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[MOM5149]広島ユースMF野口蓮斗(2年)_地元・熊本の凱旋試合で繰り出したゴラッソは確かな成長の証!「頭がずっと動く」司令塔が見据える世界との邂逅

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地元凱旋でゴラッソを沈めたサンフレッチェ広島ユースMF野口蓮斗(2年=ソレッソ熊本出身)

[6.29 プレミアリーグWEST第11節 大津高 1-2 広島ユース 大津町運動公園球技場]

 慣れ親しんだ地元に帰って戦う、特別な一戦。数多くの見知った顔がスタンドに詰めかけ、かつてのチームメイトも対戦相手としてピッチに立っている。この1年半近い時間で成長した姿を見せつけるための、故郷を離れて厳しい環境で勝負する決断を下した意味を証明するための、そんな覚悟は十分に整っていた。

「自分も熊本出身で、会場も熊本ということで、友だちも家族もたくさん見にきてくれていたので、やってやるぞという気持ちは強かったです。本当にたくさん知っている人がいて、特別な試合でしたし、楽しかったです」。

 熊本での凱旋試合に臨んだ、サンフレッチェ広島ユース(広島)の中盤を束ねるコンダクター。MF野口蓮斗(2年=ソレッソ熊本出身)は豪快なゴラッソで叩き出した同点ゴールで、自身の価値を強烈にアピールしてみせた。
 

 プレミアリーグWEST第11節。前半戦のラストゲームとなる90分間。前節はヴィッセル神戸U-18に1-2で競り負けたこともあり、前年王者の大津高(熊本)のアウェイに乗り込んだ広島ユースの選手たちは、とにかく気合いが入っていた。

 試合のメンバー表を見ると、双方の“前所属チーム”の記載欄に、あるクラブ名が多いことに気付く。満田誠(ガンバ大阪)や松岡大起(アビスパ福岡)、坂本一彩(ウェステルロー/ベルギー)など数多くのプロ選手も輩出している、熊本の中学年代を牽引する『ソレッソ熊本』の出身者が、この日はお互いのメンバーリストに4人ずつ名前を連ねていたのだ、

 広島ユースでは野口を筆頭に、MF太田大翔(2年)、FW菊山璃皇(2年)がスタメンに指名され、GK枝川航大(1年)はベンチ入り。一方の大津ではDF渡部友翔(2年)とMF山本翼(2年)が先発出場で、MF内村涼夏(3年)とMF緒方涼央慈(3年)がベンチスタート。彼らにとっては“同窓会”のような試合が幕を開ける。

「特に前半は押し込まれる時間帯が長かったですね」と野口が話したように、試合は立ち上がりからホームチームがリズムを掴み、9分には早くも先制。以降も広島ユースはなかなか攻撃の手数を繰り出せず、相手の鋭いアタックに守勢へ回る時間を強いられる。

 だが、背番号8は虎視眈々とその時を狙っていた。25分。中盤の低い位置で、3バックの中央に入ったDF林詢大(3年)と縦パスを交換しながら、少しずつポジションを高めに上げると、マークが緩んだタイミングで反転して左に持ち出し、ゴールを見据える。

「ファーストタッチがいいところに止まったので、最初はパスしようかなと思ったんですけど、ちょっとコースが空いていたこともあって、『ここは1回振ってみよう』と思って、感覚で振ってみました」。

 左足から繰り出したシュートは、少しブレながらも一直線に右スミのゴールネットへ文字通り突き刺さる。「コースは狙い通りですけど、あんなにうまく行くとは思わなかったです。自分でも驚きました」。まさにスーペルゴラッソと言うべき一撃にスタンドもどよめきが収まらない。





 野口にとってはこれが28試合目の出場にして、プレミアリーグ初ゴール。「練習でもそんなに決めていないですし、普段はミドルを狙ってもほぼ枠外なので(笑)、まず枠に行ったのが良かったなと思います」とは本人だが、そんな貴重な1点をこの地元でのゲームに持ってくるのだから、つまりは“持っている”ということなのだろう。

 以降も流れを完全に引き寄せるまでには至らなかったものの、同点に追い付いたことで勇気を得たチームは、後半に入ってFW宗田椛生(3年)が逆転ゴールを沈めると、それがそのまま決勝点に。広島ユースは敵地で競り勝ち、勝点3を獲得する。

「もっと攻撃でボールを落ち着かせたり、マイボールの時間を増やせたら、もうちょっと楽な試合になったかなとは思うんですけど、ゴールという形で結果が残せたので良かったかなと思います」。

「ソレッソの選手たちはもともと一緒に全国優勝を目指してきたチームメイトだったので、試合前にもお互いに連絡は取っていましたし、今はライバルですけど、実際に対戦すると感慨深いものがありました。大津の応援にもソレッソの人が結構いましたね」。

 昨年の対戦時もフル出場で勝利に貢献したこともあり、これで熊本凱旋試合は2連勝。「中盤は疲労とともに頭の回転が遅くなっていった中で、野口は頭がずっと動いていましたね」と野田知監督も高評価を与えた野口の得点も含めた躍動が、広島ユースに大きな勝点3を力強くもたらした。



 昨シーズンは1年生ながら後半戦から定位置を掴み、チームにとって欠かせない戦力に。今季は開幕2試合こそU-17日本代表の活動で欠場したものの、以降のリーグ戦ではフル出場を継続中。自身の中でも、より中心選手としての自覚も高まっているようだ。

「チームをまとめたりとか、雰囲気を上げたりする部分も今日は良かったと思いますね。今年は試合に出続けていることもありますし、去年から出させてもらっていた中で、そういうことができるようになってきているので、続けていきたいと思っています」。

 既にトップチームの練習にも参加しており、プロの選手たちの空気感を肌で感じる中でも、とりわけ『紫の魔法使い』のプレーには小さくない衝撃を受けたという。「トルガイ・アルスラン選手は、なんかわからないですけど、ボールが全然取れなかったですね、普段トップの練習に参加する時は対人が多いんですけど、スピード感にはまだ追い付けていないことが多いので、そこに慣れていくことが大事かなと思いますし、そういう経験ができるのはメチャメチャ大きいです」。



 今年の11月にはU-17ワールドカップが控えている。U-17日本代表でもチームメイトの吉田湊海(鹿島アントラーズユース)や浅田大翔(横浜F・マリノス)がトップチームデビューを果たすなど、同年代の仲間たちが活躍する姿は刺激になっているが、野口は至って冷静にベクトルを自分へ向けている。

「もちろんそういう選手に追い付かないといけないという想いもありますけど、焦らずに自分にやれることをやって、プレミアでアピールして、もっともっと上に上り詰めていきたいなと思っています。ワールドカップは世界のトップトップの選手たちと戦える舞台なので、そこに選ばれるように努力して、フィジカル面もちゃんと鍛えていきたいですし、ここからの半年間はだいぶ成長できるかなと思います」。

 世界との邂逅は、もうすぐそこまで迫っている。熊本で育まれ、吉田の地でさらなる進化を遂げてきた、広島ユースの司令塔。野口蓮斗は望んだ場所へとたどり着くため、しなやかに、軽やかに、輝く未来へと続いていく階段を駆け上がる。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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