クラブのレジェンドに憧れてゴールキーパーを志したビッグセーバー。名古屋U-18GK萩裕陽がトップのキャンプ参加で味わった「プロとしてプレーすること」の意味
一度ゾーンに入ってしまうと、まるでボールの方から吸い寄せられていくかのように、ファインセーブを連発する。襲い掛かってきた絶体絶命の危機を自分の腕で力強くはらいのけ、周囲に向かって咆哮する。その空気感は、まさに守護神と呼ぶにふさわしい。
「今年も代表の活動にも絡んでいきたいですし、チームでもチームメイトから信頼されるような選手になって、人としても、選手としても、より成長していけたらいいなと思っています」。
名古屋グランパスU-18(愛知)のゴールマウスに立ちはだかるビッグセーバー。GK萩裕陽(2年=名古屋グランパスU-15出身)はこの1年間で味わってきた数々の新たなステージでの経験を糧に、さらなるステップアップを自身に課している。
1日から群馬県内で開催されていた『2025 アスレカップ群馬 サッカーフェスティバル』。高校選手権で日本一に輝いた前橋育英高(群馬)を相手に、名古屋U-18は前半から押し込まれる時間を長く強いられるが、背番号1を付けた守護神が、ことごとく相手のシュートを弾き出す。
「自分の武器でもあるセービングは、プレミアリーグでも全然通用しましたし、そこでチームを勝ちに引っ張っていくことができるなとは感じています」と本人も話したように、昨シーズンはプレミアリーグWESTで20試合にスタメン出場。数々のビッグセーブでチームに白星をもたらしてきた。
1年間で培ってきた自信を胸に参加したトップチームのキャンプでは、自分の中に新たな武器になり得る側面も見出したという。「足元には全然自信がなかったですけど、トップのキャンプにも行かせてもらって、レベルの高いスピード感の中でも周りを見れたりしたので、そこからはちょっとボールが自分でも持てるようになって、落ち着きが増えたかなと思っています」。
確かにこの日も3バックの中央に入ったDF森壮一朗(2年)と細かいパス交換を交わしながら、ビルドアップへ積極的に関わるシーンも散見。攻撃の起点創出への意欲は間違いなく窺えた。
一方でトップチームでの活動を経て、プロサッカー選手の日常を垣間見たことで、その高い意識を肌で実感したようだ。「キャンプは1次も2次もどっちも行かせてもらったんですけど、やっぱりトップの選手は凄いです。サッカーを仕事としてやっているので、1人1人が常に勝負をしていて、自分をアピールしたかったんですけど、そこはちょっと怖気づいて、まだアピールが足りなかったなと思っています」。
「ユンカー選手はシュートモーションだけではどっちに蹴るかわからなくて、ギリギリまで何をしてくるかわからなかったですし、永井(謙佑)選手はシュートの振りや蹴り方もキーパーの立ち位置を見て変えてくるので、最後まで我慢しないとまったく取れないんだなと感じました」。
前橋育英戦は後半に入っても数度のピンチを迎えたものの、相手のシュートを冷静に見極めて、やはり好セーブを連発。結果的に試合には2-1で勝ち切ったが、萩のハイパフォーマンスがその白星を引き寄せる上で大きな要素を占めていたことに、疑いの余地はない。


昨シーズンは約2年ぶりに年代別代表へ招集され、海外遠征も経験。さらにこの2月には『NEXT GENERATION MATCH』に参戦するJリーグ選抜にも選出され、Jクラブユースでプレーする同年代の俊英たちと貴重な時間を過ごしてきた。
「楽しかったというのが一番の率直な感想ですね。みんな有名な選手ばかりで、ピッチの中でも外でも話をしていると楽しいですし、面白いですし、実際にホテルでもいろいろ話したからこそ、ピッチ内でも声を掛け合えたかなと感じています」。
もともとの明るいキャラクターも手伝ってか、練習時からチームを盛り上げる雰囲気作りに一役買っていた印象も。「レッズの和田直哉選手は代表でも一緒だったので、今回もずっと喋っていました。一緒にいる確率は多かったですね(笑)」と他チームの選手との交流も存分に図れたようだ。
ただ、『NEXT GENERATION MATCH』には後半からの登場となり、GK小川煌(広島ユース2年)にスタメンを譲った格好に。「前日のスタメン発表で少し気持ちが落ちてしまったんですけど、後半から出られることになったので、『自分を精いっぱいアピールしよう』と思って、練習から全力でやっていました」。3日間の活動から、今後に繋がる収穫と課題を持ち帰ってきた。


もともと愛知県出身だった萩が、今のポジションを志すようになった陰には、クラブを代表する“レジェンド”の存在がある。
「小さい頃によくグランパスの試合を見に行っていたんですけど、その時にナラさん(楢﨑正剛・名古屋GKコーチ)がカッコ良かったというのもあって、それでキーパーをやってみて楽しかったので、自分は『キーパーになろう』と思いました」。
楢﨑GKコーチにはトップチームの活動でも直接指導を受けており、そのたびに17歳の心は踊る。「ナラさんはJリーグの試合にもたくさん出ていた選手なので、自分も同じ立ち位置になれたらなというのは、これからの最終目標です」。今季は2種登録もされているだけに、クラブからの期待値も小さくない。
とはいえ、まず向き合うのはプレミアリーグを戦う日常。新シーズンを主力として迎える自覚は、しっかりと携えている。
「今年はプレミアリーグを経験している選手が多い分、その緊張感はみんな知っていると思うので、そこで学んだ良い雰囲気が今年から出るような選手にも伝染していったら、練習からより強度高くやれて、勝ち癖を付けられるかなって。個人としてはあまりトップのことは考えていなくて、自分に与えられた場所で精いっぱい頑張って、いろいろなチャンスを掴めたらいいなと思っています」。
2025年に期すのは、チームでも、個人でも、さらに一段階高いレベルのステージ奪取。好キーパーを輩出し続けてきた名古屋グランパスU-18の新たな才能。強烈なエネルギーを放ち、独特の空気感を纏った萩裕陽のセービングには、間違いなく一見の価値がある。


(取材・文 土屋雅史)
「今年も代表の活動にも絡んでいきたいですし、チームでもチームメイトから信頼されるような選手になって、人としても、選手としても、より成長していけたらいいなと思っています」。
名古屋グランパスU-18(愛知)のゴールマウスに立ちはだかるビッグセーバー。GK萩裕陽(2年=名古屋グランパスU-15出身)はこの1年間で味わってきた数々の新たなステージでの経験を糧に、さらなるステップアップを自身に課している。
1日から群馬県内で開催されていた『2025 アスレカップ群馬 サッカーフェスティバル』。高校選手権で日本一に輝いた前橋育英高(群馬)を相手に、名古屋U-18は前半から押し込まれる時間を長く強いられるが、背番号1を付けた守護神が、ことごとく相手のシュートを弾き出す。
「自分の武器でもあるセービングは、プレミアリーグでも全然通用しましたし、そこでチームを勝ちに引っ張っていくことができるなとは感じています」と本人も話したように、昨シーズンはプレミアリーグWESTで20試合にスタメン出場。数々のビッグセーブでチームに白星をもたらしてきた。
1年間で培ってきた自信を胸に参加したトップチームのキャンプでは、自分の中に新たな武器になり得る側面も見出したという。「足元には全然自信がなかったですけど、トップのキャンプにも行かせてもらって、レベルの高いスピード感の中でも周りを見れたりしたので、そこからはちょっとボールが自分でも持てるようになって、落ち着きが増えたかなと思っています」。
確かにこの日も3バックの中央に入ったDF森壮一朗(2年)と細かいパス交換を交わしながら、ビルドアップへ積極的に関わるシーンも散見。攻撃の起点創出への意欲は間違いなく窺えた。
一方でトップチームでの活動を経て、プロサッカー選手の日常を垣間見たことで、その高い意識を肌で実感したようだ。「キャンプは1次も2次もどっちも行かせてもらったんですけど、やっぱりトップの選手は凄いです。サッカーを仕事としてやっているので、1人1人が常に勝負をしていて、自分をアピールしたかったんですけど、そこはちょっと怖気づいて、まだアピールが足りなかったなと思っています」。
「ユンカー選手はシュートモーションだけではどっちに蹴るかわからなくて、ギリギリまで何をしてくるかわからなかったですし、永井(謙佑)選手はシュートの振りや蹴り方もキーパーの立ち位置を見て変えてくるので、最後まで我慢しないとまったく取れないんだなと感じました」。
前橋育英戦は後半に入っても数度のピンチを迎えたものの、相手のシュートを冷静に見極めて、やはり好セーブを連発。結果的に試合には2-1で勝ち切ったが、萩のハイパフォーマンスがその白星を引き寄せる上で大きな要素を占めていたことに、疑いの余地はない。


昨シーズンは約2年ぶりに年代別代表へ招集され、海外遠征も経験。さらにこの2月には『NEXT GENERATION MATCH』に参戦するJリーグ選抜にも選出され、Jクラブユースでプレーする同年代の俊英たちと貴重な時間を過ごしてきた。
「楽しかったというのが一番の率直な感想ですね。みんな有名な選手ばかりで、ピッチの中でも外でも話をしていると楽しいですし、面白いですし、実際にホテルでもいろいろ話したからこそ、ピッチ内でも声を掛け合えたかなと感じています」。
もともとの明るいキャラクターも手伝ってか、練習時からチームを盛り上げる雰囲気作りに一役買っていた印象も。「レッズの和田直哉選手は代表でも一緒だったので、今回もずっと喋っていました。一緒にいる確率は多かったですね(笑)」と他チームの選手との交流も存分に図れたようだ。
ただ、『NEXT GENERATION MATCH』には後半からの登場となり、GK小川煌(広島ユース2年)にスタメンを譲った格好に。「前日のスタメン発表で少し気持ちが落ちてしまったんですけど、後半から出られることになったので、『自分を精いっぱいアピールしよう』と思って、練習から全力でやっていました」。3日間の活動から、今後に繋がる収穫と課題を持ち帰ってきた。


NEXT GENERATION MATCHでプレーする萩裕陽
もともと愛知県出身だった萩が、今のポジションを志すようになった陰には、クラブを代表する“レジェンド”の存在がある。
「小さい頃によくグランパスの試合を見に行っていたんですけど、その時にナラさん(楢﨑正剛・名古屋GKコーチ)がカッコ良かったというのもあって、それでキーパーをやってみて楽しかったので、自分は『キーパーになろう』と思いました」。
楢﨑GKコーチにはトップチームの活動でも直接指導を受けており、そのたびに17歳の心は踊る。「ナラさんはJリーグの試合にもたくさん出ていた選手なので、自分も同じ立ち位置になれたらなというのは、これからの最終目標です」。今季は2種登録もされているだけに、クラブからの期待値も小さくない。
とはいえ、まず向き合うのはプレミアリーグを戦う日常。新シーズンを主力として迎える自覚は、しっかりと携えている。
「今年はプレミアリーグを経験している選手が多い分、その緊張感はみんな知っていると思うので、そこで学んだ良い雰囲気が今年から出るような選手にも伝染していったら、練習からより強度高くやれて、勝ち癖を付けられるかなって。個人としてはあまりトップのことは考えていなくて、自分に与えられた場所で精いっぱい頑張って、いろいろなチャンスを掴めたらいいなと思っています」。
2025年に期すのは、チームでも、個人でも、さらに一段階高いレベルのステージ奪取。好キーパーを輩出し続けてきた名古屋グランパスU-18の新たな才能。強烈なエネルギーを放ち、独特の空気感を纏った萩裕陽のセービングには、間違いなく一見の価値がある。


(取材・文 土屋雅史)


