90+4分の「ブザービーター」で超劇的に全国切符を獲得!千葉U-18に競り勝ったFC東京U-18を進化させた「攻撃陣と守備陣が言い合った日」
[5.31 日本クラブユース選手権関東予選2回戦 FC東京U-18 1-0 千葉U-18 東京ガス武蔵野苑多目的グランド]
正真正銘のラストプレーで手繰り寄せた決勝ゴール。ピッチの選手、ピッチサイドの選手、スタッフ、サポーター。チームに関わる全ての人たちの、青赤の感情が解き放たれる。やはりこんな瞬間を味わうことができるのだから、サッカーというスポーツに関わるのはやめられない。
「もう感情、爆発でしたね。あそこがサッカーの楽しいところだと思いますし、もう人生の中でも一番みたいな試合だったかなという印象です。凄く嬉しいですし、『サッカーをやっていて良かったな』というような試合だったと思います」(FC東京U-18・田邊晴大)
土壇場で決まった『ブザービーター』で、執念の全国切符奪取!5月31日、第49回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会関東予選2回戦が開催され、FC東京U-18(東京)とジェフユナイテッド千葉U-18(千葉)が対峙した一戦は、双方が決定機を作り合う展開の中で、後半45+4分にDF諏訪啓太(3年)がゴールを挙げたFC東京U-18が1-0で勝ち切って、夏の全国大会進出権をもぎ取っている。
「能力的なところで言うと明らかに今は彼らが上なので、そういった時に僕らはチームとして何ができるか、その上で個人をどう出すかというところでゲームプランを立てたので、どういうふうにしたら彼らの長所を消しながら、相手にダメージを与えられるかということを考えながらやっていました」(千葉U-18・藤田健監督)
前半のゲームリズムを握ったのは千葉U-18。中盤でMF伊藤暖(2年)とキャプテンのMF新井颯斗(3年)がボールを引き出し、丁寧にビルドアップしながら、隙を見て左右へ展開。右はFW伊藤喬崇(3年)とMF大山遥哉(3年)、左はDF佐藤友孝(3年)とFW秋葉映潤(2年)が縦関係を組み、アグレッシブに前を目指す。
6分には伊藤暖が縦に刺し、ターンしたFW木原駿(3年)が放ったシュートは枠の左へ逸れるも好トライ。25分にも佐藤のパスから、秋葉がマーカーを巧みに剥がして左クロス。ニアに飛び込んだ木原は一歩届かず、ボールはFC東京U-18GK渡邊麻舟(2年)がキャッチしたものの、際どいシーンを作り出す。
一方のFC東京U-18は「ボールは持っていたんですけど、ゴールに行くようなチャンスがあまりなくて、苦しい時間が続いた印象です」とボランチのMF田邊晴大(3年)が話したように、ポゼッションの時間は長い中で、テンポアップするポイントを見出せず。時折右のMF菅原悠太(3年)、J1でも試合経験を重ねている左のMF北原槙(1年)の両翼が仕掛けても、チャンスを作り出すまでには至らない。
41分は千葉U-18。新井が高い位置でボールを奪い、木原が左へ振り分けると、秋葉のドリブルシュートは渡邊がキャッチ。43分も千葉に決定機。ここも新井が相手のビルドアップを引っ掛け、木原が打ち切ったシュートは枠の上へ。アウェイチームが押し気味に進めた前半は、それでもスコアレスでハーフタイムへと折り返す。


先に動いたのはFC東京U-18。後半開始からボランチにMF二階堂凛太郎(3年)と左サイドハーフにMF友松祐貴(2年)を投入し、北原を1トップ下に移して攻撃のテコ入れに着手する。
ただ、後半も先に好機を掴んだのは千葉U-18。6分。右サイドから大山が投げ入れたロングスローはファーに流れたものの、左から伊藤喬崇が上げたクロスに、DF斎藤敬太(2年)が合わせたヘディングはわずかにクロスバーの上へ。直後にも新井を起点に、FW島垣魁(3年)が枠の右へ外れるシュートを放つなど、先制点への意欲を打ち出し続ける。
「後ろは落ち着いている感じがあったから、ゼロでは行けるなと思っていました」と佐藤由紀彦監督も口にしたFC東京U-18は、攻撃の形を作り切れない中でも、DF鈴木楓(3年)とDF松野泰知(2年)の両センターバックコンビを中心に粘り強く堅陣を敷くと、19分にこの試合初めてのビッグチャンス。北原、DF小島颯来(3年)、菅原と細かく繋ぎ、小島のクロスにFW尾谷ディヴァインチネドゥ(3年)が合わせたダイビングヘッドは、千葉U-18GK上條冬桜(3年)が丁寧にキャッチするも、一撃で突き付けた失点の脅威。
29分は千葉U-18に絶好の先制機。ここも前線からのハイプレスで木原が相手ボールに突っかけ、拾った伊藤暖が至近距離から打ったシュートは、しかしクロスバーの上へ。「チームオーガナイズの部分で戦える部分はあると思います。ですけど、やはり最後にゴールを決めるところは、質の部分になるのかなと」(藤田監督)。スコアは0-0のままで、試合はいよいよ最終盤へ。
延長は行われず、同点の場合は即PK戦というレギュレーションもあって、35分を過ぎると双方がカードを切り合い、先に奪いたい大事な1点。44分はFC東京U-18。尾谷が左へ流し、友松が蹴り込んだクロスに、全力のスプリントで突っ込んだ小島のヘディングは上條ががっちりキャッチ。アディショナルタイムは3分。お互いに一歩も譲らない。
ラストプレーだということは、ピッチ上の全員がわかっていた。45+4分。FC東京U-18の右CK。神経を研ぎ澄ませた菅原が、完璧な軌道をファーへ届けると、「本当にラストプレーというところで、正直『決めなきゃいけない』というプレッシャーが結構ありました」という諏訪が高い打点でヘディング。ボールはゆっくりとゴールネットへと吸い込まれる。
「最初に自分がガッツポーズしたところまでは覚えているんですけど、そこからはもうもみくちゃにされちゃって、自分の周りに誰がいるのかもわからなくなりましたね」(諏訪)。そして、直後にタイムアップのホイッスルが吹き鳴らされる。
「『PKも含めて勝とうよ。そんなに甘くないよ』ということも含めて選手には伝えたんですけど、劇的な勝ち方で、あそこで決めちゃうのは凄いですよね」と笑顔を見せたのは佐藤監督。FC東京U-18が超劇的な後半アディショナルタイムの決勝点で熱戦を制し、夏の全国大会へと勝ち上がる結果となった。




3月。プレミアリーグ開幕の直前に行われたイギョラ杯の大会最終日。FC東京U-18は日体大柏高相手に2点を先行したものの、そこから3点を奪われてまさかの逆転負け。「あのころは個人でという感じが強くて、チームになっていなかったですし、後ろと前で意識が分かれてしまうことが多くて、お互いの意見も対立して、チームとしてうまく噛み合わない感じがありましたね」と振り返るのは田邊。試合後の選手たちは、意見の食い違いから攻撃陣と守備陣に分かれて、激しい言い合いになったという。
「『ふざけんなよ』『何で後ろは来ねえんだよ』『そんなの勝手に行かれても付いていけねえよ』みたいな感じで、彼らが凄く熱くなっていたんです」(佐藤監督)。この光景に出くわした指揮官は、「ここだ!」と思ったそうだ。
「自分も負けて凄く悔しいところはあったんですけど、それ以上に選手が感情的になっていたので、もう熱が冷めないうちに『やれ、やれ』と。でも、感情的なんだけど、ギリギリのところまでの感情じゃなくて、建設的な感情になっていたから、ずっと話を聞いていると『ああ、結構芯食ってるな』と。お互いに言い合う中で、いろいろな観点から話す選手もいましたし、面白かったです」。
結果的にこの“言い合い”は、プラスの方向に作用した。プレミアEASTでは9試合を消化して、5勝3分け1敗と上々の成績で、現在は暫定2位。「まだ言い合う時もあるんですけど、それも良い言い合いというか、チームが強くなるためにみんなが考えてプレーしていますし、良い声を掛け合えていることは強く感じます」と諏訪が話せば、「プレミアを通して後ろも前もしっかりコミュニケーションを取るようになりましたし、まず自分のやるべきことをやるようになったので、対立するようなことはなくなりましたね。今はチームとしても噛み合っているのかなと思います」とは田邊。お互いの主張を、お互いが受け入れ、きちんと消化し、改善する。チームには良いサイクルが生まれている。
「彼らの良さはお互いに言い合っても、それでプイッとならずに、繋がるんですよ。もちろん大人が見ながら、ダメだと思ったら『はい、終わり』となりますし、今は最後まで言い合いさせながら、という感じですね。本当に選手たちをちょっとでも上手くさせたいという一心で、コーチングスタッフと日々やっています」(佐藤監督)
この日のピッチサイドでは、メンバー外の選手たちがチャントを歌い、ピッチ上の選手たちを鼓舞し続けていた。決勝点が入った時、彼らも含めて作られた大きな歓喜の輪は、チームのさらなる一体感の醸成を、きっとより推し進めてくれることだろう。ポジティブな対立を経た、若き青赤の変化と進化。2025年のFC東京U-18は、きっとまだまだ面白くなる。


(取材・文 土屋雅史)
正真正銘のラストプレーで手繰り寄せた決勝ゴール。ピッチの選手、ピッチサイドの選手、スタッフ、サポーター。チームに関わる全ての人たちの、青赤の感情が解き放たれる。やはりこんな瞬間を味わうことができるのだから、サッカーというスポーツに関わるのはやめられない。
「もう感情、爆発でしたね。あそこがサッカーの楽しいところだと思いますし、もう人生の中でも一番みたいな試合だったかなという印象です。凄く嬉しいですし、『サッカーをやっていて良かったな』というような試合だったと思います」(FC東京U-18・田邊晴大)
土壇場で決まった『ブザービーター』で、執念の全国切符奪取!5月31日、第49回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会関東予選2回戦が開催され、FC東京U-18(東京)とジェフユナイテッド千葉U-18(千葉)が対峙した一戦は、双方が決定機を作り合う展開の中で、後半45+4分にDF諏訪啓太(3年)がゴールを挙げたFC東京U-18が1-0で勝ち切って、夏の全国大会進出権をもぎ取っている。
「能力的なところで言うと明らかに今は彼らが上なので、そういった時に僕らはチームとして何ができるか、その上で個人をどう出すかというところでゲームプランを立てたので、どういうふうにしたら彼らの長所を消しながら、相手にダメージを与えられるかということを考えながらやっていました」(千葉U-18・藤田健監督)
前半のゲームリズムを握ったのは千葉U-18。中盤でMF伊藤暖(2年)とキャプテンのMF新井颯斗(3年)がボールを引き出し、丁寧にビルドアップしながら、隙を見て左右へ展開。右はFW伊藤喬崇(3年)とMF大山遥哉(3年)、左はDF佐藤友孝(3年)とFW秋葉映潤(2年)が縦関係を組み、アグレッシブに前を目指す。
6分には伊藤暖が縦に刺し、ターンしたFW木原駿(3年)が放ったシュートは枠の左へ逸れるも好トライ。25分にも佐藤のパスから、秋葉がマーカーを巧みに剥がして左クロス。ニアに飛び込んだ木原は一歩届かず、ボールはFC東京U-18GK渡邊麻舟(2年)がキャッチしたものの、際どいシーンを作り出す。
一方のFC東京U-18は「ボールは持っていたんですけど、ゴールに行くようなチャンスがあまりなくて、苦しい時間が続いた印象です」とボランチのMF田邊晴大(3年)が話したように、ポゼッションの時間は長い中で、テンポアップするポイントを見出せず。時折右のMF菅原悠太(3年)、J1でも試合経験を重ねている左のMF北原槙(1年)の両翼が仕掛けても、チャンスを作り出すまでには至らない。
41分は千葉U-18。新井が高い位置でボールを奪い、木原が左へ振り分けると、秋葉のドリブルシュートは渡邊がキャッチ。43分も千葉に決定機。ここも新井が相手のビルドアップを引っ掛け、木原が打ち切ったシュートは枠の上へ。アウェイチームが押し気味に進めた前半は、それでもスコアレスでハーフタイムへと折り返す。


先に動いたのはFC東京U-18。後半開始からボランチにMF二階堂凛太郎(3年)と左サイドハーフにMF友松祐貴(2年)を投入し、北原を1トップ下に移して攻撃のテコ入れに着手する。
ただ、後半も先に好機を掴んだのは千葉U-18。6分。右サイドから大山が投げ入れたロングスローはファーに流れたものの、左から伊藤喬崇が上げたクロスに、DF斎藤敬太(2年)が合わせたヘディングはわずかにクロスバーの上へ。直後にも新井を起点に、FW島垣魁(3年)が枠の右へ外れるシュートを放つなど、先制点への意欲を打ち出し続ける。
「後ろは落ち着いている感じがあったから、ゼロでは行けるなと思っていました」と佐藤由紀彦監督も口にしたFC東京U-18は、攻撃の形を作り切れない中でも、DF鈴木楓(3年)とDF松野泰知(2年)の両センターバックコンビを中心に粘り強く堅陣を敷くと、19分にこの試合初めてのビッグチャンス。北原、DF小島颯来(3年)、菅原と細かく繋ぎ、小島のクロスにFW尾谷ディヴァインチネドゥ(3年)が合わせたダイビングヘッドは、千葉U-18GK上條冬桜(3年)が丁寧にキャッチするも、一撃で突き付けた失点の脅威。
29分は千葉U-18に絶好の先制機。ここも前線からのハイプレスで木原が相手ボールに突っかけ、拾った伊藤暖が至近距離から打ったシュートは、しかしクロスバーの上へ。「チームオーガナイズの部分で戦える部分はあると思います。ですけど、やはり最後にゴールを決めるところは、質の部分になるのかなと」(藤田監督)。スコアは0-0のままで、試合はいよいよ最終盤へ。
延長は行われず、同点の場合は即PK戦というレギュレーションもあって、35分を過ぎると双方がカードを切り合い、先に奪いたい大事な1点。44分はFC東京U-18。尾谷が左へ流し、友松が蹴り込んだクロスに、全力のスプリントで突っ込んだ小島のヘディングは上條ががっちりキャッチ。アディショナルタイムは3分。お互いに一歩も譲らない。
ラストプレーだということは、ピッチ上の全員がわかっていた。45+4分。FC東京U-18の右CK。神経を研ぎ澄ませた菅原が、完璧な軌道をファーへ届けると、「本当にラストプレーというところで、正直『決めなきゃいけない』というプレッシャーが結構ありました」という諏訪が高い打点でヘディング。ボールはゆっくりとゴールネットへと吸い込まれる。
「最初に自分がガッツポーズしたところまでは覚えているんですけど、そこからはもうもみくちゃにされちゃって、自分の周りに誰がいるのかもわからなくなりましたね」(諏訪)。そして、直後にタイムアップのホイッスルが吹き鳴らされる。
「『PKも含めて勝とうよ。そんなに甘くないよ』ということも含めて選手には伝えたんですけど、劇的な勝ち方で、あそこで決めちゃうのは凄いですよね」と笑顔を見せたのは佐藤監督。FC東京U-18が超劇的な後半アディショナルタイムの決勝点で熱戦を制し、夏の全国大会へと勝ち上がる結果となった。




3月。プレミアリーグ開幕の直前に行われたイギョラ杯の大会最終日。FC東京U-18は日体大柏高相手に2点を先行したものの、そこから3点を奪われてまさかの逆転負け。「あのころは個人でという感じが強くて、チームになっていなかったですし、後ろと前で意識が分かれてしまうことが多くて、お互いの意見も対立して、チームとしてうまく噛み合わない感じがありましたね」と振り返るのは田邊。試合後の選手たちは、意見の食い違いから攻撃陣と守備陣に分かれて、激しい言い合いになったという。
「『ふざけんなよ』『何で後ろは来ねえんだよ』『そんなの勝手に行かれても付いていけねえよ』みたいな感じで、彼らが凄く熱くなっていたんです」(佐藤監督)。この光景に出くわした指揮官は、「ここだ!」と思ったそうだ。
「自分も負けて凄く悔しいところはあったんですけど、それ以上に選手が感情的になっていたので、もう熱が冷めないうちに『やれ、やれ』と。でも、感情的なんだけど、ギリギリのところまでの感情じゃなくて、建設的な感情になっていたから、ずっと話を聞いていると『ああ、結構芯食ってるな』と。お互いに言い合う中で、いろいろな観点から話す選手もいましたし、面白かったです」。
結果的にこの“言い合い”は、プラスの方向に作用した。プレミアEASTでは9試合を消化して、5勝3分け1敗と上々の成績で、現在は暫定2位。「まだ言い合う時もあるんですけど、それも良い言い合いというか、チームが強くなるためにみんなが考えてプレーしていますし、良い声を掛け合えていることは強く感じます」と諏訪が話せば、「プレミアを通して後ろも前もしっかりコミュニケーションを取るようになりましたし、まず自分のやるべきことをやるようになったので、対立するようなことはなくなりましたね。今はチームとしても噛み合っているのかなと思います」とは田邊。お互いの主張を、お互いが受け入れ、きちんと消化し、改善する。チームには良いサイクルが生まれている。
「彼らの良さはお互いに言い合っても、それでプイッとならずに、繋がるんですよ。もちろん大人が見ながら、ダメだと思ったら『はい、終わり』となりますし、今は最後まで言い合いさせながら、という感じですね。本当に選手たちをちょっとでも上手くさせたいという一心で、コーチングスタッフと日々やっています」(佐藤監督)
この日のピッチサイドでは、メンバー外の選手たちがチャントを歌い、ピッチ上の選手たちを鼓舞し続けていた。決勝点が入った時、彼らも含めて作られた大きな歓喜の輪は、チームのさらなる一体感の醸成を、きっとより推し進めてくれることだろう。ポジティブな対立を経た、若き青赤の変化と進化。2025年のFC東京U-18は、きっとまだまだ面白くなる。


試合後に恒例の「シャー」で笑顔を見せる諏訪啓太と京増雅仁コーチ
(取材・文 土屋雅史)


