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高校サッカーの名将たちが受け継いできた“教え”…町田・黒田剛監督が明かす、天皇杯優勝を左右した“魔物”の正体

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町田にタイトルをもたらした黒田剛監督

[11.22 天皇杯決勝 町田 3-1 神戸 国立]

 就任3年目で、FC町田ゼルビアに初の主要タイトルをもたらした。天皇杯を制した黒田剛監督は「FC町田ゼルビアとして、今シーズン何かひとつタイトルを取ろうということでスタートした。名誉ある大会で金メダルを獲得し、来年のACL2の出場権も獲得できた。本当に絵に描いたようなストーリーを、最後に選手たちが自分たちの力で手繰り寄せたことに、心から感謝と、敬意を表したい」と思いを語った。

 町田は前半6分にFW藤尾翔太が先制点を挙げ、試合を優位に運んだ。同32分にはFW相馬勇紀が追加点。後半11分には藤尾がダメを押す。その後は1点を返されたが、3-1で逃げ切り、初の主要タイトルを手にした。

 高校サッカーの険しいトーナメントで、頂まで勝ち上がってきた。青森山田高の指揮官として、黒田監督は高校サッカーで一時代を築く。2009年度には旧国立競技場で準優勝と苦杯。16年度には埼玉スタジアム2002で悲願の初優勝を果たし、18年度には2度目の戴冠。21年度の優勝では初めて新国立で歓喜を味わった。

 全国約3800校の頂点を争う戦いで学んできたことがある。それはトーナメントの頂上決戦にある“魔の時間帯”前半15分で試合が動くということ。旧国立、埼スタ、新国立の戦いを、黒田監督は振り返りながら、前半15分間の戦い方を説いた。

「高校サッカー時代に、幾度となく国立や埼玉スタジアムでファイナルという重圧のかかったゲームを何試合もやってきた。そのなかで感じたことを、選手たちに伝えてきた」

「まずは前半15分までには必ず得点が動くと。これはPKを取られるのか、FKが入るのか。または単純なミスからロストして1点を取られるのか。本当にイメージしなかったものが、15分以内に必ず一回は起きるという話はした。それが、開始6分のゴールにつながった」

「この15分というのは、たとえば帝京の古沼(貞雄)先生や亡くなられた国見の小嶺(忠敏)先生たち、本当に長い高校サッカーのなかで、私がお世話になった先人の方々がこの国立の魔物についてよく語られていたこと。負けた試合も含めて、多くの試合でこの15分までに予期していない失点を繰り返して、その1点が最終的に重くのしかかり、0-1で負けたゲームもあった」

「この15分の入り方によって、この国立というのは恐ろしいくらいに結果が左右してくる。終わってみればあっけない失点で優勝が決まる。それくらいシンプルだけど、そのシンプルな状況を表現することができないのが、この決勝という舞台。その根拠はないかもしれないけど、経験のなかで私が培ってきたもの。30年高校サッカーでやってきたなかで伝えられてきたことを、試合前には特に強く伝えてきた。それがまさに6分のシュートだった」

 Jクラブを率いる指揮官として、3年間で一歩ずつ歩んできた。2023シーズンの就任初年度でJ2優勝、J1初昇格。翌24シーズンには初挑戦のJ1リーグで優勝争いの末に3位。そして、今シーズンは天皇杯でクラブ初の主要タイトルを手にした。

 黒田監督は「この3年間、日々不安と戦いながら、恐怖と戦いながら、タイトルに辿り着けるのかどうか自問自答しながら進んできた」と思いを語る。「正解がないスポーツのなかで、われわれが志向しているものがいろんな意味で批判の対象となったり、やっている選手、その他のスタッフがすごく嫌な思いをしたことも多くあった」。それは、チームの戦い方が相手に脅威を与えたことの証左と強調する。

「われわれがやってきたこと、勝利に向けて突き詰めてきたことは間違いではなかった。何を言われても、やり抜いてくれた選手もすばらしい」。指揮官が何度も繰り返したのは、選手たちへの称賛。自らの教えを遂行した選手たちの戦いぶりに目を細めていた。

(取材・文 石川祐介)

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石川祐介
Text by 石川祐介

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