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[MOM4661]川崎F U-18FW香取武(3年)_新9番、躍動!抜け目ない逆転弾でアカデミーを代表する「U-18のストライカー」の仕事完遂!

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川崎フロンターレU-18の新9番、FW香取武(3年=川崎フロンターレU-15出身)は開幕戦から大仕事!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.7 プレミアリーグEAST第1節 川崎F U-18 4-1 大宮U18 Ankerフロンタウン生田]

 託された背番号の意味は、誰よりもよくわかっている。どれだけ圧倒的にゲームを支配しても、どれだけ華麗にボールを動かしても、最後にゴールを仕留めるヤツがいなければ、勝利の女神は微笑んでくれない。今年のチームの中でその笑顔を手繰り寄せるのは、オレの役割だ。

「自分には得点というところが求められているので、この試合だけに限らず、次の試合、また次の試合としっかり得点を意識していきたいと思います。毎試合得点にこだわるところは意識しているので、そこは皆さんに見てもらいたいです」。

 2年ぶりのプレミアリーグEAST制覇を狙う川崎フロンターレU-18(神奈川)の背番号9を継承した、強気なメンタルを備えるストライカー。FW香取武(3年=川崎フロンターレU-15出身)は開幕戦で明確な結果を叩き出し、2024年の主役へと高らかに名乗りを上げている。


 いきなりの失点で幕を開けた、大宮アルディージャU18(埼玉)とのオープニングマッチ。前半早々に1点を追い掛ける展開となったが、「開幕戦ということで多少硬さもチームとしてはありましたけど、失点しても自分たちは全然立ち直れる代だと思っています」と香取も話すように、川崎F U-18に焦りの色は浮かばない。

 30分には9番に決定機。DF関德晴(2年)、MF八田秀斗(3年)、MF知久陽輝(3年)とスムーズに回ったボールを収め、「左足で打つという選択肢もあったんですけど、ディフェンダーが見えたので切り返して、ファーに流し込むというイメージで」香取が放ったシュートはDFにブロックされたものの、ゴールへの雰囲気は掴んでいた。

 1-1に追い付いて迎えた後半21分。その瞬間はやってきた。途中投入されたFW恩田裕太郎(2年)が相手ディフェンダーへ果敢にプレスを掛けると、こぼれたボールが目の前へ転がってくる。「もうそのスピードのままキーパーを外せたので、流し込むだけでした」。GKを確実にかわして、無人のゴールへ丁寧にボールを送り届ける。

「あの得点はほぼ恩田選手の良いプレスからの得点でしたけど、気持ち良かったですし、今日は正直得点しか欲しくなかったので、本当に嬉しかったです」。抜け目ない得点感覚を発揮した、スコアをひっくり返す9番の貴重な逆転弾。これで勢いを得たチームはさらに2点を追加し、4-1で快勝。チームが欲しかった開幕勝利に、ストライカーは自らのゴールで見事に貢献してみせた。


 2年生だった昨シーズンのプレミアリーグでは前半戦こそスタメンで起用される試合もあり、市立船橋高(千葉)や横浜F・マリノスユース(神奈川)相手にもゴールを奪うなど、存在感を高めていったものの、一転して後半戦はなかなか出場機会を得られず、浮き沈みのある1年を過ごすことになる。

 それでもハイレベルなリーグ戦での経験は、確実に自身の視座を上げてくれた。「去年はケガだったりコロナだったりで、自分にとって試練となるようなことが多くて、本当に苦しい時期もあったんですけど、自分の力を発揮する武器の出し方というか、力の発揮の仕方は緊張感のあるリーグ戦を通してできるようになりました。その中でも試合に出るためにどう練習に励んでいくかというのをしっかり考えていたので、それをこの1年間の結果でしっかり証明していきたいなと思います」。

 ストライカーのスタイルとしては万能タイプ。「裏への抜け出しだったり、ゴール前でのアイデアだったり、そういうところは見てほしいですし、スピードも自分の武器だと思います」と口にしながらも、レバンドフスキや大迫勇也を参考にしながら、ボールを収める部分にも強みを発揮している。

 加えてアカデミーの取り組みとして、今年に入って全カテゴリー合同のポジション別練習が実施された際には、かつてトップチームで活躍していた矢島卓郎・U-15等々力監督や黒津勝・U-12コーチにフォワードとしての指導を受けたことも、小さくない刺激になっているようだ。

「2人とも元プロの選手で、動きの質も全然違うので、自分の考えになかった新しい動き方を学びました。特にボールの持ち手と受け手の意志の疎通は一番大事なところで、そこの関係だけで、パススピードの速さだけで、ディフェンスラインを剥がすことができるということを学んだので、そういう関係性は意識してやっていますね」。

 一緒にボールを蹴ったU-12のカテゴリーの選手から見れば、“U-18のストライカー”は憧れの存在。「ジュニアの子たちもそういう目で見ているので、『いいものを見せなきゃいけない』というプレッシャーもありますし、背中を見せるのは大事だと思います」。その役割が担う意味も、香取はしっかりと自分の中に刻み込んでいる。


 新しく渡された背番号も、意気に感じていないはずがない。「今までは7番とか11番を付けてきていて、今回は9番という番号で(岡崎)寅太郎選手の後ということで、プレッシャーはありますけど、それを自信に変えて頑張っていきたいです」。そのためにも今季のプレミアで求めるのは、もう結果一択だ。

「二桁得点は自分の中で掲げていて、それ以上は行きたいということで、得点王は絶対に意識していきたいと思います。自分はゴールを獲れるだけではなくて、ライン間で受けたり、組み立て役もできると思うんですけど、そこで1つの役割を終えてからも、ゴール前に入っていく部分は自分にまだ足りない部分だと思っていて、そういうところができてくれば、さらに得点も獲れるかなと。去年は苦しい時期もあった分、今年は本当に飛躍の年にしたいですし、チームの勝利に貢献できるように頑張っていきたいと思います」。

 任されたのはみんなで作り上げた綺麗なスポンジの上に、ゴールという名の“苺”を乗せて、美味しいケーキを完成させる重要な役目。川崎F U-18のナンバー9。香取武が乗せ続ける“苺”の数が増えれば増えるほど、チームが仕上げていく美しいケーキも、同じ数だけ増え続けていく。



(取材・文 土屋雅史)

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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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