どちらが正解だったかなんてないことは分かっている。本人が自ら信じて進んだ道で、努力がなかったわけでもないだろう。ただ大学生卒業生がプロキャリを始めようとする一方で、高卒プロを選んだ選手が4年足らずで現役引退を選択する現実もある。

　18日に驚きのリリースがあった。関東サッカーリーグ1部のエリース豊島FCからFW豊田晃大(22)が現役を引退することが発表になった。豊田は名古屋グランパスの下部組織出身で、筑波大に進学して今季より早期入団していたMF加藤玄と同期生だった。

　加藤は出会いの衝撃を今でも覚えているという。初めて会ったのは小学校3年生の時、フットサルの大会で対戦相手にレベルの違う選手がいた。「最初2個上だと思って、飛び級の子と試合をしていると思ったらまさかの同級生だった」。とんでもない奴がいるな――。それが豊田に持った第一印象だった。

「そこから県トレでも対戦していたし、グランパスのセレクションも一緒だったけど、同期とはいえ、トップランナー。彼の後ろを走り続けていたし、一回も勝った自分がいなかった。そういう選手が早々にリタイアするのは寂しかった。すごかった時代がすごすぎただけに、ショックだなと思います」

　大学サッカーに進んでいたら伸びたかということではない。ただ高卒段階で突出していた選手が大卒年を待たずにサッカーを辞めてしまうことは、Jクラブの責任を問うてもいい事案だ。

　一方でJクラブの選手育成に難しさがあることも理解はできる。サッカー界は特に早期に結果を求める傾向が強く、シーズン中に複数回の監督交代が行われることがある。さらに若手を根気強く使ったとしても、活発な移籍市場にあってシーズン中に海外クラブなどに移籍する可能性も出てくる。

　根本的な解決になるかは不透明だが、Jリーグも来季からはU-21リーグを創設することで活路を見出そうとしている。今後も“育成”についての議論が、大学サッカー界を含めて活性化することを期待したいところだ。

(取材・文　児玉幸洋)

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