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「『オマエのせいで続けるわ』と言われました(笑)」ダブルキャプテンの“相棒”への説得、実る!流通経済大柏DF奈須琉世が高校選抜選考合宿でも発揮する圧倒的リーダーシップ

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日本高校選抜候補DF奈須琉世(流通経済大柏高/3年=柏レイソルA.A.TOR’82出身)はリーダーシップを発揮

[1.26 練習試合 日本高校選抜候補 4-0 駒澤大]

 地道に努力を積み重ねてきたことで、自分の立つステージが少しずつ上がってきていることは、間違いなく実感している。あと一歩で日本一に届かなかった悔しい経験だって、ここからさらに前へと進んでいくための強烈なエネルギーにしてみせる。再び、目指す。盟友と一緒に、全国の頂を。

「日本のトップレベルの選手たちと一緒にやれていることが楽しくて、まだ始まったばかりですけど、自分としてはアピールできているところもあるので、自分がこの場にいられていることもそうですけど、その上でやれているところがあることは自信にしたいかなと思います」。

 日本高校サッカー選抜の選考合宿でも、持ち味を存分に披露しつつある屈強なセンターバック。DF奈須琉世(流通経済大柏高/3年=柏レイソルA.A.TOR’82出身)が携えている向上心は、まだまだ未来に向かって大きく、大きく、膨らみ続けている。


「関東の選手はプレミアで対戦したりして、ちょっと話したことがある選手はいっぱいいるんですけど、西の方の選手たちとは初めて喋ったので、楽しくやれていると思います。五嶋(夏生)選手とは大学の話を少ししましたけど、選手権の試合のことはまだ話していないですね」。

 25日から静岡県内で行われている日本高校選抜候補の選考合宿。奈須は5人の流経大柏のチームメイトとともに参加し、先日までライバルだった同年代の選手たちと交流を深めながら、トレーニングに励んでいる。

 合宿2日目は、駒澤大(関東大学L2部)と30分×4本で行われるトレーニングマッチが実施され、奈須は1本目のセンターバックで出場。インターハイでは全国準優勝に輝いているDF新垣陽盛(神村学園高/3年)と、最終ラインの中央で“ファイナリストコンビ”を結成し、大学生を相手に互角のバトルを繰り広げる。

 24分には際どいピンチを迎えたものの、身体を投げ出してシュートブロック。「チームが攻撃重心になってしまうところもあるので、『自分のところで絶対に止め切る』ということは特にこだわっていきたいなと思います」という言葉を証明するかのような、的確な『ゴールを隠す』守備で失点を回避してみせる。

 今回の選抜チームがボールを丁寧に動かすスタイルを志向しているだけに、そこにも奈須は積極的に取り組んでいる。「せっかくレベルの高いチームメイトがいるので、『流経にないものを吸収しよう』と思っています。流経もビルドアップはするんですけど、ここまでガッツリとビルドアップすることはなかったので、そこの判断の速さは意識していますね」。結果的に1本目は1-0で勝利。守備陣は無失点で乗り切るなど、上々の30分間を過ごしたことは間違いない。


「本当に今までのサッカー人生の中で一番楽しい大会でした。もともと夢の舞台でもありましたし、選手権を見て流経を選んだところもあって、『選手権に出たい』という気持ちもずっとあったので、そういう嬉しさもありましたね」。2週間前に閉幕したばかりの高校選手権で流経大柏が見せた奮闘は、非常にエモーショナルなものだった。

 ファイナルの国立競技場に集まった観衆は、実に5万8347人。にわかには想像しがたい数字だが、奈須はそこまで緊張しなかったという。「準決勝でも3万人ぐらいお客さんが入っていて、その時は結構緊張したんですけど、そこで1回経験していた分、決勝はそこまで緊張しなかったんです。5万8千人の中で国立のピッチにスタートから立てるのは22人しかいないので、そこに選ばれたことがまず嬉しくて、ワクワクの方が大きかったですね」。

 印象的なシーンがあった。日本一の懸かったPK戦。前橋育英高の10人目のキックがゴールネットを揺らし、流経大柏の敗戦が決まった瞬間、すぐさま奈須はDF佐藤夢真(3年)と一緒に、倒れ込んだGK加藤慶太(3年)の元へと笑顔で走り寄る。

「あのシーンは『ここで決められて負ける』とは思っていなかったですけど、決められて結果が出た後に『ああ、負けたんだな』と実感しながら、負けたら負けたで『絶対に泣かないようにしよう』と思っていました。それは小学生のころに自分が外してPK戦に負けたことがあって、その時は自分が一番手で蹴ったんですけど、まだ負けてもいないのに泣いてしまって、その時に父親や指導者から『まだ試合が終わっていないのに泣くな!』と言われたんです」

「自分も『チームに迷惑を掛けた自分が何で泣いているんだ』と思って、それからはピッチ上では絶対に泣かないと決めていたので、スタンドへの挨拶の時になったら号泣してしまったんですけど(笑)、PK戦でも加藤が最後まで頑張ってくれていましたし、負けた瞬間にすぐに崩れ落ちていたので、すぐ駆け付けてやろうと、『行かなきゃな』と身体が勝手に動いていた感じです」。こういったあたりに、リーダーとしての圧倒的な責任感と気遣いが滲むのも頼もしい。


 つい最近のこと。奈須には嬉しい“報告”があった。2024年度の流経大柏でダブルキャプテンを務め、センターバックでもコンビを組んでいた佐藤夢真が、ともに進学する流通経済大でも選手としてサッカーを続けることを決断したのだ。

「夢真は『悔しくない』と言っていましたけど、日本一を獲れなかったのは絶対に悔しいはずですし、一緒にダブルキャプテンをやってきた中で、あと一歩のところで日本一に届かなかったので、大学では日本一を獲るというか、もう1回イチからやろうという気持ちになって、サッカーを続ける決意をしたのかなと思います」。

「やっぱり嬉しいですね。大学でも続けるように結構しつこく言い続けましたし、一応夢真には『この日までに決めるから』という日を聞いていたので、そのあたりになったころに『続けるんだよ、ね?』と聞いたら、『オマエのせいで続けるわ』と言われました(笑)」

 最大の懸案もクリアになった。これで何の憂いもなく、改めて自分自身と向き合うことができる。全国の頂を目指すためのリスタートは、ここから始まる。奈須琉世がしなやかに備えるリーダーシップは、この高校選抜にとっても、きっともう既に、欠かせない。

(取材・文 土屋雅史)

●第103回全国高校サッカー選手権特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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