[MOM4949]流通経済大柏DF奈須琉世(3年)_ここに来て研ぎ澄まされてきたのは得点感覚!チームの確かな成長を実感しているキャプテンが攻守に躍動!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.23 プレミアリーグEAST第20節 昌平高 0-3 流通経済大柏高 昌平高G]
自分を信じて、チームメイトを信じて、地道に、丁寧に、それでいて確実に蒔いてきた種は今、ようやくはっきりとした実を結びつつある。だが、ここからがいよいよ本当の勝負の時。信頼できるみんなの力を1つにまとめて、絶対に一番高い頂まで登り切ってやる。
「やっぱり静かなゲームをやっていたら崩れていきますし、声が出ていなかったらもちろん自分から発信するんですけど、それにみんなが反応してくれたり、『もっとこうした方がいいだろ』と周りからの声も増えてきたなとは本当に自分も感じているので、チーム全体の底上げはできてきていると思います」。
流通経済大柏高が敷く“2人キャプテン”の一角を担ってきた、リーダーシップあふれるセンターバック。DF奈須琉世(3年=柏レイソルA.A.TOR’82出身)の攻守に渡る奮闘は、明確に日本一を狙うチームに強固な1本の軸を通していく。
「自分たちは選手権を戦ってきた中で、試合の中で1つの目標としているのが『最初の15分で1点』というところで、そこを獲れると流れに乗れることはわかっていました」。奈須はこの日のゲームに臨んだチームの狙いをこう明かす。プレミアリーグEAST第20節。アウェイに乗り込んだ昌平高との一戦は、流経大柏が高い位置から掛けたプレスがハマって、立ち上がりから好リズムに。流れそのままに18分にはFW粕谷悠(3年)が先制ゴールを奪い、まずは1点のリードを手にする。
「今回の先制は18分でしたけど、15分に近い時間に獲れたのがまずは大きかったかなと思っています」。そう話したキャプテンが、次の歓喜の主役をさらう。21分。左サイドで獲得したCK。「奈須とは日ごろからセットプレーの練習をしている時に話し合っているので」というMF柚木創(3年)の完璧なボールが届くと、ニアからファーへ回り込んだ奈須のヘディングがゴールネットを鮮やかに揺らす。
「自分はヘディングを武器にしているので、『セットプレーがあったら絶対に点を獲ってやろう』と思っていたんですけど、柚木が良いボールを上げてくれたので感謝したいです。昨日考えた形がドンピシャで決まりました」
プレミアでは実に9試合ぶりのゴールだったが、その得点感覚は少し前から研ぎ澄まされていた。11月9日。全国出場を懸けた高校選手権千葉県予選決勝。日体大柏高との試合で奈須は右足と頭で2ゴールを記録。自らのドッピエッタで千葉制覇を手繰り寄せていたのだ。
「選手権で良い形で決められたイメージが残っていて、今週も行けるかなと思っていたので、獲れて良かったです。もちろんセンターバックなので、とにかくまずは守備を考えているんですけど、セットプレーになったら自分が決めるイメージは持っています」と語るキャプテンの一撃。流経大柏は2-0のスコアで後半へ折り返す。
最初の45分間で掴んだ2点のアドバンテージ。ただ、ハーフタイムの雰囲気は十分に引き締まったものだったという。「『2点差は危ないぞ』『次の1点が昌平に入ったら、昌平のゲームになるぞ』ということも話しましたし、そこでチーム全員で3点目を獲りに行こうという意識を持てていたと思います」。ここまでのプレミアでは2点差や3点差を追い付かれるゲームを幾度も味わってきた。選手たちはその経験を胸に刻み、後半のピッチへ走り出す。
ボールは昌平に持たれながらも、流経大柏は奈須とDF幸田爽良(3年)のセンターバックコンビや、MF稲田斗毅(3年)とMF飯浜空風(3年)のドイスボランチを中心に強度の高い守備で対抗すると、後半19分には柚木がチーム3点目を記録。以降も相手のアタックを1つ1つ着実に凌いでいく。
「榎本(雅大)監督からも『後半は0-0の気持ちで行け』という話があったので、全員がそういう共通理解を持てたことも良かったですし、それで3点目が獲れたからこそ、勝ち切ることができたと思っています」。結果的に3-0で快勝を収めた90分間の中で、得点も含めてキャプテンが放った存在感は実に絶大だった。


もともと中学時代もキャプテンを務めていた奈須は、3年生になってDF佐藤夢真(3年)との“2人キャプテン”に就任したが、とりわけインターハイ予選で敗退した直後は、チームのベクトルをどう合わせていくかに腐心していた印象があった。
「やっぱりインターハイや選手権のような大会ではチームが1つになる必要があって、みんな個性が強いので、そこを自分がどうまとめるかは本当に難しい役割で、今も悩んでいるんですけど、自分が言ったことに対してみんなが付いてきてくれていますし、自分が変わっていかないとチームも変わっていかないので、常にチームの先頭に立てるように意識しています」。正直に口を衝いた言葉も強く記憶に残っている。
だが、ここに来てチームは間違いなく今まで以上に同じ方向を向き始めている。「今までは奈須とか(佐藤)夢真がずっと声を出してやっていたのが、今はみんなで声を掛けるようになってきています」と榎本雅大監督が話せば、「今までは奈須ばかりに頼っていたところもあったんですけど、うまく行かない時でもそれぞれ改善しようという声掛けができてきている今は、チームも成長できていると思います」と粕谷も言及する。
「キャプテンマークは自分と夢真が巻いているんですけど、チーム1人1人が喋れるようになってきましたし、みんながリーダーシップを取れるので、今は特別にキャプテンだからどうこうというのはないですね。今日は夢真もいなかったですけど、みんながチームに良い影響を及ぼせるようになっているので、前期よりは自分の負担も減ったかなと思います」。自分が促してきたようなちょっとした意識の変化で、グループが成長してきた手応えは、もうはっきりと掴んでいる。
残されたのはプレミアの2試合と、高校3年目でようやく挑むことを許された選手権の全国大会。もうやるしかない。今まで培ってきたものすべてをぶつけて、やるしかない。「とにかく後悔なく終わりたいですね。プレミアもあと2節残っていて、そのあとは選手権も控えている中で、もちろん目指すは日本一ですけど、一戦一戦が本当に難しい戦いになってくると思うので、チーム全体で一戦必勝という想いを忘れずに頑張っていきたいです」。
得点も獲れて、体を張って守れて、チームを束ねるリーダーシップも有した、2024年の流経大柏が誇るキャプテン。高校最後の冬に咲かせる大輪の花をイメージしながら、奈須琉世は目の前のピッチを100パーセントで駆け抜け続ける。


(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2024特集
●第103回全国高校サッカー選手権特集
[11.23 プレミアリーグEAST第20節 昌平高 0-3 流通経済大柏高 昌平高G]
自分を信じて、チームメイトを信じて、地道に、丁寧に、それでいて確実に蒔いてきた種は今、ようやくはっきりとした実を結びつつある。だが、ここからがいよいよ本当の勝負の時。信頼できるみんなの力を1つにまとめて、絶対に一番高い頂まで登り切ってやる。
「やっぱり静かなゲームをやっていたら崩れていきますし、声が出ていなかったらもちろん自分から発信するんですけど、それにみんなが反応してくれたり、『もっとこうした方がいいだろ』と周りからの声も増えてきたなとは本当に自分も感じているので、チーム全体の底上げはできてきていると思います」。
流通経済大柏高が敷く“2人キャプテン”の一角を担ってきた、リーダーシップあふれるセンターバック。DF奈須琉世(3年=柏レイソルA.A.TOR’82出身)の攻守に渡る奮闘は、明確に日本一を狙うチームに強固な1本の軸を通していく。
「自分たちは選手権を戦ってきた中で、試合の中で1つの目標としているのが『最初の15分で1点』というところで、そこを獲れると流れに乗れることはわかっていました」。奈須はこの日のゲームに臨んだチームの狙いをこう明かす。プレミアリーグEAST第20節。アウェイに乗り込んだ昌平高との一戦は、流経大柏が高い位置から掛けたプレスがハマって、立ち上がりから好リズムに。流れそのままに18分にはFW粕谷悠(3年)が先制ゴールを奪い、まずは1点のリードを手にする。
「今回の先制は18分でしたけど、15分に近い時間に獲れたのがまずは大きかったかなと思っています」。そう話したキャプテンが、次の歓喜の主役をさらう。21分。左サイドで獲得したCK。「奈須とは日ごろからセットプレーの練習をしている時に話し合っているので」というMF柚木創(3年)の完璧なボールが届くと、ニアからファーへ回り込んだ奈須のヘディングがゴールネットを鮮やかに揺らす。
「自分はヘディングを武器にしているので、『セットプレーがあったら絶対に点を獲ってやろう』と思っていたんですけど、柚木が良いボールを上げてくれたので感謝したいです。昨日考えた形がドンピシャで決まりました」
プレミアでは実に9試合ぶりのゴールだったが、その得点感覚は少し前から研ぎ澄まされていた。11月9日。全国出場を懸けた高校選手権千葉県予選決勝。日体大柏高との試合で奈須は右足と頭で2ゴールを記録。自らのドッピエッタで千葉制覇を手繰り寄せていたのだ。
「選手権で良い形で決められたイメージが残っていて、今週も行けるかなと思っていたので、獲れて良かったです。もちろんセンターバックなので、とにかくまずは守備を考えているんですけど、セットプレーになったら自分が決めるイメージは持っています」と語るキャプテンの一撃。流経大柏は2-0のスコアで後半へ折り返す。
最初の45分間で掴んだ2点のアドバンテージ。ただ、ハーフタイムの雰囲気は十分に引き締まったものだったという。「『2点差は危ないぞ』『次の1点が昌平に入ったら、昌平のゲームになるぞ』ということも話しましたし、そこでチーム全員で3点目を獲りに行こうという意識を持てていたと思います」。ここまでのプレミアでは2点差や3点差を追い付かれるゲームを幾度も味わってきた。選手たちはその経験を胸に刻み、後半のピッチへ走り出す。
ボールは昌平に持たれながらも、流経大柏は奈須とDF幸田爽良(3年)のセンターバックコンビや、MF稲田斗毅(3年)とMF飯浜空風(3年)のドイスボランチを中心に強度の高い守備で対抗すると、後半19分には柚木がチーム3点目を記録。以降も相手のアタックを1つ1つ着実に凌いでいく。
「榎本(雅大)監督からも『後半は0-0の気持ちで行け』という話があったので、全員がそういう共通理解を持てたことも良かったですし、それで3点目が獲れたからこそ、勝ち切ることができたと思っています」。結果的に3-0で快勝を収めた90分間の中で、得点も含めてキャプテンが放った存在感は実に絶大だった。


もともと中学時代もキャプテンを務めていた奈須は、3年生になってDF佐藤夢真(3年)との“2人キャプテン”に就任したが、とりわけインターハイ予選で敗退した直後は、チームのベクトルをどう合わせていくかに腐心していた印象があった。
「やっぱりインターハイや選手権のような大会ではチームが1つになる必要があって、みんな個性が強いので、そこを自分がどうまとめるかは本当に難しい役割で、今も悩んでいるんですけど、自分が言ったことに対してみんなが付いてきてくれていますし、自分が変わっていかないとチームも変わっていかないので、常にチームの先頭に立てるように意識しています」。正直に口を衝いた言葉も強く記憶に残っている。
だが、ここに来てチームは間違いなく今まで以上に同じ方向を向き始めている。「今までは奈須とか(佐藤)夢真がずっと声を出してやっていたのが、今はみんなで声を掛けるようになってきています」と榎本雅大監督が話せば、「今までは奈須ばかりに頼っていたところもあったんですけど、うまく行かない時でもそれぞれ改善しようという声掛けができてきている今は、チームも成長できていると思います」と粕谷も言及する。
「キャプテンマークは自分と夢真が巻いているんですけど、チーム1人1人が喋れるようになってきましたし、みんながリーダーシップを取れるので、今は特別にキャプテンだからどうこうというのはないですね。今日は夢真もいなかったですけど、みんながチームに良い影響を及ぼせるようになっているので、前期よりは自分の負担も減ったかなと思います」。自分が促してきたようなちょっとした意識の変化で、グループが成長してきた手応えは、もうはっきりと掴んでいる。
残されたのはプレミアの2試合と、高校3年目でようやく挑むことを許された選手権の全国大会。もうやるしかない。今まで培ってきたものすべてをぶつけて、やるしかない。「とにかく後悔なく終わりたいですね。プレミアもあと2節残っていて、そのあとは選手権も控えている中で、もちろん目指すは日本一ですけど、一戦一戦が本当に難しい戦いになってくると思うので、チーム全体で一戦必勝という想いを忘れずに頑張っていきたいです」。
得点も獲れて、体を張って守れて、チームを束ねるリーダーシップも有した、2024年の流経大柏が誇るキャプテン。高校最後の冬に咲かせる大輪の花をイメージしながら、奈須琉世は目の前のピッチを100パーセントで駆け抜け続ける。


(取材・文 土屋雅史)
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