[11.1 選手権愛知県予選準決勝 東海学園高 1-0 名古屋高 ウェーブスタジアム刈谷]

　東海学園が夏の雪辱に成功。5年ぶりの選手権出場へ、あと1勝とした。第104回全国高校サッカー選手権愛知県予選準決勝が1日、刈谷市のウェーブスタジアム刈谷で行われ、東海学園高とc名古屋高が対戦。東海学園が1-0で勝ち、愛工大名電高との決勝(8日)へ進出した。

　両校はインターハイ予選3回戦で対戦し、名古屋が1-0で勝利。その雪辱に燃える東海学園の先発はGK山田仁(2年)、DF榎本海翔(3年)、笹木碧斗(3年)、長澤良哉(3年)、浅野颯太(3年)、MF尾崎壮(3年)、瀬古隼大(3年)、鈴木悠生(3年)、新井哲平主将(3年)、FW小田島俊介(2年)、廣川拓海(3年)の11人で構成された。

東海学園は夏のリベンジマッチに挑んだ

　一方の名古屋は2年前の選手権で初出場ながらベスト8と躍進。今年はインターハイ予選準優勝、水戸内定MF山下翔大(3年)を擁する注目校だ。この日の先発はGK村谷穣(3年)、DF高橋隆太朗主将(3年)、高木飛色(3年)、飯塚絢彗(3年)、寺地広騎(2年)、山本舷人(1年)、MF服部孝太朗(3年)、齋藤稀星(3年)、坪井創大(2年)、高桑一馬(2年)、FW澤田海心(3年)の11人。怪我明けの山下はベンチスタートとなった。

名古屋は2年前に全国8強

　立ち上がり、東海学園がプッシュ。鶴田道弘監督が「ボール扱えるとか、細かなことをやることが好きな子は多いです」という世代のチームは後方から正確にボールを繋ぎ、相手SBの背後を取りに行く。そして、運動量豊富な尾崎や瀬古がハイサイドへ飛び出してクロス。セットプレーを獲得し、名古屋DFにプレッシャーをかけた。

　対する名古屋は守備から試合に入り、CB高橋、GK村谷を中心に相手の攻撃を跳ね返すと、サイドから攻撃。坪井のロングスローや、攻守に存在感のある動きを見せたMF服部のFKを181cmFW澤田が頭に当て、ゴール前のシーンを作り出す。

名古屋のCB高橋隆太朗主将が相手の攻撃を跳ね返す

　24分には東海学園に決定機。瀬古との連係から左SB浅野がDFと入れ替わる形で前進。グラウンダーのラストパスから小田島が決定的な右足シュートを放つ。すると、名古屋は30分、プラン通りに山下を投入。だが、直後に東海学園が先制に成功する。

　33分、東海学園は自陣右サイドの榎本がボールを落ち着かせて縦パス。これを廣川がDFと競りながらキープすると、小田島が身体を張って鈴木に繋ぐ。前向きにボールを受けた鈴木は外への展開を予想する相手の意表を突く形で、わずかに空いた相手DF間へ絶妙なスルーパス。左サイドの瀬古がダイアゴナルに走り込むと、ファーストタッチでGKをかわし、そのまま右足シュートをゴールにねじ込んだ。

前半33分、東海学園はMF鈴木悠生が絶妙なスルーパス

MF瀬古隼大が相手よりもわずかに速く、右足シュート

　鶴田監督が「いいパスが裏に入って、あそこはもう個人の判断とアイディアのところで。ああいう形で点を取ろうとかっていうことはやってないけど、選手たちがアイディアを出してやってくれましたね」と称賛した先制点。見事な崩しでリードを奪った。

貴重な先制点を喜ぶ

　対する名古屋は右サイドで投入された山下が主戦場の左サイドへ。高速ドリブルから1度、2度と左足クロスを上げ切って見せる。そして、後半開始から2枚替え。MF杉本成空(3年)とFW平岩大和(3年)を同時投入した。

　後半は名古屋ペースに。まず右の杉本が突破からクロスを上げると、14分には左の山下がDF2人の間を破ってラストパスを狙う。このこぼれ球を坪井が左足で狙うも、東海学園GK山田が反応してキャッチ。名古屋は15分にMF柳瀬琥葵(3年)とFW櫻井瑛太(2年)へ入れ替える。

　そして、17分、服部の左CKを高橋が頭で撃ち抜くが、東海学園GK山田がビッグセーブ。さらに澤田がゴールエリアからかき出し、決定機を阻止する。名古屋は山下にボールを集めてその突破力に期待。実際に山下は1対2の状況でも打開するような力を見せていた。

水戸内定の名古屋MF山下翔大は圧倒的な突破力を披露。だが、シュートを打てなかった

　東海学園の鶴田監督は、相手エース・山下への対応について「正直、迷いました」と明かしたが、「とりあえず縦切りしたとしたら、インクロスのところのマークと中切りしたらもう必ずカバーリング。センターバックが吊り出されたら中のマークっていうところをボランチ含めてやろうというところは徹底しました」。その言葉通り、選手たちがその対応を徹底する。

　山下にシュートを打たせず、クロスも指揮官が「夏前まであまり試合に出ていなかった。急成長して、自分でフィジカル鍛えて、あそこまでできる」と評した笹木とDFリーダーの長澤が中心となってクリア。また、新井が献身的なプレスバックを見せるなど集中した守りを継続する。

　勢い、強度で上回る名古屋は35分、右サイドを松本が突破してクロス。こぼれを繋ぎ、柳瀬が左足で狙うが、東海学園GK山田が再び立ちはだかる。その東海学園は奪ったボールを前線の廣川が収め、尾崎や新井がDF背後を突くが、相手GK村谷に阻まれてしまう。それでも、終盤に投入されたFW渡辺龍牙(3年)とFW杉浦我成(3年)を含めて各選手が足を動かし続ける。

東海学園の2年生守護神、GK山田仁が名古屋の前に立ちはだかった

東海学園はDF陣がゴールを死守

　名古屋は40+5分、右ロングスローの流れから寺地が右足でネットを揺らすもオフサイドの判定。試合終盤は左の山下をなかなか活用することができず、東海学園の守りに跳ね返されてしまう。東海学園は苦しい時間帯も粘り強く戦い抜き、「今年のチームは自立していた。ウチがゼロに抑えられることはなかなかなかった」(大久保隆一郎ヘッドコーチ)という名古屋を完封。決勝への切符を勝ち取った。

後半40+5分、名古屋は右ロングスローの流れからDF寺地広騎が右足でネットを揺らしたが、惜しくもオフサイドの判定

　東海学園はインターハイ予選後の県1部リーグ戦を4勝1分1敗。瀬古は「インターハイで名古屋に負けて、自分たちはあの時何もできなかったという認識があって、やっぱもう1度その基礎のところをしっかり見つめ直していこうというところで、リーグ戦にも結果が現れてきました。一回、初心に帰ったことが、ここまでチームの団結力を作ったなと思います」と頷く。

　鶴田監督は「(押し込まれると、)どうしても少し圧かかったような感じになってしまっているので、そこにはやっぱり本当のスキルがまだないというところがある。時間を上手く作るところっていうのはもうちょっと上げないといけない」と求めるが、インターハイ予選からの進化を示して名古屋にリベンジ。一週間、しっかりと準備をして愛工大名電との決勝に臨む。

　愛工大名電は昨年度の選手権予選と今年のインターハイ予選の優勝校。鶴田監督は「メンタル的なところで、やっぱり今勝ち続けているチームなので。昨年、前育(前橋育英高)とああいう試合(2-2PK5-6)をやるとか、その後のインターハイも新チームで取ってというところで言えば、何となく勝ち方を全部員で自信持ってると思うので、そこら辺でビビることになく、向かっていくと。自分たちの方が全国出場多いし、そういうものをまとって戦えるかどうかっていうことが大事でしょう」と語った。

　そして、瀬古は「いつも監督さんが言われるんですけど、『常に謙虚に』。まだ決勝もあるので、また来週へ向けて謙虚に、ごまかさずにしっかり準備して、決勝、また笑って終われるように頑張りたいです」と力を込めた。謙虚に、臆せず、相手に立ち向かい、5年ぶり5度目の選手権切符を勝ち取る。

東海学園が1-0で勝利。決勝進出を決めた

(取材・文　吉田太郎)

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