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80+4分に劇的同点弾!延長戦で猛攻3ゴール! “王者前育”不在の群馬で創部19年目・共愛学園が初の決勝へ

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決勝ゴールを突き刺したMF山中悠聖(3年、背番号11)

[11.1 選手権群馬県予選準決勝 新島学園高1-4(延長)共愛学園高 敷島公園サッカー・ラグビー場]

 第99回全国高校サッカー選手権群馬県予選は1日、準決勝を行い、第1試合は共愛学園高が新島学園高を延長戦の末に4-1で破った。創部19年目で初めての決勝進出。後半アディショナルタイム4分に同点ゴールが決まり、延長戦で一挙3点を奪うという劇的な勝ち上がりで歴史を切り開いた。

 6連覇中の前橋育英高が3回戦で敗れるという波乱が起きた群馬県予選。準決勝第1試合では49年ぶり3回目の全国大会を目指す古豪・新島学園と、女子校からの共学化により2002年に創部した新興校・共愛学園が激突した。

 序盤の主導権を握ったのは新島学園。少ないタッチ数で前線にロングボールを蹴り込み、相手の最終ラインを一気に押し下げる。それでも前半10分過ぎ、新島学園が4-4-2から3-4-2-1にシステムを変更し、一部の選手を逆サイドに配置する大胆なテコ入れを敢行すると、徐々に相手の共愛学園がボールを持つ時間が増加。強烈なキックを持つMF中澤諄哉(3年)のミドルシュートなどで次第にゴールに迫った。

 前半20分には、共愛学園にこの試合最初の決定機。MF山中悠聖(3年)の裏へのパスから左サイドを抜け出したMF多島巧(3年)がシュートを放ち、新島学園のゴールマウスを捉える。ところが、このボールはDF金嶋孝典(3年)がゴールライン上でスライディングブロック。左CBに入っていた背番号7のスーパープレーで試合の均衡が保たれた。

 飲水タイムが取られた前半25分過ぎからは再び新島学園がペースを取り戻し、最前線で身体を張るFW高橋悠雅(3年)のポストプレーを活かしてチャンスを創出。積極的な飛び出しを見せるFW松田一志(2年)が立て続けにゴールに迫った。だが、なかなかシュートに結びつけることはできず、スコアレスのままハーフタイムを迎えた。

 試合が動いたのは後半5分、新島学園のセットプレーからだった。左CKのキッカーを務めたMF森涼平(3年)がMF井上藍斗(2年)を使ったショートコーナーからクロスを上げると、ファーサイドでDF吉田慎之介(2年)が高打点ヘッド。この折り返しのボールを混戦の中で拾ったMF櫛渕瑚汰郎(3年)が右足でシュートを放ち、無人のゴールに押し込んだ。

 ビハインドとなった共愛学園もここから猛攻を見せる。後半12分、セットプレーから多嶋が右足で狙うと、18分にはFW須藤倫汰(3年)が果敢なボレーシュート。20分には途中出場FW桑原優斗(3年)のドリブル突破からDF田中海州(3年)のボレー、25分には中澤のミドルと、次々に新島学園ゴールを襲った。ところがGK新居侑成(2年)のビッグセーブにも阻まれるなど、なかなかネットを揺らすまでには至らない

 劣勢の続いた新島学園はなかなか攻めに出られずにいるものの、守備陣が相手のシュートに身体を張り続け、防戦一方ながらも得点を許さない大奮闘。それでも共愛学園は後半35分にMF柳澤里成(3年)、38分にFW大谷秀虎(2年)を入れて前線の人数を増やし、パワープレーも使いながら最後の猛攻を仕掛けていった。

 するとタイムアップ直前のアディショナルタイム4分、ついに新島学園の堅守を破った。左サイドを突破した中澤のパスから、ペナルティエリア内の大谷がタメをつくって味方につなぐと、これを受けた山中が冷静にコースを見極めて右足シュート。必死で身体を投げ出した新島学園ディフェンスの逆を突くキックで奇跡的な同点劇をもたらし、試合を延長戦に持ち込んだ。

 そうして迎えた延長戦は、勢いに乗った共愛学園がゴールショーを披露した。まずは延長前半3分、中盤で大谷がボールを収めると、パスを受けた須藤がミドルレンジから右足を一閃。シュート回転がかったボールがゴール右上隅に突き刺さり、スーパーゴールで勝ち越した。さらに7分、左サイドを突破した須藤の高速クロスに大谷がファーで合わせて追加点。2点のリードで延長戦のハーフタイムを迎えた。

 後半に入ると新島学園も途中出場FW杉山太陽(3年)へのロングボールでなんとか陣地を回復し、FW高橋将太(1年)が惜しいシュートも放った。しかし、このチャンスがGK井戸孔晟(3年)に阻まれると、共愛学園は延長後半アディショナルタイム3分に追加点。MF山本壮汰(3年)の右CKをニアで収めたFW森隆翔(3年)が気合を込めて突き刺し、最後は3点差で初の決勝進出を決めた。

 創部当初から指揮を執り、就任19年目を迎えた奈良章弘監督にとっても悲願の決勝進出。「やっとたどり着いた」と感慨を語った指揮官は「最後まで諦めず、一つになって戦ってくれた。コロナ明けでは緩さがあったなかで、試合を重ねるごとにチームも成長している。みんなで戦っているなというのが今日はすごく伝わったのでうれしかった」と選手たちをたたえた。

 もっとも、目線はすでに1週間後の決勝戦に向いている。第2試合前の取材では「どちらも力はあるので難しい試合になる。楽しくうちのサッカーをやって、結果は選手を信じて送り出して待つしかない」と語った指揮官。第2試合の結果によって自身の出身校でもある前橋商高との対決が決まったが、「最後まで諦めない」姿勢を貫いて全国へと駆け上がっていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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