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まさに"優勝請負人"、野沢が1得点2アシストの大暴れ

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[11.28 J1第33節 鹿島5-1G大阪 カシマ]

 終盤戦の勝負強さは本物だ。鹿島アントラーズのMF野沢拓也が1得点2アシストの大暴れ。これで公式戦3戦連発と、勢いが止まらない。

 過去4年間、ラスト2試合ではゴールを量産してきた。06年最終節・磐田戦でのハットトリックなど8試合でなんと9得点。この日のゴールで10点目となった。

 ただのゴールではない。一昨年の第33節では、当時首位に立っていた浦和との直接対決で決勝点を決め、1-0で制すると、最終節での大逆転優勝の呼び水となった。昨年も札幌との最終節(1-0)で優勝決定弾を叩き込み、チームを2連覇に導いた。まさに“優勝請負人”。その勝負強さは今年も健在だった。

 先制から2分後の後半13分、FWマルキーニョスのシュートをGKが弾いたこぼれ球を拾い、GKの位置を見極めて鮮やかにループシュートを沈めた。

 「逆サイドが空いていたので、コースを狙うだけだった。たまたまです」と謙虚に語ったが、これだけでは終わらない。2-1と追い上げられた直後の後半15分、左クロスでFW興梠慎三の2点目をアシスト。後半40分のFW田代有三のゴールの起点にもなり、同44分には右クロスでFWダニーロのヘディングシュートをアシストした。

 後半には華麗なリフティングでボールを運び、3万5598人の大観衆がどよめくシーンもあった。名古屋のストイコビッチ監督が現役時代に大雨の試合で見せた“リフティングドリブル”を彷彿させるプレーに「やる必要はなかったけど、体が勝手に…。ピクシーを真似たわけではないです」と照れ笑いだった。

 勝てば、優勝が決まる可能性もあった。だが、だれも川崎Fの結果は気にしていなかった。「強い相手といい緊張感の中で、たくさんの観客の前で試合ができてうれしかった」と、目の前の試合に集中していた。

 結局、川崎Fも勝ったため、優勝の行方は最終節まで持ち越された。DF岩政大樹は「ここまでいくのは予想していた。埼スタの浦和戦が消化試合になるとは思えなかった。どんな展開でも、最終節までもつれるのは予想していた」と言う。

 試合終了の瞬間も選手は淡々としていた。すでにベンチに下がっていた興梠も「試合が終わってビジョンに(川崎Fの結果が)出たときに知った」と他会場の結果は気にしていなかった。

 MF中田浩二は「今日(優勝が)決まるとも思ってなかった。試合が終わっても、みんな喜んでなかった。そんな簡単にいくもんじゃない」と冷静に語った。あと2勝して優勝する。G大阪戦の前から選手はそれだけを考え、試合が終わってもすぐに気持ちは最終節へ切り替わっていた。

 王者に死角はない。12月5日、浦和戦。野沢は「うちらは勝つだけ。いい準備をして、勝ち点3を取って終わりたい。優勝して鹿嶋に戻ってきていい報告をしたい」と言った。気を緩めている暇はない。あと1つ。“優勝請負人”の仕事は、まだ残っている。

<写真>鹿島FW野沢
(取材・文 西山紘平)

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