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[デンチャレ]「スーパー!」連発の圧倒的ムードメーカー。U-20全日本選抜GK上林豪が仲間に与えるポジティブな勇気

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U-20全日本選抜の圧倒的ムードメーカー、GK上林豪(明治大2年=C大阪U-18)

[3.1 デンチャレ グループA U-20全日本選抜 2-0 東北選抜 ひたちなか市総合運動公園]

『素晴らしい!スーパーだ!』『ナイスプレー!スーパー!』。12番を背負った守護神のポジティブな声が、ピッチ上に染み渡っていく。さまざまなバックグラウンドからタレントが集まって来たこのチームにとって、その存在が仲間にもたらす勇気と元気は、測り知れない。

「仲間を鼓舞しながらチームに勢いを持たせるという意味で、『自分の声が大事かな』というふうに思っていたので、そういうところは意識してやっていました。自分はこのチームでムードメーカーの役割も担っている立場にありますから(笑)」。

 前日の小さくないショックを引きずらず、きっちり快勝を収めたU-20全日本選抜の守護神にして、圧倒的ムードメーカー。GK上林豪(明治大2年=C大阪U-18)の発するエネルギー、まさにスーパー。

 衝撃的な敗戦だった。デンソーカップ初戦。U-20全日本選抜は関西選抜に0-4というスコアで大敗を喫してしまう。「昨日も自分がスタメンではなかった中でも、『ベンチから一番声を出してやろう』と思っていました」という上林は、仲間の不甲斐ない戦いぶりがとにかく悔しかった。

 熱血GKはアクションを起こす。「だいぶみんなも落ち込んでいた中で、豪がみんなに熱い想いを伝えて、『このままじゃいけないよね』と気持ちを切り替えるきっかけを与えてくれたのかなって思います」と明かすのはMF角昂志郎(筑波大2年=FC東京U-18)。このチームで戦う意味を全員で再確認して、この日の一戦に向かっていく。

 言い出したからには、誰よりも自分がやらなきゃいけない。スタートから東北選抜戦のピッチに解き放たれた上林は、チームメイトにとにかく声を掛け続ける。「昨日と最終ラインの選手はガラッと変わりましたけど、今日出た全員でしっかり後ろから声を出して、チームを鼓舞しながらやろうという話はしていたので、自分のプレーとチームに対する影響力の部分は良かったかなと思います」。

 とりわけDF桒田大誠(中京大2年=暁星国際高)とDF福井啓太(筑波大2年=大宮U18)のCBコンビと構成するトライアングルの安定感は、即席チームと思えないほど。

「大誠はヘディングが強かったですし、啓太はアラートで対人も強くて、その2人の貢献度がとにかく大きかったですね。東北は縦に速い攻撃が特徴だということはスカウティングでもあったので、背後の予測は自分も持ちながら、CBの2人とコミュニケーションを取りながらできたと思います」。

 そう語った上林が発しまくっていたのが「スーパー!」というフレーズ。シュートブロックにも、スライディングでの危機回避にも、それこそシンプルなクリアにも、味方の良いプレーには欠かさずと言っていいほど「スーパー!」を認定していく。

 それを指摘された本人は「ああ、明治でも結構言っているかもしれないです。チームメイトの岡哲平がよく言うんですけど、それがちょっと“伝染った”かもしれないですね(笑)」とのこと。今シーズンの明治大の試合では、『スーパー!祭り』が繰り広げられるかもしれない。

 もちろんもともとの性格もあるとは言え、選抜チームだからこそ、自覚的に振る舞っている部分は間違いなくあるようだ。「明治ではここまで振り切ったキャラではないんですけど(笑)、こういう違う大学の選手が即席でパッと集められたチームだったら、そういう存在も絶対に必要だなと思いますし、このチームは関東の選手が多くて、もともとそういうタイプの選手がいないかなということと、僕は関西人ということもあるので、そういうところでも一役買うことも意識してやっています」。チームメイトとのコミュニケーションを見ても、この男の周りには常に笑顔が生まれていく。

 そんな上林は、昨シーズンのある試合がさらなる成長のきっかけになったという。「一番自分が成長したなと思うのは、試合に出られなかった時の立ち振る舞いで、去年のリーグ戦で拓殖大学のアウェイで4-5で負けたんですけど、5失点した次の試合で自分はベンチ外になったんです。その時に自分の心の中で悔しい想いを持ちつつも、そういうことを表には出さずに、チームのためにやるべきことができたことで、その後もそういう振る舞いができるようになりましたし、そこは本当に成長したかなと思います」。

 3年生になる今季は、この先の進路を考える上でも大事なシーズン。常勝軍団に身を置く立場として、既にしっかりと自身の為すべきことをイメージしている。「今年は上級生になることで、より責任感は生まれますし、去年も多くの試合に出させていただいた中で、今年はリーグ戦ですべての試合に出場して、チームを優勝に導きたいです。明治は日々熾烈な競争の中で戦っていくので、自分がどんな状況になっても、チームのためにという気持ちを忘れずに、その上で自分が試合に出るという野心を持って、絶対的な存在感のある立ち位置を築いていきたいなと思っています」。

 きっと明日のピッチにも「スーパー!」という声が響き渡っているはずだ。試合に出ていても、出ていなくても、生粋の、それでいて自覚的なムードメーカーを担っている上林の声は、明日も、明後日も、その先も、彼のいる場所からみんなの心へ、常にポジティブに染み渡っていく。

(取材・文 土屋雅史)
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