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仙台ユースが8度目の挑戦で初のプレミア昇格!「勝負に貪欲」な世代が勝ち抜くために強度や質、走力、見て対応する力を高め、再び歴史を塗り替える!

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ベガルタ仙台ユースが初のプレミアリーグ昇格

[12.14 プレミアリーグプレーオフ決勝 愛媛U-18 1-2 仙台ユース サンフレッチェビレッジ広島第一球技場]

 仙台ユースが8度目の挑戦で初のプレミア昇格! 14日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 プレーオフ Cブロック決勝で愛媛FC U-18(四国/愛媛)とベガルタ仙台ユース(東北2/宮城)が対戦。仙台ユースが2-1で勝ち、初のプレミアリーグ昇格を決めた。

 クラブにとっての悲願成就。仙台ユースの加藤望監督は、「選手たちが本当に一日一日向き合って、スタートの時からもう目標をしっかり立てて、それに向けて本当にブレずに頑張ってくれて、その成果だと思います」と頷いた。トップチームの森山佳郎監督も地元広島での戦いに駆けつけ、試合後に指揮官たちと歓喜の抱擁。“8度目の正直”を選手、スタッフが一緒になって喜んだ。

 仙台ユースはプリンスリーグ東北2位。今大会初戦はプリンスリーグ関西1部優勝の阪南大高(大阪)に1-0で競り勝った。プレミアリーグ初昇格をかけた一戦の先発はGK渡辺航聖(2年)、DF古川柊斗(3年)、永井大義主将(3年/トップチーム昇格内定)、今野翔太(3年)、石山葉琉(2年)、MF浅尾涼太朗(3年)、池田悠一(3年)、稲木康太(3年)、小澤春太(中3)、FW古屋歩夢(3年/トップチーム昇格内定)、ピドゥ大樹(3年)の11人で臨んだ。

初のプレミアリーグ昇格を目指した仙台ユース

 一方、プリンスリーグ四国で無敗優勝の愛媛U-18は、今大会初戦でプリンスリーグ東海王者の清水ユースに0-0(PK3-1)で勝利。2019年以来のプレミアリーグ昇格をかけた一戦の先発はGK亀山雄汰(3年)、DF瑞慶覧長汰(3年)、石原拍(2年)、佐藤優馬(1年)、平野皓大(1年)、MF田中碧(3年)、嵐亮太朗(3年)、浦添朝仁(3年)、仙波隼太郎(1年/U-16日本代表)、FW俵拓斗(3年)、青木壱清(3年/U-18日本代表)の11人で臨んだ。

愛媛U-18は2019年以来のプレミア昇格に挑戦

 序盤、仙台ユースは古屋のドリブル、左SB石山のクロスなどで仕掛け、小澤や古屋がシュートチャンスを迎える。対する愛媛U-18もGK亀山のパントキックで相手を裏返し、左SB平野がドリブル突破にチャレンジ。また、FW俵がインターセプトから一気にゴールへ向かうシーンもあった。立ち上がりから攻め合う展開。その中、仙台ユースが連続ゴールで相手を突き放す。前半9分、石山が右サイドから左足CKを入れると、中央のFWピドゥが頭でゴール左隅へ流し込んだ。

前半9分、仙台ユースFWピドゥ大樹(11番)が先制ヘッド

3年生ストライカーが大仕事

 先制した仙台ユースは、畳み掛ける。12分、ボランチの池田が左サイドの浅尾からパスを受けると、寄せの甘い相手の隙を突く形で中盤からドリブル。ライン突破し、前方の古屋へボールを預ける。すると、古屋が左中間から縦へドリブルで切れ込み、そのまま左足シュートをゴール右隅へ流し込んだ。

前半12分、仙台ユースFW古屋歩夢(左端)が追加点

 2-0。仙台ユースはその後も古屋やピドゥ、小澤がポイントを作る形で相手を押し込み、3点目を狙う。そして、浅尾のラストパスから古屋が右足シュートを放った。だが、愛媛U-18も反撃。相手を見ながらスピーディーにパスを繋いで攻め返す。22分には左SB平野のスルーパスで青木が左中間を抜け出して左足シュート。このこぼれを俵が豪快に左足で決め、1点差とした。

前半22分、愛媛U-18FW俵拓斗が左足で追撃ゴール

チームを勢いづける一撃に

 愛媛U-18は前からの制限を掛けて奪い返しに成功。ボールを保持して主導権を握り、左SB平野がインサイドを取って崩しに係わる。27分、田中のクロスからCB石原がヘッド。また、石原はCB佐藤のロングスローで高さを発揮したほか、随所で持ち上がって攻撃に厚みを加えていた。

愛媛U-18のCB石原拍は高さを活かしたヘッドやドリブルでの持ち運びなど特長を発揮

 愛媛U-18は40分に決定機。仙波がインターセプトから前進し、スルーパスを通す。だが、青木の右足シュートは枠を捉えず、直後に嵐の放った右足ミドルも相手GK渡辺の好セーブに阻まれた。愛媛U-18は後半立ち上がりにも平野の左クロスがファーサイドの浦添の下へ到達。だが、決め切ることができない。

愛媛U-18のU-18日本代表FW青木壱清が右足シュート。愛媛は同点のチャンスを作ったが…

 一方の仙台ユースは稲木がDF裏へ飛び出して左足シュート。また、サイドから押し込み、右SB古川がクロスへ持ち込む。12分には小澤を左SB似内久穏(3年)と入れ替え、石山をボランチ、稲木を右SHへ押し出した。一方の愛媛U-18も13分に田中とDF齋藤佑人(3年)を交代。仙台ユースは後半、前半の流れの悪い時間帯から立て直して見せた。

 押し込まれても永井や池田が相手のシュートをブロックしたほか、今野やFW古屋ら前線、中盤の選手も守備局面で強さを発揮。永井は「(1点差とされたが、)これ以上失点しないっていうのはハーフタイムにも言われましたし、ディフェンスラインもだし、チーム全体として、そこは共通認識持ってやれたのかなって思います」と振り返る。その一方、古屋のスルーパスから稲木が決定機を迎えたほか、永井がインターセプトからドリブル、ワンツーで一気に攻め上がり、古屋のシュートを演出するシーンもあった。

仙台ユースの守りを支えたCB永井大義主将

攻守両面で利いていた仙台ユースMF池田悠一

 序盤の連続ゴールから徐々に我慢の展開となっていた仙台ユース。だが、後半立ち上がりから試合終盤へ掛けて、よりやるべきことを明確に表現して見せる。加藤監督は「こういう時は間違いなくあるので、その時に、じゃあ苦しくなった時に何をできるか。ただ頑張るっていうだけじゃなくて、ちゃんとチームとして、個人として、ポジションとして、何をするのかっていう役割を覚えてもらおうと思って(この1年)やっていました」。中央で相手の攻撃を跳ね返し、オープン攻撃。手数をかけずにピドゥや1人で計8本のシュートを放った古屋がシュートに持ち込んだ。

仙台ユースFW古屋歩夢は1人で8本ものシュートを放った

 愛媛U-18は1点が遠い。18分に俵の左クロスから仙波の放ったヘッドは仙台ユースGK渡辺がキャッチ。石原や瑞慶覧が攻め上がり、齋藤のドリブル突破など厚みのある攻撃を見せるが、クロスやシュートを跳ね返され、逆に押し返されてしまう。

 愛媛U-18は27分に仙波とFW石橋潤人(1年)を交代。左サイドから仕掛ける回数を増やし、浦添、青木が相手ゴールを脅かす。だが、仙台ユースのGK渡辺やDF陣に阻まれてしまうなど、どうしてもゴールを破ることができない。

 仙台ユースは33分に稲木とピドゥに代えてMF松田匠未(3年)とMF永守大宙(3年)をピッチへ送り出す。愛媛U-18も37分に平野とFW菅範十(2年)を入れ替えた。試合終盤は、ベンチ前で両チームの選手が立ち上がったままピッチの仲間に声がけ。愛媛U-18は諦めずに攻めるが、逆に仙台ユースの松田にクロスへ持ち込まれ、永守にポスト直撃のシュートを打たれてしまう。仙台ユースはアディショナルタイムに浅尾とFW佐々木亮(2年)を入れ替え、そのまま試合終了。「まずは素直に嬉しい気持ちが強いです」(永井)「この3年目でようやくプレミア昇格できて、一番はホッとしています」(古屋)。歴史を塗り替える勝利に涙を流す選手もいた。

仙台ユースが歴史を塗り替えた

 仙台ユースは今回、8度目のプレーオフ挑戦だった。2019年には昇格決定戦(対鳥栖U-18)の後半アディショナルタイムに追いつかれて延長戦で敗戦。2023年は昇格決定戦(対戦鹿島ユース)で0-7の大敗し、昨年も初戦(京都U-18)に1-5で敗れている。PK戦敗退や逆転負けといった惜敗の一方、実力差を見せつけられての完敗も。今年はこのプレーオフで必ず2勝することをイメージし、日々確認を繰り返しながら力を高めてきた。

 東北からプレミアリーグに昇格するための努力。永井は「この東北っていう他の地域と強度だったりの差がある中で、毎年、そういうので苦しんできたと思うんで、今年は日頃の練習からそういう強度の部分だったり、1個1個の質っていうのはこだわってきた自信はありますし、走力っていうところでも、毎週走ってずっとやってきたんで、それが結果的にプレミア参入に繋がったのかなって思います」と胸を張った。

 また、池田は特に加藤監督から強調されてきた点について、「もう完全に、相手を見てプレーすることです」と明かす。そして、相手の動きをみて、それに応じたサッカーを「(監督の加藤)望さんにしっかりと叩き込まれいて、それがやっぱり今年の好調っていうか、ベガルタ仙台ユースの強さになってるかなって思います」と分析する。トップチームへの練習参加も多く、育成、トップの「一体感」(加藤監督)も強化に繋がった。

 今年は、シーズン開幕から日本クラブユース選手権決勝(7月31日)で鹿島ユースに敗れるまで公式戦不敗。クラブユース選手権で初の決勝進出、準優勝を果たし、Jユースカップでも過去最高成績となる3位に入った。そして、悲願のプレミアリーグ昇格。加藤監督が「個性があって、勝負に対して凄く貪欲。大学行くメンバーもいるんですけど、大学行ってからちょっと伸びてくるんじゃないかなっていう学年ですね」という世代が歴史を塗り替えた。

 クラブユース選手権で初めてファイナリストになったことに続き、今回のプレミアリーグ昇格の影響は間違いなく大きい。加藤監督は「アカデミーからトップに上げて仙台出身の子たちをやっぱりピッチに立たせたい。あとは、東北から他(の地域)に漏れてっちゃう子がいるんですよね。ジュニア、ジュニアユースで。それを東北でやっぱり育ててっていう、東北全部を巻き込んで、それの中心にベガルタがあればいい」。今年、宮城、東北のチームでもやれることを証明。ここから3年、5年と“高校年代最高峰のリーグ戦”で戦い続けてチームのレベルを引き上げ、強烈な個を育てて、“強い仙台”としてあり続ける。

仙台トップチームの森山佳郎監督(左)と山崎直アカデミーダイレクター(右)が仙台ユースの加藤望監督を祝福

仙台ユースの加藤望監督が宙を舞う

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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