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徳島に岩尾憲がもたらした“安心感”…劇的逆転勝利、J1自動昇格に望みも「しっかりと兜の緒を締めて」

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MF岩尾憲(最右)

[11.23 J2第37節 大宮 1-2 徳島 NACK]

 J1昇格を懸けたシーズン終盤、その存在感で徳島ヴォルティスに勢いを与えた。MF岩尾憲は開幕前の怪我から前節に待望の復帰。今節も途中出場で2連勝に貢献し、チームはJ1自動昇格に望みをつないだ。増田功作監督は試合後に「神様がそうしてくれたのか、岩尾が、キャプテンが戻ってきたことで、精神的な部分や戦術理解、チームの落ち着きが生まれた」と目を細めた。

 徳島は今節の逆転勝利で2連勝。上位対決で破った大宮との順位を入れ替え、5位から4位に浮上した。最終節の他会場の結果によるところも大きいが、自動昇格圏内の2位・水戸ホーリーホックと勝ち点3差となり、最終節でJ1昇格を決める可能性も残した。

 岩尾は2-1で迎えた後半33分から出場した。意識したのは「したいプレーじゃなくて、必要なプレーをしなきゃいけない」ということ。持ち味である前線へのボール配球を抑えながら、守備面での穴埋めや無理せずパスを戻すことも選択。特に、相手の強力なクロス攻撃を抑えることに注力したという。

 キャプテンがピッチに立つことの価値を、同点ゴールを決めたFW渡大生は強調する。「やっぱり落ち着きと安心感がすごくある。僕は個人的に岩尾選手に対して思いがあるので。そういった意味で岩尾選手が復帰したことは、ストーリーとして完璧。他のことは気にならず、この物語に没入することがすごく綺麗だなと」。J1昇格を目前にするチームにおいて、岩尾の復帰がもたらす意味を説いた。

 岩尾自身は謙虚だ。「個人的には、どんな結果になっても今年一年悔しかったという気持ちしか残らないことはもう確定している」と、申し訳なさも垣間見せる。「そのうえでどうチームとして成果を出すか。自分がそのなかで今のコンディションも含めて、どうやってチームの力になるかを考えながら、自分の体と相談しながらやっている。ここまで本当に永木が紡いでくれた。その思いも含めて、自分のやれることはすべてやりたい」。昨シーズンのキャプテンでもあり、いまは怪我で離脱している同級生・永木亮太に思いを馳せた。

 2022シーズンから2年半を浦和レッズで過ごした。その経験値は、岩尾にとってかけがえのないものであり、徳島にとっても大きな財産だ。そのことを報道陣に問われた岩尾は「おっしゃるとおり。浦和でリラックスできた試合はひとつもないので」と笑いながら力を込める。

「他のチームでもそうだったけど、やっぱりああいうクラブでプレーすることと、あれだけ多くの人たちの前でプレーする責任、そういうことを浦和で経験させてもらって自分が得たものはある。チームに還元しなきゃいけないこと、チームに伝えなきゃいけないこと、そういうことは本当に僕にしか言えないこともあると思う」

 最終節、4位・徳島は首位に立つV・ファーレン長崎との決戦を迎える。長崎に勝利し、2位・水戸ホーリーホックが敗れ、3位・ジェフユナイテッド千葉が引き分け以下に終わると、徳島が大逆転でJ1自動昇格を決めることができる。

 大宮からの劇的勝利も、岩尾には慢心も畏れもない。「次の試合も非常に重要なので、これに満足することなく、しっかりと兜の緒を締めて次に向かいたい」。いつも通り冷静に、徳島のために戦うつもりだ。

(取材・文 石川祐介)

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石川祐介
Text by 石川祐介

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