[2.16 神奈川県CYリーグカップ準決勝 川崎F U-18 7-1 東急SレイエスFC U-18 横浜FC・LEOCトレーニングセンター]

　腹は括っている。自分が披露するプレー次第で、自分が発揮するリーダーシップ次第で、チームの結果が大きく変わると信じて、とにかく前へと突き進む。タッチライン際を縦へ、縦へ。そこに立ちはだかろうとするものは、すべてしなやかになぎ倒す。

「今年はチームを引っ張らないといけない立場ですし、去年のクラブユースでの悔しさやプレミアの苦しい時間も経験しているので、そういう時にいかに自分とか去年出ていたメンバーがチームを鼓舞できるかで、今年の結果が変わってくるんじゃないかと思っています。その自覚はメッチャありますね。試合中の声やプレーで『オレはこういうことができるぞ』と見せたいです」。

　左サイドを蹂躙する川崎フロンターレU-18(神奈川)が誇る水色の翼。DF関德晴(2年=川崎フロンターレU-15出身)はアカデミーで積み重ねた経験と自信を胸に、さらなるステージ奪取へ視線をはっきりと向けている。


「今年は監督やスタッフ陣も変わって、去年とちょっとやることが違うので、大変なところもあるんですけど、チーム全体で前を向いて、楽しく良い雰囲気でできていると思います」。笑顔を浮かべながら、関はチームへの手応えを口にする。東急SレイエスFC U-18と対峙した神奈川県クラブユースリーグカップ準決勝。川崎F U-18は7-1で勝利を手繰り寄せ、1週間後の決勝へと駒を進める。

　左サイドバックの位置で果敢なオーバーラップを繰り返していた関に、“ごほうび”が巡ってきたのは3点をリードしていた前半25分。右からMF平塚隼人(2年)が蹴り込んだCKに飛び込むと、予想外の軌道をたどったボールが目の前に現れる。

「とりあえず自分の入るところに入っていったら、たまたま肩に当たったボールがクロスバーに返ってきたので、思い切りぶち込みました。公式戦のゴールは去年のプレミアの開幕戦ぶりだったので、嬉しかったです(笑)」。ややラッキーなリバウンドを押し込んだゴールは、実に10か月ぶりとなる公式戦の得点。思わず喜びが爆発した。

　ただ、快勝にも浮かれる様子は微塵もない。なぜならほんの少し前まで高い基準を見せ付けられる環境に身を置いていたからだ。1週間参加したトップチームのキャンプは、今の自分の現在地を把握するには十分過ぎるような、最高の環境だった。

「できないことの方が多かったですし、もっともっと身体の強さやプレースピードは上げていかないといけないなという課題も見つかったので、今年1年間頑張っていきたいです。でも、ちょっとドリブルで運んだり、クロスを上げる場面で中に通し切ってアシストに繋げられたので、そういうところは自信を持っていきたいです」。

　どの“先輩”からも大きな刺激を受けたが、とりわけ強烈なインパクトを突き付けられたのは、J1開幕戦の名古屋グランパス戦でもスタメンを飾った両サイドバックだったという。

「やっぱり三浦(颯太)選手と佐々木(旭)選手は凄かったです。三浦選手はクロスが正確で、前に行く推進力が自分に似ている部分もありましたけど、自分より二段階も三段階も上のレベルにあったので、そこはちょっと追い付けるように頑張りたいです。佐々木選手は対人の守備が本当に強くて、『行けるかな』と思ってぶつかったことがあったんですけど、吹っ飛ばされてしまいました(笑)。足元も凄く上手くて、狭いところでもメチャクチャ逃がすので、『凄いな』と思いました!」

　その開幕戦では高井幸大、山田新、山内日向汰、宮城天と、スコアラーはすべてアカデミー出身者。その事実も関の心を躍らせる。「メッチャ強かったですよね。その中でアカデミーの選手が4点獲っていたので、自分もそこに食い込んでいけるように意識するべきところかなと思いました。あと、三浦選手が2アシストしていて、自分もアシストとか結果にこだわりたいので、参考にしながら自分らしいプレーをしたいと思っています」。いつかはオレも、あの舞台へ。等々力での完勝を見て、よりトップチーム昇格への意欲が高まったことは言うまでもない。


　昨シーズンのプレミアリーグEASTでは、2年生ながら全22試合に出場してチーム最多の出場時間を記録。本人も「対人の守備でも負けちゃいけないポジションなので、結構必死に食らい付いているんですけど、ある程度やれているなとは思っています」と話したように、身体の強さを生かした対人の守備とダイナミックな攻撃参加は、リーグ全体の中でも有数のレベルに達している。

　新シーズンの背番号は2番に決まった。前任者は年代別代表の常連でもあり、どの試合でもハイパフォーマンスを示し続けていた柴田翔太郎。「シバくんのユニフォームをもらうのは、ジュニアユースも含めてこれで3回目ぐらいなんですけど、メチャクチャシバくんの匂いがして(笑)。でも、『頑張れよ』と電話してくれました」と笑った関も、その先輩の存在を意識しないはずがない。

「去年から試合に出ていた分、去年以上のことは求められると思うので、今年は数字にはこだわっていきたいです。去年は右サイドバックのシバくんがメッチャアシストをしていたので、自分はアシストにプラスしてゴールも獲りたいなと。サイドバックなので守備では絶対に負けたくないですし、チームの顔になれるぐらいの活躍をしたいと思っています。去年のシバさんの目標が5ゴール10アシストだったので、今年は僕も5ゴール10アシストぐらいは獲りたいです」。

　180センチを超える恵まれた体躯と、抜群の走力を生かしたオーバーラップも魅力的な川崎F U-18の大型サイドバック。駆け上がる。目の前に広がる左サイドのスペースを、プロの世界へと続いているはずの険しい道を、関德晴は颯爽と駆け上がる。

(取材・文　土屋雅史)