメイクできる回数は少なかったと思います」という伊藤も、なかなか特徴を出し切れない時間が続く。

 1点のビハインドを負った後半28分にMF徳永涼(筑波大2年=前橋育英高)との交代でベンチに下がったが、チームは直後に連続得点を記録して、逆転に成功。そのリードを最後まで守り切り、U-20全日本選抜は今大会初勝利を挙げたものの、「こういうところで結果を出さないともっと上には行けないかなと感じています」と話した伊藤の中には、少しだけ複雑な感情が残ったようだ。



 C大阪U-18時代の伊藤は、高3時に夏のクラブユース選手権で日本一を経験。同じ京都産業大に進学し、今回は関西選抜に選出されているFW末谷誓梧(京都産業大2年=C大阪U-18)を含めて当時のチームメイトたちも各方面で活躍しているが、とりわけ2人の同級生の存在には小さくない刺激を受けている。

 1人は今回のU-20全日本選抜にも選ばれている、昨季の関西学生リーグでMVPと得点王をダブル受賞したFW金本毅騎(阪南大2年=C大阪U-18)だ。

「毅騎は小学校のころから知っていて、セレッソのアカデミーでもずっと一緒にやってきて、お互いの良さはわかっているので、関西リーグでやる時は凄く楽しみでしたし、ここでも一緒にやれているのは嬉しいですね」。

 もう1人は彼らの世代を代表するアタッカーであり、C大阪のトップチーム昇格4年目でいよいよブレイクの兆しを見せているFW北野颯太だ。

「最近の試合を見ていて、得点のところもそうやけど、戦う姿勢は凄いなと思っていて、そういうところはユースの時から1つ抜けているところもあったので、いつも刺激を受けつつも、自分も頑張らないといけないなと思います。セレッソの練習に行った時には、一緒にゴハンに行ったりしましたね」。

 本人も口にしたように、昨年は古巣のC大阪の練習参加も経験。「キックの質は大きな違いかなと。そこは自分の課題でもあるので、まだ足りてないかなと思いました。ただ、技術的なところは自分の持ち味ですし、得意なところでもあるので、そこはしっかり出せたかなと思います」と語ったように、プロの中に混じってプレーしたことは、改めて現在地を知る貴重な機会になったようだ。


 1年時からインカレ準優勝を成し遂げたチームの中で定位置を掴んだ伊藤は、昨シーズンのリーグ戦でも22試合フル出場を達成し、優秀選手賞も受賞。「ありがたいことに1年生のころから試合に出続けているので、逞しさやタフさは出てきているのかなと思います」と確かな成長曲線を描いてきた。

 その一方で、4ゴール1アシストという数字の面では、まだまだ物足りなさも実感している。「1年の時よりはゴールも獲れたんですけど、やっぱりもっとゴールやアシストという結果の部分を出すことが、プロに行くには一番重要だと思いますし、ボランチで点を獲れる選手は日本にもそこまで多くないと思うので、そこはこだわっていきたいなと思います」。

 残された今回の選抜活動も、日本高校選抜と対峙する最終日の5・6位決定戦のみ。勝負のシーズンを良い形で迎えるためにも、明確な結果が欲しい一戦。やや消化不良に終わったグループステージの出来を払拭するような活躍を、伊藤が期していることは想像に難くない。

 京産の翼から、日本の翼へ。繊細なテクニックを搭載した、関西を代表する司令塔。勝負の1年を控えたタイミングで訪れた試金石。突き付けられた悔しさを、ピッチ上のパフォーマンスに結び付けられるか否か。3月2日の伊藤翼には大いに注目したい。



(取材・文 土屋雅史)

●第39回デンソーカップチャレンジ特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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