[MOM5230]横浜FCユースDF秦樹(3年)_ ルヴァン杯準決勝での「トップデビュー」を狙う18歳が残留争い直接対決の一戦で今季プレミア初ゴール!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.4 プレミアリーグEAST第16節 昌平高 1-2 横浜FCユース 昌平高校グラウンド]
今の自分がユースでプレーすることの意味は、誰よりも強く理解しているつもりだ。圧倒的なパフォーマンスを見せつけて、目の前のフォワードを完璧に封じる。圧倒的な実力を90分間発揮して、チームを勝利に導く。その先に待っているものを信じて、与えられた場所で、100パーセントの力を出し尽くす。
「自分はもうプロ契約している中でこっちに来ているので、しっかりチームを勝たせることはもちろんですけど、ユースの中でも違いを見せられるようなプレーをし続けて、トップに行った時も試合に出られるように、アピールし続けたいと思います」
既にトップチームとプロ契約を締結している、横浜FCユース(神奈川)のディフェンスリーダー。DF秦樹(3年=バディージュニアユース横浜出身)の攻守における躍動が、残留争い直接対決となった重要な一戦の勝利を、逞しく引き寄せた。
この日は欠場明けの一戦だった。第14節の東京ヴェルディユース戦では、1-6という大敗を突き付けられたが、秦は前半の途中で負傷交代。失点を重ねるチームをベンチから見つめることしかできなかった。翌週の浦和レッズユース戦はメンバー外。5試合ぶりの白星を手にした流れの中で、それでも戦線に帰ってきた秦を、和田拓三監督はスタメンでピッチに送り出す。
「凄く悔しい気持ちはありながら、自分たちの立ち位置を改めて知れた試合だったので、良い経験ができたとは言いたくないですけど、またイチからやらなきゃということを凄くみんなが感じられたと思います」と東京Vユース戦を振り返る秦は、自分が不在の中で勝利を収めた浦和ユース戦を受けて、スタメン復帰するにあたり、強い決意を抱いていた、
「浦和戦は外から見ていても、セットプレーも含めて厳しく相手のマークができていた中で、自分は1週間休ませてもらったので、ヴェルディと浦和の2試合でチームに迷惑をかけた分、今日は自分ができることは思い切ってやろうと思っていました」。
センターバックでコンビを組むのは、ここまでなかなか出場機会を得ることのできなかったDF家田唯白(3年)だが、昨シーズンは何度も隣同士で共闘してきており、特徴はよくわかっている。「昌平は上手いチームなので、とりあえず自分たちが簡単にやられちゃいけないと思って、試合に入りました」。やらせたくない。やらせない。集中力を研ぎ澄ませ、ピッチへと歩みを進めていく。
攻撃では積極的にボールを受け、ビルドアップの起点を創出。守備では個の力のある昌平の1トップ2シャドーを監視しつつ、空中戦でも、地上戦でも、1つずつ、丁寧に、相手のアタックの芽を摘み取っていく。


37分。横浜FCユースは左サイドでCKを獲得する。MF岩崎亮佑(3年)が鋭く蹴り込んだキックを、秦が頭で枠に収めたヘディングはGKにキャッチされたものの、ラインを割っていたというジャッジを副審が下し、ゴールが認められる。
「ヘディングして、『当たった!』と思ったんですけど、キーパーの真正面で『ああ……』と思ったら、副審がゴールの旗を上げていたという感じでした、今年は得点という形でなかなか貢献できていなかったので、そういった面では良かったかなと思います」。
15試合目の出場にして、これが秦にとっては今季のリーグ戦初ゴール。「和田さんにも『今日はセットプレーから1本決めてこい』とは言われていたので、とりあえず1点を獲れたことは良かったです」。背番号4が先制点を記録し、アウェイチームが1点をリードして、後半に折り返す。
屈辱の東京Vユース戦を経たチームの守備には、確かな手応えを感じていた。「自分たちの弱さを改めて感じられたヴェルディ戦があったからこそ、浦和戦も今日の試合も強度の高さに繋げられているのかなと。前線の選手も、中盤の選手も、全員でハードワークして、高い強度でできていたかなと思います」。
後半27分にはMF福岡湧大(2年)が追加点を挙げたものの、その4分後にはPKで失点し、点差は再び1点に。終盤は勝点差の近い昌平もアクセルを踏み込み、秦も「最後のところで後ろに重くなりすぎて、相手にボールを握られる時間が多くなった感じはありました」と振り返る展開を強いられながら、チーム全員が高い集中力を途切れさせず、ゲームクローズに取り掛かっていく。
ファイナルスコアは2-1。「もっと点を取らないといけないシーンはあったと思うんですけど、崩しのところも含めて練習でやっていることが試合でできているのは、凄く良いことですし、次に繋がるかなと思います」と話した秦にも、試合後には安堵と歓喜の笑顔が浮かんでいた。


昨年の12月にプロ契約を締結している秦は、既にプロサッカー選手という立場。ただ、「最近はトップに行ったり、ユースに行ったりもしていて、どちらかだけという感じではなくて、行ったり来たりしている感じです」という状況の中で、ここまではルヴァンカップで2試合、天皇杯で1試合、ベンチメンバーには入ったものの、まだトップチームの公式戦での出場機会は訪れていないが、“プロデビュー”の舞台として明確に見据えているのは、クラブにとっても初の挑戦となるルヴァンカップの準決勝だ。
「まずは来週の水曜日にルヴァンがあるので、限られた日数しかないですけど、明日から良い準備ができたらなと思いますし、今日もこれからトップチームの試合があるので、それを見ながら、(三浦文丈)監督がどのような選手を必要としているかを考えたいと思っています」
「やっぱり自分みたいな選手はギラギラ感が必要だと思いますし、練習から『もっと自分を使ってくれ』というアピールができれば、監督にも『変わったな』と思ってもらえると思うので、簡単ではないと思うんですけど、まずはベンチ入りして、試合に出るというところは目指していきたいです」。
もちろん今回の2試合でそれが叶わなかったとしても、その先にもまだ今シーズン中のデビューの可能性は残されている。秦が抱える決意は、固い。「今年はまだ3か月ありますし、カップ戦を含めれば7試合か8試合は公式戦があるので、ユースでしっかり結果を出して、トップでもしっかりアピールしていけたらなと思います」。
プレー面でも、メンタル面でも、着々と逞しさは増している。自身の特徴を、百戦錬磨のプロサッカー選手たちの中で過不足なく発揮できれば、必ずその時は訪れる。未来の横浜FCの最終ラインを担い得るポテンシャルを秘めた、18歳のセンターバック。秦樹が水色に染まったニッパツ三ツ沢球技場のピッチに立つ日は、きっとそう遠い日のことではない。


(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2025特集
▶高校サッカーの最新情報はポッドキャストでも配信中
[10.4 プレミアリーグEAST第16節 昌平高 1-2 横浜FCユース 昌平高校グラウンド]
今の自分がユースでプレーすることの意味は、誰よりも強く理解しているつもりだ。圧倒的なパフォーマンスを見せつけて、目の前のフォワードを完璧に封じる。圧倒的な実力を90分間発揮して、チームを勝利に導く。その先に待っているものを信じて、与えられた場所で、100パーセントの力を出し尽くす。
「自分はもうプロ契約している中でこっちに来ているので、しっかりチームを勝たせることはもちろんですけど、ユースの中でも違いを見せられるようなプレーをし続けて、トップに行った時も試合に出られるように、アピールし続けたいと思います」
既にトップチームとプロ契約を締結している、横浜FCユース(神奈川)のディフェンスリーダー。DF秦樹(3年=バディージュニアユース横浜出身)の攻守における躍動が、残留争い直接対決となった重要な一戦の勝利を、逞しく引き寄せた。
この日は欠場明けの一戦だった。第14節の東京ヴェルディユース戦では、1-6という大敗を突き付けられたが、秦は前半の途中で負傷交代。失点を重ねるチームをベンチから見つめることしかできなかった。翌週の浦和レッズユース戦はメンバー外。5試合ぶりの白星を手にした流れの中で、それでも戦線に帰ってきた秦を、和田拓三監督はスタメンでピッチに送り出す。
「凄く悔しい気持ちはありながら、自分たちの立ち位置を改めて知れた試合だったので、良い経験ができたとは言いたくないですけど、またイチからやらなきゃということを凄くみんなが感じられたと思います」と東京Vユース戦を振り返る秦は、自分が不在の中で勝利を収めた浦和ユース戦を受けて、スタメン復帰するにあたり、強い決意を抱いていた、
「浦和戦は外から見ていても、セットプレーも含めて厳しく相手のマークができていた中で、自分は1週間休ませてもらったので、ヴェルディと浦和の2試合でチームに迷惑をかけた分、今日は自分ができることは思い切ってやろうと思っていました」。
センターバックでコンビを組むのは、ここまでなかなか出場機会を得ることのできなかったDF家田唯白(3年)だが、昨シーズンは何度も隣同士で共闘してきており、特徴はよくわかっている。「昌平は上手いチームなので、とりあえず自分たちが簡単にやられちゃいけないと思って、試合に入りました」。やらせたくない。やらせない。集中力を研ぎ澄ませ、ピッチへと歩みを進めていく。
攻撃では積極的にボールを受け、ビルドアップの起点を創出。守備では個の力のある昌平の1トップ2シャドーを監視しつつ、空中戦でも、地上戦でも、1つずつ、丁寧に、相手のアタックの芽を摘み取っていく。


37分。横浜FCユースは左サイドでCKを獲得する。MF岩崎亮佑(3年)が鋭く蹴り込んだキックを、秦が頭で枠に収めたヘディングはGKにキャッチされたものの、ラインを割っていたというジャッジを副審が下し、ゴールが認められる。
「ヘディングして、『当たった!』と思ったんですけど、キーパーの真正面で『ああ……』と思ったら、副審がゴールの旗を上げていたという感じでした、今年は得点という形でなかなか貢献できていなかったので、そういった面では良かったかなと思います」。
15試合目の出場にして、これが秦にとっては今季のリーグ戦初ゴール。「和田さんにも『今日はセットプレーから1本決めてこい』とは言われていたので、とりあえず1点を獲れたことは良かったです」。背番号4が先制点を記録し、アウェイチームが1点をリードして、後半に折り返す。
屈辱の東京Vユース戦を経たチームの守備には、確かな手応えを感じていた。「自分たちの弱さを改めて感じられたヴェルディ戦があったからこそ、浦和戦も今日の試合も強度の高さに繋げられているのかなと。前線の選手も、中盤の選手も、全員でハードワークして、高い強度でできていたかなと思います」。
後半27分にはMF福岡湧大(2年)が追加点を挙げたものの、その4分後にはPKで失点し、点差は再び1点に。終盤は勝点差の近い昌平もアクセルを踏み込み、秦も「最後のところで後ろに重くなりすぎて、相手にボールを握られる時間が多くなった感じはありました」と振り返る展開を強いられながら、チーム全員が高い集中力を途切れさせず、ゲームクローズに取り掛かっていく。
ファイナルスコアは2-1。「もっと点を取らないといけないシーンはあったと思うんですけど、崩しのところも含めて練習でやっていることが試合でできているのは、凄く良いことですし、次に繋がるかなと思います」と話した秦にも、試合後には安堵と歓喜の笑顔が浮かんでいた。


昨年の12月にプロ契約を締結している秦は、既にプロサッカー選手という立場。ただ、「最近はトップに行ったり、ユースに行ったりもしていて、どちらかだけという感じではなくて、行ったり来たりしている感じです」という状況の中で、ここまではルヴァンカップで2試合、天皇杯で1試合、ベンチメンバーには入ったものの、まだトップチームの公式戦での出場機会は訪れていないが、“プロデビュー”の舞台として明確に見据えているのは、クラブにとっても初の挑戦となるルヴァンカップの準決勝だ。
「まずは来週の水曜日にルヴァンがあるので、限られた日数しかないですけど、明日から良い準備ができたらなと思いますし、今日もこれからトップチームの試合があるので、それを見ながら、(三浦文丈)監督がどのような選手を必要としているかを考えたいと思っています」
「やっぱり自分みたいな選手はギラギラ感が必要だと思いますし、練習から『もっと自分を使ってくれ』というアピールができれば、監督にも『変わったな』と思ってもらえると思うので、簡単ではないと思うんですけど、まずはベンチ入りして、試合に出るというところは目指していきたいです」。
もちろん今回の2試合でそれが叶わなかったとしても、その先にもまだ今シーズン中のデビューの可能性は残されている。秦が抱える決意は、固い。「今年はまだ3か月ありますし、カップ戦を含めれば7試合か8試合は公式戦があるので、ユースでしっかり結果を出して、トップでもしっかりアピールしていけたらなと思います」。
プレー面でも、メンタル面でも、着々と逞しさは増している。自身の特徴を、百戦錬磨のプロサッカー選手たちの中で過不足なく発揮できれば、必ずその時は訪れる。未来の横浜FCの最終ラインを担い得るポテンシャルを秘めた、18歳のセンターバック。秦樹が水色に染まったニッパツ三ツ沢球技場のピッチに立つ日は、きっとそう遠い日のことではない。


(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2025特集
▶高校サッカーの最新情報はポッドキャストでも配信中



