首位陥落の危機から90+5分、90+11分のエース弾で大逆転勝利!神戸U-18が3年連続の2位を乗り越え、2017年以来のプレミアWEST制覇!!
[12.7 プレミアリーグWEST第21節 神戸U-18 2-1 鳥栖U-18 いぶきの森球技場]
神戸U-18がホームで大逆転劇を演じ、2017年以来のプレミアWEST制覇! 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 WESTは7日、第21節2日目を行い、首位のヴィッセル神戸U-18(兵庫)と勝ち点2差の2位・サガン鳥栖U-18(佐賀)が激突。10番MF濱崎健斗(3年)が後半45+5分と同45+11分に連続ゴールを決め、神戸U-18が2-1で勝った。
首位陥落直前の状況から脅威の2得点で大逆転勝利と優勝確定。神戸U-18の安部雄大監督は「ほんとに『今年、何回かこういう形で最後まで諦めずにやってきたよね』っていうことを(0-1の)ハーフタイムにも話したんです。『まず1点だ』っていうところで、ほんとに選手たちがそこを信じてやってくれたのかなって風に思っています」と頷く。
神戸U-18は今季、リーグ戦で後半45分以降に決勝点を決めて勝つ試合を4度も経験していた。この日も0-1のまま10分が提示された後半アディショナルタイムに突入。「とにかく1点返そうっていう、そこは信じてましたね」(安部監督)という期待に選手たちが再び応えた。
攻め続けて45+5分に濱崎が鳥栖U-18ゴールをこじ開けると、首位陥落を阻止する一撃に選手、スタッフは喜びを大爆発。さらに勢いは止まらず、45+11分に再び濱崎がゴールを破る。
濱崎が6分前の同点シーン同様にサポーターの前で拳を振り上げると、試合終了の笛。3年連続の2位を乗り越えての優勝に、MF瀬口大翔主将(3年/U-17日本代表)は「これまでの試合、めっちゃ最後に点取ることが多かったんで、それがこの試合でも出せたのが良かったなと思います。(苦しい時期も)同じ方向に向かう姿勢があったからこそ、ここまで来れたなって思います」と目を潤ませながら喜んだ。
ここまで14勝1分5敗。勝てば優勝の決まる神戸U-18の先発は、GK胡云皓(2年)、DF西川亜郁(3年)、寺岡佑真(3年)、原蒼汰(3年)、西岡鷹佑(2年)、MF藤本陸玖(3年)、瀬口、濱崎、井内亮太朗(1年/ U-17日本代表)、FW大西湊太(3年)、森分圭吾(3年)の11人で構成された。昨年にトップチーム昇格が発表された濱崎は今季、すでにJ1で3試合に出場。瀬口、大西もトップチーム昇格が決まっている。


一方、13勝2分5敗の2位・鳥栖U-18はこの直接対決で勝てば、14日の最終節を前に首位浮上となる一戦。GKエジケ唯吹ヴィンセントジュニア(2年/ U-17日本代表)、DF黒木雄也(3年)、岩村淳之介(3年)、原口幸之助(3年)、鈴木颯真(2年)、MF池田季礼(3年/ U-18日本代表)、古賀稜麻(3年)、東口藍太郎主将(3年/ U-18日本代表)、鈴木悠希(3年)、FW新川志音(3年/ U-22日本代表)、真殿京佑(2年)が先発した。トップチーム昇格組ではFW水巻時飛(3年)がメンバー外だったが、黒木が先発出場。また新川は今季、J2で5得点を決めており、大一番で開幕戦以来となるプレミアリーグ出場となった。


互いにミスが非常に少なく、強度の高さ、運動量の多さも印象的。両エースら特別な個性も光る首位攻防戦だった。立ち上がりは鳥栖U-18が抜群の存在感を放つ新川を中心に攻め、主導権を握る。新川は五分五分以下のような状況のボールでも収めて攻撃の起点に。また、チーム全体の運動量も多い。守備でも良く足を動かしていた新川や古賀らが距離感の良い守りで神戸U-18の前進を阻止し、東口や原口のダブルボランチが奪い返す回数を増やしていた。


そして、原口が質の高いミドルパスを連発するなど攻撃をコントロール。ともに推進力のある左の池田、右の岩村の両WBを効果的に活用したほか、鈴木颯のロングスローも交えて相手にプレッシャーをかけ、新川や真殿がシュートへ持ち込んだ。


対する神戸U-18は立ち上がりに濱崎が瀬口とのパス交換から左足を一閃。その後はやや前に急ぎすぎたところもあってなかなか攻め切ることができず、守勢の時間帯が続いてしまう。
神戸U-18はCB寺岡やGK胡が落ち着きのある守備対応を見せていた。だが、前半21分、鳥栖U-18の10番がU-22日本代表の実力を見せつける。敵陣での連動したプレッシングから真殿がインターセプト。そして、パスを受けた新川が相手選手を背中でブロックして前に出ると、さらに切り返しを交えたドリブルで2人目のDFを振り切り、右足を振り抜く。弾丸シュートが約30m先のクロスバー下側を叩き、そのままゴールラインの内側へ。スーパーゴールによって鳥栖U-18が先制した。




新川はその後も立て続けに左足を振るなど、相手の脅威に。だが、神戸U-18も藤本や濱崎、井内がボールに係わりながら中外へとボールを振り分けて揺さぶりをかける。34分には左の瀬口のラストパスに森分が飛び込むが、攻守に利いていた鳥栖U-18DF黒木が身体を張ってクリア。だが、前半終盤は神戸U-18がボールを保持して押し込む時間帯を増やし、大西のスピードを活かした仕掛けやセットプレーなどからシュート本数を増やした。
その神戸U-18は、後半開始から井内と大西に代えてFW川端彪英(2年)とMF上野颯太(2年)を同時投入する。一方の鳥栖U-18は最終ラインの要である黒木が脳震盪の疑いでDF山口耀琉(3年)と交代。神戸U-18は川端の力強いドリブルなどで押し込むと7分には森分とトップチーム昇格のFW渡辺隼斗(3年)を入れ替える。
神戸U-18は流れの良い時間帯が続いていたように映ったが、積極的な交代策。安部監督は「どうしても時間が経つと焦りも出てくるし、よりフレッシュな元気な選手を、という狙いもあって(イエローカードを受けていた井内を含めて)交代しました」と意図について説明する。
ボールを保持する神戸U-18は、西川、西岡の両SBも高い位置を取って同点ゴールを目指す。対する鳥栖U-18はゴール前で集中した守り。そして、カウンターから池田が持ち上がり、新川がシュートで終えるシーンもあった。だが、全体的に運動量を維持することができず、前線へのボールを神戸U-18CB原らに跳ね返されてしまう。


鳥栖U-18の日高拓磨監督はシーズンを通して「特に3年生がしっかり変わってくれて」積み上げてきたことを明かす。この試合は想定していた守りから先制。だが、「ちょっとずつ選手の運動量が落ちてきて、そうなると相手の方がテクニックだったりドリブルだったりとかいうのはやっぱり高いんで、相手ボールが増えてしまうかなっていうところはありました」。それでも、鳥栖U-18は15分にGKエジケが濱崎の左足ミドルをファインセーブ。さらに渡辺のPAからの左足シュートも守護神が抜群の反応ではじき出す。


18分には、神戸U-18CB寺岡が激しい接触プレーで頭部を負傷。約5分間中断した後、脳震盪の疑いによってCB西村水岐(2年)と交代し、試合は再開された。その後も神戸U-18が攻める時間を増やしたが、鳥栖U-18はGKエジケを中心に鈴木悠、山口、鈴木颯のDF陣や東口が相手の前に立ちはだかる。
その鳥栖U-18は28分に原口とMF加藤孝一朗(2年)を入れ替え、直後にも新川とFW山村チーディ賢斗(3年)を交代。神戸U-18も藤本とMF片山航汰(3年)を入れ替えて終盤戦へ向かう。
神戸U-18はトップチーム昇格の濱崎、瀬口、渡辺に加え、交代出場組の川端、上野、片山も中盤から前に出て崩しに係わろうとする。35分には右ショートコーナーから濱崎の上げたクロスに西岡が飛び込み、39分には右サイドを抜け出した川端のラストパスがゴール前を横切った。鳥栖U-18は40分に真殿とMF伊澤璃来(1年)、43分にも古賀とFW 下田優太(3年)を交代。粘り強く守りながら、山村を活用したカウンター攻撃でしたたかに2点目を狙っていた。


だが、神戸U-18は原や西村が相手の速攻に対応すると44分、左の瀬口のパスから川端がそらし、濱崎が左足ダイレクトボレー。10分が表示されたアディショナルタイム突入後も西岡の左ロングスローから西川が右足を振り抜く。
諦めずに1点を目指し続けたアディショナルタイム。神戸U-18は「(この1年間)相手を(敵陣に)閉じ込めて自分たちで崩すぞっていうところは、ある程度展開にも助けられましたけど、できたのかなっていう風に思っています」(安部監督)という戦いが結実する。
左サイドで西岡が出足良くセカンドボールに反応し、前方の瀬口へ。ボールを持った瀬口はDF2人の間を突破すると、さらに飛び込んできたDFをかわしてPAへ侵入する。そして、縦の動きでDFを外してラストパス。これは通らなかったが、こぼれを拾った濱崎がドリブルで自らシュートコースを作り出し、冷静にDFの股間を抜く右足シュートを決めた。






1-1とされた鳥栖U-18にとって、自力で逆転優勝するためには、今節の勝利が必須。頭部を負傷している鈴木颯を含めて勇気を持って前に出ていく。そしてロングスローも交えて攻め、伊澤が左足を振るシーンもあったが、相手の守りは堅い。
神戸U-18も相手ゴール前までボールを運び、崩しに行くが、シュートへ持ち込む前に鳥栖U-18DF陣がブロック。それでも、45+11分、神戸U-18は渡辺と川端が敵陣左中間でインターセプトすると、川端がゴール方向へのドリブルでボールを運ぶ。そして、狭いDF間を通して左へ展開し、瀬口が右足ダイレクトで中央へ折り返す。最後は濱崎がコントロールからGK、DFの動きを良く見て左足シュート。ネットが揺れた数秒後、試合終了の笛が鳴り響いた。






3年連続で2位、それも3年前は得失点差、2年前は勝ち点1差で涙を呑んでいた神戸U-18が、8年ぶり3度目のプレミアリーグWEST制覇。神戸U-18の現3年生は、神戸U-15時代の2022年全日本ユース(U-15)選手権で全5試合3得点以上、無失点という強さで13年ぶりの優勝を成し遂げている世代だ。濱崎は「(自分たちの代は今年、)もう優勝しか見てなかったですし、その言葉をみんな何回も言ってきたし、実現できてとても良かったと思います」と胸を張り、瀬口は「中3からやっぱ『黄金世代』って言われてきた世代なで、プレッシャーもある中でそれ(優勝)が叶ったのが凄く自分は嬉しいなって思います」と目標を達成したことを素直に喜んでいた。
試合後は選手、スタッフ、サポーターが一緒になって『神戸讃歌』を大合唱。安部監督は「ホーム最終戦ですし、もうほんとにサポーターはじめ保護者に感謝しかないので。良かった」と微笑む。選手たちは恩師を胴上げ。そして、家族や友人、サポーターたちと喜びを分かち合っていた。


チームはリーグ最終戦(14日、対東福岡高)の一週間後に開催されるプレミアリーグファイナル(21日、埼玉)で“高校年代真の日本一”をかけ、プレミアリーグEAST優勝の鹿島ユースと対戦する。鹿島ユースは今季、日本クラブユース選手権(U-18)大会とJユースカップの2冠。神戸U-18にとってはクラブユース選手権準々決勝で鹿島ユースに3-5で敗れている相手だ。
瀬口は「もう鹿島アントラーズに全て取られたら(悔しすぎて)僕らやっていけないんで、絶対ファイナルで勝ちたいなって思いもあります」とコメント。また、濱崎は「ヴィッセルの歴史を変えれるチャンスだと思うんで、自分たちがそれを掴むためにやっていきたいと思っています」と力を込めた。ファイナルで勝てば神戸U-18にとって初。結果が出ない時期も同じ方向を向いてまとまり、勝負強く勝ち続けてきた世代が歴史を塗り替える。


(取材・文 吉田太郎)
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神戸U-18がホームで大逆転劇を演じ、2017年以来のプレミアWEST制覇! 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 WESTは7日、第21節2日目を行い、首位のヴィッセル神戸U-18(兵庫)と勝ち点2差の2位・サガン鳥栖U-18(佐賀)が激突。10番MF濱崎健斗(3年)が後半45+5分と同45+11分に連続ゴールを決め、神戸U-18が2-1で勝った。
首位陥落直前の状況から脅威の2得点で大逆転勝利と優勝確定。神戸U-18の安部雄大監督は「ほんとに『今年、何回かこういう形で最後まで諦めずにやってきたよね』っていうことを(0-1の)ハーフタイムにも話したんです。『まず1点だ』っていうところで、ほんとに選手たちがそこを信じてやってくれたのかなって風に思っています」と頷く。
神戸U-18は今季、リーグ戦で後半45分以降に決勝点を決めて勝つ試合を4度も経験していた。この日も0-1のまま10分が提示された後半アディショナルタイムに突入。「とにかく1点返そうっていう、そこは信じてましたね」(安部監督)という期待に選手たちが再び応えた。
攻め続けて45+5分に濱崎が鳥栖U-18ゴールをこじ開けると、首位陥落を阻止する一撃に選手、スタッフは喜びを大爆発。さらに勢いは止まらず、45+11分に再び濱崎がゴールを破る。
濱崎が6分前の同点シーン同様にサポーターの前で拳を振り上げると、試合終了の笛。3年連続の2位を乗り越えての優勝に、MF瀬口大翔主将(3年/U-17日本代表)は「これまでの試合、めっちゃ最後に点取ることが多かったんで、それがこの試合でも出せたのが良かったなと思います。(苦しい時期も)同じ方向に向かう姿勢があったからこそ、ここまで来れたなって思います」と目を潤ませながら喜んだ。
ここまで14勝1分5敗。勝てば優勝の決まる神戸U-18の先発は、GK胡云皓(2年)、DF西川亜郁(3年)、寺岡佑真(3年)、原蒼汰(3年)、西岡鷹佑(2年)、MF藤本陸玖(3年)、瀬口、濱崎、井内亮太朗(1年/ U-17日本代表)、FW大西湊太(3年)、森分圭吾(3年)の11人で構成された。昨年にトップチーム昇格が発表された濱崎は今季、すでにJ1で3試合に出場。瀬口、大西もトップチーム昇格が決まっている。


神戸U-18は勝てばプレミアリーグWEST優勝の決まる大一番
一方、13勝2分5敗の2位・鳥栖U-18はこの直接対決で勝てば、14日の最終節を前に首位浮上となる一戦。GKエジケ唯吹ヴィンセントジュニア(2年/ U-17日本代表)、DF黒木雄也(3年)、岩村淳之介(3年)、原口幸之助(3年)、鈴木颯真(2年)、MF池田季礼(3年/ U-18日本代表)、古賀稜麻(3年)、東口藍太郎主将(3年/ U-18日本代表)、鈴木悠希(3年)、FW新川志音(3年/ U-22日本代表)、真殿京佑(2年)が先発した。トップチーム昇格組ではFW水巻時飛(3年)がメンバー外だったが、黒木が先発出場。また新川は今季、J2で5得点を決めており、大一番で開幕戦以来となるプレミアリーグ出場となった。


鳥栖U-18は勝てば首位浮上
互いにミスが非常に少なく、強度の高さ、運動量の多さも印象的。両エースら特別な個性も光る首位攻防戦だった。立ち上がりは鳥栖U-18が抜群の存在感を放つ新川を中心に攻め、主導権を握る。新川は五分五分以下のような状況のボールでも収めて攻撃の起点に。また、チーム全体の運動量も多い。守備でも良く足を動かしていた新川や古賀らが距離感の良い守りで神戸U-18の前進を阻止し、東口や原口のダブルボランチが奪い返す回数を増やしていた。


鳥栖U-18MF東口藍太郎主将は回収力を発揮
そして、原口が質の高いミドルパスを連発するなど攻撃をコントロール。ともに推進力のある左の池田、右の岩村の両WBを効果的に活用したほか、鈴木颯のロングスローも交えて相手にプレッシャーをかけ、新川や真殿がシュートへ持ち込んだ。


前半、精度の高いキックを連発していた鳥栖U-18MF原口幸之助
対する神戸U-18は立ち上がりに濱崎が瀬口とのパス交換から左足を一閃。その後はやや前に急ぎすぎたところもあってなかなか攻め切ることができず、守勢の時間帯が続いてしまう。
神戸U-18はCB寺岡やGK胡が落ち着きのある守備対応を見せていた。だが、前半21分、鳥栖U-18の10番がU-22日本代表の実力を見せつける。敵陣での連動したプレッシングから真殿がインターセプト。そして、パスを受けた新川が相手選手を背中でブロックして前に出ると、さらに切り返しを交えたドリブルで2人目のDFを振り切り、右足を振り抜く。弾丸シュートが約30m先のクロスバー下側を叩き、そのままゴールラインの内側へ。スーパーゴールによって鳥栖U-18が先制した。


前半21分、鳥栖U-18FW新川志音が右足ミドルを決めて先制


今季J2で5得点のストライカーがU-18年代で違いを示した
新川はその後も立て続けに左足を振るなど、相手の脅威に。だが、神戸U-18も藤本や濱崎、井内がボールに係わりながら中外へとボールを振り分けて揺さぶりをかける。34分には左の瀬口のラストパスに森分が飛び込むが、攻守に利いていた鳥栖U-18DF黒木が身体を張ってクリア。だが、前半終盤は神戸U-18がボールを保持して押し込む時間帯を増やし、大西のスピードを活かした仕掛けやセットプレーなどからシュート本数を増やした。
その神戸U-18は、後半開始から井内と大西に代えてFW川端彪英(2年)とMF上野颯太(2年)を同時投入する。一方の鳥栖U-18は最終ラインの要である黒木が脳震盪の疑いでDF山口耀琉(3年)と交代。神戸U-18は川端の力強いドリブルなどで押し込むと7分には森分とトップチーム昇格のFW渡辺隼斗(3年)を入れ替える。
神戸U-18は流れの良い時間帯が続いていたように映ったが、積極的な交代策。安部監督は「どうしても時間が経つと焦りも出てくるし、よりフレッシュな元気な選手を、という狙いもあって(イエローカードを受けていた井内を含めて)交代しました」と意図について説明する。
ボールを保持する神戸U-18は、西川、西岡の両SBも高い位置を取って同点ゴールを目指す。対する鳥栖U-18はゴール前で集中した守り。そして、カウンターから池田が持ち上がり、新川がシュートで終えるシーンもあった。だが、全体的に運動量を維持することができず、前線へのボールを神戸U-18CB原らに跳ね返されてしまう。


後半は神戸U-18ペース。CB原蒼汰が相手のロングボールを跳ね返す
鳥栖U-18の日高拓磨監督はシーズンを通して「特に3年生がしっかり変わってくれて」積み上げてきたことを明かす。この試合は想定していた守りから先制。だが、「ちょっとずつ選手の運動量が落ちてきて、そうなると相手の方がテクニックだったりドリブルだったりとかいうのはやっぱり高いんで、相手ボールが増えてしまうかなっていうところはありました」。それでも、鳥栖U-18は15分にGKエジケが濱崎の左足ミドルをファインセーブ。さらに渡辺のPAからの左足シュートも守護神が抜群の反応ではじき出す。


後半17分、神戸U-18FW渡辺隼斗が決定的な左足シュートを放つが、鳥栖U-18GKエジケ唯吹ヴィンセントジュニアがファインセーブ
18分には、神戸U-18CB寺岡が激しい接触プレーで頭部を負傷。約5分間中断した後、脳震盪の疑いによってCB西村水岐(2年)と交代し、試合は再開された。その後も神戸U-18が攻める時間を増やしたが、鳥栖U-18はGKエジケを中心に鈴木悠、山口、鈴木颯のDF陣や東口が相手の前に立ちはだかる。
その鳥栖U-18は28分に原口とMF加藤孝一朗(2年)を入れ替え、直後にも新川とFW山村チーディ賢斗(3年)を交代。神戸U-18も藤本とMF片山航汰(3年)を入れ替えて終盤戦へ向かう。
神戸U-18はトップチーム昇格の濱崎、瀬口、渡辺に加え、交代出場組の川端、上野、片山も中盤から前に出て崩しに係わろうとする。35分には右ショートコーナーから濱崎の上げたクロスに西岡が飛び込み、39分には右サイドを抜け出した川端のラストパスがゴール前を横切った。鳥栖U-18は40分に真殿とMF伊澤璃来(1年)、43分にも古賀とFW 下田優太(3年)を交代。粘り強く守りながら、山村を活用したカウンター攻撃でしたたかに2点目を狙っていた。


神戸U-18のFW川端彪英は後半からの出場で攻撃を活性化。得点にも絡んだ
だが、神戸U-18は原や西村が相手の速攻に対応すると44分、左の瀬口のパスから川端がそらし、濱崎が左足ダイレクトボレー。10分が表示されたアディショナルタイム突入後も西岡の左ロングスローから西川が右足を振り抜く。
諦めずに1点を目指し続けたアディショナルタイム。神戸U-18は「(この1年間)相手を(敵陣に)閉じ込めて自分たちで崩すぞっていうところは、ある程度展開にも助けられましたけど、できたのかなっていう風に思っています」(安部監督)という戦いが結実する。
左サイドで西岡が出足良くセカンドボールに反応し、前方の瀬口へ。ボールを持った瀬口はDF2人の間を突破すると、さらに飛び込んできたDFをかわしてPAへ侵入する。そして、縦の動きでDFを外してラストパス。これは通らなかったが、こぼれを拾った濱崎がドリブルで自らシュートコースを作り出し、冷静にDFの股間を抜く右足シュートを決めた。


後半45+5分、神戸U-18はMF瀬口大翔が左サイドでDF2人をかわす


MF濱崎健斗が右足で決めて同点


エースの渾身の一撃で1-1。首位死守へ大きな、大きな1点
1-1とされた鳥栖U-18にとって、自力で逆転優勝するためには、今節の勝利が必須。頭部を負傷している鈴木颯を含めて勇気を持って前に出ていく。そしてロングスローも交えて攻め、伊澤が左足を振るシーンもあったが、相手の守りは堅い。
神戸U-18も相手ゴール前までボールを運び、崩しに行くが、シュートへ持ち込む前に鳥栖U-18DF陣がブロック。それでも、45+11分、神戸U-18は渡辺と川端が敵陣左中間でインターセプトすると、川端がゴール方向へのドリブルでボールを運ぶ。そして、狭いDF間を通して左へ展開し、瀬口が右足ダイレクトで中央へ折り返す。最後は濱崎がコントロールからGK、DFの動きを良く見て左足シュート。ネットが揺れた数秒後、試合終了の笛が鳴り響いた。


後半45+11分、神戸U-18はMF濱崎健斗が左足シュートを決める


逆転。濱崎が喜びを爆発させる。ベンチのスタッフ、サブの選手も一斉に飛び出した


選手も、サポーターも大興奮
3年連続で2位、それも3年前は得失点差、2年前は勝ち点1差で涙を呑んでいた神戸U-18が、8年ぶり3度目のプレミアリーグWEST制覇。神戸U-18の現3年生は、神戸U-15時代の2022年全日本ユース(U-15)選手権で全5試合3得点以上、無失点という強さで13年ぶりの優勝を成し遂げている世代だ。濱崎は「(自分たちの代は今年、)もう優勝しか見てなかったですし、その言葉をみんな何回も言ってきたし、実現できてとても良かったと思います」と胸を張り、瀬口は「中3からやっぱ『黄金世代』って言われてきた世代なで、プレッシャーもある中でそれ(優勝)が叶ったのが凄く自分は嬉しいなって思います」と目標を達成したことを素直に喜んでいた。
試合後は選手、スタッフ、サポーターが一緒になって『神戸讃歌』を大合唱。安部監督は「ホーム最終戦ですし、もうほんとにサポーターはじめ保護者に感謝しかないので。良かった」と微笑む。選手たちは恩師を胴上げ。そして、家族や友人、サポーターたちと喜びを分かち合っていた。


チームはリーグ最終戦(14日、対東福岡高)の一週間後に開催されるプレミアリーグファイナル(21日、埼玉)で“高校年代真の日本一”をかけ、プレミアリーグEAST優勝の鹿島ユースと対戦する。鹿島ユースは今季、日本クラブユース選手権(U-18)大会とJユースカップの2冠。神戸U-18にとってはクラブユース選手権準々決勝で鹿島ユースに3-5で敗れている相手だ。
瀬口は「もう鹿島アントラーズに全て取られたら(悔しすぎて)僕らやっていけないんで、絶対ファイナルで勝ちたいなって思いもあります」とコメント。また、濱崎は「ヴィッセルの歴史を変えれるチャンスだと思うんで、自分たちがそれを掴むためにやっていきたいと思っています」と力を込めた。ファイナルで勝てば神戸U-18にとって初。結果が出ない時期も同じ方向を向いてまとまり、勝負強く勝ち続けてきた世代が歴史を塗り替える。


神戸U-18はプレミアリーグファイナルで鹿島ユースと戦う
(取材・文 吉田太郎)
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