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日本代表コンフィデンシャル by 寺野典子

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幾山河
by 寺野典子

 9月12日オランダはヘラクレスから、FC東京に移籍加入した平山相太は初練習後の会見で、「誰だって、日本代表に選ばれれば嬉しいし、そのために頑張っていると思う。僕もまずはFC東京で試合に出て結果を残し、日本のために戦いたい」と語った。

 先日の日本代表の中東遠征には、FC東京の伊野波、大分の西川、梅崎と五輪代表候補、ユース代表候補と若い選手が招集された。特に現在U-19代表の梅崎はわずかな時間ながらも試合出場を果たし、大きな注目を集めた。

冒頭の平山は「代表よりもクラブでの結果」がまずは最優先となるが、現在すでにJリーグでレギュラーを確保している選手たちは、同世代のA代表入りで目標設定が自動的に高くなったに違いない。

 先日取材した名古屋の本田も「クラブで結果を残し続けることで、A代表にも選ばれる可能性が高まる」と“五輪代表”というカテゴリーについてではなく、A代表について語っていた。未だ五輪代表候補としては一試合しか戦っておらず、五輪代表としての実績もまだないに等しい20歳の本田だが、自分よりも年下の梅崎の代表デビューにより、競争心が高まったことを想像するのはたやすい。

 ユース代表、五輪代表を本来の年齢よりも若くに経験し、その後、Jリーグを経験することなく欧州のトップリーグでプロデビューを果たした平山。誰もがうらやむような速さでステージをランクアップさせた彼が、「オランダでは言葉が出来ずに楽しくサッカーが出来なかった。もう今は海外ではプレーしたくないという気持ちで帰国した」と移籍会見で語るのを見ると、上のステージで通用する高い才能があったとしても、戦える準備が本人に出来ていないと、大きな傷跡、トラウマを残してしまうこともあるのだと、感じずにはいられなかった。

 高校生ながら、98年ワールドカップメンバーをギリギリまで争った清水の市川は、翌年以降、オーバートレーニング症候群などコンディション不良に長く苦しんだ。突然の代表入りによる変化に上手く対応できなかったのかもしれない。

 進化、成長の階段を一足とびに駆け上がるためには、転ばないための準備が必要だ。もしくは転がってもすぐに立ち直れる強さが。しかし最も大事なことは、一歩一歩体験を経験に変えながら、成長の階段を歩いていくことなのではないだろうか? サッカー選手としてだけでなく、人間としても。

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