beacon

「自分がもしあそこにいたら…」森保Jのブラジル撃破に希望抱いた中山雄太、CB+ボランチで大車輪の働き「最近は後ろで力が有り余っているので」

ポスト
Xに投稿
Facebookでシェア
Facebookでシェア
URLをコピー
URLをコピー
URLをコピーしました

DF中山雄太

[10.18 J1第34節 町田 0-0 福岡 Gスタ]

 前節の敗戦で優勝争いから遠ざかったFC町田ゼルビアと、前節の勝利で残留争いから抜け出したアビスパ福岡による一戦。互いに難しい位置付けながら、ともに10月シリーズの日本代表選手を擁し、森保一監督が現地で視察を行ったなかで注目を集める試合となったが、結果は見どころの少ないスコアレスドローに終わった。

 そのなかでも大きな存在感を放ったのが町田のDF中山雄太だった。最近は夏場の公式戦11連勝の後半を牽引したボランチから左CBにポジションを移しているなか、この日はボール保持時に中盤まで積極的に顔を出し、停滞しがちなビルドアップを牽引。守備時は負傷者が相次ぐ最終ラインを支える仕事も全うしつつ、攻撃の迫力を出すようなチャレンジを行っていた。

 新たな役割について、中山は次のように意図を語った。

「最近は後ろをやっていて力がちょっと有り余っているので(苦笑)、周りの選手が状況によって自分が欲を出して中に入っていくシーンを今日はちょっと増やした。福岡の攻撃の時間があまりないのを感じたし、あまり脅威じゃないと思ったので、自分が多少欲張っても大丈夫かなと思った」(中山)

 そのトライの背景には「ファイナルサードから、ファイナルサードに入るクオリティーがここ数試合足りていない。それが今の町田の結果の起因となっている」という課題感がある。中山がボランチから外れて以降チームは1勝2分2敗。ボランチのMF下田北斗やMF前寛之と入れ替わるポジショニングで中盤の組み立てに関わることで、苦境脱却を試みているようだ。

「自分としてもボランチが今のチームには一番合っていると思う。得点と守備、チームを動かすなかでもボランチからが一番動かしやすいのもある。ただケガ人とチーム状況の中で与えられたポジションでやるしかない。今日はゼロで抑えられたことは良かった。結果だけで見たら失点はあるけど、ゲームの中での失点の匂いは消えてきているので、それは継続しつつ、チームとして得点の機会と枠内シュート率を上げていかないといけないと思う」

 この日も課題は解決できず、「何度か縦パスやファイナルサードへのパスは入れられたけど、逆にそれ以降のクオリティー。みんなが慌てたり、周りが見えないシーンがすごく多いので、そこは練習からやっていかないといけない」と振り返るしかなかった中山。ただ、最終ラインではクロスに絞ってピンチを阻む場面も見られるなど、守備面での貢献は大きく、限られた時間内で攻撃にも大きな役目を果たした印象だ。

 イングランド帰りの高い守備強度とキャプテンシーを買われ、J1優勝を目指すべく昨夏町田にやってきた中山。2年目のシーズンも優勝争いからはやや遠ざかってしまったが、最後まで気持ちを緩めるつもりはない。

「僕は試合中でも成長できると思っている。一つ一つのプレーに結果論だけでなく、要求するところは要求するようにしている。そこをこだわれるか、こだわれないかが今の結果にすごく結びついている。結果が出るかは分からないけど、そこを目指してやって、出た時の成功体験を一人一人が積み上げられればと思う」

 今季の町田には残り4試合となったJ1リーグ戦だけでなく、初挑戦のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)、初の準決勝進出を果たした天皇杯という大事な戦いが残されている。中山は3日後に敵地・上海で上海海港とのACLEリーグステージ第3節を控えるなか、次のように意気込みを語った。

「(ACLEは2試合連続ドローで)勝ち点がまだ1、1しか積めていない。リーグ戦とは種類は変わるけど、同じ試合を重ねていくというところではそこが積み上げ切れてないことで今の結果にじわじわときている。大事な試合を落としていることで優勝争いから逸れていっているのが今の現状で、受け止めなければいけない。現状を打破する努力をし続けるか、し続けられないか、意識のレベルを上げ続けられるか、上げ続けられないかが大事。次の一戦は今日の反省もそうだけど、一朝一夕にバッと変わるわけではないけど、勝利とともに手応えを重ねながら帰ってきて、(J1次節の)浦和戦にもつなげられるような一戦にしたい。そのACLの一戦が残りのJリーグ、ACL、天皇杯につながるんじゃないかと思う」

 この一戦を前に行われた国際Aマッチウィークでは、W杯出場権を獲得した3月シリーズ以来の復帰を目指す日本代表からも大きな刺激も受けていた。

 日本代表は今月14日、キリンチャレンジカップ・ブラジル戦に3-2で勝利し、W杯最多5回の優勝を誇るサッカー王国から通算14試合目で初勝利を挙げた。その試合では中山と同じポジションを主戦場とする左CBの鈴木淳之介がハイパフォーマンスを発揮。A代表キャップ3試合目にして大きく評価を高めていた。

 もっとも鈴木が評価を高めた積極的な迎撃守備と的確な配球は中山も得意としているプレー。ポジション争いに挑む“当事者”としては複雑な思いもあるかと思われた。だが、中山自身は招集外という立場のブラジル戦を見ながら、ある種の希望を抱いていたという。

「逆に言えばブラジルにやれていてくれたおかげで、自分も逆にブラジルともやれるんだなというイメージが湧いた。あれがボロボロにやられたりしたら、自分としても行っていないがゆえにキツかったと思う。でも勝てるんだったら、自分が行ってもできるだろうと思った。あとはチャンスが来るか来ないかは分からないけど、呼ばれるべきパフォーマンスをずっと出し続けたい。次のシリーズに呼ばれなくても、また代表に必要なピースになれるように、まずは自チームで結果を出したいし、今日の試合のように自分がいまやれることを最大限パフォーマンスで出していくのが大事かなと思う」

 そんな中山は鈴木についても「良い選手じゃないですか」と素直な称賛を口にした。10日のパラグアイ戦、14日のブラジル戦と2失点が続いていることもあり、チームの戦いには「淳之介くんだけじゃなく最終ラインは失点が重なっているのでみんなそこは良しとはしていないと思う」と冷静な分析をしながらも、ピッチ内で戦う選手たちにリスペクトを持っている様子だった。

 外から見ている立場への複雑な思いは、ピッチの中で発散していくしかないといったところだろう。「行っている選手の苦しさ、難しさは分かっているので外野がどうだとか言うつもりはない。自分がもしあそこにいたら、もっと良くできたんじゃないかというところは思いながら、それにふさわしいようなパフォーマンスを出していきたいなと思います」(中山)。8か月後に迫るW杯へ。目の前の一戦一戦を無為に過ごすつもりはない。

(取材・文 竹内達也)

●2025シーズンJリーグ特集
▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中

「ゲキサカ」ショート動画

TOP