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香港で子役として活躍し、日本語学習、友だち作りのために来日。柳ヶ浦を支える女子マネは女子選手権優勝のチームメイトと「一緒にもっと強くなりたい」

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女子選手権優勝の柳ヶ浦高(大分)をマネージャーとして支えるヤンハイイン・セリーンさん

 今年1月に行なわれた第34回全日本高等学校女子サッカー選手権大会で初優勝を果たした柳ヶ浦高(大分)女子サッカー部には、他とは違った経歴を持つ部員がいる。香港からの留学生でマネージャーを務めるヤンハイイン・セリーンさん(2年)だ。

 香港では人気子役として知られており、3歳から出演してきたCMやドラマの数は「たくさん出ていて、数えきれない」(ヤンハイインさん)ほど。男子サッカー部の有門寿監督が「香港の芦田愛菜ちゃん」と評するのも大げさなではない。6歳の頃に撮ったCMが日本へと渡った今なお流れており、彼女のSNSは1万人以上のフォロワーがいる。

 彼女が日本にやってきたのは、ウルトラマンや仮面ライダーなど特撮ヒーローが好きで、日本への留学経験もある父の影響が大きい。自身も中学生の頃から漫画「鬼滅の刃」や「黒子のバスケ」、木村拓哉さん主演のドラマ「グランメゾン東京」といった日本のカルチャーに興味を持ち、コロナ禍を機に本格的に父から日本語を教わるようになったという。

 日本への留学を決意したのは中学3年生の頃だった。「日本語をもっと勉強したかったし、日本人の友達が作りたかったし。それに部活にも入りたかった」。そう振り返る彼女は父から柳ヶ浦高が女子高校サッカー選手権で3位になったニュースを教わった。気になって調べてみると、留学生を受け入れていることを知り、入学を決めたという。

 日本人の友だちを作るため、部活に入ろうと考えていた彼女は選手としてサッカー部への入部を試みた。ただ、サッカーの試合を見るのは好きだったものの、プレーするのは遊びでする程度で、ルールも詳しくない。運動神経には自信があったというが、全国屈指の強豪校のレベルに付いていくのは難しく、選手の道は3日で断念する。

 ただ、そのままでは引き下がらない。「サッカーを諦めるのではなく形を変えてマネージャーとしてチームをサポートしようと思った」。見よう見まねでマネージャーの業務を学び、サッカーのルールを勉強することで、彼女のサッカー人生が始まった。

「間近で全国レベルのサッカーを見ることができるし、みんなと仲良くなって日本語をたくさん喋ることができる。元々、日本人の友だちを作りたくて日本に来たので嬉しい」。そう話す彼女の日本語はとても流ちょうで、大分に来てからは苦手だった敬語も上手くなったという。生徒会長を務めるなど学校生活も充実している。

「マネージャーの仕事は大変ですが、空気を読んだり、習うことがたくさんあります。相手の気持ちになって、まっすぐ言うのではなく、どう伝えれば良いのだろうって考えるようになりました」。仲間とともに勝敗に一喜一憂し、落ち込んでいる選手がいたら悩みを聞いて、慰め、励ます。そうした彼女の一生懸命な姿には「彼女がいるとチームが明るくなる」と評する林和志監督だけでなく、チームメイトも信頼を寄せている。

 初優勝で幕を閉じた女子選手権ではマネージャーとしてベンチ入り。チームメイトが全国の舞台で躍動し、日本一まで駆け上がる姿に心を揺さぶられた。「色々大変なこともありましたけど、ここまでの成績を取れて嬉しかった。めっちゃ嬉しかったのに感動してちょっと泣きました。感情が良く分からなかった」。

 幼少の頃からやってきた役者としての仕事に未練がないわけではない。「まだ将来について考えていません。まずは勉強して日本の大学に入って、そこから本当に元々の仕事をやりたいのか、それとも自分で新しい道を切り拓きたいのか考えたい」と話すように、将来の選択肢を増やすために勉強に力を入れたいと考えている。

 高校生活の最後の一年を迎える今はサッカーのことしか考えていない。「みんなの練習風景を見て、本当に強いなと感じたし、一生懸命頑張っているなと刺激をもらえる。一緒にもっと強くなりたい」と日本一になった選手たちに刺激を受け、マネージャーとしての成長を誓う。「マーカーやコーンを置く場所が一人では分からないので詳しく知りたい」と続けるように、監督とコーチが行なう練習のサポートがもっとできるようになることが今の目標だ。

 女優としてではなく、一人の女子高生として高校サッカーと全力で向き合う彼女は柳ヶ浦に欠かせない戦力として、2度目の日本一を狙いに行く。


(取材・文 森田将義)
森田将義
Text by 森田将義

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