beacon

日本代表コンフィデンシャル by 寺野典子

このエントリーをはてなブックマークに追加

アジア
by 寺野典子

 8月6日にオシムジャパンが始動してから、9月6日のイエメン戦までの約6週間。日本代表選手たちはホーム2試合、アウエイ2試合の代表戦とリーグ戦6試合を戦った。合計10試合。ほぼ毎週、週2試合という強行軍となった。
「でも、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)に比べたら、全然平気ですよ。あのときは週2試合っていうのが1か月近く続いたから。あの経験に比べたら代表は、アウエイが連戦だったし、チャーター便だし、楽なものでした」
 中東遠征から帰国し、リーグ戦を終えた9月13日、横浜Fマリノスの田中隼磨はさらりとそう言った。
 それもそうだろう。05年は3月5日から5月25日までにACL6試合、リーグ戦12試合、合計18試合を戦っている。ハイライトは4月2日から5月15日までの間に14試合6週連続で週2試合を消化。集客時期でもあるゴールデンウィークでリーグ戦の数も増えたのだ。
今回の代表もそれに近いスケジュールではあったが、リーグ戦の合間を縫うようにタイや中国へ遠征したACLのほうが断然ハードだっただろう。だから田中は動じない。過去の経験が自信となっている。
イエメンでのアウエイの試合会場の芝生が非常に荒れ果てており、オシム監督は試合後の会見で「どういうスタジアムで試合するかということを考慮してほしい。今日のようなピッチ状態で試合をするのは(選手たちが)かわいそうだということだ」と訴えた。
 しかしこれもまたアジアならではの話で、01年アジアクラブ選手権決勝を戦った韓国水原のスタジアムのピッチを「公園か河原のようなピッチ」と語ったのは、ジュビロ磐田の服部年宏だった。それでも「もっとひどいところもあったよ。アジアに出て環境の悪さも気にならなくなった、それを笑い飛ばせるくらいじゃないと戦えないから」と藤田俊哉がその横で笑っていたことを思い出す。99年から3年連続でアジアクラブ選手権決勝進出の実績から生まれた余裕だ。
アジアは広い。東南アジアの離島ともなれば、欧州へ行くのと変わらない時間がかかるし、中東に行くには10時間以上のフライトが必要だし、乗り換え時間を入れれば1日仕事だ。文化や宗教の違いはもちろん、国ごとでの貧富の差も激しい。サッカーのプロリーグの数もわずかで、サッカーをやる環境が整っていないことも珍しくは無い。高温多湿地域も多く、日本との違いを痛感する種は幾らでもあるということだ。
 アジアは侮れない。サッカーの実力とは別の過酷な現状が待ち受けている。
 日本が優勝したU-16アジア選手権の決勝が行なわれたシンガポールのスタジアムは人口芝だった。来年のアジアカップが行なわれる国のひとつであるシンガポール……。欧州選手権が人工芝のスタジアムで行なわれるなんて考えられないが、アジアカップならありえるかもしれない。何が起きても不思議ではない。
 来年のACL出場が決まっている浦和レッズには、現在7名の代表候補がいる。クラブでのアジア経験が代表に好影響をもたらしてくれることを期待したい。

TOP