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[サニックス杯]中学からのチームメイトの「J2デビュー」も大きなモチベーションに。雌伏の1年を経た鳥栖U-18DF黒木雄也は周囲の信頼と期待に応える結果を示す!

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勝負の1年を迎えるサガン鳥栖U-18DF黒木雄也(2年=RIP ACE SC出身)

[3.13 サニックス杯 鳥栖U-18 2-2 PK5-3 飯塚高 グローバルアリーナ]

 自分に寄せられている期待を、自分を信じてくれる人たちを、裏切るわけにはいかない。もがき続けた苦しい時間も、突き付けられた悔しい経験も、全部ちゃんと飲み込んで、駆け上がる。あらゆる意味で勝負の1年。もうやらない選択肢なんて、存在しない。

「もちろん最終目標はトップに昇格して、Jリーグの試合に出ることなんですけど、その前にユースで結果を残し続けるために、キャプテンとしての仕事を果たして、チームをどんどん勝たせて、プレミアで優勝したいと思います」。

 サガン鳥栖U-18(佐賀)の新キャプテンに就任した、スケール感あふれるダイナミックなセンターバック。DF黒木雄也(2年=RIP ACE SC出身)は雌伏の1年を経て、大きな飛躍を遂げるべく、静かに牙を研いでいる。


「慣れないアンカーのポジションというのもあったんですけど、前半の40分は相手を潰しに行くところまでは行けていたのに、後半の残り20分ぐらいから少し運動量が落ちてきて、自分たちのペースにできなかったところがあって、アンカーをやるからには運動量が必要になってくるので、そういうところは課題かなと思います」。

 飯塚高(福岡)と激突した「サニックス杯国際ユースサッカー大会2025」(福岡)2日目の一戦。センターバックを本職に置く黒木は、中盤アンカーのポジションで奮戦していた。守備面では空中戦に威力を発揮しつつ、セカンドボール奪取にも奔走。攻撃面でも長いボールを積極的に使い、左右への広い展開を繰り返す。

 今季はMF東口藍太郎(2年)とのダブルキャプテンにも指名された。「もともと声掛けは意識していたんですけど、キャプテンになってからは各学年が積極的にコミュニケーションを取れるように、寮の中でいろいろ喋ったり、後輩がなじみやすいような環境を作ったりとか、そういう部分は去年より少し意識してやっています。喋るのは好きなので(笑)」。本人も少し心配症だと語る東口と、比較的楽観的な黒木のコンビは、うまくバランスも取れているようだ。

 ただ、この日の試合は前半12分までにFW下田優太(2年)の2ゴールで先行しながら、追い付かれる展開に。「しっかりチームをまとめていかないといけない立場で、今日のような追い付かれる展開でこそ、自分ももっとチームを盛り上げられないとダメなのかなと思います」。やや苦しい時間帯で存在感を発揮できなかったことに対して、反省の弁が口を衝く。

 もつれ込んだPK戦ではGK谷泰養(2年)が相手の1人目を完璧にセーブしたのに対し、4人目まで全員が成功した鳥栖U-18は、5人目の黒木も冷静に沈めて何とか勝利。試合後には日高拓磨新監督からも厳しい言葉が飛んでいたように、収穫と課題のはっきりする80分間を味わうことになった。

GKの逆を突いて冷静にPKを沈める黒木


 大阪のRIP ACE SCから佐賀の地にやってきた黒木の高校1年時は、順調だったと言っていいだろう。プレミアリーグWESTでは同期の中で一番早くスタメン出場を果たし、シーズンを通して13試合に出場。6月には『AFC U17アジアカップ』に出場するU-16日本代表にも選出され、より高いステージでの経験を積み重ねていく。

 だが、トップチームに2種登録もされた中でスタートした2024年は、一転して試練の年に。前半戦はプレミアで1試合もスタメンの機会が訪れず、主戦場はプリンスリーグ九州1部を戦うセカンドチームに。U-17ワールドカップを控えた代表からも遠ざかっていく。

「1年の時から期待されるような目で見てもらって、トップチームにも登録されたので、少しプレッシャーは感じていた中で、そんな気負いはせずにやれていたかなとは思うんですけど、前期はプレミアにもまったく出られずに、プリンスでも思うように結果も残せなかったですし、そういう意味ではまったく納得の行かないシーズンになったところはあります」。

 後半戦のプレミアでは先発で起用される試合こそ増えたものの、結果的に前年と同じ13試合の出場にとどまる格好に。同じRIP ACE SCから鳥栖U-18の門を叩いたFW新川志音(2年)が全試合に出場し、チーム2位の9得点を挙げたのとは対照的に、厳しいシーズンを強いられることになる。


 迎えたアカデミーラストイヤー。新川は既にJ2で出場機会を与えられ、デビュー戦となったジュビロ磐田戦ではPKも獲得。以降も途中出場を重ねるなど、トップチームでも立ち位置を築きつつある姿を見ている黒木に、思うところがないはずはない。

「中学校からずっと一緒にやってきたので、『オレは何しているんだろう……』という悔しい気持ちもあります。でも、身近な選手がああやって活躍できているのなら、自分にもそういうチャンスは来ると思いますし、そのチャンスを掴めたら自分も志音みたいにああいう舞台に立てるのかなって」。

「最終的に自分がプロのピッチで活躍できればいいと思っているので、良いモチベーションにはなっていますね。自分もそこでやれる力はあると思うので、反骨心を持ってどんどん日々の練習で努力を重ねていきたいと思います」。

 思い描いた未来にたどり着くまで、諦めるわけにはいかない。改めて自分の実力を、自分のポテンシャルを、証明するためのリスタート。2025年の黒木雄也は周囲の信頼と期待を確かなパワーに変えて、どんな時も前へと突き進む。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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