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2年前のファイナルで敗れた前橋商にリベンジ達成!共愛学園は新たな歴史の扉を開くための舞台へ堂々と向かう

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共愛学園高は2年前のリベンジを達成して堂々ファイナルへ!

[11.3 高校選手権群馬県予選準決勝 共愛学園高 2-0 前橋商高]

 群馬県内では常に上位進出を義務付けられる立ち位置までやってきた。選手権予選は2年ぶりとなる2度目のファイナル進出。確実に全国はすぐ手の届くところまで近付いてきている。だからこそ、打ち破りたい。まだ見ぬもう一歩先の世界へと続く扉を、今度こそ、絶対に。

「コンスタントにそういうところに行かせてもらえるようになってきたことは、自分的にも自信が付きますよね。でも、そこがゴールではないですし、その一歩先に行かなくてはいけないと思っていますので、決勝もどこまでできるかわからないですけど、育英さん相手に何かをやってやりたいなと」(共愛学園高・奈良章弘監督)。

 時は来た。共愛学園高(群馬)が新たな歴史を創るために必要な勝利は、あとわずかに1つだけだ。

 カードが決まった時から、因縁めいたものはみんなが感じていた。選手権予選群馬準決勝。対峙するのは前橋商高。県内の覇権を前橋育英高と争い続けてきた伝統校だが、共愛学園にとってこのチームは特別な意味を持つ対戦相手だ。

 2年前の選手権予選決勝。初めてその舞台へと勝ち上がった共愛学園は、前半のうちに幸先良く先制。以降も粘り強く相手の攻撃を凌ぎ、終盤まで1点をリード。ほとんど勝利が見えかけていたが、残り1分で追い付かれると、後半アディショナルタイムにはまさかの逆転ゴールを献上。掴み掛けていた全国切符はその手から無情にも零れ落ちていった。

 今年の3年生は、大半がその光景をスタンドから見つめていた。「僕もスタンドで見ていました。自分も全国に行けると思ったんですけど、前商の粘り強い守備や攻撃に最後の最後でやられたので、とにかく前商の粘り強さが印象的でした」と今年のキャプテンを務めるFW竹内海人(3年)が話せば、「『自分もこの舞台でやりたいな』と思ってスタンドから見ていました。最後の最後でやられてしまったのは悔しかったです」とはDF小林叶拓(3年)。この試合の記憶は共愛学園の歴史にしっかりと刻まれている。

 奈良監督は準決勝に向けて、選手をモチベートするためにあえて“あの試合”を引き合いに出したという。「準決勝に勝つことが目的ではないけど、『2年前のことは絶対に忘れるな』ということは、この1週間ずっと言い続けてきました。今週は非常に良い雰囲気で、こっちもビックリするぐらい精度も高くやれたので、『最後のピースはそこだぞ。一丸になることだ』とも言ってきましたね」。準備万端。自信を持ってこの日を迎えていた。

「アップから全員が良い雰囲気を作れていましたし、自分たちは元気にみんなでやるところが良いところなので、前半の立ち上がりから全員が緊張しないでできていたので良かったです」と竹内が振り返った通り、共愛学園はフルスロットルでゲームを立ち上げる。

 前半6分。左サイドでこぼれ球を拾ったMF横井勇真(3年)が中央へ丁寧なパスを送ると、MF松本陽生(2年)はエリア内で左足一閃。ボールは右スミのゴールネットへ吸い込まれる。さらに3分後の9分にも、右から竹内が蹴り込んだCKをファーでDF日向野麗司(3年)が頭で折り返し、最後はMF松井瑞葵(3年)が豪快にプッシュ。得意のセットプレーから追加点までゲットしてしまう。

共愛学園高はMF松本陽生(14番)のゴールで先制!


「前商も来ると思っていたので、そこは『引かずに仕掛けよう』と。良い形で2点獲れましたね」とは奈良監督。想定通りの先制パンチ。前半終了間際には相手選手との接触でエースのFW中島音和(3年)が負傷し、救急車で搬送されるアクシデントがあったものの、「全員で『音和の分まで決勝に絶対行けるように頑張ろう』って言っていました」とは小林。難しいシチュエーションにも、チームは再び戦う意志を1つにまとめ上げる。

 後半は前橋商の攻勢にさらされるシーンが増えていく中で、存在感を示したのがGKの佐藤明珠(1年)だ。「自分の得意なセービングがしっかり生かせて良かったです」と笑顔を見せた1年生守護神は、的確な指示を“先輩たち”に送りつつ、自身もファインセーブでチームの危機を1つずつ潰していく。

 終盤に訪れた決定的なピンチも、「たぶんカナタ(小林)かレイジ(日向野)のどっちかがファーを守ってくれると思って、ニアは絶対守ろうと思って飛び出しました」という佐藤がニアを消して飛び出したことで、エリア内へ侵入した相手のアタッカーは残された選択肢としてファーにシュートを放つも、「明珠がニアは切ってくれると思ったので、ゴールカバーに入りました。普段の練習からやっていますから」と笑顔を見せた小林が完璧なカバーでスーパークリア。積み重ねてきた連携を、この大舞台で冷静に披露してみせる。

見事な連携で危機を凌いだDF小林叶拓とGK佐藤明珠が笑顔でハイタッチ


「最後に失点したらまた2年前と同じになってしまうので、最後まで集中を切らさずにやりました」(小林)「一昨年の決勝も後半のアディショナルタイムにやられましたし、去年の選手権も後半のアディショナルタイムにやられたのが自分たちの負けた原因なので、『しっかり後半もみんなで締めてやっていこう』ということは話していました」(竹内)。終わってみれば2-0の完封勝利。2年前のリベンジを達成し、共愛学園がファイナルへの進出権を力強く手繰り寄せた。

 前橋商は奈良監督にとって高校の3年間を過ごし、特に3年時は白と黒のユニフォームを纏って、選手権で全国大会を経験した母校でもある。「前商は目標にしているチームの1つですし、やっぱり2年前に負けたことは一生忘れることがないので、リベンジできて本当に良かったと思います。『ウチもやるぞ』というのは見せられたかなって」。少し笑った指揮官は、この決勝進出がチームにもたらす意味をこう続ける。

「2年前にあそこで負けているので、まずはその舞台に辿り着きたいという想いがありましたし、メンバーには入っていないですけど、スタンドから見ていた子が今年最後の学年になるので、アイツらがいるうちにあそこの舞台を経験させて、もう1回戦わせたかったので、頑張って本当に辿り着いてくれて嬉しいですね」。大舞台で先輩たちが後輩たちに背中を見せ、その継承がチームの伝統になっていく。共愛学園も確実にそのサイクルが始まりつつあるわけだ。

 ならば、次の1試合は彼らにとって、さらなる伝統を築くための絶好のチャンスだ。向かい合うのは夏の日本一に立った前橋育英。インターハイ予選では準決勝で対戦し、0-6で大敗を喫しているが、「あの負けの悔しさを知って、練習からみんな意識が変わって、全員で声を出しながら、雰囲気良くやってこれた部分はありますし、全員で『選手権は全国を目指そう』ということでやってきました」と竹内が明かしたように、グループの本気度を深めてくれたきっかけのチームでもある。

「前回のインターハイの時も自分は出ていたんですけど、ボロボロに負けたので、次はボロボロにならないように、しっかりと食らい付いていきたい気持ちはあります。そんな簡単ではないと思いますけど、自分が全部止めるしかないですね」。佐藤が頼もしい決意を語れば、「自分たちはチャレンジャーなので、粘り強く対応して、1点ゲームでもいいので、最後にはセットプレーを中心に点数が獲れればいいなと。みんな全国に行きたい気持ちはあります」と竹内も決戦へと想いを馳せる。

「育英相手にビビらず、思い切ってやってくれればいいのかなと思いますね。ウチは失うものは何もないですから」。奈良監督の笑顔が選手たちへの確かな信頼を窺わせる。2年前に置き忘れてきたもう1つのリベンジを期す共愛学園が、約束の舞台へ堂々と立つ。



(取材・文 土屋雅史)
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