[ヤングサッカーフェス]中村俊輔臨時コーチに志願した「アフター練習」の効果と財産。静岡県選抜MF奥田悠真(磐田U-18)が心の軸に据える「プロになるという強い意志」
静岡県ユース選抜の攻撃を牽引したMF
[3.1 静岡県ヤングサッカーフェスティバルU-17の部 静岡県ユース選抜 1-0 U-17日本高校選抜 草薙陸]
そのスタイルには爽快感すら漂う。ボールを持ったら、アグレッシブに前へ、前へ。それでも独善的なプレーとは無縁。周囲とも積極的にコミュニケーションを図り、チームの中で生きるべき場所を見つけ、勝利のために100パーセントのパワーを注ぎ込める、稀有なアタッカーだ。
「去年は環境が変わって、チームも変わったので、求められることだったり、自分のやるべき仕事や立ち位置も変化しましたけど、何事もプラスに捉えて、すべて成長に繋げられるようにという考えでやってきた中で、今年は最高学年になって、責任や覚悟も生まれているので、それをよりピッチで表現したいと思います」。
静岡県選抜を前線で牽引した、エネルギーに満ちた小柄なアタッカー。MF奥田悠真(磐田U-18/2年)は自らの力で未来を切り拓くための1年を控え、改めて自分自身と真摯に向き合っている。
「集まった時から良い雰囲気でしたし、誰とも分け隔てなくみんなと関われていましたし、この試合の勝利をチームの目標としてやってきたので、最後に勝利で終えられたことはプラスに捉えています」。
終わったばかりの80分間を、奥田はそんな言葉で振り返る。『第41回静岡県ヤングサッカーフェスティバル』。静岡県ユース選抜はU-17日本高校選抜を相手に、MF西岡健斗(磐田U-18/2年)の決勝点で1-0と勝利。ホームで凱歌を上げる結果となった。
この試合への高い意欲を打ち出したのは開始1分。フィードのこぼれ球を左サイドで拾った奥田は、ペナルティエリア外から躊躇なく左足ミドルにトライ。枠を捉えたボールはGKのファインセーブに掻き出されたものの、いきなりの一撃にスタンドからもどよめきが巻き起こる。
22分にも決定機。高い位置での果敢なプレスで、相手センターバックからボールをかっさらうと、そのままフィニッシュまで持ち込むも、軌道はゴール左へ外れてしまう。「シュートを打ったら全部決め切りたいと思っていますけど、今日の試合を振り返ったら、アレが一番のチャンスだったので、決めたかったですね」とは本人だが、“1人切り替え”でチャンスを作り出すあたりに、備えている能力の高さが滲む。




攻守にピッチを駆け回れるエネルギッシュさは、この人の大きな武器だ。「自分はフィジカルがあるわけでもないですし、大きな選手でもない中で、走力や運動量でチームに貢献するところも自分の強みだと思っているので、そういったところを周りから見てくださっている方が評価してくださるなら嬉しい限りです」。
ただ、この日は再三の好機に顔を出しながらも、結果はノーゴール。「個人としてはチャンスメイクやシュートという強みは出ましたけど、ああいうところで決め切って、もっとゲームを楽に運べるような結果を出すのが僕のポジションの仕事なので、それが今日は発揮できなかったことは反省しなくてはいけない部分だと思います」。ベクトルをしっかり自分に向ける姿勢が印象的だった。
奥田は昨シーズンの途中で、川崎フロンターレU-18からジュビロ磐田U-18へと移籍。プレミアリーグプレーオフでも2ゴールを叩き出し、チームの昇格に貢献するパフォーマンスを披露したが、初めて親元を離れて寮生活を送る中で、小さくない気づきがあったそうだ。
「親と一緒に生活しながらサッカーをしていたところから一変して、1人で生活していく覚悟は要りましたし、食事は寮の方が作ってくださいますけど、自分のものを洗濯することになって、洗剤1つとっても自分で買いに行かないといけないですし、『あ、こんな高いんだ』と気づいた部分もあって(笑)」
「今はまだ自分でお金を稼いでいるわけではないので、しっかり大切にお金を使いたいなと思いましたね。今まで親が自分にしてくれていたことに、凄く感謝するようになりましたし、そういうことに気づけたことは、凄くプラスなことなのかなと思います」。


先日、トップチームへの2種登録も発表された奥田は、1月の鹿児島キャンプにも参加。プロサッカー選手たちと同じ時間を過ごすことで、自分の現在地が明確になったことは間違いない。
「オン・ザ・ボールの時は、自分の特徴がトップでも生きるなと感じますし、それこそシュートの積極性も通用するなと思いましたけど、一方で戦術理解度や守備での球際や、単純なフィジカルの強さ、速さといった部分には、もっと目を向けて取り組んでいかないといけないと思いました」。
「特に井上潮音くんはずっと気にかけてくださって、凄く仲良くさせてもらっていて、そういった人がトップの中で1人でもいてくれると、スムーズにチームの輪に入っていけることもあったので、本当に感謝しています。他にもいっぱい喋りかけてくれる方がいましたし、自分から気になることをどんどん喋りにも行きました」。
また、キャンプ中は“臨時コーチ”として指導に当たっていた中村俊輔氏にも、積極的に自ら教えを請いに行ったという。
「アフターの練習がある日は、毎日俊輔さんのところに行って、『練習してください』とお願いして練習してもらいました。『自分のポジションはここで、強みはここで』という部分を伝えたら、『じゃあこういう練習をしようか』と言ってくださって、フリーキックもやりましたし、ターンもやりましたし、いっぱい練習を考えてくださいました」
「自分たちの成長にも凄く前向きに取り組んでくださいましたし、俊輔さんは日本のトップトップを走ってきた方で、自分もそういうところを目指しているので、そういう人と一緒に時間を過ごせたことは、これからの自分の財産になるなと思います」。
日本サッカー界のレジェンドにも物怖じせず、いろいろなものを吸収したいという姿勢をしっかり打ち出せるのも、この人の大きなストロングではないだろうか。


今季の磐田U-18は3年ぶりにプレミアリーグへ復帰。奥田自身は川崎F U-18時代にそのピッチを経験しているものの、チームとしては未知のステージへとトライする1年を前に、確固たる決意が口を衝く。
「この世代は誰もプレミアを経験したことがない中での挑戦になるので、どれぐらいのレベル感なのかは始まってみないとわからないですけど、自分は1つでもレベルを上げて、チームを引っ張っていけるような存在になりたいですし、日本の高校年代の最高峰のリーグなので、自分たちがどれぐらい通用するのか凄く楽しみです」。
「個人としては高校3年生になって、プロになれるかなれないかというところがジャッジされる学年でもありますし、僕は『プロになる』という強い意志を持ってジュビロに来たので、最後に自分の手でそれを勝ち獲れるように、日々の練習に取り組んでいきたいです」。
もうこの世界で生き残っていく覚悟なんて、とっくに整っている。周囲の大きな理解を得て、最後は自分で下した決断を正解にできるのは、今の自分の姿勢だけ。サックスブルーに身を投じた17歳のチャレンジ。奥田悠真はアグレッシブに、颯爽と、勝負の2026年を走り抜ける。


(取材・文 土屋雅史)
そのスタイルには爽快感すら漂う。ボールを持ったら、アグレッシブに前へ、前へ。それでも独善的なプレーとは無縁。周囲とも積極的にコミュニケーションを図り、チームの中で生きるべき場所を見つけ、勝利のために100パーセントのパワーを注ぎ込める、稀有なアタッカーだ。
「去年は環境が変わって、チームも変わったので、求められることだったり、自分のやるべき仕事や立ち位置も変化しましたけど、何事もプラスに捉えて、すべて成長に繋げられるようにという考えでやってきた中で、今年は最高学年になって、責任や覚悟も生まれているので、それをよりピッチで表現したいと思います」。
静岡県選抜を前線で牽引した、エネルギーに満ちた小柄なアタッカー。MF奥田悠真(磐田U-18/2年)は自らの力で未来を切り拓くための1年を控え、改めて自分自身と真摯に向き合っている。
「集まった時から良い雰囲気でしたし、誰とも分け隔てなくみんなと関われていましたし、この試合の勝利をチームの目標としてやってきたので、最後に勝利で終えられたことはプラスに捉えています」。
終わったばかりの80分間を、奥田はそんな言葉で振り返る。『第41回静岡県ヤングサッカーフェスティバル』。静岡県ユース選抜はU-17日本高校選抜を相手に、MF西岡健斗(磐田U-18/2年)の決勝点で1-0と勝利。ホームで凱歌を上げる結果となった。
この試合への高い意欲を打ち出したのは開始1分。フィードのこぼれ球を左サイドで拾った奥田は、ペナルティエリア外から躊躇なく左足ミドルにトライ。枠を捉えたボールはGKのファインセーブに掻き出されたものの、いきなりの一撃にスタンドからもどよめきが巻き起こる。
22分にも決定機。高い位置での果敢なプレスで、相手センターバックからボールをかっさらうと、そのままフィニッシュまで持ち込むも、軌道はゴール左へ外れてしまう。「シュートを打ったら全部決め切りたいと思っていますけど、今日の試合を振り返ったら、アレが一番のチャンスだったので、決めたかったですね」とは本人だが、“1人切り替え”でチャンスを作り出すあたりに、備えている能力の高さが滲む。




攻守にピッチを駆け回れるエネルギッシュさは、この人の大きな武器だ。「自分はフィジカルがあるわけでもないですし、大きな選手でもない中で、走力や運動量でチームに貢献するところも自分の強みだと思っているので、そういったところを周りから見てくださっている方が評価してくださるなら嬉しい限りです」。
ただ、この日は再三の好機に顔を出しながらも、結果はノーゴール。「個人としてはチャンスメイクやシュートという強みは出ましたけど、ああいうところで決め切って、もっとゲームを楽に運べるような結果を出すのが僕のポジションの仕事なので、それが今日は発揮できなかったことは反省しなくてはいけない部分だと思います」。ベクトルをしっかり自分に向ける姿勢が印象的だった。
奥田は昨シーズンの途中で、川崎フロンターレU-18からジュビロ磐田U-18へと移籍。プレミアリーグプレーオフでも2ゴールを叩き出し、チームの昇格に貢献するパフォーマンスを披露したが、初めて親元を離れて寮生活を送る中で、小さくない気づきがあったそうだ。
「親と一緒に生活しながらサッカーをしていたところから一変して、1人で生活していく覚悟は要りましたし、食事は寮の方が作ってくださいますけど、自分のものを洗濯することになって、洗剤1つとっても自分で買いに行かないといけないですし、『あ、こんな高いんだ』と気づいた部分もあって(笑)」
「今はまだ自分でお金を稼いでいるわけではないので、しっかり大切にお金を使いたいなと思いましたね。今まで親が自分にしてくれていたことに、凄く感謝するようになりましたし、そういうことに気づけたことは、凄くプラスなことなのかなと思います」。


先日、トップチームへの2種登録も発表された奥田は、1月の鹿児島キャンプにも参加。プロサッカー選手たちと同じ時間を過ごすことで、自分の現在地が明確になったことは間違いない。
「オン・ザ・ボールの時は、自分の特徴がトップでも生きるなと感じますし、それこそシュートの積極性も通用するなと思いましたけど、一方で戦術理解度や守備での球際や、単純なフィジカルの強さ、速さといった部分には、もっと目を向けて取り組んでいかないといけないと思いました」。
「特に井上潮音くんはずっと気にかけてくださって、凄く仲良くさせてもらっていて、そういった人がトップの中で1人でもいてくれると、スムーズにチームの輪に入っていけることもあったので、本当に感謝しています。他にもいっぱい喋りかけてくれる方がいましたし、自分から気になることをどんどん喋りにも行きました」。
また、キャンプ中は“臨時コーチ”として指導に当たっていた中村俊輔氏にも、積極的に自ら教えを請いに行ったという。
「アフターの練習がある日は、毎日俊輔さんのところに行って、『練習してください』とお願いして練習してもらいました。『自分のポジションはここで、強みはここで』という部分を伝えたら、『じゃあこういう練習をしようか』と言ってくださって、フリーキックもやりましたし、ターンもやりましたし、いっぱい練習を考えてくださいました」
「自分たちの成長にも凄く前向きに取り組んでくださいましたし、俊輔さんは日本のトップトップを走ってきた方で、自分もそういうところを目指しているので、そういう人と一緒に時間を過ごせたことは、これからの自分の財産になるなと思います」。
日本サッカー界のレジェンドにも物怖じせず、いろいろなものを吸収したいという姿勢をしっかり打ち出せるのも、この人の大きなストロングではないだろうか。


今季の磐田U-18は3年ぶりにプレミアリーグへ復帰。奥田自身は川崎F U-18時代にそのピッチを経験しているものの、チームとしては未知のステージへとトライする1年を前に、確固たる決意が口を衝く。
「この世代は誰もプレミアを経験したことがない中での挑戦になるので、どれぐらいのレベル感なのかは始まってみないとわからないですけど、自分は1つでもレベルを上げて、チームを引っ張っていけるような存在になりたいですし、日本の高校年代の最高峰のリーグなので、自分たちがどれぐらい通用するのか凄く楽しみです」。
「個人としては高校3年生になって、プロになれるかなれないかというところがジャッジされる学年でもありますし、僕は『プロになる』という強い意志を持ってジュビロに来たので、最後に自分の手でそれを勝ち獲れるように、日々の練習に取り組んでいきたいです」。
もうこの世界で生き残っていく覚悟なんて、とっくに整っている。周囲の大きな理解を得て、最後は自分で下した決断を正解にできるのは、今の自分の姿勢だけ。サックスブルーに身を投じた17歳のチャレンジ。奥田悠真はアグレッシブに、颯爽と、勝負の2026年を走り抜ける。


(取材・文 土屋雅史)


