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ランドで育まれてきた神出鬼没のプレーメイカー。東京VユースMF今井健人が小さいころから憧れていた“柿谷コーチ”と交わしたパスの会話

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東京ヴェルディユースのプレーメイカー、MF今井健人(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)

 一言で表現すれば、神出鬼没。必要なタイミングで、必要な場所に現れ、必要なプレーを過不足なくこなしていく。それもピッチという舞台上を俯瞰して見ることのできる能力があるから。そのうえで扱うボールに遊び心も載せてしまうのだから、相手にとってみれば厄介極まりない。

「プレミアでやれないという感触はないですけど、プリンスよりは難しい試合も増えると思うので、そこで自分が差を見せたいですね。この2年間を通して試合に出させてもらって、今のチームでは自分が一番試合を経験しているので、チームを引っ張らないといけない気持ちはありますし、結果を出さないといけないという責任感も湧いています」。

 11年ぶりのプレミアリーグを戦う東京ヴェルディユース(東京)の中盤をしなやかに取りしきるプレーメイカー。MF今井健人(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)は強い成長欲を携えて、アカデミーラストイヤーに足を踏み入れている。


「ここまでは個人に特化して1か月ぐらいやってきたので、前を向く部分だったり運ぶ部分を自分の武器としながら、それを今やっているチーム戦術に落とし込みたいなというイメージです」。

 RB大宮アルディージャU18と対戦した『2025 アスレカップ群馬 サッカーフェスティバル』の大会初戦。今井が話したように、シーズンの立ち上げからは各々の技術向上に取り組んできた東京Vユースは、ここに来てチームビルドに着手した段階。それでもハイレベルな感性の共有は、十分なシナジーを生み出していく。

 その中でも4番を背負った選手の存在が、一際目を引く。基本はシャドー気味の位置に立ちながら、時にはボランチのMF下吉洸平(1年)と、時にはウイングバックのMF今井宏亮(2年)とポジションを入れ替え、チームの攻撃にスムーズさをもたらしていく。

「自分は『自由に動いていい』と言われていますし、もともとボランチの選手でもあるので、試合を作るところもそうですし、『ちょっと前への侵入が難しそうだな』と思ったら、自分がピックアップしに行ったりと、試合をコントロールするという意味でも、楽しいポジションだなと思います」。

 後半にはやはり存在感の違いを発揮していたMF仲山獅恩(2年)の完璧なフィードを相手の最終ラインの背後で受けて、そのまま左足のダイレクトボレーを選択。軌道はクロスバーを越えてしまったが、「イメージはニア上に決めようと思ったんですけど、折り返しという選択肢もあった中で、公式戦というわけではないので、少し自分のエゴを出して打ってみました」とのこと。試合は1-1の引き分けとなったが、ゴール前にしっかり顔を出せるのも、この人の強みの1つだ。



 今井は1月にトップチームのキャンプにも参加。プロの選手たちと同じピッチに立ち、小さくない学びを得てきたという。「自分と同じポジションで言うと、森田晃樹選手はフィジカルが凄くあるわけではないのに、しっかり走れますし、やっぱり『ボールを守れる部分』は凄く上手いと思いました」。

「あと、トップチームは“エキストラ”と言って、若手が数人集まって3対3みたいなゲームをやるんですけど、そこではやれるなという部分もありました。でも、守備の部分ではコーチに凄く言われたので、トップの試合に出るにはまだベースの部分が足りないなと感じました」。

 その直後に参加した『NEXT GENERATION MATCH』に臨むJリーグ選抜での活動も、かけがえのない経験となった。何しろチームの監督は東京Vの中村忠アカデミーヘッドオブコーチング。「ミニさん(中村ヘッドオブコーチング)の戦術を一番理解しているのは自分ですし、『チームを引っ張らなきゃいけない』という想いもありました」というタスクも自分に課していたようだ。

 とはいえ、普段はなかなか中村ヘッドオブコーチングの指導を受けるタイミングはない。「戦術はあまり言われなかったですけど、ベースの部分で走るところは凄く言われましたし、イメージ的には『熱い感じだな』とは思っていましたけど、実際に指導を受けられて楽しかったです(笑)」。貴重な“非日常”の経験を味わった。

 中でも今井にとっては、とにかく楽しみにしていることがあった。今回のJリーグ選抜の特別コーチを務めた柿谷曜一朗さんは、小さいころから憧れ続けたアイドル。選抜のコーチ就任の知らせを聞いた時には、思わずテンションが上がってしまったことは言うまでもない。

「柿谷さんとは前日練習でミニゲームをやった時に、一緒のチームでたくさんパス交換できたんです。自分は柿谷さんが小学生時代から一番好きな選手で、正直一緒にボールを蹴れるとは思っていなかったので、本当に楽しかったですし、自分が言っていいのかわからないですけど、やりたいことが合う感じもありました。それに試合前にも『オマエが一番上手いからゲームを作るんだぞ』と声を掛けてくれたので、正直それが一番嬉しかったです」。

 国立競技場で日本高校選抜と対峙した試合も4-1で快勝。3日間の活動で濃厚な時間を過ごした今井が、新たなシーズンに向けて大きなモチベーションを得たことは想像に難くない。

『NEXT GENERATION MATCH』でプレーする今井健人


 迎える2025年シーズン。未来を見据えた上でも重要な1年に懸ける想いは、もうとっくに滾らせている。

「代表でも海外の選手との差は凄く感じましたし、キャンプに参加した時にもトップの選手に求められるベースの部分が今のサッカーでは凄く大事だと感じたので、そのベースを上げたうえで、自分の武器である技術や前を向いて運ぶことを磨いて、プレミアの中でも圧倒的な存在になりたいなと思います」。

「チームとしても去年はプリンスで優勝して、『強い代だ』といろいろな人に言われていましたけど、その去年に負けないぐらいの結果をプレミアで出せれば、よりそのイメージも更新できると思うので、今年も強いチームにしていきたいと思います」。

 一言で表現すれば、神出鬼没。チームとゲームをコントロールする、ランドで育まれてきた緑のプレーメイカー。ピッチの上で今井健人の動きを追うだけでも、おそらくはサッカーのいろいろな魅力に気付くことができるはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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