明治大に帰ってきた守護神上林豪、大切にするいつものグローブとともに
[9.9 総理大臣杯準々決勝 明治大0-2阪南大 いわぎんB]
5年ぶりの夏の王座奪還を目指した明治大(関東1)だが、ベスト8で敗退が決まった。阪南大(関西6)と対峙した準々決勝は、立ち上がりから主導権を握られる苦しい展開。今季の公式戦黒星は天皇杯1回戦の筑波大戦しかなかったが、手痛い2敗目がここになってしまった。
守護神が帰ってきた。昨年度の大学選手権(インカレ)でベストGKにも選ばれたGK上林豪(4年=C大阪U-18/C大阪内定)は、最終学年の今季も中心選手としての活躍が期待された。しかしシーズン前に肩を負傷。そしてもともと脱臼癖があったことから、将来を考えて思い切ってメスを入れることに決めた。
「やってしまったのがシーズンインのタイミングで、自分としてはプレーできたので迷った部分もあったんですけど、監督にも相談する中で、そういったこと(プロ入り前にしっかりと治すこと)も考えてお話を貰った。チームでの立場もあったので、あまり離脱はしたくなかったんですけど、監督のお言葉もあって決断に至りました」
たださすがは上林が「間違いなく日本一のGKグループ」と話す明治大の選手層。1学年下のGK藤井陽登(3年=矢板中央高)が急成長。総理大臣杯予選のアミノバイタルカップではGK韮澤廉(4年=青森山田高)が大車輪の活躍をみせるなど、GK濱崎知康(1年=川崎F U-18)も含めた仲間たちが上林の穴を感じさせないプレーを続けた。栗田大輔監督も「(上林が戻ってきても)出れるか分からないですけどね」と話したほどだった。
しかし上林自身は焦らずしっかりとリハビリをこなし、そしてチームのためにできることを献身的にこなした。前半戦のリーグの戦いなどでは、応援席の一番前で味方を鼓舞する印象的な場面も多々みられた。「自分を客観的に振り返れる時間だったなと感じています。改めて自分のストロングが何で、ウイークが何かを振り返ることができた。頭の部分も筋力的な部分も含めて、自分が成長できる時間だったと感じています」。
そして今月4日の1回戦・富士大戦に先発出場。昨年末のインカレ決勝以来となった公式戦出場を無失点で飾った。「肩はもうほとんど気にならないくらいに回復している。あとはもっとシュートストップだったり能力を上げていかないといけない。そこの問題だと思います」。今季出場2戦目で喫した黒星を糧にすることを誓う。
大切にしているグローブ、腕もとに『J.H.KIM』と刺繡の入ったグローブをつけて、いつも試合に臨んでいる。C大阪ユース時代に当時トップに在籍したGKから大量に提供を受けたもののひとつで、その中でGKキム・ジンヒョンから貰ったものを必ず試合で使うようにしているのだという。
通常、GKが試合で使うグローブは、3、4か月で交換となる。キャッチング技術で多少の誤差はあるが、ボールとの摩擦の連続でパーム(表面)が削れて劣化する。それ以外にも洗浄など管理が難しく、プロ選手の中には毎試合新しいグローブを使う選手もいる。
キム・ジンヒョンから貰ったのは8双ほどだったというが、それでも4年間、試合だけとはいえ使い続けることは簡単なことではない。「いろんな選手から何十双といただきました。でも試合の時はジンさんのと決めている。憧れでもあり、自分が越していかないといけない存在でもある中で、意識してという感じです」。試合で苦しいときはいつも手元をみて、自らを奮い立たせてきた。
出遅れた分は必ず取り戻す。総理大臣杯は8強で敗退となった明治大だが、関東大学リーグ1部の戦いは、1試合未消化ながら首位と勝ち点1差の2位と好位置につけている。「まずはインカレの出場権。とにかく目の前の一戦一戦に集中することが大事だと思います」。頼れる大黒柱の復帰は、2年ぶりのリーグタイトル奪還に向けたチームの勢いを加速させてくれるはずだ。
(取材・文 児玉幸洋)
●第48回総理大臣杯全日本大学トーナメント特集
5年ぶりの夏の王座奪還を目指した明治大(関東1)だが、ベスト8で敗退が決まった。阪南大(関西6)と対峙した準々決勝は、立ち上がりから主導権を握られる苦しい展開。今季の公式戦黒星は天皇杯1回戦の筑波大戦しかなかったが、手痛い2敗目がここになってしまった。
守護神が帰ってきた。昨年度の大学選手権(インカレ)でベストGKにも選ばれたGK上林豪(4年=C大阪U-18/C大阪内定)は、最終学年の今季も中心選手としての活躍が期待された。しかしシーズン前に肩を負傷。そしてもともと脱臼癖があったことから、将来を考えて思い切ってメスを入れることに決めた。
「やってしまったのがシーズンインのタイミングで、自分としてはプレーできたので迷った部分もあったんですけど、監督にも相談する中で、そういったこと(プロ入り前にしっかりと治すこと)も考えてお話を貰った。チームでの立場もあったので、あまり離脱はしたくなかったんですけど、監督のお言葉もあって決断に至りました」
たださすがは上林が「間違いなく日本一のGKグループ」と話す明治大の選手層。1学年下のGK藤井陽登(3年=矢板中央高)が急成長。総理大臣杯予選のアミノバイタルカップではGK韮澤廉(4年=青森山田高)が大車輪の活躍をみせるなど、GK濱崎知康(1年=川崎F U-18)も含めた仲間たちが上林の穴を感じさせないプレーを続けた。栗田大輔監督も「(上林が戻ってきても)出れるか分からないですけどね」と話したほどだった。
しかし上林自身は焦らずしっかりとリハビリをこなし、そしてチームのためにできることを献身的にこなした。前半戦のリーグの戦いなどでは、応援席の一番前で味方を鼓舞する印象的な場面も多々みられた。「自分を客観的に振り返れる時間だったなと感じています。改めて自分のストロングが何で、ウイークが何かを振り返ることができた。頭の部分も筋力的な部分も含めて、自分が成長できる時間だったと感じています」。
そして今月4日の1回戦・富士大戦に先発出場。昨年末のインカレ決勝以来となった公式戦出場を無失点で飾った。「肩はもうほとんど気にならないくらいに回復している。あとはもっとシュートストップだったり能力を上げていかないといけない。そこの問題だと思います」。今季出場2戦目で喫した黒星を糧にすることを誓う。
大切にしているグローブ、腕もとに『J.H.KIM』と刺繡の入ったグローブをつけて、いつも試合に臨んでいる。C大阪ユース時代に当時トップに在籍したGKから大量に提供を受けたもののひとつで、その中でGKキム・ジンヒョンから貰ったものを必ず試合で使うようにしているのだという。
通常、GKが試合で使うグローブは、3、4か月で交換となる。キャッチング技術で多少の誤差はあるが、ボールとの摩擦の連続でパーム(表面)が削れて劣化する。それ以外にも洗浄など管理が難しく、プロ選手の中には毎試合新しいグローブを使う選手もいる。
キム・ジンヒョンから貰ったのは8双ほどだったというが、それでも4年間、試合だけとはいえ使い続けることは簡単なことではない。「いろんな選手から何十双といただきました。でも試合の時はジンさんのと決めている。憧れでもあり、自分が越していかないといけない存在でもある中で、意識してという感じです」。試合で苦しいときはいつも手元をみて、自らを奮い立たせてきた。
出遅れた分は必ず取り戻す。総理大臣杯は8強で敗退となった明治大だが、関東大学リーグ1部の戦いは、1試合未消化ながら首位と勝ち点1差の2位と好位置につけている。「まずはインカレの出場権。とにかく目の前の一戦一戦に集中することが大事だと思います」。頼れる大黒柱の復帰は、2年ぶりのリーグタイトル奪還に向けたチームの勢いを加速させてくれるはずだ。
(取材・文 児玉幸洋)
●第48回総理大臣杯全日本大学トーナメント特集