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[選手権]80+1分の大カウンター炸裂で西が丘に響かせた「紺碧の空」!早稲田実は国士舘をウノゼロで振り切って2年ぶりの全国に王手!:東京B

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早稲田実高はウノゼロで勝ち切って2年ぶりの全国に王手!

[11.9 選手権東京都Bブロック予選準決勝 早稲田実高 1-0 国士舘高 味の素フィールド西が丘]

 みんなで耐えれば必ずチャンスは巡ってくることは、今までのチームが積み重ねてきた伝統の文脈の中で、もう十分にわかっている。その瞬間を見極めること。その瞬間を逃さないこと。その瞬間を結果に結び付けること。エンジ色の戦士たちは、実にしたたかだった。

「絶対に難しいゲームになるのはわかっていたので、自分たちのベースでもある『守備からやろう』という話はずっとしていて、だからこそ粘って、粘って、後半のアディショナルタイムで点が入ったという形で、そこは本当に自分たちがやってきたことが、最後の最後で点に繋がって良かったなと思います」(早稲田実高・野川一聡)

 後半アディショナルタイムの大カウンター炸裂で、2年ぶりの全国に王手!9日、第104回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック予選準決勝が行われ、2度目の全国を狙う早稲田実高と7年ぶりの東京制覇を目指す国士舘高が対峙した一戦は、後半40+1分にFW篠田一(2年)が先制弾を叩き込んだ早稲田実が1-0で力強く勝ち切り、味の素スタジアムで行われる決勝へと駒を進めている。


「相手もかなりパワフルなチームで、それに対して跳ね返せなかったり、シュートまで行かれた危ないシーンもあったので、前半は自分たちにとって難しい時間だったと思います」と早稲田実のキャプテンを務めるMF野川一聡(3年)も振り返ったように、序盤から勢い良く飛び出したのは国士舘だった。

 2分にMF原田健(3年)のロングスローから、こぼれを狙ったFW石田凌空(3年)のフィニッシュはゴール左に外れたものの、9番のストライカーがファーストシュート。7分に右からMF小林斗翔(3年)が蹴り込んだCKに、MF小倉壮(3年)が合わせたヘディングは枠外も、まずは2つのチャンスを作り出す。

国士舘の攻撃の指揮を執ったMF小林斗翔


 19分も国士舘。MF足立遥太(3年)が左へ振り分け、原田のクロスを小林が叩いたボレーはゴール左へ。一方の早稲田実も、27分にはMF中澤駿斗(2年)のパスからDF小野寺栄斗(3年)がクロスを上げ切り、FW霜田優真(3年)のボレーはクロスバーを越えるも、ようやく際どいシーンを作り出す。

 29分は国士舘に決定機。小林の縦パスに石田が抜け出し、1対1のシーンを迎えるも、ここは早稲田実GK山本士文(3年)がファインセーブ。35分も国士舘にビッグチャンス。右サイドをドリブルで運んだ石田が折り返し、足立が枠へ飛ばしたシュートは、再び山本が弾き出し、詰めた原田のシュートも枠の左へ。「準備してきた形は出してくれたので、前半のいくつかの決定的なところが獲れればというところでしたね」とは上野晃慈監督。国士舘が優勢に進めた前半は、それでもスコアレスで40分間が推移した。

ファインセーブを連発して試合を引き締めた早稲田実高GK山本士文


 後半はスタートから早稲田実に交代が。前線で奮闘したFW居相虎之介(2年)に代えて、篠田を投入。「トーナメントということで、彼を後ろからのカードに置いています」と森泉武信監督も言及したジョーカーをピッチへ解き放つ。

 後半5分はまたも国士舘に決定的なチャンス。小林が右から蹴り入れたFKはエリア内にこぼれ、小倉が枠へ飛ばしたシュートはGKを破るも、ゴールカバーに入ったDF前田竣汰(3年)がライン上で執念のブロック。「全員で身体を張ってブロックするような、早実らしさは出ていたのかなと思います」とMF竹内太志(3年)も言及したようなビッグプレーが飛び出す。

 16分は早稲田実に好機。DF堀蒼(3年)の右ロングスローから、前田の左クロスに野川が合わせたヘディングはゴール右スミを襲うも、国士舘GK栁本凜(3年)ががっちりキャッチ。23分は国士舘に連続チャンス。小林が粘って残し、石田が打ったシュートはDFをかすめ、懸命に足を伸ばしたFW細木慎太(3年)はわずかに届かず。その右CKを小林が蹴り込み、MF上田拓海(2年)の巧みなボレーは味方に当たって枠外へ。お互いになかなか最初の1点に手が届かない。

 DF小島凜久(2年)を中心に守備陣の奮闘も光った早稲田実は、25分に2人目の交代。左サイドで奮闘したMF大庭翼(3年)とMF高橋圭太(2年)をスイッチ。森泉監督も「半年ぶりに戻ってこれた選手で、ギリギリ間に合ったという感じですね」と口にした中盤のキーマンが、終盤に向けて投入される。

 後半終了間際は早稲田実が攻める。38分。右サイドから小野寺がフィードを送り込み、走った竹内のバックヘッドは栁本が丁寧にキャッチ。直後にも前田のフィードを篠田が残し、霜田が左からカットインしながら放ったシュートは、DFに当たってわずかに枠の上へ外れるも、勝利への気持ちを前面に打ち出す。

 後半アディショナルタイムに差し掛かった40+1分。国士舘はロングスローのチャンス。「相手もパワープレーで結構来てるなと思っていて、ちょっと前を見たら篠田がいたので、『空いているな』と思いながらスローインを待っていました」という野川の足元へルーズボールが転がると、シンプルに前方へパスを蹴り出す。

 走った篠田はマーカーとの完全な1対1の局面にも、「この隣の相手をどれだけ引き離せるかということを考えていました」と全速力で駆け抜け、いったんは相手ともつれて倒れながらも、素早く立ち上がって右足一閃。ボールは左スミのゴールネットへ激しく突き刺さる。




「自分の武器のスピードでゴールに行けたのは、自分を信じた結果かなって思います」と笑うスピードスターが記録した先制点は、そのまま試合に決着を付ける決勝点に。「今日も苦しい時間帯が多かったですけど、そこをやっぱり頑張れるというか、それこそ愚直にやるというところに立ち返った成果かなと思っています」と森泉監督も胸を張った早稲田実が、劇的なウノゼロ勝利で準決勝を逞しく突破。多摩大目黒高が待つファイナルへと勝ち名乗りを上げる結果となった。





 2025年の早稲田実にとって、勝てば全国出場というインターハイ予選準決勝で、帝京高に0-4と大敗を喫した一戦は、語り落とせない大きなターニングポイントだったようだ。

「あの試合は自分たちやっている側よりも、見ている人たちがどう思ったかという観点で、たぶん外から見ている人たちからは『あまり早実らしいプレーをしていない』とか、『最後まで走り切っていない』とか、『ちょっと諦めモードに入ってしまった』と見られていたんです」(野川)

 大会後に3年生で行ったミーティング。とりわけBチームの選手たちは、ピッチ上のAチームの選手たちがタイムアップの瞬間まで全力を尽くしていなかったように見えたことを、厳しく指摘したという。そこで各々の考えを戦わせた時間の意義を、キャプテンはこう話している。

「僕的に嬉しかったのは、Bチームの選手たちがAチームに対して臆することなく、個人名を出してまで『アレが良くなかった』とか言ってくれたことなんです。インターハイ前までは、Bチームの選手はカテゴリーが下だから、Aチームの選手にあまり物を言えない雰囲気を出してしまっていたんですけど、僕も『それがキャプテンとしての姿なのか?』ということを素直に問われましたし、それは僕だけではなくて、試合に出ている選手のほとんどが言われたので、本当にBチームの選手たちに感謝していますし、そこでAチームとBチームの垣根を超えて、3年生同士で言ってくれたというのは凄く嬉しかったなと。だからこそ、変わろうと思うきっかけにはなりましたね」(野川)

早稲田実高を逞しく束ねるキャプテン、MF野川一聡


 その想いは他の選手も同様だ。「もう『Bチームのために勝とう』とか、『出ていない選手の分までやろう』という気持ちが、Aチームの3年生に浸透してきたと思うので、いい意味でまとまれたのかなと思います」と竹内が話せば、「自分もあの負けから練習での意識も変えてきているつもりなので、あの負けがあったから、今の自分たちがあると言っても過言ではないかなと思っています」と霜田。忌憚のない意見を交わしたミーティングを経て、チームには確固たる一体感が生まれたというわけだ。

 チームを束ねる森泉監督が興味深いことを教えてくれた。「実は味スタの横のアミノバイタルフィールドで毎週練習しているんですけど、今年は“本スタジアム”に行きたいということでやっていたので、そういう面では味スタまでの行き方はみんな慣れています(笑)。ただ、そのスタジアムの“中”に入ることで『1つ超えたぞ』という想いと、そこでやってやろうという気持ちはあるのかなと思います」。

 泣いても、笑っても、2年ぶりの全国切符を掴み取るには、あと1つの勝利を手繰り寄せるだけ。野川は少しだけ笑顔を浮かべながら、言い切った。

「決勝は味の素スタジアムということで、大きい舞台になるんですけど、やっていることは変えちゃいけないと思っていますし、変に飾ったりということは一切するつもりはないです。今日やったような試合にもっともっと磨きをかけて、1週間でできることを増やして、味スタだろうがやることは変えずに、最後まで諦めずに優勝を勝ち獲って、全国に行けたらなという気持ちはありますね」。

 11月16日。再びたどり着いた東京ファイナル。スタンドから大声援を送ってくれるであろう仲間たちのために。そして、ここまで必死に練習と向き合ってきた自分たちのために。真摯に、愚直に、まっすぐに。早稲田実は今できることを100パーセントで出し切って、部員全員で『紺碧の空』を味の素スタジアムに響かせる。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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