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4ゴールを集めた「奇跡の15分間」で手繰り寄せたGS突破!川崎F U-18は鳥栖U-18との決戦を制してベスト8進出!

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川崎フロンターレU-18は15分間に4ゴールを集めて堂々のグループステージ突破!

[7.25 クラブユース選手権(U-18)GL第3節 川崎F U-18 4-0 鳥栖U-18 ロード宮城総合運動場 陸上競技場]

 刻々と変わるグループステージ突破の条件。勝利するのはもちろん、必要な得点数もどんどん増えていく中で、一度スイッチが入った若き水色の戦士たちは、もう止まらない。前へ、前へ。ゴールへ、ゴールへ。一気呵成。疾風怒濤。まるで嵐のように攻めまくった試合が終わった時、彼らは自分たちが次の試合を戦う権利を、逞しく手にしたことに気付く。

「こんな勝ち方は初めてです。選手たちは私が思っている以上にできますし、こういう試合を見せてもらって、彼らの“のびしろ”を私自身が止めてはいけないなと思いましたね。彼らはもっとできると、今日のゲームを見て、改めて思いました」(川崎フロンターレU-18・長橋康弘監督)

 わずか15分間で奪った4ゴールが手繰り寄せた奇跡。第48回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会は25日にグループステージ3日目が行われ、ロード宮城総合運動場 陸上競技場でグループBの川崎フロンターレU-18(関東4)とサガン鳥栖U-18(九州4)が激突した一戦は、試合終盤に得点を重ねた川崎F U-18が4-0で快勝。勝ち点で並んだヴィッセル神戸U-18(関西2)を得失点差で上回り、準々決勝進出を決めている。


 天候不順の影響で、当初の予定からスケジュールも含めて、いくつかの変更を余儀なくされた今大会の群馬ラウンド。グループBも22日に開催されるはずだった初戦が中止となったことで、その試合は本来休息日だった24日にスライド。23日、24日、25日と3連戦を強いられることになる。

 グループ自体は2試合を終えた段階で、4チームが勝ち点3で並ぶ大混戦。1位・鳥栖U-18(得失点差+1、総得点4)、2位・神戸U-18(得失点差0、総得点3)、3位・川崎F U-18(得失点差0、総得点2)、4位・ブラウブリッツ秋田U-18(東北2/得失点差-1、総得点2)のすべてが突破の可能性を有した形で、この日を迎えていた。

 一昨シーズンはプレミアリーグファイナルでも激突した川崎F U-18と鳥栖U-18のビッグマッチ。「今日は試合前から『他会場の結果もあると思うけど、まずは自分たちの目の前の試合に集中しよう』ということと、『得点を獲れるだけ獲る』という想いはみんなの中にありました」と川崎F U-18のキャプテンを務めるDF土屋櫂大(3年)が話したように、どちらのチームも『できるだけ多く得点を奪って勝つ』という前提を携えて、キックオフの笛を聞く。


 前半は双方の負けたくない気持ちが表出したような、やや静かな展開に。8分は川崎F U-18。左からDF柴田翔太郎(3年)が蹴ったCKに、ニアで合わせたFW恩田裕太郎(2年)のヘディングは枠の左へ。16分も川崎F U-18。DF関德晴(2年)の左クロスから、MF加治佐海(3年)が放ったシュートはDFをかすめてゴール左へ。31分は鳥栖U-18。DF古舘宗也(3年)の左クロスにDF池末徹平(3年)が競り勝ち、飛び込んだMF古賀稜麻(2年)のヘディングはクロスバーを越える。最初の35分間はスコアレスで推移した。

 後半はどちらも積極的に交代カードを切り合いながら、まずは最初の1点を探り合う中で、攻撃の時間が長かったのは川崎F U-18。「点を獲り急がず、まず1点、まず1点とみんなで1つの方向に向かっていました」と口にしたのは土屋だが、16分にMF矢越幹都(3年)が、17分に恩田が、18分に途中出場のFW香取武(3年)が続けて掴んだチャンスはいずれも枠外。0-0のまま、後半の飲水タイムを迎えることになる。

「飲水タイムの時に、向こうの結果が2-0だということは聞いて、『ここから巻き返すぞ』という空気がチーム全体に流れていましたね」と明かしたのは恩田。もう1つの会場では神戸U-18が2-0でリードしており、この時点で鳥栖U-18は2点差以上での勝利が、川崎F U-18は3点差以上での勝利が求められていた。

 奇跡へと繋がる扉をノックしたのは、今季の守備陣を支え続ける2年生センターバックだ。24分。柴田が丁寧に蹴り込んだ右CKに、飛び込んだDF林駿佑(2年)が放ったシュートは、ゴールネットへと到達する。1-0。

 さらなる希望の灯をともしたのは、交代で入った2年生コンビだ。25分。こちらも途中投入されたMF八田秀斗(3年)が左へ大きく展開すると、MF平内一聖(2年)が右足でニアへ送り込んだクロスを、MF平塚隼人(2年)は頭でゴールへ叩き込む。2-0。

 チームメイトに狂喜を連れてきたのは、悩める3年生ストライカーだ。32分。ボランチのMF楠田遥希(2年)のパスから左サイドを抜け出した恩田は、少し運んで中へ。「『自分が流れを変えてやる』という気持ちで入りました」という香取が左足で打ち込んだシュートが、鮮やかにゴールネットを揺らす。3-0。

 大トリを飾ったのは、2戦連発と好調を続けていた2年生ストライカーだ。35+4分。柴田が大きく蹴り出したボールを巧みに収めた恩田は、「あまり自分は左足に自信はないんですけど、監督からも『打っていけ』という言葉があったので、『左足でも振ってやろう』と」左足一閃。ボールは凄まじい軌道を描いて、ゴールネットへ突き刺さる。4-0。

 タイムアップのホイッスルが、群馬の漆黒の空へ吸い込まれる。神戸U-18は3-0で勝利したため、川崎F U-18と神戸U-18は勝ち点6で並んだものの、得失点差でわずか1点だけ上回った前者のグループステージ突破が決定。それを知った水色の選手たちは、弾けるように歓喜を爆発させる。

「凄いですね。よく頑張りました。良かったです。もうやるしかないというスイッチは入っていましたね。『やってくれるな』という気はしていました。ただ、さすがに3連戦で、気持ちだけでどこまで行けるかというところは心配だったんですけど、私の想像を彼らは遥かに上回りました。素晴らしかったです!」(長橋監督)。

 まさに『奇跡の15分間』と称したくなるような、凄まじい集中力で試合終盤に4ゴールを重ねた川崎F U-18が、大混戦のグループBを制してクォーターファイナルへと進出する結果となった。

選手と勝利のハイタッチを交わす長橋康弘監督


「本当に最後に確信があったのは、みんなで“バラバラ”を歌った時で、あそこまではちょっと(グループステージ突破を)疑う気持ちもありました。自分ももう喜んでしまってはいたんですけど(笑)、あそこでちゃんと決まったってわかったので、凄く嬉しかったです」。そう土屋が振り返るもの無理はない。1点目が入るまでの展開を客観的に見ても、川崎F U-18があそこまで爆発することを予想した人は、ほとんどいなかったはずだ。

 見逃せないのは交代で入った選手たちの躍動だろう。八田は中盤でしっかりと舵を握り、持ち前の展開力で得点を演出。平内は左サイドで存在感を放ち、平塚は少し意外なヘディングで貴重なゴールも記録。そして、「ゴールの仕方を忘れてしまっている自分が情けなかった」という香取は実に公式戦2か月ぶりとなる得点を、この大事な一戦に持ってきた。

「ベンチも一緒になって戦っている雰囲気を、こっちに入ってから凄く感じていたんですよね。なので、自信を持って送り出したんですけど、素晴らし過ぎましたね。よく頑張ってくれました」。そう笑った長橋監督は、普段から選手たちをつぶさに観察しながら、適切なタイミングで話しかけている光景をよく目にする。

「練習試合もそうですけど、本当に途中から入ってくる選手がチームに力を与えてくれるので、そこはもう自信を持って途中から出てきた選手を使っていけますし、チームの中の絆は深いのかなと思っています」(土屋)。佐原秀樹コーチや浦上壮史GKコーチ、池田善憲トレーナーも含めたスタッフ陣と選手たちの信頼関係も、この日の勝利を呼び込んだ一因であることに疑いの余地はない。

 これでようやく休息日を挟むことのできる川崎F U-18は、27日に当初の予定より1日遅れで開催される準々決勝に臨む。「もう練習からみんなタフに、力強くやってきたので、それがクラブユースの3連戦という状況でも、ピッチで表現できたのかなと。やってきたことが無駄じゃなかったのかなと思います。もちろん自信はありますけど、今日の勝ちが慢心にならないように、今日の夜からの過ごし方をもう1回見つめ直して、優勝できるようにやっていくだけだと思います」(土屋)

 確実に大きな波が来ていることは間違いない。それを乗りこなせるか否かは自分たち次第。総力戦で修羅場を潜り抜けた川崎F U-18が、悲願の日本一を達成するために必要な勝利は、あと3つ。



(取材・文 土屋雅史)

●第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)特集

土屋雅史
Text by 土屋雅史

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