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[関東2部]高校時代はFC東京U-18と早大学院の“究極”文武両道、早稲田大DF石井玲於奈「サッカー」か「就職」か…選択にあった葛藤

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惜しいヘディングシュートを放ったDF石井玲於奈

[10.30 関東大学L2部第19節 早稲田大1-1駒澤大 早稲田大学東伏見サッカー場]

 是が非でも勝ち点3が欲しい試合だった。勝ち点2差で追う首位・駒澤大との天王山。1-1の終盤に攻め立てた早稲田大は後半アディショナルタイムにCKから決定機を迎える。しかしDF石井玲於奈(4年=FC東京U-18)が連続してヘディングシュートを放つが、ゴールネットが揺れることはなかった。

 石井も「決まっていたらヒーローだったんですけどね」とポツリ。「ここ3試合くらいCKからチャンスがあったけど決め切れなくて、今日も決められなくて…。今日は寝られないかもしれないです」と肩を落とした。1-1で引き分けた早大は法政大に勝ち点で並ばれると、得点差で逆転を許して3位に後退した。

 キャプテンマークを巻いてのプレーになっている。今季の主将はMF山市秀翔(4年=桐光学園高/川崎F内定)だが、右足骨折による離脱が続いている。また副将のDF佐々木奈琉(4年=帝京長岡高/長崎内定)らの離脱もある中で、4年生で試合に出ている石井にキャプテンの大役が回ってきた。

 もっとも石井も怪我から復帰したばかりの選手で、昨年10月の日本体育大戦で左ひざの前十字靱帯を負傷。復帰は今年9月の後期リーグ戦の開幕からだった。「1、2年生のころも中足骨骨折や肉離れで離脱した。大学生活はプレー時間よりもリハビリの方が長かった」。ただ長く葛藤の日々を過ごしたが、昨年度の主将で同じ前十字靱帯の負傷による影響で引退となった伊勢航さんの励ましもあって、苦難を乗り越えてきたという。

 FC東京U-15深川、FC東京U-18出身の石井は、中学時代から世代別代表に選出されるなどの実績を積んできた選手だが、高校は偏差値75を超える進学校の早大学院高に進学。究極の文武両道を貫いてきた。ちなみに早大学院から早大に進学しJリーガーになった選手で、現在AC長野パルセイロでプレーするMF近藤貴司がいる。また競技は違うが、昨年のプロ野球ドラフト会議で北海道日本ハムファイターズに5位指名された山縣秀内野手も、史上2人目となる早大学院出身プロ野球選手として話題を集めた。

 将来を選択する年となっている今季だが、一旦は就職活動に力を入れようとした。しかしMF米陀大洋(日体大/甲府内定)やFW肥田野蓮治(桐蔭横浜大/浦和内定)といった中学時代のチームメイトが続々と大学経由でプロ入りを決めたニュースが目に入ってきた。「なんで俺は就職の勉強をしてるんだろう?みたいに思った」。“安定”と“後悔”を天秤にかけたときに、「サッカーに対する心残り」が上回った。

「こういう形で就職をしても、働きながら後悔するというか、サッカーを嫌いになるんじゃないかと思った。心残りのあるまま生活することになるのかなと思ったので、エージェントと契約して、海外挑戦することを考えています。這い上がっていきたいし、プロを目指していけるところまで行って、サッカー人生にしっかりとした区切りをつけたいと思っています」

 商学部に進学した大学でも勉学を怠ることはなかった。「でも何だかんだ文武両道って難しいんだなと感じた」。4年生になって自由な時間が増え、よりサッカーと向き合う時間が多くなったことで、その“難しさ”を再確認したという。「これだけ学業がないとサッカーに費やせるんだなと感じていて。来年からは学業がなくなって、サッカーだけに集中できるので、力を注ぎたいなと思います」。

 怪我から復帰して1か月ほどが経ったが、まだ理想とする状態ではないという。しかし「今のベスト」を尽くすことで、チームの力になりたいと考えている。残り3節となったリーグ戦で早大は自動昇格圏の2位・法大と勝ち点差なしの3位。ただ首位の駒大とも勝ち点差2で、優勝だけを見据えて戦っていくつもりだ。「2年連続で上げられなくて、今年上げられなかったら沼るぞと言われ続けてきた。もう少し4年生の頼ってほしいというところはあるけど、出ているメンバーで頑張らないといけない」。何よりまずは学生生活に後悔を残さないこと。文武両道で極めた集大成をぶつける。

(取材・文 児玉幸洋)

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児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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