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地元でのアジア杯へ、谷口彰悟が語った“強者の心得”「変なプライドにならないようにだけは気をつけたい」

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日本代表DF谷口彰悟(アルラーヤン)

 カタールW杯期間中の移籍発表から1年余り、日本代表DF谷口彰悟(アルラーヤン)は“地元”でのアジアカップに臨む。グループリーグ初戦・ベトナム戦を翌日に控えた14日、報道陣の取材に応じた谷口は「気候の感じ、練習場やスタジアムとの距離感、ある程度わかっていることが多いので、そういった意味ではやりやすいのかな」と笑みを浮かべつつも、まずはアジア王座奪還への強い思いを口にした。

「いまは代表チームとして来ているので、もう一回気を引き締め直して。アジアカップで優勝するために来ているので、もう一つギアを上げて、スイッチを入れて準備できているかなと思います」

 今回のアジア杯メンバーはカタールW杯メンバーが15人を占め、育成年代でアジアの舞台を経験してきた選手も多いため、中東の環境への適応には問題ない様子。この日の取材では谷口が「(他の選手に助言すべきことは)今のところはそんなにないかもしれない」と話したタイミングで、礼拝の時間を告げるアザーンがちょうど鳴り響き、「『こういうのって何時に流れるの?』とかそういうのは聞かれたりはしますけど(笑)」と苦笑いも浮かべたが、谷口は「気候のことも含め、みんなスムーズに順応できているかなと思います」と周囲への信頼を口にしていた。

 それでも今大会の谷口には「カタールを知っている」こと以上に大きな役割が託されることになりそうだ。

 ジャイアントキリングを目指して臨んだ1年前のW杯とは違い、アジア杯は日本が絶対的な優勝候補と目されている中での大会。谷口自身も「もちろん優勝しか考えていない。優勝以外では評価されないだろうと思っている。僕らの目標はW杯で頂点に立つということで、目標から逆算して考えるとアジアは絶対的に勝ち取りたい」と意気込むが、それと同時にチームの雰囲気には常に敏感であろうとしているという。

「ただ、それが変なプライドにならないようにだけは気をつけたい。もちろん自分たちの志は高いけど、いま戦っているのはアジアカップなわけで、目の前の1試合1試合をしっかり戦っていかないことには優勝はできない。目指している目標はもちろん高いけど、試合展開によってはボールを握られることもあるだろうし、劣勢になる時もあるだろうし、そういった時に変に自分たちのプライドで、自分たちのゲームじゃなくなるというのはやってはいけない。どんな試合も謙虚にスタートからやっていければ」

 そうした”強者の心得”は、黄金時代を築いた川崎フロンターレで培われたものだ。川崎Fでは数々のタイトルを獲得することで、大きな期待を受け続けることのありがたみを十分に感じてきた谷口。しかし、その高い評価がチーム内の油断につながらないよう、引き締めることも忘れなかった。

「勝って当たり前というか、そういうふうに期待されたり、見られるのはチームとして素晴らしいことだし、期待にどんどん応えていきたいし、その期待値がどんどん上がれば上がるほどサッカーの注目度が変わってくると思うのでそれは大いにウェルカム。でも、それで自分たちが油断をしたり、変なプライドが邪魔をするようなことだけはやってはいけない。とにかく目の前の1試合1試合、謙虚に戦っていきたいと思います」

 今大会で優勝するためには、大会期間1か月以上の長丁場になる。その中では疲労の蓄積、アクシデントの発生、コンディション調整の難しさなど、思いどおりのパフォーマンスを発揮できなくなる要因も数多く生じてくるだろう。その中で谷口が強調するのは「準備」の重要性だ。

「僕は準備が全てかなと常に思っている。1か月というのは結構長いですし、試合が始まってくれば結構あっという間に過ぎるのかなというのもあるけど、ここから試合に出る人、出ない人、出場時間が長い人、短い人、本当に出てほしくないですけど、怪我人が出る可能性だってあるし、累積警告など、いろいろなことが起こると思っている」

「本当に全員が全員、いい準備をしておかないとチームの力にならない。一番それをすべきは自分だと思うので、そういう意味ではとにかく準備を徹底してやる。自分の出番に備えて準備するのは非常に大事だし、簡単なことではないけど、それをやっていかないといけないという意味では、そういうところも率先してやれればと思う。そういうのを周りの選手たち、若い選手もいますし、そういった選手に声かけをしながらそういう空気感でやっていければと思っています」

 史上初の国際Aマッチ9連勝と勢いに乗り、前途洋々にも思える森保ジャパン。それでも目の前に立ちはだかっているのは過去何度も苦戦を繰り広げたアジア杯。油断や慢心があって戦い抜ける舞台ではない。32歳、チーム最年長となった谷口はあらゆる想定を欠かさず、3大会ぶりのアジア王座奪還に挑んでいくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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