[選手権]流経大柏が延長戦、4-3で千葉名門対決を制す!!向上心や「勝ち切れる」「競争力」が強みの世代が市立船橋を乗り越え、また成長
[11.9 選手権千葉県予選準決勝 流通経済大柏高 4-3(延長)市立船橋高 柏の葉]
千葉名門対決は100分間の激闘の末、4-3で決着! 第104回全国高校サッカー選手権千葉県予選準決勝が9日、柏市の千葉県立柏の葉公園総合競技場で行われ、昨年度全国2位の流通経済大柏高と全国優勝5度の市立船橋高が対戦。流経大柏が延長戦にもつれ込んだ熱戦を4-3で制し、決勝へ進出した。
2021年度大会まで9年連続で千葉決勝を戦ってきた両雄が、今年は13年ぶりに準決勝で激突。今季の流経大柏はインターハイ3位、プレミアリーグEASTでも優勝争いを演じて現在4位につけている。加えて、Jリーグ内定4選手を擁する強力な陣容。それに対し、市立船橋はインターハイ予選準々決勝敗退、プレミアリーグEASTでは開幕から18試合未勝利で降格決定と選手権予選前までなかなか勝ち切ることができていなかった。
それでも、流経大柏の榎本雅大監督は「やっぱり選手にも口うるさく、僕も『市船は絶対、最後は来るよ』『本当に自分たちのベストは出し切れなかったら勝てない』と。(3-1で迎えた)後半も『市船はこのまま終わるようなチームじゃない。だから、自分たちも我慢の時間が長くなるかもしれないけど、やっぱり歯を食いしばってやること』、そういうところはもう言ってきました」と説明する。
苦しいシーズンを送ってきた市立船橋が、1-3から追いつく驚異的な粘り。そして逆転のチャンスも作った。「やっぱりずっと千葉を牽引してきたチームなんで、そういう部分に僕らも追いつき、追い越せで来たし、そういう部分でのプライドってやっぱ凄えなって改めて感じました」と榎本監督はいう。それでも、流経大柏が「勝ち切れるところ」「競争力」(榎本監督)の強みを発揮。ライバル対決の勝者になった。
流経大柏はU-17ワールドカップ出場中のDFメンディー・サイモン友(2年/U-17日本代表)、体調不良の東京V内定FW大藤颯太(3年)とDF大徳剛矢(2年)が不在。先発はGK藤田泰土(3年)、DF廣瀬煌(3年)、増田大空(3年/磐田内定/U-17日本代表)、可児良英(2年)、真壁英人(2年)、MF乙川宙(3年)、島谷義進(3年/水戸内定)、上田哲郎(3年)、古川蒼真(2年)、FW渡辺瞳也(2年)、金子琉久(3年)で水戸内定MF安藤晃希(3年/U-17日本高校選抜)はベンチスタートだった。


一方、2年前の全国3位・市立船橋はGK辰侑樹(3年)、DF左近作怜(3年)、野地透生(3年)、牧野歩(3年)、篠崎健人(2年/U-17日本代表)、MF小林空翔(3年)、ゲーム主将の小川夢成(3年)、孫本晟馬(2年)、福田一平(2年)、FW山本一誓(3年)、佐々木瑛汰(2年)の11人が先発した。


立ち上がりは流経大柏が狙い通りの入り。3分、渡辺が浮き球パスをPA内左へ送ると、右SH乙川が市立船橋DFの背中側から追いつく。そして、遅れて対応したGKに倒される形でPKを獲得。このPKをダブルキャプテンの一人、島谷が右足で決めて先制した。


さらに島谷が球際で強さを見せるなど相手を止めると、6分、GK藤田のロングキックから金子が抜け出す。右足シュートはポストを叩いたが、跳ね返りを乙川が押し込み、2-0とした。榎本監督が「(SBでの出場が多いが、)秘密兵器で活かそうと。『積んでいるエンジンが違う』っていつも言っているんですけど。やっぱり爆発力とか凄い」と評した乙川のSH起用も的中。市立船橋に「1点取られてからの強度っていうのはやっぱり凄い」「これぞ流経」と印象付けるような前へのパワーを表現し、わずか6分間で2点を先取した。


今季の勢いの差も出たような序盤。だが、市立船橋は12分、小川の左FKをファーサイドの山本が頭でねじ込み、1点を返す。市立船橋の波多秀吾監督は立ち上がりの2失点後の選手たちの表情について、「落ち込んではいましたけど、1点返せたのが比較的早い時間帯だったので、それで少し持ち直せたかなと。選手たちがプレーする中で、肌感覚で『これはやれる』『点数取れる』っていうような感覚にはなってたんじゃないかなと思います」と説明する。


流経大柏の榎本監督もこの1点をポイントに挙げていたが、市立船橋は再び突き放されても前向きな戦いを続けていた。22分、流経大柏は左CKの流れから上田が左クロス。中央へのクリアを増田がコントロールすると、左足を振り抜く。これが鋭い軌道で右隅に突き刺さり、3-1となった。流経大柏は金子、渡辺の2トップへボールを入れる一方、上田や古川が係わりながらの連動的な崩しで相手に圧力。そして、磐田内定左SBのスーパーミドルによって3点目を奪った。




その流経大柏は島谷を筆頭に守備のアプローチも速く、相手に攻め切ることを許さない。だが、市立船橋は再び2点差になっても崩れる気配を見せなかった。流経大柏MF乙川のシュートをGK辰がセーブしたほか、この日存在感のある動きを見せたMF福田やDF篠崎らが相手の攻撃を跳ね返すなど食らいつく。そして、37分には佐々木のラストパスから山本がシュートへ持ち込もうとする。だが、流経大柏はCB廣瀬がブロックし、簡単には得点を許さない。


市立船橋は後半開始から小川を俊足FW勝又悠月(2年)へ交代。WB左近作と勝又が右サイドで連係良くプレーし、攻めどころになった。4分、市立船橋は小林の左FKから篠崎がヘッド。7分には右サイドから攻め、左近作のパスから勝又がクロスを上げる。これがフリーの佐々木へ通ったが、シュートは枠右へ。それでも8分、再び1点差とした。


最終ラインでボールを繋ぎ、野地が左足フィード。流経大柏守備陣の連係が乱れ、ボールがPAへ抜ける。これを佐々木が左足でGK不在のゴールにねじ込み、2-3。流経大柏は10分に上田と安藤を入れ替えるが、クリアする位置やセカンドボールの取りところなど「チームとしてちょっと統一できなかった」(榎本監督)ことで後手に回ってしまう。
ロングボールのこぼれ球を狙われるなど守備の時間が増加。20分、市立船橋は山本が右サイドへ抜け出し、意表を突く形で右足を振り抜く。ゴールへ向かったミドルシュートは流経大柏GK藤田が戻りながらキャッチ。流経大柏は26分に金子と真壁をFWオゲデベ有規(3年)とMF山元琉士(3年)へ入れ替えるが、なかなかチャンスを作り出すことができない。
島谷は「市船は負けてても『自分たちが勝つ』っていう気持ちを持って立ち向かってくるチームなんで、そこで受け身になってしまったのが(苦戦の)大きな原因かなと思います」と振り返る。迎えた33分、市立船橋は右サイドで牧野が上手く繋ぎ、左近作がPA方向へボールを入れる。そして、勝又が流経大柏DFから奪い返すとPAで倒されてPKを獲得。どよめきの声が収まらない中、キッカーの山本が右足シュートを決めて市立船橋が同点に追いついた。




市立船橋は小林のFKなどから逆転を目指し、39分には山本とFW仲野真翔(3年)を交代する。流経大柏も島谷のロングスローなどで相手に圧力をかけ、37分に増田の左クロスから渡辺がようやく後半初シュートとなるヘッド。さらに安藤のラストパスから乙川がシュートを放つなど4点目を狙う。だが、3-3からスコアは動かず、後半終了。流経大柏は延長前半開始から乙川をDF石井友啓(3年)と入れ替えた。
延長前半9分、市立船橋にビッグチャンス。小林の右CKがクロスバーを叩き、ゴールエリアにこぼれる。競り合いで健闘していた福田がこれを押し込もうとするが、シュートは枠上へ。市立船橋は4分、左近作と孫本に代え、MF秋陽凪(3年)とMF高山大世(2年)をピッチへ送り出す。
直後には仲野がDF裏を狙い、流経大柏GK藤田のヘッドでのクリアを佐々木が左足ダイレクトでシュート。さらにWB秋の右クロスに勝又が飛び込む。市立船橋の波多監督は「後半以降の戦いにおいては、これまでやってきている成果というのが1つ出たんじゃないかなという風に思っています。よく粘って同点に追いついて、その後も取れそうなシーンもたくさんありましたけども、そこで取り切れないのが、まだまだまだ力が足りないところかなという風に思います」と指摘。対する流経大柏は相手にリードを一度も与えず、延長後半終了間際に4点目をもぎ取った。


3分間のアディショナルタイムが表示された後の10+2分、流経大柏は中盤での攻防から島谷が頭でゴール前にボールを入れる。これに渡辺が走り込むと、こぼれ球をオゲデベが右足でゴールへ流し込んだ。




この後、流経大柏は渡辺とDF嘉味田颯太(2年)を交代。市立船橋は佐々木とDF森本陽太(3年)を交代し、パワープレーに出る。だが、これを跳ね返した流経大柏が4-3で勝利。2連覇に前進した。
雨中でタフな戦いを制した流経大柏の榎本監督は、「市船さんの気迫がやっぱ凄かったですね。(後半は)飲み込まれました」と認める。八千代高との初戦(3-2)に続き、苦戦したことは確か。だが、選手たちはこの100分間でまた成長を遂げたようだ。
榎本監督は「向上していくことがやっぱり僕もいつも求めているし、今持ってる力でやろうとしないで、今日もまたどうやって成長できるか。(そのために、選手たちも出番を)待っていましたね」という。毎週、毎週のトレーニングでメンバー選考する中、準決勝ではインターハイでともに登録外だったCB可児と右SB真壁が先発。安藤、山元、オゲデベ、石井と主力級の選手たちがゲームチェンジャーの役割を担った。
指揮官によると、選手たちはどの役割でも「よし、やってやるぞ」と前向きな姿勢でピッチに立つことができているという。日々向上心を持って、激しい競争に取り組んできたチームの力が最後、相手とのわずかな差になった。
「チームとしてもほんとに苦しい中、みんなが前向いてプレーできたっていうのは、精神的な面でも成長できた部分かなっていう風に思います」と島谷。勝ちたいという気持ちでも市立船橋に負けなかった。
島谷は「みんなが、ほんとに『自分たちが勝ちたい』っていう気持ちを全員が持っているんで、そういうところはどこのチームにも負けないと思いますし、そういうところでやっぱり勝ち切れるチームにはなっていると思います」とコメント。そして、もう一人のキャプテン、増田は「プレミア(リーグEAST)後期が始まって、チームとしてあんまりいい結果が出なかった中で、この間の八千代戦も自分たちが思い描いた勝利ではなかったです。その中で今日、市船相手にこういう勝利ができて、ほんとデカい壁を乗り越えれたじゃないですけど、また自分たちが強くなるきっかけになったと思います」。名門校は宿敵との100分間で一つ進化。ここからの一週間でまた成長し、専修大松戸高との決勝(11月16日)も制してまずは2017、2018年度以来2度目となる千葉連覇を果たす。




●第104回全国高校サッカー選手権特集
▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中
千葉名門対決は100分間の激闘の末、4-3で決着! 第104回全国高校サッカー選手権千葉県予選準決勝が9日、柏市の千葉県立柏の葉公園総合競技場で行われ、昨年度全国2位の流通経済大柏高と全国優勝5度の市立船橋高が対戦。流経大柏が延長戦にもつれ込んだ熱戦を4-3で制し、決勝へ進出した。
2021年度大会まで9年連続で千葉決勝を戦ってきた両雄が、今年は13年ぶりに準決勝で激突。今季の流経大柏はインターハイ3位、プレミアリーグEASTでも優勝争いを演じて現在4位につけている。加えて、Jリーグ内定4選手を擁する強力な陣容。それに対し、市立船橋はインターハイ予選準々決勝敗退、プレミアリーグEASTでは開幕から18試合未勝利で降格決定と選手権予選前までなかなか勝ち切ることができていなかった。
それでも、流経大柏の榎本雅大監督は「やっぱり選手にも口うるさく、僕も『市船は絶対、最後は来るよ』『本当に自分たちのベストは出し切れなかったら勝てない』と。(3-1で迎えた)後半も『市船はこのまま終わるようなチームじゃない。だから、自分たちも我慢の時間が長くなるかもしれないけど、やっぱり歯を食いしばってやること』、そういうところはもう言ってきました」と説明する。
苦しいシーズンを送ってきた市立船橋が、1-3から追いつく驚異的な粘り。そして逆転のチャンスも作った。「やっぱりずっと千葉を牽引してきたチームなんで、そういう部分に僕らも追いつき、追い越せで来たし、そういう部分でのプライドってやっぱ凄えなって改めて感じました」と榎本監督はいう。それでも、流経大柏が「勝ち切れるところ」「競争力」(榎本監督)の強みを発揮。ライバル対決の勝者になった。
流経大柏はU-17ワールドカップ出場中のDFメンディー・サイモン友(2年/U-17日本代表)、体調不良の東京V内定FW大藤颯太(3年)とDF大徳剛矢(2年)が不在。先発はGK藤田泰土(3年)、DF廣瀬煌(3年)、増田大空(3年/磐田内定/U-17日本代表)、可児良英(2年)、真壁英人(2年)、MF乙川宙(3年)、島谷義進(3年/水戸内定)、上田哲郎(3年)、古川蒼真(2年)、FW渡辺瞳也(2年)、金子琉久(3年)で水戸内定MF安藤晃希(3年/U-17日本高校選抜)はベンチスタートだった。


千葉連覇を狙う流経大柏
一方、2年前の全国3位・市立船橋はGK辰侑樹(3年)、DF左近作怜(3年)、野地透生(3年)、牧野歩(3年)、篠崎健人(2年/U-17日本代表)、MF小林空翔(3年)、ゲーム主将の小川夢成(3年)、孫本晟馬(2年)、福田一平(2年)、FW山本一誓(3年)、佐々木瑛汰(2年)の11人が先発した。


市立船橋は2年ぶりの全国出場に挑戦
立ち上がりは流経大柏が狙い通りの入り。3分、渡辺が浮き球パスをPA内左へ送ると、右SH乙川が市立船橋DFの背中側から追いつく。そして、遅れて対応したGKに倒される形でPKを獲得。このPKをダブルキャプテンの一人、島谷が右足で決めて先制した。


前半4分、流経大柏は水戸内定MF島谷義進が右足で先制PKを決める
さらに島谷が球際で強さを見せるなど相手を止めると、6分、GK藤田のロングキックから金子が抜け出す。右足シュートはポストを叩いたが、跳ね返りを乙川が押し込み、2-0とした。榎本監督が「(SBでの出場が多いが、)秘密兵器で活かそうと。『積んでいるエンジンが違う』っていつも言っているんですけど。やっぱり爆発力とか凄い」と評した乙川のSH起用も的中。市立船橋に「1点取られてからの強度っていうのはやっぱり凄い」「これぞ流経」と印象付けるような前へのパワーを表現し、わずか6分間で2点を先取した。


流経大柏は前半6分に追加点。MF乙川宙は立ち上がりから走力を発揮し、先制点に繋がるPK獲得と追加点
今季の勢いの差も出たような序盤。だが、市立船橋は12分、小川の左FKをファーサイドの山本が頭でねじ込み、1点を返す。市立船橋の波多秀吾監督は立ち上がりの2失点後の選手たちの表情について、「落ち込んではいましたけど、1点返せたのが比較的早い時間帯だったので、それで少し持ち直せたかなと。選手たちがプレーする中で、肌感覚で『これはやれる』『点数取れる』っていうような感覚にはなってたんじゃないかなと思います」と説明する。


前半12分、市立船橋FW山本一誓がヘディングシュートを決めて1点差
流経大柏の榎本監督もこの1点をポイントに挙げていたが、市立船橋は再び突き放されても前向きな戦いを続けていた。22分、流経大柏は左CKの流れから上田が左クロス。中央へのクリアを増田がコントロールすると、左足を振り抜く。これが鋭い軌道で右隅に突き刺さり、3-1となった。流経大柏は金子、渡辺の2トップへボールを入れる一方、上田や古川が係わりながらの連動的な崩しで相手に圧力。そして、磐田内定左SBのスーパーミドルによって3点目を奪った。


前半22分、流経大柏は磐田内定の左SB増田大空が左足ミドルを決めた


会心の一撃によって3-1
その流経大柏は島谷を筆頭に守備のアプローチも速く、相手に攻め切ることを許さない。だが、市立船橋は再び2点差になっても崩れる気配を見せなかった。流経大柏MF乙川のシュートをGK辰がセーブしたほか、この日存在感のある動きを見せたMF福田やDF篠崎らが相手の攻撃を跳ね返すなど食らいつく。そして、37分には佐々木のラストパスから山本がシュートへ持ち込もうとする。だが、流経大柏はCB廣瀬がブロックし、簡単には得点を許さない。


市立船橋は2年生MF福田一平が競り合いで健闘
市立船橋は後半開始から小川を俊足FW勝又悠月(2年)へ交代。WB左近作と勝又が右サイドで連係良くプレーし、攻めどころになった。4分、市立船橋は小林の左FKから篠崎がヘッド。7分には右サイドから攻め、左近作のパスから勝又がクロスを上げる。これがフリーの佐々木へ通ったが、シュートは枠右へ。それでも8分、再び1点差とした。


市立船橋は後半8分、2年生FW佐々木瑛汰のゴールで再び1点差
最終ラインでボールを繋ぎ、野地が左足フィード。流経大柏守備陣の連係が乱れ、ボールがPAへ抜ける。これを佐々木が左足でGK不在のゴールにねじ込み、2-3。流経大柏は10分に上田と安藤を入れ替えるが、クリアする位置やセカンドボールの取りところなど「チームとしてちょっと統一できなかった」(榎本監督)ことで後手に回ってしまう。
ロングボールのこぼれ球を狙われるなど守備の時間が増加。20分、市立船橋は山本が右サイドへ抜け出し、意表を突く形で右足を振り抜く。ゴールへ向かったミドルシュートは流経大柏GK藤田が戻りながらキャッチ。流経大柏は26分に金子と真壁をFWオゲデベ有規(3年)とMF山元琉士(3年)へ入れ替えるが、なかなかチャンスを作り出すことができない。
島谷は「市船は負けてても『自分たちが勝つ』っていう気持ちを持って立ち向かってくるチームなんで、そこで受け身になってしまったのが(苦戦の)大きな原因かなと思います」と振り返る。迎えた33分、市立船橋は右サイドで牧野が上手く繋ぎ、左近作がPA方向へボールを入れる。そして、勝又が流経大柏DFから奪い返すとPAで倒されてPKを獲得。どよめきの声が収まらない中、キッカーの山本が右足シュートを決めて市立船橋が同点に追いついた。


後半32分、市立船橋FW山本一誓が右足PKを決め、この試合2得点目


3-3。市船スタンドが沸く
市立船橋は小林のFKなどから逆転を目指し、39分には山本とFW仲野真翔(3年)を交代する。流経大柏も島谷のロングスローなどで相手に圧力をかけ、37分に増田の左クロスから渡辺がようやく後半初シュートとなるヘッド。さらに安藤のラストパスから乙川がシュートを放つなど4点目を狙う。だが、3-3からスコアは動かず、後半終了。流経大柏は延長前半開始から乙川をDF石井友啓(3年)と入れ替えた。
延長前半9分、市立船橋にビッグチャンス。小林の右CKがクロスバーを叩き、ゴールエリアにこぼれる。競り合いで健闘していた福田がこれを押し込もうとするが、シュートは枠上へ。市立船橋は4分、左近作と孫本に代え、MF秋陽凪(3年)とMF高山大世(2年)をピッチへ送り出す。
直後には仲野がDF裏を狙い、流経大柏GK藤田のヘッドでのクリアを佐々木が左足ダイレクトでシュート。さらにWB秋の右クロスに勝又が飛び込む。市立船橋の波多監督は「後半以降の戦いにおいては、これまでやってきている成果というのが1つ出たんじゃないかなという風に思っています。よく粘って同点に追いついて、その後も取れそうなシーンもたくさんありましたけども、そこで取り切れないのが、まだまだまだ力が足りないところかなという風に思います」と指摘。対する流経大柏は相手にリードを一度も与えず、延長後半終了間際に4点目をもぎ取った。


逆転を狙う市立船橋の前に流経大柏CB廣瀬煌が立ちはだかる
3分間のアディショナルタイムが表示された後の10+2分、流経大柏は中盤での攻防から島谷が頭でゴール前にボールを入れる。これに渡辺が走り込むと、こぼれ球をオゲデベが右足でゴールへ流し込んだ。


延長後半10+2分、流経大柏FWオゲデベ有規が右足で決勝ゴール


勝負強さを示し、4-3
この後、流経大柏は渡辺とDF嘉味田颯太(2年)を交代。市立船橋は佐々木とDF森本陽太(3年)を交代し、パワープレーに出る。だが、これを跳ね返した流経大柏が4-3で勝利。2連覇に前進した。
雨中でタフな戦いを制した流経大柏の榎本監督は、「市船さんの気迫がやっぱ凄かったですね。(後半は)飲み込まれました」と認める。八千代高との初戦(3-2)に続き、苦戦したことは確か。だが、選手たちはこの100分間でまた成長を遂げたようだ。
榎本監督は「向上していくことがやっぱり僕もいつも求めているし、今持ってる力でやろうとしないで、今日もまたどうやって成長できるか。(そのために、選手たちも出番を)待っていましたね」という。毎週、毎週のトレーニングでメンバー選考する中、準決勝ではインターハイでともに登録外だったCB可児と右SB真壁が先発。安藤、山元、オゲデベ、石井と主力級の選手たちがゲームチェンジャーの役割を担った。
指揮官によると、選手たちはどの役割でも「よし、やってやるぞ」と前向きな姿勢でピッチに立つことができているという。日々向上心を持って、激しい競争に取り組んできたチームの力が最後、相手とのわずかな差になった。
「チームとしてもほんとに苦しい中、みんなが前向いてプレーできたっていうのは、精神的な面でも成長できた部分かなっていう風に思います」と島谷。勝ちたいという気持ちでも市立船橋に負けなかった。
島谷は「みんなが、ほんとに『自分たちが勝ちたい』っていう気持ちを全員が持っているんで、そういうところはどこのチームにも負けないと思いますし、そういうところでやっぱり勝ち切れるチームにはなっていると思います」とコメント。そして、もう一人のキャプテン、増田は「プレミア(リーグEAST)後期が始まって、チームとしてあんまりいい結果が出なかった中で、この間の八千代戦も自分たちが思い描いた勝利ではなかったです。その中で今日、市船相手にこういう勝利ができて、ほんとデカい壁を乗り越えれたじゃないですけど、また自分たちが強くなるきっかけになったと思います」。名門校は宿敵との100分間で一つ進化。ここからの一週間でまた成長し、専修大松戸高との決勝(11月16日)も制してまずは2017、2018年度以来2度目となる千葉連覇を果たす。


市立船橋は脅威の粘りも準決勝敗退


流経大柏はまた成長を遂げ、16日の決勝へ向かう
(取材・文 吉田太郎)●第104回全国高校サッカー選手権特集
▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中



