[MOM5053]川崎F U-18FW恩田裕太郎(3年)_ゴールから見放された「苦しい1か月」を払拭する圧巻のドッピエッタ!新9番が再逆転弾でストライカーの仕事完遂!
2ゴールを沈めた
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.6 プレミアリーグEAST第1節 川崎F U-18 3-2 東京Vユース Anker フロンタウン生田 Ankerフィールド]
ストライカーは、焦っていた。まだプレシーズンの時期とはいえ、1か月近くも遠ざかっていたゴールの感触。勝負の番号を背負って臨む、勝負の年。自分が果たすべき役割は明確すぎるぐらいわかっている。だが、そんな不安は杞憂に終わった。今シーズンもこの人は、やはりどんな対戦相手にとっても要注意人物だ。
「コーチの方々がずっと『本番で決めればいい』と言ってくれていたので、『今日は絶対に決めるぞ』という気持ちでやっていました。今回は絶対決めなきゃいけないというところで、しっかり決められたので良かったと思います」。
3年ぶりのタイトル奪還に燃える川崎フロンターレU-18(神奈川)のナンバー9。FW恩田裕太郎(3年=川崎フロンターレU-15出身)はいきなりのドッピエッタで、開幕勝利のメインキャストを力強くさらっていった。
ストライカーは、悩んでいた。昨シーズンは2年生ながらプレミアリーグEASTでチームトップの8ゴールを叩き出し、夏のクラブユース選手権でも得点王に輝くなど、より評価を高めた上で迎えたアカデミーラストイヤーだったが、2月23日に開催された神奈川県クラブユースリーグカップ決勝で、湘南ベルマーレU-18相手に圧巻のハットトリックを達成してから、恩田はことごとく対外試合での得点に見放されてきたという。
東京ヴェルディユース(東京)と激突するプレミア開幕戦のピッチに向かう心の中にも、なかなか晴れないモヤモヤとした気持ちが渦巻いていた新9番は、それでも一撃で結果を残す。
前半13分。MF新堀翔(3年)がボールを持った瞬間、もうイメージは完全に共有されていた。「翔が良い持ち出しをして、センターバックの間が空いていたので、そこに自分が走って、あとは流し込むだけでした」。スルーパスを引き出すと、飛び出したGKと入れ替わりながら、ボールをゴールネットへ送り届ける。
「今日の試合前のアップでも1対1を決められなかったところがあったので、ちょっと不安だったんですけど(笑)、試合中はしっかり決められたので良かったと思います」。エースの面目躍如。チームの今季初ゴールとなる先制点は、やはりこの人が叩き出した。
前半のうちに逆転を許す苦しいゲーム展開の中で、後半に入って少しずつ本来のスタイルを打ち出し始めた川崎F U-18は、後半32分に新堀の左CKが相手のオウンゴールを誘発し、同点に追い付いてみせると、直後にすぐさま決定的なチャンスがやってくる。
ストライカーは、狙っていた。33分。左サイドで果敢なインターセプトを見せたMF平内一聖(3年)からパスが届くと、恩田は「最初は『打とうかな』と思ったんですけど、右に翔がいたので」サイドへ展開。走り込んだ新堀のシュートは相手DFに阻まれたものの、こぼれ球が目の前に転がってくる。
「翔のシュートやキーパーが弾いたボールに反応しようと思って、あそこのポジショニングを取っていたので、こぼれてきてくれて良かったと思います」。9番が左足で流し込んだボールは、ゆっくりと左のポストを叩いて、ゴールネットへと吸い込まれる。
実際のシュートはいわゆる“当たり損ね”だった。本人も「思い切り足を振りたかったんですけど、振り切れなかったのが良い感じにポストに当たって、入って良かったと思います」と苦笑交じりに振り返っている。ただ、もちろん1点は1点。しかもチームに再逆転をもたらす大きな、大きなゴール。やはり『持っている』と言うほかにない。
チームを率いる森勇介監督も、殊勲のストライカーに対して好評価を口にする。「みんな本当に緊張していた中で、何も考えていなかったのは恩田ぐらいですかね(笑)。ベルマーレとの決勝以来点を獲っていなかったので、『本番になったら点を獲るんだろ』と言っていたんですけど、実際に獲ってくれたので頼もしいです。守備でも彼の前からの圧力は、ちょっと足が攣っていても代えられない状況でしたし、彼は替えが利かない選手かなと思っています」。
試合はそのまま3-2で逃げ切りに成功。新指揮官の初陣でもあったオープニングマッチに、逞しく勝ち切った川崎F U-18の選手たちがサポーターの前に並ぶと、指名された恩田は『勝利のバラバラ』の音頭を全力歌唱。生田のピッチに水色の笑顔が咲き誇った。


昨年8月には、SBSカップに臨むU-18日本代表のトレーニングパートナーに指名された恩田は、安野匠(仙台)、ワッド・モハメッド・サディキ(琉球)、神代慶人(熊本)といったフォワードたちとともにハイレベルなトレーニングを経験。今年2月にも『NEXT GENERATION CUP』を戦うJリーグ選抜に選ばれ、同世代の精鋭たちの中で小さくない刺激を受けてきた。
「高いレベルに行くほど、自分より凄い選手がいますし、そういう上のレベルの人たちを目標にしながら、自分ももっと成長していけば、チームも自然とレベルが上がってくると思うので、その人たちを超えていけるように、自分が成長できればなと思います」。まだ未招集の年代別代表も見据えながら、さらなるステップアップへの意欲もはっきりと携えている。
今シーズンから託された背番号9は、頼れる先輩たちが足跡を刻んできた重要な番号。このチームでそれを付ける意味は、誰よりもよく理解している。「トラさん(岡崎寅太郎/桐蔭横浜大)、武くん(香取武/東洋大)と自分が目標にしてきた選手が付けてきた番号で、“ストライカー”という番号だと思うので、自分の点でチームを勝たせられたらなと思います」。
もう不安も心配も吹き飛んだ。狙うはプレミアリーグ制覇と得点王のみ。川崎F U-18を最前線で牽引する、9番を背負ったストライカー。ドッピエッタで始まった今季の恩田裕太郎の勢いは、きっとそう簡単に止まらない。


(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2025特集
[4.6 プレミアリーグEAST第1節 川崎F U-18 3-2 東京Vユース Anker フロンタウン生田 Ankerフィールド]
ストライカーは、焦っていた。まだプレシーズンの時期とはいえ、1か月近くも遠ざかっていたゴールの感触。勝負の番号を背負って臨む、勝負の年。自分が果たすべき役割は明確すぎるぐらいわかっている。だが、そんな不安は杞憂に終わった。今シーズンもこの人は、やはりどんな対戦相手にとっても要注意人物だ。
「コーチの方々がずっと『本番で決めればいい』と言ってくれていたので、『今日は絶対に決めるぞ』という気持ちでやっていました。今回は絶対決めなきゃいけないというところで、しっかり決められたので良かったと思います」。
3年ぶりのタイトル奪還に燃える川崎フロンターレU-18(神奈川)のナンバー9。FW恩田裕太郎(3年=川崎フロンターレU-15出身)はいきなりのドッピエッタで、開幕勝利のメインキャストを力強くさらっていった。
ストライカーは、悩んでいた。昨シーズンは2年生ながらプレミアリーグEASTでチームトップの8ゴールを叩き出し、夏のクラブユース選手権でも得点王に輝くなど、より評価を高めた上で迎えたアカデミーラストイヤーだったが、2月23日に開催された神奈川県クラブユースリーグカップ決勝で、湘南ベルマーレU-18相手に圧巻のハットトリックを達成してから、恩田はことごとく対外試合での得点に見放されてきたという。
東京ヴェルディユース(東京)と激突するプレミア開幕戦のピッチに向かう心の中にも、なかなか晴れないモヤモヤとした気持ちが渦巻いていた新9番は、それでも一撃で結果を残す。
前半13分。MF新堀翔(3年)がボールを持った瞬間、もうイメージは完全に共有されていた。「翔が良い持ち出しをして、センターバックの間が空いていたので、そこに自分が走って、あとは流し込むだけでした」。スルーパスを引き出すと、飛び出したGKと入れ替わりながら、ボールをゴールネットへ送り届ける。
「今日の試合前のアップでも1対1を決められなかったところがあったので、ちょっと不安だったんですけど(笑)、試合中はしっかり決められたので良かったと思います」。エースの面目躍如。チームの今季初ゴールとなる先制点は、やはりこの人が叩き出した。
前半のうちに逆転を許す苦しいゲーム展開の中で、後半に入って少しずつ本来のスタイルを打ち出し始めた川崎F U-18は、後半32分に新堀の左CKが相手のオウンゴールを誘発し、同点に追い付いてみせると、直後にすぐさま決定的なチャンスがやってくる。
ストライカーは、狙っていた。33分。左サイドで果敢なインターセプトを見せたMF平内一聖(3年)からパスが届くと、恩田は「最初は『打とうかな』と思ったんですけど、右に翔がいたので」サイドへ展開。走り込んだ新堀のシュートは相手DFに阻まれたものの、こぼれ球が目の前に転がってくる。
「翔のシュートやキーパーが弾いたボールに反応しようと思って、あそこのポジショニングを取っていたので、こぼれてきてくれて良かったと思います」。9番が左足で流し込んだボールは、ゆっくりと左のポストを叩いて、ゴールネットへと吸い込まれる。
実際のシュートはいわゆる“当たり損ね”だった。本人も「思い切り足を振りたかったんですけど、振り切れなかったのが良い感じにポストに当たって、入って良かったと思います」と苦笑交じりに振り返っている。ただ、もちろん1点は1点。しかもチームに再逆転をもたらす大きな、大きなゴール。やはり『持っている』と言うほかにない。
チームを率いる森勇介監督も、殊勲のストライカーに対して好評価を口にする。「みんな本当に緊張していた中で、何も考えていなかったのは恩田ぐらいですかね(笑)。ベルマーレとの決勝以来点を獲っていなかったので、『本番になったら点を獲るんだろ』と言っていたんですけど、実際に獲ってくれたので頼もしいです。守備でも彼の前からの圧力は、ちょっと足が攣っていても代えられない状況でしたし、彼は替えが利かない選手かなと思っています」。
試合はそのまま3-2で逃げ切りに成功。新指揮官の初陣でもあったオープニングマッチに、逞しく勝ち切った川崎F U-18の選手たちがサポーターの前に並ぶと、指名された恩田は『勝利のバラバラ』の音頭を全力歌唱。生田のピッチに水色の笑顔が咲き誇った。


昨年8月には、SBSカップに臨むU-18日本代表のトレーニングパートナーに指名された恩田は、安野匠(仙台)、ワッド・モハメッド・サディキ(琉球)、神代慶人(熊本)といったフォワードたちとともにハイレベルなトレーニングを経験。今年2月にも『NEXT GENERATION CUP』を戦うJリーグ選抜に選ばれ、同世代の精鋭たちの中で小さくない刺激を受けてきた。
「高いレベルに行くほど、自分より凄い選手がいますし、そういう上のレベルの人たちを目標にしながら、自分ももっと成長していけば、チームも自然とレベルが上がってくると思うので、その人たちを超えていけるように、自分が成長できればなと思います」。まだ未招集の年代別代表も見据えながら、さらなるステップアップへの意欲もはっきりと携えている。
今シーズンから託された背番号9は、頼れる先輩たちが足跡を刻んできた重要な番号。このチームでそれを付ける意味は、誰よりもよく理解している。「トラさん(岡崎寅太郎/桐蔭横浜大)、武くん(香取武/東洋大)と自分が目標にしてきた選手が付けてきた番号で、“ストライカー”という番号だと思うので、自分の点でチームを勝たせられたらなと思います」。
もう不安も心配も吹き飛んだ。狙うはプレミアリーグ制覇と得点王のみ。川崎F U-18を最前線で牽引する、9番を背負ったストライカー。ドッピエッタで始まった今季の恩田裕太郎の勢いは、きっとそう簡単に止まらない。


(取材・文 土屋雅史)
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