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20周年を迎えた「セカンドチームの選手たち」が集う真剣勝負の大会。参加者が語る『COPA SEIRITZ』が開催されることの意義と価値

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『COPA SEIRITZ』の参加チーム全員で記念写真

「今はセカンドチームにいる子たちが、勝敗にこだわって試合をやりながら、優勝したらカップがもらえるという大会を戦うことに意味があると感じています。なかなか陽の当たらなかった子たちが、何かをきっかけに変わっていくシーンは、今までもいっぱい見てきているので、この大会がそういうきっかけになってくれたらいいなと思います」(COPA SEIRITZ 大会実行委員長/成立学園サッカー部 森岡幸太コーチ)

 8月13日から15日までの3日間にわたって、静岡の時之栖スポーツセンターうさぎ島グラウンドをメイン会場に、成立学園高サッカー部が主催する『COPA SEIRITZ 2025』が開催された。同大会は「トップチームをバックアップする選手の強化、育成を図る大会」として2004年に発足。今年は20周年の記念大会を迎えている。

 大会実行委員長を務める成立学園の森岡幸太コーチは、そもそもこの大会を立ち上げた理由を以下のように語っている。

「僕は2004年に成立学園に来たのですが、トップチームは主要な大会が夏にある一方で、僕が担当していた来年の主力になりそうなセカンドチームの選手を強化できるような大会が、ほとんどなかったんです。そこで真剣勝負ができる場をいろいろ探していた時に、『じゃあ、そういう場を作っちゃえ』と思って、知り合いのチームに声を掛けて大会を作ったのがスタートですね」。

 基本的に『COPA SEIRITZ』に参加するのはセカンドチームでプレーしている選手たちだが、毎年8月の夏休み期間に行われるため、この大会でのパフォーマンスが認められ、後期のシーズンで一気にトップチームで台頭し、躍動する選手たちも少なくない。

 また、初芝橋本高末吉塁(岡山)、青森山田高三國スティビアエブス(カセサートFC/タイ)、アルビレックス新潟U-18藤田和輝(新潟)など、のちのJリーガーも複数人がこの大会を経験していることも語り落とせない。

 今大会に参加したのは前橋育英高流通経済大柏高山梨学院高四日市中央工高立正大淞南高東山高帝京長岡高興國高米子北高滝川二高浜松開誠館高、羽衣学園高(※フレンドリーマッチのみの参加)、成立学園の高体連13チームに加え、FC町田ゼルビアユースアルビレックス新潟U-18RB大宮アルディージャU18ベガルタ仙台ユースとJクラブユース勢4チームの、計17チーム。大会王者にはオリジナルの優勝カップが贈呈される。



「普段なかなか公式戦に絡めない選手たちが、こういう良い相手とやれるという意味では凄くありがたい大会ですし、東北以外のチームと対戦できるのも貴重な機会だと思います」と話すのは、仙台ユースの中原貴之コーチ。今回の大会メンバーには、普段は宮城県リーグを主戦場に置く選手たちが多く、県外の強豪との対戦もモチベーションが上がる1つの要因だ。

 また、実戦形式だからこそ学べるものの重要性も、中原コーチは強調する。「いろいろなタイプのチームと試合をする中で、どうしたら守れて、どうしたら点が獲れるかということを、もっとピッチの中で考えてやりたいよねとは彼らに話していて、引き出しを増やしてあげるにはもってこいの大会だと思います」。

 仙台ユースはこの夏のクラブユース選手権で、全国準優勝と大躍進。鹿島アントラーズユースと対峙した決勝に、後半のアディショナルタイムから出場したFW佐々木亮(2年)は「チーム全体のモチベーションもあの準優勝で上がりましたけど、クラブユースも含めて、あまりAチームの試合に絡めていない自分たちがこういうところで結果を出して、Aチームの選手が焦るぐらいやらないと、もっと上に行けないなと思います」ときっぱり言い切っている。

 チーム全体が大きな目標に掲げているのは、やはりプレミアリーグへの昇格。「今年でプレミアに昇格できれば、来年プレミアで戦うのは君たちだよということを、特に2年生の彼らには感じてほしいですね」と中原コーチが話せば、「プレミアは3年生に上げてもらうのではなく、2年生の自分たちで上げていきたいので、自分もどんどんAチームの試合に絡んでいきたいです」と佐々木。この夏の『COPA SEIRITZ』組の選手から、どれだけAチームに食い込んでいけるかが、目標達成への1つのカギを握っていることは間違いない。

仙台ユース×滝川二高


「とにかく自分の良さを出そうとして、生き生きしている選手が多いですね。個々のモチベーションは高いですし、凄くチャレンジしているなと。彼らもこういう大会が一番伸びるんじゃないかなと思いますね」。プレミアリーグ参戦2年目の帝京長岡を長年指導している西田勝彦コーチは、選手の意欲の高さにも言及しながら、違う視点からこの大会の意義を口にする。

「ここにいるスタッフの方々みんなが、何とかこの選手たちが輝けるようにというモチベーションを持っているのが素晴らしいなと思いますし、だんだん次世代の若いスタッフが指揮を執ったりして、うまく指導者のバトンも繋いでいくという意味でも、凄く意義のある大会ですよね」。

 今回の『COPA SEIRITZ』に挑む帝京長岡を率いていたのは、同校のOBでもある30歳代前半の藤田涼輔コーチ。森岡実行委員長も「指導者同士もいろいろな良いところを吸収し合える場になってくれれば非常にいいですよね」と語っているが、情熱に満ちた若い指導者にとっても、勝負の懸かった大会でチームの指揮を執ることで、多くの経験を得られることは言うまでもない。

 前半戦の大津高戦でプレミアデビューも飾っているDF茂木勇樹(3年)は、この夏のさらなる飛躍を誓っている。「セカンドチームからトップチームに食い込んでいくために、ここで自分たちがどうアピールできるかが大事だと思うので、みんな仲間ですけど、競い合いながらやっています。自分もプレミアで出た時も全然満足できる出来ではなかったので、夏のこういう大会で自分を鍛えて、もう1回後期でチャンスを掴めるように頑張りたいです」。後半戦のプレミアで彼らがどれぐらい台頭してくるのか、今から非常に楽しみだ。

帝京長岡高×流通経済大柏高


 今年は20周年の記念大会ということで、各チームから2人ずつの選手が出場する『エキシビションマッチ』も行われた。指導者陣も揃いのポロシャツを着込んで2チームに分かれ、選手たちもこの試合のために作成されたユニフォームに身を包み、即席のチームメイトたちとボールを蹴り合う。



「もうちょっとお祭り的になるかなと思っていたんですけど、結構バチバチの真剣勝負になりましたね(笑)。それを見て『ああ、この子たちもみんなサッカー小僧だな』と。やっぱりピッチに入ったら負けたくないんですよ」と嬉しい“誤算”を明かすのは森岡実行委員長。ピッチの周囲は各参加チームの選手がぐるりと取り囲み、良い雰囲気が醸成されていたという。

 なお、試合は0-0で決着がつかなかったため、急遽スタッフ陣によるPK戦で勝敗を争うことに。町田ユースの小林裕紀コーチや、大宮U18の金澤慎コーチ、新潟U-18の田中達也監督といった“元Jリーガー”たちも真剣にPKに臨み、会場は大いに盛り上がったそうだ。


PKキッカーを務める新潟U-18・田中達也監督



 大会方式は4チーム総当たりによるグループリーグののち、各グループの順位によって振り分けられた決勝リーグの結果で、最終順位が決まるというもの。優勝の懸かった1位~4位リーグには前橋育英、東山、滝川二、仙台ユースが進出した中で、2連勝同士の前橋育英と東山が最終戦で激突することに。実質の“決勝戦”はバチバチの空気感の中で幕を開ける。


東山のスタメン
後列左からGK志賀陽向、DF片岡亮太朗、FW田村龍大朗、FW浜辺蒼空、MF中村海聖、DF尾根碧斗。前列左からDF北村悠起、MF大野琥翔、MF雪本迅之助、DF中井真栄、MF尾上隼麻



前橋育英のスタメン
後列左からFW小宮澄海、DF萱沼雅也、MF市川聖龍、DF瀬田心平、MF依田爽史、GK鈴木彪琉。前列左からDF佐々木遥斗、DF山中櫂成、FW澤村周、MF徳永悠、MF岡ノ谷司

 序盤から攻勢に出たのは、得失点差の関係で引き分けでも優勝が決まる東山。前半13分には中井の右クロスに、田村が合わせたヘディングはゴール左へ逸れるも好トライ。18分にも田村の左ロングスローから、雪本がわずかに枠を越えるボレーを放つなど、惜しいシーンを創出する。

 一方の前橋育英は29分に細かいパスワークを披露し、佐々木のパスから依田のシュートはDFをかすめてゴール右へ。ハーフタイムを挟んで、後半9分には高い位置でボールを奪った澤村がフィニッシュ。ここも軌道は枠を外れるも、得点の匂いを漂わせる。

 試合が動いたのは最終盤の26分。東山は左サイドを尾上が仕掛け、中央へ送られたボールを途中出場のFW上羽瑛大が合わせたシュートは、ゴールネットへ吸い込まれる。前橋育英も30分には、やはり途中出場のMF佐藤輝空が決定機を掴むも、ここは東山のGK志賀がファインセーブ。同点弾は許さない。

上羽のゴールで東山が先制!


「今年はチームとして、まだタイトルが1つも獲れていなくて、みんなでこの大会は獲ろうと言ってやってきた中で、それが全員で獲れたことがとても嬉しかったです」(尾根)。20回目の記念大会は、東山が実に12年ぶりとなるタイトル奪取に成功。堂々と優勝カップを掲げ、みんなで歓喜を分かち合った。

森岡実行委員長から優勝カップを受け取る雪本




 準優勝となった前橋育英は、今大会に3年生だけで臨んでいた。「自分たち3年生にとっても、選手権を除けばこれが最後の遠征なので、優勝で有終の美を飾れるようにというのは、全員が意識して臨んできただけに、最後に負けたのは悔しかったです」という徳永の言葉にも、勝敗を競う試合に挑んだ真剣さが滲む。

「彼らも準優勝は悔しいと思いますけど、その気持ちがあるからこそ、次の成長に繋がると思うので、こういう大会が毎年あることは、本当に凄く良いなと感じています」と選手を慮った北村仁コーチは、この大会を戦うことで3年生に感じてほしいことをこう考えているという。

「やっぱりこういう遠征の中で仲間意識が出てくるので、3年生が『最後までやろうよ』という気になってくれれば一番いいですよね。途中で投げ出すのではなく、みんな同じ目線で最後の選手権に臨めるように、この夏で培ったものをしっかりそれぞれの舞台で出してもらって、ここから1人でもトップチームに上がってきてほしいです」。

 まずはプリンスリーグ関東での出場を目指すという徳永も、この大会でのプレーを経たことで、残された5か月あまりの高校生活への決意を、より強く固めている。「自分たちが結果を残すことで、トップチームにも刺激が与えられるはずですし、ここにいる誰一人諦めることなく、全員が最後に選手権のメンバーに入り込んでやろうという気持ちでやれていると思います。自分も後期のリーグ戦で結果を残せるように、日々の練習から日常のレベルを高めていきたいです」。

 昨シーズンの前橋育英を振り返ると、前半戦はBチームでプレーしていた鈴木陽(現・同志社大)が夏を過ぎたころからレギュラーを勝ち獲り、高校選手権での日本一に大きく貢献したことは記憶に新しい。そんな先輩のケースに続くための準備を、今年の3年生たちも着実に整えている。

果敢にドリブル突破を図る前橋育英MF徳永悠


「自分はもう10年以上、この大会に来させてもらっているんですけど、生徒は生徒同士で、自分は指導者の方からいろいろな刺激を受けて、自分自身も成長させてもらっています。あとは今回は優勝させてもらえましたけど、順位に関係なく真剣勝負できる、本気にさせてもらえる大会なので、それもありがたいと思います」。

 そう言葉を紡いだ東山の中原大亮コーチは、もちろん結果も追い求める一方で、それだけではない部分でも、指導者としてこの大会に参加する価値を実感したようだ。「もちろん優勝はしたいですけど、今回は勝ちだけにこだわらず、ピッチ上で『いろいろなことを把握できていたか?』『ちゃんとポジションを取れていたか?』ということを例年以上に問いかけながらやらせてもらった大会でした」。

「今年はインターハイ予選で負けてしまって、選手権もここ2年は予選で負けているので、もう1回自分自身もコーチとして、Bチームや1,2年生に対して、アプローチの仕方を変えようかなと。なので、目先の勝ちも大事ですけど、今後の夏以降に繋がるように意識してやっています」。

 このスタンスに関しても、森岡実行委員長が意図している『COPA SEIRITZ』の在り方と一致している。「勝敗はもちろん選手を育てるうえで大切なことだと思うんですけど、やはり選手を育成するために発足した大会なので、そこは絶対見失いたくないですね。来てもらうチームはやっぱり指導者の情熱があって、『何とかこの子たちを選手権のメンバーに1人でも多く入れたい』とか、『この層の子たちを強化することで、トップチームの選手と競争させて、チーム自体を強くしたい』という気持ちを持っているので、良い形でこの大会を使ってもらいたいと思っています」。

 前期はプリンスリーグ関西でもコンスタントに出場機会を得ながら、今回の大会に参戦したという尾根は、今後に向けて得られた収穫をはっきりと感じているようだ。「トップチームにいる時は、あまりチームを引っ張るようなことができなかったんですけど、このBチームを経験して、チームを引っ張らないといけない立場になった時に、そういう力を少しは付けられたのかなと思うので、これを機にトップチームの試合に出るだけではなくて、プリンスリーグでも選手権でもチームを引っ張っていけるような選手になっていきたいと思います」。

 優勝という成果と、選手個々の貴重な実戦経験を同時に手に入れた東山にとって、この『COPA SEIRITZ』の3日間で、指導者も選手も後半戦に向けて非常に実りある時間を過ごせたことは、あえて言うまでもないだろう。

相手のドリブルへシビアに寄せる東山DF尾根碧斗


 改めて森岡実行委員長に今後の『COPA SEIRITZ』に期待することを問うと、こんな答えが返ってきた。

「この大会では指導者がもちろん勝負に対しても、選手を育成するということに対してもこだわりがあるので、それを見ている選手たちは自ずとピッチで戦いますし、そういうチームが集まってくれているからこそ、より真剣勝負になるのかなと。だから、僕が何かをしてというよりは、こういう場に来てくれたチームが、それぞれに自チームを強化してくれているだけかなと思います」。

「せっかく来てもらっているので、各チームで交流してもらって、お互いの良いところを盗んでほしいですし、意外と休んでいるチームの選手も、ほかのチームの試合を見ているんですよね。僕ももう50歳ですけど(笑)、いろいろなチームの試合を見て凄く勉強になっているので、やっぱり選手も指導者もいろいろなことを吸収できる場になったらいいかなって」。

「今はセカンドチームにいる子たちが、勝敗にこだわって試合をやりながら、優勝したらカップがもらえるという大会を戦うことに意味があると感じています。なかなか陽の当たらなかった子たちが、何かをきっかけに変わっていくシーンは、今までもいっぱい見てきているので、この大会がそういうきっかけになってくれたらいいなと思います」。

 パンフレットにも記されている大会のコンセプトは『PRIDE OF SECOND』。2025年の『COPA SEIRITZ』に出場したセカンドチームで奮闘している選手の中から、たゆまぬ努力の先で望んだ結果を掴み取る高校生が、1人でも多く現れることを願ってやまない。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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