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日本代表コンフィデンシャル by 寺野典子

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夢の途中
by 寺野典子

 「最後の最後まで選手を見極めたい」という理由から、オシム監督は合宿開始前日のJリーグ終了後に代表招集を内示し、翌朝公表するというスタイルを続けている。

それは初のアウエイ戦でも同様で、30日の試合終了後の深夜に内示し、翌日成田空港集合、そして中東へと約1週間あまりの遠征へ旅立った。

 公式戦前日にはホテルで前泊するチームも多く、代表候補たちは(今回はビザ発給の関係もあり、50人の“候補”が、パスポートを事前に協会へ渡してある)、長旅に備えた荷物で29日の練習に挑むわけだ。

 日本人は準備周到な人種だと思う。だからこそ、オシム監督の直前発表には面食らっている。しかし当の選手たちは、多少の不満は口にしても概ねオシム流を歓迎している。当然、本心が別のところにあったとしても、監督の意向に異を唱える選手は少ないだろうが……。

「もともと、クラブにいるときはクラブのことしか考えていない。代表で対戦する相手じゃなくて、頭にあるのは、リーグ戦のことだから、僕としてはやりやすい面もある」というのは浦和レッズの坪井慶介だ。

 そんな坪井でも事前に代表入りが決まっていれば、代表のことを考えずにはいられないのだろう。

 だからこそ、「ギリギリまでわからないというのがいい」と話す。

 だから、サウジアラビアやイエメンのことを訊かれても答えに困るが、30日に対戦する大分については、饒舌になる。同クラブのGK山岸も同様。「まずは大分に勝たなくちゃ。負けて代表に呼ばれても気分もよくない」と断言する。もちろん、自身がまだ代表に呼ばれるかはわからないとも話した。

「じゃあ、もしも大分にまけたら、代表に選ばれても行かないで帰ってきてね」と冗談を言うと、「それは……」と苦笑いだったが……。

 選ばれる者にしては、最後の最後まで“代表招集”のチャンスはあると信じられる環境。そのプラス効果は小さくないだろう。

「最善を尽くすために、理想の形を手にする努力を惜しむな」
  

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