[MOM4802]G大阪ユースMF大倉慎平(3年)_帰ってきた14番、躍動!5か月近い負傷離脱から大会直前に復帰したアタッカーが意地のダメ押し弾!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.29 クラブユース選手権(U-18)準決勝 名古屋U-18 0-2 G大阪ユース 味の素フィールド西が丘]
5か月近くも試合から遠ざかっていたのだ。解き放つべきエネルギーは溜め過ぎるほどに、溜めまくってきた。ピッチに立てる喜びも、得意のドリブルで相手をかわす爽快感ももちろんだけど、やっぱり自分でゴールを奪って、みんなが駆け寄ってきてくれる瞬間は、何よりも最高だ。
「得点を獲れたことは凄く嬉しいですね。この大会で復帰して、その中でも言い訳せずにチームのためになることをしようと考えてきたので、一番の目標は優勝ですけど、今日は喜びたいと思います」。
この日はジョーカー起用となったガンバ大阪ユース(関西1)のナンバー14。MF大倉慎平(3年=ソレッソ熊本出身)が終盤に叩き出した貴重な追加点が、チームの2年連続となるファイナル進出を力強く引き寄せた。
「前の試合はスタメンで結果を残せずに、今日はベンチからというスタートでしたけど、まずはチームのためにやることを考えていました」。決勝への切符を懸けて、名古屋グランパスU-18(東海1)と激突した一戦。準々決勝はスタメン起用された大倉だったが、この日は先発を外れ、ベンチでキックオフの笛を聞く。
そもそもこのクラブユース選手権は、まさに“復帰明け”の大会だった。2月の終わりに左肩を脱臼して手術を受けたため、そこから5か月近く戦線離脱。チームメイトたちが練習や試合で躍動する傍らで、リハビリに励む日を強いられる。
「メチャメチャキツかったですね。もともとケガがちで、そこは気を付けようと思っていた中でのケガだったので、凄く悔しかったですし、焦りはありました」。ただ、立ち止まっている時間はない。復帰する日を思い描きながら、自分にできることを、淡々と、粛々と、繰り返す。
「まずは自分のレベルアップを考えていましたね。ちょうどユーロもありましたし、『サッカーIQを上げよう』と思って、海外サッカーをメチャメチャ見て、サッカー自体を勉強しました。フィジカルはやり過ぎて、ちょっと身体が重い部分もあるんですけど(笑)」。イメージは十分。あとはそれをピッチの上で表現するだけだ。
実戦復帰は今大会が始まる数日前の練習試合。それでも初戦のヴァンフォーレ甲府U-18戦でスタメンに抜擢されると、相手のミスを突いてゴールまで記録。チームも2-0で勝利を収め、最高に近い形で復活をアピールすることに成功する。
グループステージの残り2試合は途中出場。準々決勝の浦和レッズユース戦は再びスタメンに指名されたものの、思ったようなプレーは出し切れず、後半に途中交代を命じられ、その直後にチームの決勝点が生まれる。勝利した喜びと、自分自身の不甲斐なさを同時に味わいながら、この日の試合を迎えていた。
1点をリードしていた後半16分。アップエリアにいた大倉にベンチから声が掛かる。「『今日は途中からの出場なんだから、オマエが試合を締めてこい』と言われたので、それに応えようと思っていました。それはみんなから言われたんですけど、特に佐野さん(佐野智之アカデミーリードGKコーチ)から言われました(笑)」。ヒーローになるイメージを膨らませて、緑の芝生へと駆け出していく。
後半40+1分。MF森田将光(3年)が裏へ出したスルーパスに、大倉が反応する。「相手も結構疲れていて、背後が凄く空いていましたし、自分も多少はスピードがある方なので、そこは狙っていました」。ボールを収めると、瞬時に次のアイデアがひらめく。
「右足で振っても良かったんですけど、遊び心で1つフェイントを入れて、相手を剥がすことができたので、シュートはファーを狙ったのが詰まってしまって、たまたまGKの脇下に行ってくれましたね」。左足で狙ったシュートはやや当たり損ねたものの、ゴールへと転がり込む。




勝負を決める2点目に、チームメイトたちもすぐさま大倉の元に走り寄ってくる。歓喜の輪が解けたあと、スタンドに向けて掲げたのは、負傷離脱中のFW安藤陸登(3年)が着用している9番のユニフォーム。苦しんできた男の大きな、大きな追加点。ファイナルスコアは2-0。帰ってきた14番が全国の舞台で確かな輝きを放ってみせた。
中学時代は熊本県の強豪チーム、ソレッソ熊本でプレーしていた大倉が、ガンバへと入ることになった背景には、ある“先輩”の存在が小さくない影響を与えているという。「最後までいろいろなところで迷いましたけど、環境も良かったですし、3つ上にガンバに行った坂本一彩さんという先輩がいたので、そこは凄く大きかったと思います。早くあの人に追い付けるように頑張りたいですね」。今季はJ1でも結果を重ねている坂本一彩は憧れでもあり、目標とすべき存在であることは、あえて言うまでもないだろう。
加えて、今季のプレミアリーグWESTで首位を走っている大津高の3年生たちは、小さいころからよく知っている選手も多く、その躍進には注目しているという。「メチャメチャ悔しいですけど、嬉しい気持ちもありますね。小さいころからずっと一緒にやってきた選手が多いので、高体連だったらいつも大津を応援していますし、サニックス杯は自分が行けなかったので、ガンバを応援しながら、大津の選手たちの成長も動画で感じました」。このあたりの言葉にも実直な人間性が垣間見える。
次はいよいよ大会連覇が懸かった決勝戦。ちょうど1年前はスタメンで延長後半まで出場し、日本一を味わっている。今回は先発か、ベンチスタートか、どちらかはわからないけれど、やるべきことはもう十分過ぎるほどわかっている。
「今日も得点したことは嬉しかったですけど、ドリブルで相手を剥がすような自分の形がまだまだ出せていないので、そこは決勝で出せたらいいかなと思います。でも、自分たちは綺麗なサッカーをやろうとするとダメなので、しっかり泥臭く戦って、自分の得点で優勝できたら最高ですね」。
溜めまくってきたエネルギーは、まだまだすべてを出し尽くしてはいない。G大阪ユースのキレキレ系アタッカー。大倉慎平は自分に与えられた場所と時間で、再び日本一の景色を手繰り寄せるため、タイムアップの瞬間までピッチを走り続ける。


(取材・文 土屋雅史)
●第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)特集
[7.29 クラブユース選手権(U-18)準決勝 名古屋U-18 0-2 G大阪ユース 味の素フィールド西が丘]
5か月近くも試合から遠ざかっていたのだ。解き放つべきエネルギーは溜め過ぎるほどに、溜めまくってきた。ピッチに立てる喜びも、得意のドリブルで相手をかわす爽快感ももちろんだけど、やっぱり自分でゴールを奪って、みんなが駆け寄ってきてくれる瞬間は、何よりも最高だ。
「得点を獲れたことは凄く嬉しいですね。この大会で復帰して、その中でも言い訳せずにチームのためになることをしようと考えてきたので、一番の目標は優勝ですけど、今日は喜びたいと思います」。
この日はジョーカー起用となったガンバ大阪ユース(関西1)のナンバー14。MF大倉慎平(3年=ソレッソ熊本出身)が終盤に叩き出した貴重な追加点が、チームの2年連続となるファイナル進出を力強く引き寄せた。
「前の試合はスタメンで結果を残せずに、今日はベンチからというスタートでしたけど、まずはチームのためにやることを考えていました」。決勝への切符を懸けて、名古屋グランパスU-18(東海1)と激突した一戦。準々決勝はスタメン起用された大倉だったが、この日は先発を外れ、ベンチでキックオフの笛を聞く。
そもそもこのクラブユース選手権は、まさに“復帰明け”の大会だった。2月の終わりに左肩を脱臼して手術を受けたため、そこから5か月近く戦線離脱。チームメイトたちが練習や試合で躍動する傍らで、リハビリに励む日を強いられる。
「メチャメチャキツかったですね。もともとケガがちで、そこは気を付けようと思っていた中でのケガだったので、凄く悔しかったですし、焦りはありました」。ただ、立ち止まっている時間はない。復帰する日を思い描きながら、自分にできることを、淡々と、粛々と、繰り返す。
「まずは自分のレベルアップを考えていましたね。ちょうどユーロもありましたし、『サッカーIQを上げよう』と思って、海外サッカーをメチャメチャ見て、サッカー自体を勉強しました。フィジカルはやり過ぎて、ちょっと身体が重い部分もあるんですけど(笑)」。イメージは十分。あとはそれをピッチの上で表現するだけだ。
実戦復帰は今大会が始まる数日前の練習試合。それでも初戦のヴァンフォーレ甲府U-18戦でスタメンに抜擢されると、相手のミスを突いてゴールまで記録。チームも2-0で勝利を収め、最高に近い形で復活をアピールすることに成功する。
グループステージの残り2試合は途中出場。準々決勝の浦和レッズユース戦は再びスタメンに指名されたものの、思ったようなプレーは出し切れず、後半に途中交代を命じられ、その直後にチームの決勝点が生まれる。勝利した喜びと、自分自身の不甲斐なさを同時に味わいながら、この日の試合を迎えていた。
1点をリードしていた後半16分。アップエリアにいた大倉にベンチから声が掛かる。「『今日は途中からの出場なんだから、オマエが試合を締めてこい』と言われたので、それに応えようと思っていました。それはみんなから言われたんですけど、特に佐野さん(佐野智之アカデミーリードGKコーチ)から言われました(笑)」。ヒーローになるイメージを膨らませて、緑の芝生へと駆け出していく。
後半40+1分。MF森田将光(3年)が裏へ出したスルーパスに、大倉が反応する。「相手も結構疲れていて、背後が凄く空いていましたし、自分も多少はスピードがある方なので、そこは狙っていました」。ボールを収めると、瞬時に次のアイデアがひらめく。
「右足で振っても良かったんですけど、遊び心で1つフェイントを入れて、相手を剥がすことができたので、シュートはファーを狙ったのが詰まってしまって、たまたまGKの脇下に行ってくれましたね」。左足で狙ったシュートはやや当たり損ねたものの、ゴールへと転がり込む。




勝負を決める2点目に、チームメイトたちもすぐさま大倉の元に走り寄ってくる。歓喜の輪が解けたあと、スタンドに向けて掲げたのは、負傷離脱中のFW安藤陸登(3年)が着用している9番のユニフォーム。苦しんできた男の大きな、大きな追加点。ファイナルスコアは2-0。帰ってきた14番が全国の舞台で確かな輝きを放ってみせた。
中学時代は熊本県の強豪チーム、ソレッソ熊本でプレーしていた大倉が、ガンバへと入ることになった背景には、ある“先輩”の存在が小さくない影響を与えているという。「最後までいろいろなところで迷いましたけど、環境も良かったですし、3つ上にガンバに行った坂本一彩さんという先輩がいたので、そこは凄く大きかったと思います。早くあの人に追い付けるように頑張りたいですね」。今季はJ1でも結果を重ねている坂本一彩は憧れでもあり、目標とすべき存在であることは、あえて言うまでもないだろう。
加えて、今季のプレミアリーグWESTで首位を走っている大津高の3年生たちは、小さいころからよく知っている選手も多く、その躍進には注目しているという。「メチャメチャ悔しいですけど、嬉しい気持ちもありますね。小さいころからずっと一緒にやってきた選手が多いので、高体連だったらいつも大津を応援していますし、サニックス杯は自分が行けなかったので、ガンバを応援しながら、大津の選手たちの成長も動画で感じました」。このあたりの言葉にも実直な人間性が垣間見える。
次はいよいよ大会連覇が懸かった決勝戦。ちょうど1年前はスタメンで延長後半まで出場し、日本一を味わっている。今回は先発か、ベンチスタートか、どちらかはわからないけれど、やるべきことはもう十分過ぎるほどわかっている。
「今日も得点したことは嬉しかったですけど、ドリブルで相手を剥がすような自分の形がまだまだ出せていないので、そこは決勝で出せたらいいかなと思います。でも、自分たちは綺麗なサッカーをやろうとするとダメなので、しっかり泥臭く戦って、自分の得点で優勝できたら最高ですね」。
溜めまくってきたエネルギーは、まだまだすべてを出し尽くしてはいない。G大阪ユースのキレキレ系アタッカー。大倉慎平は自分に与えられた場所と時間で、再び日本一の景色を手繰り寄せるため、タイムアップの瞬間までピッチを走り続ける。


(取材・文 土屋雅史)
●第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)特集