土居聖真に憧れる背番号8の「ミスターポリバレント」が大仕事!鹿島ユースMF佐藤湧斗がリーグ制覇を手繰り寄せる決勝ヘッド!
貴重な決勝点にチームメイトとポーズを決める
[11.22 プレミアリーグEAST第19節 鹿島ユース 3-2 川崎F U-18 メルカリスタジアム]
どんな形でもいいから、チームに貢献したいと、ずっと思ってきた。自分に期待されている役割も、自分が果たさなくてはいけない仕事も、もちろんわかっている。それでも、いつかは確かな結果で、みんなに勝利の歓喜をもたらしたいと願ってきたのだ。それが叶ったのだから、控えめに言っても、最高だ。
「1年通してずっと試合にスタメンで出ているわけではなくて、『もっとチームに貢献できたらな』という想いがずっとあったので、フロンターレ戦のゴールで勝利に貢献できたことは嬉しいですけど、自分だけで獲ったゴールではないですし、むしろみんながずっと頑張ってきてくれた中で、最後に自分が運良く決めた形になったので、みんなへの感謝の気持ちの方が大きいです」。
プレミアリーグEASTで圧倒的な強さを誇ってきた、鹿島アントラーズユース(茨城)にとって絶対に欠かせない“ミスターポリバレント”。MF佐藤湧斗(3年=鹿島アントラーズジュニアユース出身)の今シーズン2点目となる決勝点は、結果的にチームのリーグ制覇を手繰り寄せる、重要なゴールとしてキラキラと輝いた。
鹿島ユースは重要な局面を迎えていた。プレミアEAST第19節。川崎フロンターレU-18とホームのメルカリスタジアムで激突する一戦。勝利を収めれば、今節での優勝の可能性も出てくる試合だが、FIFA U-17ワールドカップに参加していたU-17日本代表の3人に加え、キャプテンのDF大川佑梧(3年)も欠場を強いられる。
「ケガ人とか代表でいない人が多い中で、今シーズンを通してコンスタントに試合に出られているわけではない自分が、この最後の残り4試合になったところでチャンスをもらえたので、ここで何か結果を残せるようなことがやれたらいいなと思っていました」。リーグ4試合ぶりのスタメン起用となった佐藤は、強い決意を携えてピッチに立っていた。
試合は前半のうちにMF大貫琉偉(2年)とFW正木裕翔(3年)のゴールで鹿島ユースが2点を先行したものの、後半に入って川崎F U-18も2点を返して同点に。左サイドハーフで奮闘していた佐藤も、「後半になってフロンターレの勢いに今度は自分たちが負けてしまって、難しいゲームだったかなと思います」と厳しい時間帯を振り返る。
後半28分。鹿島ユースが左サイドで獲得したCK。そのポジション取りには、それまでと違う“変化”があったという。「もともとキーパー前は2人いて、自分は奥側で、手前側は正木だったんですけど、その時は正木が代わったので、自分が手前側のニアに入っていたんです」。
大貫が蹴り込んだ正確なキックが、ニアにいた自分を目掛けて飛んでくる。「大貫からキーパー前のところにドンピシャのボールが来て、練習でもあんなことはないので、いきなりボールが来てちょっとビックリしたんですけど(笑)、その時にもう自分はプレッシャーもなくてフリーだったので、うまく頭に当てられました」。ドンピシャで合わせたヘディングがゴールネットを揺らす。
気づいたら、もう勝手に身体が走り出していた。「ゴールするのに慣れていないので、何かパフォーマンスしようというよりは、驚きが勝ってしまって、ちょっとはしゃいでしまいましたし、興奮しすぎて、アドレナリンが切れてしまいました(笑)」




チームメイトが駆け寄ってきたものの、足が攣ってしまった佐藤はその場に倒れ込む。「日々里内さんの下でキツいトレーニングをやってきている中で、ああいう終盤とも言えない時間で、足が攣っちゃうというのは、正直情けない気持ちでした……」。とはいえ、殊勲の勝ち越し弾に喜びが全身を駆け抜ける。
結果的にこのゴールは、3-2という勝利を導く決勝点となり、さらに翌日に2位の青森山田高が、翌々日に3位のFC東京U-18がそろって敗れたため、EAST制覇を決定付ける得点ということに。「プレミアリーグは勝ち切ることがとても難しいリーグだということは、1年を通してわかっていたので、自分のゴールでチームを勝たせることができたのは嬉しかったですね」と佐藤も率直な想いを口にする。






チームを率いる中野洋司監督は、佐藤の日常についてこう語っている。「頭が良くて技術があるので、うまく間に入ってボールを引き出して、味方を使ってという、うまく回りとリンクするような選手なのかなと思っていますし、姿勢の面でも居残りでフィジカルをやったり、足りないものを毎日やっている選手ので、本当に信頼できる選手です」。
本人の努力と指揮官からの信頼が結び付いた、スタメン起用に応える確かな結果。サッカーの神様が、優勝を決めるスコアラーに小柄な背番号8を選んだのは、きっと偶然ではない。




今シーズンのリーグ戦ではボランチ、サイドハーフ、サイドバックとさまざまなポジションでピッチに解き放たれ、それぞれの持ち場で高水準のプレーを披露。チームの戦い方の幅を広げてきた。
「自分も一番はボランチをやりたいんですけど、大貫と福岡(勇和)という誰もが認めるスペシャルな2人がいて、サイドハーフにもフォワードにもスペシャルな選手がたくさんいるので、自分がファーストチョイスで出るのは難しいなと理解しながらも、誰かが代表やケガで欠けてしまった時に、自分が入ったから負けたと言われるのは嫌ですし、そこで入って遜色ないプレーか、それ以上のプレーをできたらというのはいつも心がけてやっていますし、誰かが欠けた時に大幅な戦力ダウンはさせないように意識しているので、チームの総合力は底上げできているのかなとは思います」。
小学生時代は茨城のFCヴェレン大洗U-12でプレーしていた佐藤は、対戦した時にその強さを実感したアントラーズでプレーしたいと一念発起し、セレクションを経て鹿島ジュニアユースへ加入。往復で2時間近い時間を掛けて練習に通い、実力を磨いてきた。
当時からの憧れは、今の自分と同じ番号を背負っていたレジェンドだという。「土居聖真選手に憧れていて、ドリブルとかキックの精度を見ている時に『ああ、上手いな』と感じましたし、『あの人のようになれたらいいな』と思っていた部分はあったので、何の縁か今は8番を付けさせてもらっているのは嬉しいですね」。


このアカデミーでプレーできる時間も、残りわずか。「『あと1か月で終わっちゃうんだな』というのは、日常生活でふと考えることはあるので、寂しさは少なからずありますね」と口にする佐藤は、だからこそ、このみんなと迎える大団円をはっきりとイメージしている。
「リーグ優勝が決まっていても、残りの3試合を消化試合にするつもりはみんなないと思いますし、その1つ1つの試合でさらに成長して、3試合が終わった時に最高のコンディションでファイナルを迎えるための時間にしていきたいと思って、もう今から練習しています」。
「僕らは寮生活で、食事とか寝ることも常に一緒なので、そこの絆はこの3年間で深まっていると思いますし、だからこそ、ファイナルではみんなの力を合わせながら、最後に優勝して、笑って終わりたいなという想いはあります」。
これからの“4試合”でも、この人の力が必要になる時は、必ずやってくるに違いない。鹿島ユースを陰日向になって支える、ユーティリティーな背番号8。佐藤湧斗は与えられた場所で、与えられた時間で、常に全力を出し尽くし、みんなと最高の笑顔の花を咲かせながら、日本一の歓喜を手繰り寄せる。


(取材・文 土屋雅史)
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どんな形でもいいから、チームに貢献したいと、ずっと思ってきた。自分に期待されている役割も、自分が果たさなくてはいけない仕事も、もちろんわかっている。それでも、いつかは確かな結果で、みんなに勝利の歓喜をもたらしたいと願ってきたのだ。それが叶ったのだから、控えめに言っても、最高だ。
「1年通してずっと試合にスタメンで出ているわけではなくて、『もっとチームに貢献できたらな』という想いがずっとあったので、フロンターレ戦のゴールで勝利に貢献できたことは嬉しいですけど、自分だけで獲ったゴールではないですし、むしろみんながずっと頑張ってきてくれた中で、最後に自分が運良く決めた形になったので、みんなへの感謝の気持ちの方が大きいです」。
プレミアリーグEASTで圧倒的な強さを誇ってきた、鹿島アントラーズユース(茨城)にとって絶対に欠かせない“ミスターポリバレント”。MF佐藤湧斗(3年=鹿島アントラーズジュニアユース出身)の今シーズン2点目となる決勝点は、結果的にチームのリーグ制覇を手繰り寄せる、重要なゴールとしてキラキラと輝いた。
鹿島ユースは重要な局面を迎えていた。プレミアEAST第19節。川崎フロンターレU-18とホームのメルカリスタジアムで激突する一戦。勝利を収めれば、今節での優勝の可能性も出てくる試合だが、FIFA U-17ワールドカップに参加していたU-17日本代表の3人に加え、キャプテンのDF大川佑梧(3年)も欠場を強いられる。
「ケガ人とか代表でいない人が多い中で、今シーズンを通してコンスタントに試合に出られているわけではない自分が、この最後の残り4試合になったところでチャンスをもらえたので、ここで何か結果を残せるようなことがやれたらいいなと思っていました」。リーグ4試合ぶりのスタメン起用となった佐藤は、強い決意を携えてピッチに立っていた。
試合は前半のうちにMF大貫琉偉(2年)とFW正木裕翔(3年)のゴールで鹿島ユースが2点を先行したものの、後半に入って川崎F U-18も2点を返して同点に。左サイドハーフで奮闘していた佐藤も、「後半になってフロンターレの勢いに今度は自分たちが負けてしまって、難しいゲームだったかなと思います」と厳しい時間帯を振り返る。
後半28分。鹿島ユースが左サイドで獲得したCK。そのポジション取りには、それまでと違う“変化”があったという。「もともとキーパー前は2人いて、自分は奥側で、手前側は正木だったんですけど、その時は正木が代わったので、自分が手前側のニアに入っていたんです」。
大貫が蹴り込んだ正確なキックが、ニアにいた自分を目掛けて飛んでくる。「大貫からキーパー前のところにドンピシャのボールが来て、練習でもあんなことはないので、いきなりボールが来てちょっとビックリしたんですけど(笑)、その時にもう自分はプレッシャーもなくてフリーだったので、うまく頭に当てられました」。ドンピシャで合わせたヘディングがゴールネットを揺らす。
気づいたら、もう勝手に身体が走り出していた。「ゴールするのに慣れていないので、何かパフォーマンスしようというよりは、驚きが勝ってしまって、ちょっとはしゃいでしまいましたし、興奮しすぎて、アドレナリンが切れてしまいました(笑)」




チームメイトが駆け寄ってきたものの、足が攣ってしまった佐藤はその場に倒れ込む。「日々里内さんの下でキツいトレーニングをやってきている中で、ああいう終盤とも言えない時間で、足が攣っちゃうというのは、正直情けない気持ちでした……」。とはいえ、殊勲の勝ち越し弾に喜びが全身を駆け抜ける。
結果的にこのゴールは、3-2という勝利を導く決勝点となり、さらに翌日に2位の青森山田高が、翌々日に3位のFC東京U-18がそろって敗れたため、EAST制覇を決定付ける得点ということに。「プレミアリーグは勝ち切ることがとても難しいリーグだということは、1年を通してわかっていたので、自分のゴールでチームを勝たせることができたのは嬉しかったですね」と佐藤も率直な想いを口にする。






チームを率いる中野洋司監督は、佐藤の日常についてこう語っている。「頭が良くて技術があるので、うまく間に入ってボールを引き出して、味方を使ってという、うまく回りとリンクするような選手なのかなと思っていますし、姿勢の面でも居残りでフィジカルをやったり、足りないものを毎日やっている選手ので、本当に信頼できる選手です」。
本人の努力と指揮官からの信頼が結び付いた、スタメン起用に応える確かな結果。サッカーの神様が、優勝を決めるスコアラーに小柄な背番号8を選んだのは、きっと偶然ではない。




今シーズンのリーグ戦ではボランチ、サイドハーフ、サイドバックとさまざまなポジションでピッチに解き放たれ、それぞれの持ち場で高水準のプレーを披露。チームの戦い方の幅を広げてきた。
「自分も一番はボランチをやりたいんですけど、大貫と福岡(勇和)という誰もが認めるスペシャルな2人がいて、サイドハーフにもフォワードにもスペシャルな選手がたくさんいるので、自分がファーストチョイスで出るのは難しいなと理解しながらも、誰かが代表やケガで欠けてしまった時に、自分が入ったから負けたと言われるのは嫌ですし、そこで入って遜色ないプレーか、それ以上のプレーをできたらというのはいつも心がけてやっていますし、誰かが欠けた時に大幅な戦力ダウンはさせないように意識しているので、チームの総合力は底上げできているのかなとは思います」。
小学生時代は茨城のFCヴェレン大洗U-12でプレーしていた佐藤は、対戦した時にその強さを実感したアントラーズでプレーしたいと一念発起し、セレクションを経て鹿島ジュニアユースへ加入。往復で2時間近い時間を掛けて練習に通い、実力を磨いてきた。
当時からの憧れは、今の自分と同じ番号を背負っていたレジェンドだという。「土居聖真選手に憧れていて、ドリブルとかキックの精度を見ている時に『ああ、上手いな』と感じましたし、『あの人のようになれたらいいな』と思っていた部分はあったので、何の縁か今は8番を付けさせてもらっているのは嬉しいですね」。


このアカデミーでプレーできる時間も、残りわずか。「『あと1か月で終わっちゃうんだな』というのは、日常生活でふと考えることはあるので、寂しさは少なからずありますね」と口にする佐藤は、だからこそ、このみんなと迎える大団円をはっきりとイメージしている。
「リーグ優勝が決まっていても、残りの3試合を消化試合にするつもりはみんなないと思いますし、その1つ1つの試合でさらに成長して、3試合が終わった時に最高のコンディションでファイナルを迎えるための時間にしていきたいと思って、もう今から練習しています」。
「僕らは寮生活で、食事とか寝ることも常に一緒なので、そこの絆はこの3年間で深まっていると思いますし、だからこそ、ファイナルではみんなの力を合わせながら、最後に優勝して、笑って終わりたいなという想いはあります」。
これからの“4試合”でも、この人の力が必要になる時は、必ずやってくるに違いない。鹿島ユースを陰日向になって支える、ユーティリティーな背番号8。佐藤湧斗は与えられた場所で、与えられた時間で、常に全力を出し尽くし、みんなと最高の笑顔の花を咲かせながら、日本一の歓喜を手繰り寄せる。


(取材・文 土屋雅史)
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