[3.17 J-VILLAGE CUP U-18決勝 川崎F U-18 0-2 U-17日本高校選抜 Jヴィレッジスタジアム]

「東日本大震災からの復興、未来に向かう『いまのふくしま』を国内外に発信し、Jヴィレッジおよび周辺地域に多くの賑わいを生み出す」ことや参加チーム・選手の競技力向上を目的に開催された「第7回 J-VILLAGE CUP U-18」(福島)は17日に決勝を行い、U-17日本高校選抜が3大会ぶり2回目の優勝を飾った。U-17日本高校選抜はFW大石脩斗(鹿児島城西高/2年)の2得点によって川崎フロンターレU-18に2-0で勝利。同大会5得点で大会得点王の大石が、MVPにも選出されている。

　U-17日本高校選抜は予選でCrossfire Premier Soccer Club(アメリカ)に2-0、横浜FCユースに3-0、京都サンガF.C.U-18に5-0で3連勝。この川崎F戦が1月の選考合宿からスタートした活動の最終戦だった。先発はGKが松田駿(青森山田高/2年)で4バックは右から瀧口眞大(前橋育英高/2年)、ゲーム主将の中野陽斗(神村学園高/2年)、齊藤空人(鹿島学園高/2年)、村上慶(大津高/2年)。中盤は柴野快仁(前橋育英高/2年)と篠塚怜音(静岡学園高/2年)のダブルボランチで右SH山崎絢心(富士市立高/2年)、左SH安藤晃希(流通経済大柏高/2年)、2トップは宮本周征(帝京高/2年)と大石が組んだ。

U-17日本高校選抜の先発イレブン

　一方、2023、2024年大会で2連覇を達成している川崎Fは今回の予選で3連勝し、3年連続の決勝進出。GK松澤成音(2年)、DF平内一聖(2年)、藤田明日翔(1年)、ペイシェンス海翔(2年)、関德晴(2年)、MF藤井漣祐(2年)、小川尋斗(1年)、平塚隼人(2年)、新堀翔(2年)、FW恩田裕太郎(2年)、奥田悠真(1年)の先発11人で3連覇をかけた一戦をスタートした。

川崎F U-18の先発イレブン

　この日は風速10mもの強風で浮き球が不規則に変化する悪環境。選手たちは難しい対応を強いられた。高校選抜は注目FW大石がボールを強引に収めて前へ。そして、オープンスペースへ抜け出す宮本からゴール前にクロスが入ったほか、左サイドで抜群の突破力を見せる安藤のドリブルなどからゴール前のシーンを作り出す。27分には、安藤の折り返しから宮本が決定的な左足シュートを放った。

前半、左サイドで躍動したMF安藤晃希(流通経済大柏高/2年)

　だが、川崎Fも対応を重ねながら慣れ、ペイシェンスらが簡単にはシュートまで持ち込ませない。逆に相手DF間へボールを運びながら前進。最前線で強さを見せる恩田やキープ力の高い新堀、平塚を活用した攻撃で押し返す。33分には藤田のドリブル、縦パスを起点とした攻撃から決定機。平塚が恩田とのパス交換からDFライン背後へスルーパスを通し、これで新堀が右中間を抜け出す。だが、ニアを狙ったシュートはわずかに枠を外れた。

川崎FのCBペイシェンス海翔(右)とGK松澤成音が相手の縦に速い攻撃に対抗

　高校選抜はゴール前で存在感を放つGK松田が無失点を継続。守りの要である中野が要所で相手の攻撃を封じていたほか、齊藤が前への強さやカバーリング力を発揮する。また、推進力を活かして前に出る左SB村上慶と質の高い右SB瀧口も積極的に攻撃参加していた。その高校選抜は38分に決定機。センターサークルでセカンドボールを回収した安藤のスルーパスで大石が抜け出す。GKをかわしたが、チャンスを活かすことはできなかった。

　川崎Fは38分に奥田とMF小田脩人(中3)を交代。高校選抜は41分、右サイドの篠塚がDF間へ縦パスを通し、柴野がドリブルでPAへ侵入する。43分に競り合いで痛んだ安藤をMF陶山響(桐光学園高/2年)へ代えると、ハーフタイムには松田とGK村上葵(大津高/2年)を入れ替えた。

　後半7分、川崎Fは左SB関が左タッチライン際で相手2人を外すと平塚とのワンツーからスルーパス。これで新堀が左サイドを抜け出し、ラストパスを恩田が狙うもシュートは枠上へ外れた。川崎Fは10分にもサイドチェンジから右の平内が藤井とのワンツーでゴール前へ潜り込む。さらに12分にも右スローインの流れから新堀が右足シュート。だが、高校選抜GK村上葵の正面を突き、先制することができない。

川崎Fの左SB関德晴は攻守に力強い動き

　高校選抜は、交代出場でゲームコントロールする小田や小川を軸とした川崎Fからボールを奪い切れないシーンも多かった。だが、今大会無失点のディフェンス力を発揮。瀧口、中野、齊藤、村上慶の4バックがチャレンジ&カバーを徹底する。また、GK村上葵が安定した守りを続け、前線、中盤の選手たちも献身的に自分たちの役割を全うしていた。

U-17日本高校選抜は全試合無失点。中心選手として堅守を支えたCB中野陽斗(神村学園高/2年)

　鼻骨付近の怪我で先発を外れていた主将のMF竹ノ谷優駕(前橋育英高/2年)が「自分含めて明るい子がいるんで、ほんとにそういう子たちにしっかりと声掛けていって、チームの雰囲気とか良くして、あとはもう自分たちが持ってる力を出すって形で、ほんとに雰囲気よくチーム作りできたなと思ってます」というチームは、難しい状況でもサブの選手を含めて一体感があった。

　その高校選抜は篠塚のインターセプトを起点としたショートカウンターから山崎がドリブル突破にチャレンジ。また、14分に山崎とMF萩原慶(桐光学園高/1年)を代えると、19分には中野のクリアから巧みにDFと入れ替わった宮本がドリブルで持ち込み、左足を振り抜く。右ポストの跳ね返りに陶山が鋭く走り込んで左足で狙うが、惜しくも枠左。一方の川崎Fは24分、MF小川翔太(1年)とFW川村求(中3)を同時投入した。

後半19分、FW宮本周征(帝京高/2年)の左足シュートが右ポストをヒット

　高校選抜は抜群の強さを見せる大石や宮本を中心とした攻撃で相手の守りをこじ開けに行くが、川崎FもGK松澤やDFラインの選手たちが隙を見せない。それでも高校選抜は32分、DFラインでインターセプトした中野が右オープンスペースへ展開。これを萩原が収めると、10番MF柴野が瀧口とのパス交換からドリブルでDF1人を剥がす。そして、縦へ潜り込んで左横へパスを繋ぐ。ここから宮本が左前方へパスを入れると、最後は大石が右足ダイレクトでシュート。これが右隅に決まり、先制点となった。

後半32分、MF柴野快仁(前橋育英高/2年)が相手DFを振り切って前進

エースFW大石脩斗(鹿児島城西高/2年)が先制点を喜ぶ

　京都U-18戦で3得点のエース大石が川崎Fのゴールをこじ開け、高校選抜は喜びを爆発させた。その後も宮本のドリブルシュートなどで追加点を狙う高校選抜に対し、川崎Fは38分に左SB柏村涼太(2年)とCB笹倉拓真(中3)を投入。その直後に高校選抜が追加点を奪う。自陣PAでボールを奪った左SB村上慶の縦パスに対し、大石が抜群の加速力でDF2人の前へ。右前方へ運ぶとPA外側からGK頭上への右足シュートを決め、2-0とした。

FW大石脩斗(鹿児島城西高/2年)は後半39分にも右足シュートを決め、2-0

ゴールを喜ぶFW大石脩斗(鹿児島城西高/2年)らU-17日本高校選抜の選手たち

　高校選抜は42分、CB塩田航央(東海大相模高/2年)、MF白井誠也(前橋育英高/2年)、MF湯月哲大(米子北高/2年)、FW大森風牙(高川学園高/2年)を投入。川崎FもDF山川陽平(1年)とMF木村風斗(中3)をピッチへ送り出した。

　高校選抜はさらに44分、竹ノ谷、MF佐々木悠太(神村学園高/2年)、MF和食陽向(帝京長岡高/1年)、CB熊野俊典(米子北高/1年)を送り出し、登録全22選手が出場。短い出場時間の選手たちも最後までバトルし、全勝優勝で大会を終えた。

U-17日本高校選抜の中村真吾監督(米子北高)は「結果と成長、両方できたところはできたんじゃないかなと」

　中村真吾監督(米子北高)は「このところで成長して帰ろうっていうことを最初に言ってたので、結果と成長、両方できたところはできたんじゃないかなと。(特に求めてきた)守備のところでは凄くしっかりとやってくれたし、攻撃のところもほんとにしっかりやってきたし、トモ(山城朋大コーチ/大津高)も凄く攻撃のところをしっかり教えてくれたし、セットプレーもGKも大久保(隆一郎GKコーチ/名古屋高/霞ヶ浦高)さんも教えてくれたし、ほんとに選手もそうだし、スタッフもそうだし、役割をちゃんと果たしたかなと思います」と喜んでいた。

　高校選抜の選手たちは2025年シーズンの高校サッカーの主役候補たち。中村監督は「僕ら、これで活動は終わりですけど、これから1シーズン始まるスタートでこうやっていい結果を残して、これからもみんなライバルなんで、ここからスタートして、またなんかこの中からチーム優勝したりとか、良い選手が育って欲しい」と期待した。竹ノ谷が「自分たちのチームに戻って、またライバルとして戦うっていうことで、ほんとにいい刺激にもなりますし、負けたくないって気持ちもある」と語ったように、これからはライバルとして切磋琢磨。刺激しあいながら、さらなる成長を遂げる。

U-17日本高校選抜のMF竹ノ谷優駕主将(前橋育英高/2年)が優勝カップを掲げる

(取材・文　吉田太郎)