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[船橋招待]率先して応援団長も買って出るエネルギッシュな「27番のボランチ」。鹿島ユースMF福岡勇和がグループにもたらすポジティブなパワー

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鹿島アントラーズユースの戦闘型ボランチ、MF福岡勇和(新2年=鹿島アントラーズつくばジュニアユース出身)

[3.28 船橋招待U-18大会 鹿島ユース 1-0 名古屋U-18 稲毛海浜公園球技場]

 その得難いキャラクターは、いつだって周囲に最高の笑顔を連れてくる。ただ、もちろんそれはあくまでも持ち合わせている才能のごく一部。ひとたびピッチに立てば、容赦なく相手ボールをガツンと奪い切り、丁寧に左右へボールを動かしながら、中盤の中央に堂々とそびえ立つ。

「今年は2年生になる時期ということで、プロが決まる人はもう決まる年齢ですし、ここから上に行けるか行けないかを考えても大事な1年になると思うので、大きな飛躍の年にしたいと思っています」。

 昨シーズンはあと一歩で届かなかったプレミア制覇を明確に目指す、鹿島アントラーズユース(茨城)の戦闘型ボランチ。MF福岡勇和(新2年=鹿島アントラーズつくばジュニアユース出身)がピッチ内外で発するエネルギーは、グループにポジティブなパワーをもたらしていく。


 全国から強豪が集って行われている『第30回船橋招待U-18サッカー大会』の初日。25分ハーフという短い時間の試合の中でも、福岡の存在感は抜群。同じプレミア勢の名古屋グランパスU-18(愛知)を向こうに回しても、球際の激しさに躊躇はない。

「学年が1つ上がるだけでも、チームメイトにより声を掛けられるようになったり、去年はボールを奪えなかったところも奪えるようになっていますし、そういう部分での強さが出てきたかなとは自分でも思いますね。自分は攻撃の部分より、守備の部分の方が得意なので、ボールを奪うところは自分の役目かなと思います」。

 印象的なシーンがあった。1点をリードして迎えた後半15分。相手が縦に差し込んだボールを27番が巧みに絡め取り、素早くMF佐藤湧斗(新3年)へパス。FW高木瑛人(新1年)を経由してMF平島大悟(新2年)が打ち切ったシュートは相手GKのファインセーブに阻まれたものの、決定機まで繋がったショートカウンターの起点を力強く創出してみせる。

 結果的に1-0で勝ち切った名古屋U-18戦、1-1で引き分けた清水エスパルスユース(静岡)戦と、ともに福岡はフル出場で中盤に君臨。「もうシーズンが始まる直前で、チームとしても完成度を上げていかなくてはいけない中で、シュートを決め切れないところもあったので、もう少しかなと思います」。2試合の印象を問われ、個人ではなく全体のことに言及するあたりにも、チームの中心を担っていこうという自覚が明確に滲んだ。



 昨年の福岡は事実上のU-17ワールドカップ1次予選に当たる『U17アジアカップ予選』も含め、U-16日本代表の活動へコンスタントに招集されていたものの、来月から始まる『U17アジアカップ』のメンバーからは落選。同い年のチームメイトでもあるFW吉田湊海(新2年)とDF元砂晏翔仁ウデンバ(新2年)は選出されているだけに、その状況に思うところがないはずもない。

「湊海はずっと代表に入っていますし、晏翔仁も最近は代表に入り始めているので、そこからは大きな刺激を受けています。今回のメンバーから外れて悔しい気持ちはありますけど、ワールドカップの出場が決まれば、またメンバーに入ることはできると思うので、そこにまた選ばれるように、プレミアの試合で活躍したいと思います」。

 この日も鹿島ユースのドイスボランチを組んだ福岡とMF大貫琉偉(2年)の2人は、ピッチ上で一際輝きを放っていた。ともにU-17年代の彼らが悔しさを糧にさらなる成長を遂げれば、それが所属チームにとっても、それこそ代表にとっても、大きなパワーになることは間違いのないところ。勝負はまだまだこれからだ。

 ピッチ外でもその明るいキャラクターは、グループの雰囲気づくりに欠かせない役割を果たしている。自分が出ていないカテゴリーの試合の際は、ピッチサイドから誰よりも大きな声を張り上げ、選手たちを全力で応援。そのパワフルさは圧倒的だ。

「僕たちはチームで戦っていますし、応援も自分は得意な方なので、恥ずかしいというような想いもないですね。そういうこともチームが勝つためには大事だと思うので、そこは今年も続けていければなと思います」。

 昨シーズン終盤に開催された、優勝争い直接対決のホーム・前橋育英高(群馬)戦に2-1と競り勝った試合後。スタンドに詰めかけた大勢のサポーターとチームメイトやスタッフが見守る中、1年生ながら“挨拶”の大役を任された福岡は、コミカルな動きと抜群のユーモアで爆笑をかっさらってみせる。

「ああいうのは得意ですけど、たまたま浮かんできたことをやった感じでした(笑)。あのあとに親から動画が送られてきたんですけど、『ああ、結構ウケてたんだな』と思いましたね(笑)」。最後までやり切る力は、そんな場面でも十二分に発揮される。やはりこの16歳、只者ではない。



 今季からチームを率いている中野洋司監督は、福岡についてこう言及している。「本当によく喋れるタイプですが、サッカーになると凄くマジメで、ピッチ上でもコツコツやれるタイプの選手だと思うので、そこは凄く期待をしています。あとは、去年の最初は得点できていましたけど、最後の方はちょっと獲れなくなったので、ゴール前に出ていくところだったり、得点に絡むところはもうちょっとできるのかなと思っています」。

 去年のプレミアリーグでは18試合に出場して2得点を記録。いきなり開幕スタメンを手繰り寄せると、幸先よく3節と4節に連続ゴールを記録したものの、以降はノーゴールだっただけに、今季は明確な結果が求められるところ。ただ、そんなことは自身が一番よくわかっているはずだ。

 背番号は昨シーズンの19番から、より大きな数字の27番へと変わっている。「僕も最初はよくわからなかったですけど、満男さん(小笠原満男ユースコーチ兼アカデミーアドバイザー)のプロでの最初の番号だと聞きましたし、スタッフの方も『アントラーズにとって意味のある番号だ』とおっしゃっていたので、それは嬉しいことですし、もらったこの番号で頑張りたいです」。

 とにかく勝負にこだわる闘争心と、関わる人を存分に楽しませるエネルギーを標準装備した、鹿島ユースの『27番のボランチ』。2025年も福岡勇和の一挙手一投足からは、一瞬たりとも目が離せない。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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