得点数リーグワーストで降格圏に沈む横浜FM、帰ってきた主将・喜田拓也は信念貫く「ずっとやってきたので不可能ではない」

MF
[4.5 J1第9節 横浜FM 0-0 東京V 日産ス]
攻撃陣の顔ぶれを入れ替えた横浜F・マリノスだったが、またしてもゴールは遠かった。0-0の引き分けで連敗を2で止めたものの、3試合連続の無得点となり、8戦合計4得点はリーグ最少タイ。この一戦で他クラブとの試合数も揃ったなか、1勝5分4敗の勝ち点7で降格圏18位に沈んだままとなった。
この日は全試合フルタイム出場のFWアンデルソン・ロペスと右サイドハーフ主力のFWヤン・マテウスがアクシデントでメンバーを外れ、FW植中朝日、FW遠野大弥、FW井上健太ら日本人選手が前線で先発出場。負傷明けで名古屋戦に途中出場していたMF喜田拓也が今季初先発を果たし、MFジャン・クルードとともにボランチを担ったが、4試合ぶりの白星には届かなかった。
国際Aマッチウィークの中断明けから始まった7連戦を岡山戦(●0-1)、名古屋戦(●0-2)と2連敗でスタートしたことを踏まえれば、3試合ぶりの勝ち点獲得にはなった。それでも試合後、先発復帰戦をフル出場で終えた主将・喜田は厳しい表情で報道陣の前に立った。
「もちろんいろんな人が支えてくれたのでそこへの感謝はあるけど、自分の復帰どうこうよりはただチームを勝たせたい一心だった。それだけですね」
目指していたのは勝利のみ。日産スタジアムに集まったファン・サポーターからは「己と仲間を信じ抜け」という選手の背中を押す横断幕も出されていた中、引き分けという結果を重く受け止めた。
「まず共有したのは、今日変えるぞ、と。今日しかないというのはチームでも共有したし、自分たちが立ち上がる姿勢を見せなきゃいけないと。それをファン・サポーターも望んでいるのはわかっていたし、現に彼らの姿勢を見ても、このチームが誇るべき存在だと思うので。それが当たり前だと思ってはいけないし、こういう状況でも一緒にいるというのを示してくれているので、そのメッセージを受け取らないといけない、それをピッチで表現しないといけないと試合に入って、結果、足りなかったので。そこは今のチームの力だと思う。勝ちたかったですね」
いまのチームの課題は紛れもなく、2019年以降Jリーグ優勝3回の覇権を支えてきた攻撃力にある。
ここまで8試合での合計4得点は昇格組の横浜FCと並んでJ1リーグ最少。今季はイングランド代表のアシスタントコーチを務めていたスティーブ・ホーランド監督が新たに就任し、昨季のJ1残留チーム中最多の62失点を喫した守備再建に着手したが、失点数はリーグ5位タイの6失点にとどまっている一方、肝心の得点力により大きな悪影響が出ている状況だと言える。
喜田はそうした現状について「まずは圧倒的に得点が足りないのでそこは間違いないと思うし、チャンスの数、そこまで運んでいく回数が足りない」と断言。「選手もそこはわかっているし、そこに対してのアプローチもチームとしてしているけど、結果につながらないもどかしさはある。ただ解決策としてはやり続けるしかないし、追い求め続けるしかない。その手法はちゃんとみんなで考えながら。本来、このチームの良さは得点力だとか、攻め続ける姿勢がマリノスらしさだと思うので、そこは上げなきゃいけないなと思います」と真っ向から課題と向き合う姿勢を見せた。
もっともチームは現在、週2試合ずつの7連戦を戦っており、それが明けても4月下旬からはサウジアラビア集中開催のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)ファイナルステージを控えている状況。戦い方を大きく変えられる準備期間はない。また準々決勝の相手であるFWクリスティアーノ・ロナウドら擁するアルナスルを始め、アジアトップレベルの中東勢との一発勝負を念頭に置くと、ここまで築いてきた守備力が効果を発揮する局面もありそうだ。
そのため、まずは現状の戦い方をベースにしつつ、攻撃面の改善を進めていく作業に地道に向き合うしかない。そうした慎重なバランスを模索する際、やはり鍵となるのは喜田とジャンが復帰したボランチのポジション。喜田は次のように言葉を選びつつ、「融合、いいとこ取りというのは不可能ではない」と強調した。
「やりたいこと、やらなきゃいけないことはもちろんチームとしてたくさんあるけど、チャンスの数がチームとして圧倒的に足りないと思っているので。僕らができることとしては後ろから厚みを持たせることだったり、いつ侵入していくか、どう関わっていくかというところ。そこはボランチの選手がやることが多いけど、僕らでチームを押し上げていかないといけない。最後の局面にも十分に絡んでいけるポジションだと思うので、前にお願いしますじゃなく、最後の局面に効果的に絡んでいくのは自分たちの役割でできること。ただそこだけになってバランスを失うんじゃなくて……というのも同時に必要な役割ではあるので、そこを同時に追い求めながら。それは今までもずっとやってきたので不可能ではないと思っているし、今のやり方のいいところもあると思うので。本当に言葉にするのは簡単だけど、融合、いいとこ取りというのは別に不可能ではないと思うので、それを積み上げ続ける、そして形にしていくことがこのチームの目指すべき姿なのかなと思います」
そのためには「まずは自分たちがやっていることを自分たちが信じてないと、周りは絶対に信じてくれない。自分たち自身が先頭を切って、責任を持って信じてやり抜く姿というものをみて、初めてファン・サポーターだったり、周りの人たちがマリノスを信じることにつながると思う」と喜田。サポーターが掲げた横断幕にも通ずる信念を、この厳しい連戦の中でも貫いていく構えだ。
次の川崎F戦はもう4日後。「物理的に練習に取れる時間、みんなで顔を合わせて練習できる時間はどうしても確実に限られるので、そこをただなんとなく過ごすんじゃなくて、どれだけ危機感を持ってマリノスのためにやれるかが問われる。それを一人一人自覚して、それぞれが勝敗の全ての責任を負うくらいの覚悟が必要だと思う。『いつか勝てる』じゃなくて、もう『次しかないんだ』という思いでやらないと痛い目に遭う。危機感を持ってやっていくしかない」。クラブを背負う者として、ピッチに立つ者として、正念場に挑む。
(取材・文 竹内達也)
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●2025シーズンJリーグ特集
攻撃陣の顔ぶれを入れ替えた横浜F・マリノスだったが、またしてもゴールは遠かった。0-0の引き分けで連敗を2で止めたものの、3試合連続の無得点となり、8戦合計4得点はリーグ最少タイ。この一戦で他クラブとの試合数も揃ったなか、1勝5分4敗の勝ち点7で降格圏18位に沈んだままとなった。
この日は全試合フルタイム出場のFWアンデルソン・ロペスと右サイドハーフ主力のFWヤン・マテウスがアクシデントでメンバーを外れ、FW植中朝日、FW遠野大弥、FW井上健太ら日本人選手が前線で先発出場。負傷明けで名古屋戦に途中出場していたMF喜田拓也が今季初先発を果たし、MFジャン・クルードとともにボランチを担ったが、4試合ぶりの白星には届かなかった。
国際Aマッチウィークの中断明けから始まった7連戦を岡山戦(●0-1)、名古屋戦(●0-2)と2連敗でスタートしたことを踏まえれば、3試合ぶりの勝ち点獲得にはなった。それでも試合後、先発復帰戦をフル出場で終えた主将・喜田は厳しい表情で報道陣の前に立った。
「もちろんいろんな人が支えてくれたのでそこへの感謝はあるけど、自分の復帰どうこうよりはただチームを勝たせたい一心だった。それだけですね」
目指していたのは勝利のみ。日産スタジアムに集まったファン・サポーターからは「己と仲間を信じ抜け」という選手の背中を押す横断幕も出されていた中、引き分けという結果を重く受け止めた。
「まず共有したのは、今日変えるぞ、と。今日しかないというのはチームでも共有したし、自分たちが立ち上がる姿勢を見せなきゃいけないと。それをファン・サポーターも望んでいるのはわかっていたし、現に彼らの姿勢を見ても、このチームが誇るべき存在だと思うので。それが当たり前だと思ってはいけないし、こういう状況でも一緒にいるというのを示してくれているので、そのメッセージを受け取らないといけない、それをピッチで表現しないといけないと試合に入って、結果、足りなかったので。そこは今のチームの力だと思う。勝ちたかったですね」
いまのチームの課題は紛れもなく、2019年以降Jリーグ優勝3回の覇権を支えてきた攻撃力にある。
ここまで8試合での合計4得点は昇格組の横浜FCと並んでJ1リーグ最少。今季はイングランド代表のアシスタントコーチを務めていたスティーブ・ホーランド監督が新たに就任し、昨季のJ1残留チーム中最多の62失点を喫した守備再建に着手したが、失点数はリーグ5位タイの6失点にとどまっている一方、肝心の得点力により大きな悪影響が出ている状況だと言える。
喜田はそうした現状について「まずは圧倒的に得点が足りないのでそこは間違いないと思うし、チャンスの数、そこまで運んでいく回数が足りない」と断言。「選手もそこはわかっているし、そこに対してのアプローチもチームとしてしているけど、結果につながらないもどかしさはある。ただ解決策としてはやり続けるしかないし、追い求め続けるしかない。その手法はちゃんとみんなで考えながら。本来、このチームの良さは得点力だとか、攻め続ける姿勢がマリノスらしさだと思うので、そこは上げなきゃいけないなと思います」と真っ向から課題と向き合う姿勢を見せた。
もっともチームは現在、週2試合ずつの7連戦を戦っており、それが明けても4月下旬からはサウジアラビア集中開催のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)ファイナルステージを控えている状況。戦い方を大きく変えられる準備期間はない。また準々決勝の相手であるFWクリスティアーノ・ロナウドら擁するアルナスルを始め、アジアトップレベルの中東勢との一発勝負を念頭に置くと、ここまで築いてきた守備力が効果を発揮する局面もありそうだ。
そのため、まずは現状の戦い方をベースにしつつ、攻撃面の改善を進めていく作業に地道に向き合うしかない。そうした慎重なバランスを模索する際、やはり鍵となるのは喜田とジャンが復帰したボランチのポジション。喜田は次のように言葉を選びつつ、「融合、いいとこ取りというのは不可能ではない」と強調した。
「やりたいこと、やらなきゃいけないことはもちろんチームとしてたくさんあるけど、チャンスの数がチームとして圧倒的に足りないと思っているので。僕らができることとしては後ろから厚みを持たせることだったり、いつ侵入していくか、どう関わっていくかというところ。そこはボランチの選手がやることが多いけど、僕らでチームを押し上げていかないといけない。最後の局面にも十分に絡んでいけるポジションだと思うので、前にお願いしますじゃなく、最後の局面に効果的に絡んでいくのは自分たちの役割でできること。ただそこだけになってバランスを失うんじゃなくて……というのも同時に必要な役割ではあるので、そこを同時に追い求めながら。それは今までもずっとやってきたので不可能ではないと思っているし、今のやり方のいいところもあると思うので。本当に言葉にするのは簡単だけど、融合、いいとこ取りというのは別に不可能ではないと思うので、それを積み上げ続ける、そして形にしていくことがこのチームの目指すべき姿なのかなと思います」
そのためには「まずは自分たちがやっていることを自分たちが信じてないと、周りは絶対に信じてくれない。自分たち自身が先頭を切って、責任を持って信じてやり抜く姿というものをみて、初めてファン・サポーターだったり、周りの人たちがマリノスを信じることにつながると思う」と喜田。サポーターが掲げた横断幕にも通ずる信念を、この厳しい連戦の中でも貫いていく構えだ。
次の川崎F戦はもう4日後。「物理的に練習に取れる時間、みんなで顔を合わせて練習できる時間はどうしても確実に限られるので、そこをただなんとなく過ごすんじゃなくて、どれだけ危機感を持ってマリノスのためにやれるかが問われる。それを一人一人自覚して、それぞれが勝敗の全ての責任を負うくらいの覚悟が必要だと思う。『いつか勝てる』じゃなくて、もう『次しかないんだ』という思いでやらないと痛い目に遭う。危機感を持ってやっていくしかない」。クラブを背負う者として、ピッチに立つ者として、正念場に挑む。
(取材・文 竹内達也)
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