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“常勝軍団”知る町田主将DF昌子源、涙の7度目タイトルも渇望新た「まだみんなには伝えていないけど…」

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町田サポーターに視線を送り、涙を見せるDF昌子源

[11.22 天皇杯決勝 町田 3-1 神戸 国立]

 J1リーグ挑戦2年目のFC町田ゼルビアが天皇杯を制し、クラブ創設37年目で悲願の初タイトルを獲得した。サイバーエージェントグループ参画から丸7年、高校サッカー界で一時代を築いた黒田剛監督の就任3年目、フロントと現場が一体となった大型補強を経ての快挙だった。

 試合後、大型補強の核として昨季加入した元日本代表DF昌子源は「僕は(鹿島時代に)クラブW杯決勝のレアル戦に負けてしまったけど、国内での決勝戦には一度も負けたことがないので、それを自信に『自分ならできる』という思いで今日は試合に入った」と振り返りつつ、「嬉しかった。一つ目を取るのは本当に難しいことだし、チームとしても相当な覚悟を持って挑んだ一戦だったので良かった」とタイトルへの喜びを口にした。

 昌子は昨季開幕前、十分な出場機会を得られなかった鹿島を離れ、J1昇格初年度の町田に加入。個人としての復活を期すとともに、2016年のJリーグ制覇を筆頭にナビスコ杯(現ルヴァン杯)優勝3回、天皇杯優勝1回、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇1回という“常勝軍団”の経験を根付かせるべく、新進気鋭のクラブにやってきた。

「若手の時、中堅の時にミツさん(小笠原満男氏)含め、レジェンドの皆さんにしがみついていただけで、ついていったらタイトルが取れた。もちろんその経験はこのチームでは一番していて、ましてやキャプテンもさせてもらって、先頭に立ってタイトルを取るのは……」

 試合後、昌子はキャプテンという立場で掴み取った“7度目”のタイトルの価値に思いを馳せながら、この2年間の歩みを振り返っていった。

「僕が町田に来た昨年、(中山)雄太と相馬(勇紀)のように半年からこっちに来たわけじゃないので、その時は決してタイトルを取りに来たわけでは正直なかった。まずこのチームをJ1に残留させる、J1で戦っていく根本的なところを、もちろん僕一人では無理だけど、(谷)晃生とか仙頭(啓矢)とかJ1経験者が同じタイミングで入ってくれて、そこをまずはという思いで入ってきた」

「3位に入って、今年はタイトルと、2年目にしてはかなり大きく出たんじゃないかと思われる目標ではあったけど、監督は昨年から高い目標に設定する方だった。人間、目標を達成したら気が緩むと。だから現実的な目標ではなく、誰もが難しいんじゃないかと思う目標を設定して、そこに届くまで誰も手を抜かない。そんな理由で何かしらのタイトルというのを決めて、今年に入ったときはもちろんタイトルをという思いで入った」

 加入からたった2年間とはいえ、その2年間は想像以上に濃いものだったようだ。「昨年僕が入った時はタイトルよりは(残留)という思いもあったので、数字で言えば早いなと思うかもしれないけど、すごく長い2年だったなと思います」。その濃密な日々は試合後、フラッシュインタビューで見せた涙にも表れていた。

 昌子は試合終了直後、テレビ中継にも流れるフラッシュインタビューの場で3-5の大敗を喫した8月31日のJ1第28節・川崎Fの話題を切り出し、涙ながらに思いを語った。その視線の先には加入初年度からキャプテンを背負ってきた自らの歩みを支えた、町田のサポーターがいた。

「Jリーグで川崎戦の後の皆さんの姿勢を見て、凄く心を打たれる部分がありました。あの時に見せていただいた皆さんの姿を見て本当に心を打たれました。あなたたちのためにやらなければいけないんだと強く思いました。本当にありがとうございます。おめでとうございます」

 昌子は試合後の取材エリアでも川崎F戦に言及。「泣くつもりはなかったけど、でもメインの人たちから『昌子ありがとう』という言葉が届いて、嬉しかったですね」と“涙の理由”を明かしつつ、当時のことをあらためて振り返った。

「あくまでも僕個人の意見だけど、(川崎F戦で)5失点して、下を向き……もう向いてたかな。そういう時でも、もちろん厳しい声もありながらだったけど、顔を上げろというサポーターの皆さんの光景が忘れられなくて、その瞬間に思った。自分のため、チームのため、家族のためというのが大半を占めてしまうところがあるけど、皆さんのためにもやらないといけないんだなとあらためて感じた瞬間だった。その恩を返すのは今日かなと思って、決勝が決まった週の頭からそのことを考えていた」

 まもなく3か月が経とうとしている今でもなお記憶に刻まれるような印象的な光景であったとともに、昌子の中にFC町田ゼルビアというクラブの存在が大きくなっていることを強く感じさせるエピソードだった。

 それでも昌子はこのタイトルを最終到達点にするつもりはない。鹿島時代にACLを獲得して以来、7年ぶりに味わった歓喜を次への活力にする姿勢だ。

「僕は選手にも伝えたけど、もちろん0から1は難しいし、今のチームは0から1の選手がたくさんいる。今年はもうタイトルがリーグも残念ながらなくなったけど、来年以降ずっとこの瞬間を味わいたくなる。僕がずっとそうなので」

 先を見据えた昌子は「まだみんなには伝えていないけど、僕の意見として、それを常に求めるサッカー人生でありたいと思っているので、もう一度タイトルをと思っている」と断言。「今は嬉しさが感情としてあるけど、明日になったら昨日の光景をもう一度味わいたいなと思っていると思う」。早くも次なるタイトルへの渇望を漂わせながらスタジアムを後にした。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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